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廣島 武 X 保阪 薫
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2010年03月31日

「IFRS」について

「IFRS」という単語をメディアや本屋などで目にする機会が増えたのではないかと思います。
「IFRS」は「International Financial Reporting Standards」の略で、「国際会計基準」と約されます。企業の財政状態や経営成績を表すための会計基準の世界標準ということです。


この「IFRS」が早ければ2015年から日本企業にも強制適用されるといわれています。現在使用されている会計基準に変わって「IFRS」が適用されると、企業経営にとってはもちろんのこと、投資家にとっても大きな影響が出るとも言われています。


そこで、数回に分けて、「IFRSとは何か?」、「企業経営や投資家にどんな影響が出てくると予想されるか?」などをまとめてみたいと思います。
まず今回は、「IFRSの概要」についてです。


<IFRS採用の背景>
人間が経済活動を行い、それを記録する方法として「簿記」が開発され、決算書が作成されるようになりました。
決算書は、外部の人間がその事業体(株式会社が中心)の経営成績や財政状態がどういう状況なのかを判断するため重要な書類です。そして決算書を作成するためには、会計基準という皆が従わなければならない一定の決まりが必要です。そうした決まりが無く、作成者がおのおの好きな様に作成したのでは、同じ企業の姿が決算書を通じて何通りにも現れてしまい、極めて不都合です。
ただ、国や地域によって経済の発展段階における会計に対する考え方が異なっているため、会計基準は国によって異なっていました。

ところが「モノ」だけではなく「カネ」も国境を越えてめまぐるしく移動する現代においては、異なる国の企業であっても、同じ考え方の同じ会計基準に基づいた決算書を作成することが極めて重要です。これが「IFRS」採用の大きな背景です。
「IFRS」は高品質で、理解可能、かつ強制力のある国際的な会計基準と定義され、世界中の人が共通で使用することのできる高品質で唯一の会計基準、つまり会計処理のグローバルスタンダードというわけです。


<包括利益という概念>
「IFRS」採用にあたっての最大のポイントは「包括利益」という概念の登場でしょう。
これは、当期純利益に「その他の包括利益」を加えたものです。

その他の包括利益は、保有株式の含み損益(時価−取得簿価)の変動などを反映したものですので、包括利益は,期間損益である当期純利益に、資産・負債の変動額を加えたものとなるわけです。
例えば、売上高100億円、当期純利益10億円で同じ規模のA、Bの2社があったとします。A社は持ち合い株式などを保有しておらず、B社は保有株式で2億円の含み損が発生していた場合、包括利益はA社10億円、B社8億円となります。
これまでの会計処理では、B社の場合、株式を売却すれば2億円の損失が発生しますが、保有株式を売却しなければ、「当期純利益10億円」で評価されます。

つまり、経営者がいつ保有株式を売却するか(もしくは売却しないか)で、企業の利益が大きく左右されることになり、外部の投資家からすれば企業を分析したり、他社と比較を行う場合などに、大きな妨げとなってしまいます。
こうした事態を防ぎ、経営者の恣意性を排除することが「包括利益」導入の最大の目的となっています。


<損益計算重視から資産・負債重視へ>
その他の包括利益では株式の変動だけでなく、海外子会社の決算書にかかる為替換算差額、や退職給付会計における過去勤務費用なども反映されます。
つまり、本業の利益だけでなく、時価会計の導入を通じて「現時点でのその企業の価値はいくらなのか?」を明示することがIFRSの考え方です。
国際的にM&Aが活発化していく中、企業価値がいくらかを精査するデュー・デリジェンスの重要性が高まっていることもIFRS導入の大きな要因の一つといえるでしょう。


<日本企業の対応>
世界における上場企業に対するIFRS採用の流れを見てみると、IFRS採用を主導してきたEUではいち早く2005年から域内企業に義務付けています。オーストラリア、香港・シンガポールではほぼ完全なIFRSを採用済ということです。
アメリカは、国内企業に対してIFRSの適用を認め、段階的に義務付けることを提案中といわれ、2011年〜2014年に最終決定されるといわれています。(ただ、流動的な面もある用でもう少し遅れるとの見方もあるようです。)
またアジアでも、韓国は2011年から義務付け開始(2009年より任意適用)、中国も2007年からIFRSを全面的に取り入れた自国基準を上場企業に適用しているなど、世界的な採用の流れは益々強まっています。
こうした中、日本では2012年に強制適用が決定され、3年程度の準備期間を経て2015年〜2016年に一斉若しくは段階的に強制適用がはじまるといわれています。(こちらも流動的な部分も多そうです。)


次回は、IFRS採用が企業経営や投資家にどういう影響を与えるかを考えてみたいと思います。

カテゴリー : | 投稿者 : 保阪 | 10:34 | コメント (0)

2010年03月08日

グローバル競争における日本企業の技術力

先日、あるクライアントの社長とミーティングしていた際のお話です。
決算説明会後の機関投資家訪問で、よく聞かれたのが「新興国市場での事業展開」についてだったそうです。
同社は海外での高シェアが特徴の一つである企業なのですが、それは欧米の先進国市場におけるものが大半であり、新興国市場への浸透については手を打ち始めているもののまだこれからという段階です。

そこで、私が数ヶ月前参加したセミナーのパネルディスカッションで、あるメーカーのトップが以下のような趣旨の発言をされていたことをご紹介しました。


『改めて言うまでもなく日本企業の技術者は極めて優秀で、モノ作りに対するこだわり、追求の姿勢は世界一である。いままでにない高機能製品を作ろうとすれば寝食惜しんで没頭する。
しかし、これからの日本企業がグローバル競争に勝ち抜いていくには新興国市場の所謂ボリュームゾーンにおいて、いかにしてシェアを獲得することができるかが鍵となる。そのためには、そこそこの機能の製品を低コスト・低価格で供給していかなければならない。
そこで当社のエンジニアに「中程度の機能でいいので低コストで作ってみろ。」と言うと、これが実は簡単にはできない。頭の中がそうした発想によるモノ作りになっていない。
中国、韓国、インドに比べると技術水準はまだまだ日本が上であるというように言われているが、彼らのキャッチアップのスピードは想像以上のものがあり、一方で日本の技術者の発想が今までのままなら、グローバル競争の先行きは厳しいものがある。』


すると、その社長も同じようなことを強く感じていると仰っていました。

同社は30年程前に社長を始め数人で立ち上げた会社ですが、エンジニアである社長は、できたばかりの実績も乏しい小さな会社が受け入れられるには、特徴を絞り込んで差別化を図ることが必要と考えて製品開発に取組み、それが成功しました。ところが近年の特に若いエンジニアは、あの機能もこの機能も組入れようとしすぎるあまり、結果的にコストは高くなり、特徴のない製品になってしまう傾向が見られるとのことでした。
新興国に浸透していくには、コストを最優先課題とした製品開発が欠かせないのでその点に注力していくと仰っていました。


日本の技術者が世界レベルで優秀なことは間違いないことなのでしょうが、戦後から高度経済成長を経てバブル期までの「追いかけるステージ」と、これからのグローバル競争下での「追いかけられるステージ」では、必要とされる「技術」の意味や位置づけも大きく変化しているということなのでしょう。
「日本企業=高度な技術力」という単純なイメージは残念ながら再考の必要があるようです。


またグローバル競争は当然「輸出拡大」ということになりますが、この「輸出」についても良く考えてみる必要があります。
私が小学校の頃に習った日本の産業構造の特徴は「資源のない国なので、原材料を輸入して加工し、優秀な製品を全世界に輸出して成り立っている。」というものでした。
マクロ経済的にはその通りなのですが、会社四季報で海外売上高比率ランキングを調べてみると、全上場企業約3,800社の中で、海外向けの売上比率が50%以上の企業は286社、30%以上でも605社しかありません。


世界的な競争の中で勝ち抜いて事業展開をしている企業数が、実際にはイメージしているよりも少ないなあという印象です。
「日本企業への投資をどう考えるか?」という観点からすれば、この点はかなり気になるところです。


ただ、新興国市場開拓を積極的に展開して実績を積み始めた企業も出てきているようです。
前述したセミナーで聞いた話では、味の素はアフリカのナイジェリアで、1回の販売容量を現地事情に合わせて少量化したグルタミン酸を年間4万トン販売するまでに積みあがってきており、今後需要拡大が見込まれるアジア、アフリカ、中南米で同様の展開を進めていく方針だそうです。(日本国内での販売は10万トン)

グローバル競争に日本企業が勝ち残ることができるか否かは決して楽観できない状況かとは思いますが、これからの日本企業の奮起に期待したいところです。


参考までに海外売上高比率が30%以上で、前期、今期とも営業増益企業をスクリーニングしてみました。
さすがに厳しい条件なので19社しか出てきませんでしたが、高い競争力を持ったユニークな企業も見受けられます。

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カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : 保阪 | 09:54 | コメント (0)

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社長プロフィール
代表取締役社長
廣島 武
1963年生まれ。駒沢大学経営学部卒業。1985年三洋証券株式会社入社。日本インベスターズ証券を経て、2000年当社設立。三洋証券時代より、個人投資家への資産運用アドバイス業務に一貫して従事。
代表取締役会長
保阪 薫
1961年生まれ。京都大学法学部卒業。1984年野村證券株式会社入社。シティバンク・プライベートバンク、日本インベスターズ証券などを経て、2000年当社設立。
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