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廣島 武 X 保阪 薫
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« IR新時代における企業選択のプロセス | メイン | またまた「配当と投資」について »

2010年09月06日

配当と投資について

数回前の当コラムで、「配当性向について」述べましたが、今回も株主にとって関心の高い「配当」について、企業の行う「投資」との関係について考えてみたいと思います。

企業の成長力が十分高い場合は、本来的には企業が生み出したキャッシュを、配当として外部に流出させるのではなく、設備投資や研究開発投資に回し、さらに成長力を高める方が、企業はもちろん投資家にとっても高いリターンに結びつくこととなります。


反対に企業が成長期を過ぎ、成熟期に入っている場合は、企業としては投資機会・投資額ともに少なくなっていますから、手元に現金を置いておくのではなく、配当や自社株買いによって株主還元を行う方が、株主にとってはメリットが大きくなります。


言い換えれば、「成長を目指し、競争力を高め、企業価値向上のために投資する機会を探しだし、投資を行うことが第一義。もし投資機会が見つからなければ配当で余剰資金を株主に還元する」のが、企業及び経営者の役割と言うことができるでしょう。
株価は企業がコントロールすることはできませんが、「投資」と「配当」は企業経営者にとっては、もっとも重要な意思決定事項であるのです。


そんな中、日経新聞の経済教室において、一橋大学准教授の野間幹晴さんが、日米の企業経営に関する通説について、下記のように大変興味深い指摘をされていました。


(1)「日本企業に比べ米国企業は株主還元を手厚く行っている」という配当政策に関する通説があるが、有配企業(上場企業のうち配当を行っている企業数の比率)は日本がほぼ横ばいなのに対し、米・英・カナダ・ドイツは低下傾向にあり、2009年では日本が86.5%に対し、米国は30.2%と日本が突出している。


(2)「米国企業は短期的・近視眼的な投資を行うのに対して、日本企業は長期的な視点に立って設備投資や研究開発投資を行う」という投資政策に関する通説があるが、1985年から2009年の間に前年より設備投資を減らした企業の比率は、日本は平均47.1%で、米・英・カナダ・ドイツ・フランス・韓国を合わせた7カ国の中で最も高い。研究開発投資についても、同期間で削減した企業の比率は日本が41.5%に対して米国は22.5%で米国の方が低い。

1985年から1989年という日本企業が高い国際競争力を誇っていた期間でも、減らした企業の比率は日本が24.0%で7か国中もっとも高く、米国は14.9%にとどまる。1980年代後半、日本企業は長期的視野に立った投資を行っているから国際競争力が高いと評価されていたが、皮肉にも既に他の国々より研究開発投資を減らす企業が多かった。
90年以降に日本企業が衰退していった一つの原因は、80年代後半から競争力の源泉である研究開発投資を削減していたからだろう。


(3)2000年以降、日本企業において設備投資あるいは研究開発投資総額を配当総額で割った比率は低下している。これは経営者が設備投資や研究開発投資よりも配当に重きを置いてきたことを示唆する。


というように、日本の企業は通説とは違って、投資より配当を優先させている傾向があり、企業価値を高めるためには経営者はリスクをとって投資を行うべきだとの論旨です。


この記事を読み、私も、国際的な競争力を失いつつあるように見える日本企業において、「投資」と「配当」がどんな状況になっているかを概観してみようと思い、四季報CD−ROMで調べてみました。


「設備投資+研究開発投資が、配当総額を上回っている企業」つまり、成長を目指した意思決定を行っている企業といえる企業ですが、


3期前 2,146社
2期前 2,058社
前期  1,886社


と年を追って減少しています。


また、「設備投資+研究開発投資」を3期前に比べて増大させている企業数が616社だったのに対して、配当総額を3期前に比べて増大させている企業数は729社と上回っています。


野間准教授も指摘されているように、経営者の本質的な役割は競争力強化のために、リスクをとって「どこにどれだけの投資を行うか?」を決定することでしょう。
ところが上述した様々なデータからは、実際にはそうした本来的な役割を果たさず、積極的に投資を行っている経営者は思ったより多くない、というのが実状のようです。

もちろんこれは日本企業全体を見た際の傾向であり、個別企業を見れば、株主還元とのバランスをしっかりと考えつつも、競争力強化のためのリスクをとることのできる優秀な経営者もいることでしょう。

投資家として「配当」と「投資(設備投資、研究開発投資)」をどう考えるべきか?、という問いは、なかなか難しい問題ではありますが、個人投資家のみなさんが必ず行うべきアクションは、「配当と投資について経営者がどのように考えているのか?」、また「どれだけ明確なメッセージを語っているか?」を知ることであるのは間違いありません。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 2010年09月06日 08:47

コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿者 株の配当 : 2012年01月24日 17:21

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社長プロフィール
代表取締役社長
廣島 武
1963年生まれ。駒沢大学経営学部卒業。1985年三洋証券株式会社入社。日本インベスターズ証券を経て、2000年当社設立。三洋証券時代より、個人投資家への資産運用アドバイス業務に一貫して従事。
代表取締役会長
保阪 薫
1961年生まれ。京都大学法学部卒業。1984年野村證券株式会社入社。シティバンク・プライベートバンク、日本インベスターズ証券などを経て、2000年当社設立。
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