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廣島 武 X 保阪 薫
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2010年07月21日

「配当性向」を考える

株主にとって、「配当」は極めて大きな関心事です。
株価はマーケットにおける様々な要因が複雑に絡み合って決定されるものであり、企業自らがコントロールすることは不可能ですが、配当は企業自らが決定できます。

企業の配当に対する意思表示が配当性向であり、企業が稼ぎ出した税引き後の純利益から株主に対する配当にいくらを回したか(もしくは回すか)を示すものです。
一般的には、配当性向は高い方が株主にとってはメリットが大きいということになりますが、一方では企業の成長ステージによっては必ずしもそうではないケースもあることには注意が必要です。


本来、利益を生み、配当を行う企業の活動とは、単純化すると次のようなものです。

<1>調達した自己資本を資産化して事業活動を行う。
<2>事業活動による売り上げから経費を引いて残ったものが利益になる。
<3>利益から税金を支払い、配当を支払った残りを次期に繰り越して(内部留保する)、自己資本に加えて事業活動を行い、利益を生み出し、税金と配当を支払って、残額を翌期の自己資本に加える。
<4>以降、この繰り返し。


この結果、自己資本、利益、配当とも、ある利率で増加していきます。この増加率、成長率が「内部成長率」とよばれるもので、「内部成長率=ROE(株主資本利益率=一株あたり利益÷一株あたり純資産)×(1−配当性向)」で計算されます。「1−配当性向」は内部留保率といいます。


内部成長率が高ければ高いほど、利益、自己資本、配当が高い利回りで増大するわけですが、それでは企業が内部成長率を高めるためにはどうすればいいかというと、この計算式からは、

・ROEを高める。
・配当性向を低める

のどちらかもしくは両方を行う必要があるということになります。


仮にROEが20%と高い企業、A社とB社があったとします。(ケース1)
両者とも株価はPER15倍、PBR3倍の3,000円。A社の配当性向は0%(無配)、B社の配当性向50%の場合、どちらの株主になる方がより多くのメリットを得られるでしょうか?

list100721-1.JPG


比較すると以下の点をあげることができます。

・受け取り配当総額は、A社 0円、B社 610円。
・5年後の一株当り純利益および一株当り純資産の水準はA社がB社を4割強上回る。
・5年後もPERは15倍のままだとしたら、株価はA社 6,225円、B社 4,380円。
・総リターン(キャピタルゲイン+インカムゲイン)はA社 +107.5%、B社 +66.3%で、配当性向が低いA社が上回る。


5年後のPERを両社とも15倍で不変であるという前提に変化があればもちろん結果は異なってきますが、実績としての利益の伸びはA社の方がB社よりも高いので、PERがA社はB社より高く評価される可能性もあるかもしれません。
このケースでは「配当性向が高くない」方が株主にとってはメリットが大きいという結論となります。

今度は、ROEが7%とそれほど高くないケースで、配当性向10%のC社と配当性向50%のD社で同様の比較を行ってみます。(ケース2)
株式購入時のPERは両社とも15倍で株価は1,050円とします。

list100721-2.JPG


・受け取り配当総額は、C社 0円、D社 187.5円。
・5年後の一株当り純利益および一株当り純資産の水準はC社がB社を15%程度上回る。
・5年後もPERは15倍のままだとしたら、株価はC社 1,380円、D社 1,200円。
・総リターン(キャピタルゲイン+インカムゲイン)はC社 +31.4%、D社 +32.1%で、配当性向が高いD社が若干上回る。


ケース1とはずいぶん異なった結果となりました。


ここでのポイントはROEの水準です。
ROEは株主の委託した資金を企業がどれだけの利回りで運用しているかを示す指標といえますから、ROEが高い企業の株主になるのであれば、配当を受け取らずにそのまま高いROEで自分が提供した資本を運用してもらった方が株主にとってはメリットが大きいことになるのです。また成長軌道にある企業ほど利益を配当にまわさず、成長のための投資に回したいと考えますから、企業と株主のメリットは一致します。
先程ふれた「内部成長率」を高めるための2要因「ROEを高める。」「配当性向を低める。」というのはまさにそうしたことを説明しているのです。


一方でケース2のように、ROEがそれほど高くない企業の場合は、株主としてはそれほど高くないROEによる運用に期待するよりも、確実に現金として得ることができる配当を要求した方がメリット大となりますし、成長のための投資機会が乏しい企業であれば、配当性向を高める方が株主の支持を得ることが容易になる場合が多くなるでしょう。


このように、企業が成長ステージにあるのであれば、株主としては配当よりも株主資本の成長を望むべきであり、過度な配当を要求することはかえってその企業の成長機会を奪うことにもなりかねません。
一方で成熟した企業であれば、着実に配当を得ることが株主にとってはメリットがあるのです。


ただ単純に配当性向の高さだけで企業選別を行うことは、中長期的なリターンを掴み損ねる恐れがあることを踏まえ、個別企業に投資する際は、今回は配当を重視する投資なのか、それとも企業の成長に参加する投資なのかといった点を明確に意識しておく必要があることを是非理解していただきたいと思います。


ただどちらの場合でも、短期ではなく中長期の視点が不可欠ですし、株主として経営者の考え方(成長戦略、配当政策、資金の使い道など)を様々な機会を通じて十分理解する努力が必要であることは言うまでもありません。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 10:41 | コメント (0)

2010年07月08日

IR活動にもイノベーションが求められる時代

3月期決算の株主総会が終了しましたが、前回のコラムでも触れたように、従来の「形式最優先(できれば株主に参加してほしくない)の総会」から「株主や投資家の理解を得るための重要な機会としての株主総会」への変革が着実に進んでいるようです。

土日開催による株主の参加しやすさ、招集通知の工夫、議決権行使状況の開示など様々な面で工夫が見られますが、前回のエーザイに続き、ユニークな取り組みを進めている企業の一つとして、シンプレクス・テクノロジー(東証1部上場、証券コード4340)をご紹介したいと思います。


というのは、私の知っている個人投資家の方たちの中で、同社のIRの姿勢に対する評判がとても良好なのです。


同社の事業内容はというと、四季報などを見ると「金融機関向けディーリングシステムなどの受託開発とFX取引の課金ビジネスが2本柱」とありますが、目に見えるサービスや製品を製造、提供している訳ではないので、個人投資家にとっては、中々理解することは困難な企業です。


同社ではこの問題をクリアし、多くの個人投資家に理解してもらうためのチャレンジを様々な方法で行っているのですが、そのための重要な柱というか指針となるのが、2009年11月に、上場企業としては初めて発表した「IR宣言」なるものです。


この「IR宣言」は、「IR活動を経営の最重要項目の一つとして位置づけ、パブリック企業としての説明責任を果たし、常に明瞭なメッセージを発信することで投資家・株主の皆様から信頼される企業を目指します。」(同社資料より)というもので、これをベースに具体的かつ本質的なIR活動を展開しているわけです。


同社においても当然のことながら、株主総会を個人投資家と直接コミュニケーションが取れる貴重な機会と積極的に捉えています。
そこでIR担当者に「株主総会においてどんな点に特に力を入れているか?」を伺ってみました。

「質疑応答を重視」
直接コミュニケーションを取る貴重な機会であるため、株主総会及びその後の懇親会において、一人何問でも、何人でも質問を受けるそうです。これは、同社の株主総会に参加された多くの方が評価していました。
(同社の金子社長の質疑応答を聞いたことのある方ならお解かりかと思いますが、金子社長のお話の上手さ、決して単にスピーチが上手いという意味ではなく、理路整然とした明確な回答もあってのことだと思います。)


「過去の話だけでなく将来の話」
株主総会は、終了した事業年度の報告とそれに基づく利益配分を株主が決議することが本来の目的です。ただ、株主にとっては将来その企業がどうなっていくかにも強い関心があります。
同社では、単なる事業報告ではなく、改めて同社の特徴を知ってもらうほか、今回は「Hello world,Hello innovation」という企業理念や同社の5つのDNA「1.No.1、2.Client First、3.Commitment、4.Professionalism 5.Global」など、「同社の目指すところ」についても詳細な説明を行ったそうです。


「先進的な議決権行使状況開示」
同社は今回の株主総会より、ガバナンスの強化及び株主総会に出席した株主の意見を経営にフィードバックし、株主を重視した透明性の高い経営を実施するため、当日出席株主の賛否集計を実施しました。
当日出席株主の賛否集計の実施は日本企業では非常に少ないそうで、株主重視の姿勢を明確に示した先進的な試みです。


具体的には、投票用紙を株主総会出席者全員に配布し、質疑応答後投票および回収を実施。またIC タグを利用した投票用紙を利用することで集計時間を大幅に短縮し当日集計を可能にしたそうです。
来期以降の総会においても、迅速かつ正確な当日出席株主の賛否集計を実施することで、今後も株主総会の透明性向上を図っていく考えだそうです。


このように様々な独自の取り組み行っている同社ですが、東証1部とはいえ、IR専任のスタッフが何人もいるという状況ではありません。
それでもIR活動をトップマネジメントのコミットメントの一つとして位置づけ、お題目ではなく本質的に取り組んでいる点は高く評価されると思います。

企業は本業での競争がますます激しくなると同時に、資本市場をいかに上手に活用するかというIR活動においても厳しい競争に直面しています。


この競争の勝敗のポイントは言うまでもなく「一人でも多くの投資家の信頼を勝ち得ることができるかどうか?」です。
そのために、まさにIR活動にもイノベーションが求められる時代です。


みなさんも是非いろいろな方法、機会を利用して同社のように、IR活動においても常にイノベーションを目指している企業を探し出したうえで、本当に信頼できる企業家、経営者かを更に吟味してみるという作業を繰り返してみてください。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 17:14 | コメント (0)

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社長プロフィール
代表取締役社長
廣島 武
1963年生まれ。駒沢大学経営学部卒業。1985年三洋証券株式会社入社。日本インベスターズ証券を経て、2000年当社設立。三洋証券時代より、個人投資家への資産運用アドバイス業務に一貫して従事。
代表取締役会長
保阪 薫
1961年生まれ。京都大学法学部卒業。1984年野村證券株式会社入社。シティバンク・プライベートバンク、日本インベスターズ証券などを経て、2000年当社設立。
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