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廣島 武 X 保阪 薫
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2012年07月20日

全日空の増資について

前回、このコラムで日本航空の再上場について書きましたが、今回もそれに関連した内容でいきたいと思います。
ライバルの全日空は、日本航空が会社更生法適用会社という立場をいかし、政府支援によって競争力を高めていることに不満を抱いているとも伝えられます。


その一方で全日空は7月3日に新株発行による増資を行うと発表しました。
この動きは9月に再上場する日本航空に対して先手を打ったものと受け止められています。
7月18日には発行価格が決定、最大約1750億円を株式市場から調達することになります。


全日空株の動きを見ると、発表前日(7月2日)に終値が224円だったのが翌日には196円と、12.5%下落しました。また、18日の終値は192円と、さらに2%下がっています。


「上場企業の増資と株価」の関係については、現在、野村證券を始めとした大手証券会社や、中央三井アセット信託銀行(現・三井住友信託銀行)などの大手運用機関による「増資インサイダー事件」が大きな問題になっています。


全日空に関しても、発表当日の出来高が、前日の4倍強に急増していることから、インサイダー情報に基づく空売りがあったのではないかとの憶測も出ているようですが、今回のコラムではこの件についてではなく、そもそも企業が行う増資について株主や投資家は何を考え、どう判断すべきか? どんなことを企業に要求すべきか? について述べてみたいと思います。


新株発行を伴う増資が行われる場合、投資家は主に次の2点を考える必要があります。


まず、一株当たり利益や純資産の希薄化です。

増資直前と直後では、基本的には企業価値に変化はないはずです。
全日空の2012年3月期決算短信によれば、2012年3月期末の一株あたりの純資産(BPS)は218.24円、2013年3月期の予想一株あたり純利益(EPS)は15.90円です。

2012年3月期末の発行済株式総数(自己株式を控除後)は約25億1500万株ですが、今回の増資により発行済株式の数は約4割増加しますから、計算上はEPS、BPSとも、その分目減りしてしまいます。

これを「希薄化」といい、新株発行を伴う資金調達が既存の株主にあまり好まれない理由です。
前述の同社株の下落も投資家のそうした心理を反映したものといえるでしょう。


しかし、これはあくまでも増資直前と直後の企業の姿を静的にとらえた場合です。企業は生き物ですし、株価は企業の将来を映し出す鏡ですから、動的な側面にも目を向けなければいけません。


その意味で第2に考えるべきは「調達資金の使途とその成果」です。


上場企業の非上場企業に対する最大のアドバンテージは何と言っても「市場を通じた直接金融による資金調達能力」です。
ただ、上場企業であっても全ての企業が同一条件で市場を通じて資金調達ができるわけではありません。
将来の成長や企業価値の向上に結び付く設備投資を行うことができるか否かが、大きな違いを生みます。


全日空は今回の増資発表に際し、最大約1750億円となる調達した資金の使途について以下のように述べています。

「2015年3月末までに、国際線ネットワークの拡充を主な目的として、省燃費機材であるボーイング787 型機(787−8型機及び787−9型機)を中心とした航空機購入を含む設備投資資金に充当する予定であります。なお、当社は、現在、成長著しいアジアを主力市場とする航空会社として、マルチブランド戦略の推進により新たな事業機会を追求しておりますが、今回の資金調達を通じて、将来のさらなる投資機会に機動的に対応できるよう財務体質を強化してまいります」(7月18日リリースより)


全日空は成長余地の大きいアジア域内の需要を取り込むことをもくろんでおり、同じ戦略をとる日本航空に正面から対抗するために今回の増資に踏み切ったわけです。


ここで投資家が考えなければならないのは、全日空がこの資金をもくろみ通りに有効活用することができるか、です。
一方で、投資家は、今後の成長戦略の具体策や想定通りに成果を上げる可能性について、全日空に十分な説明を求める必要があります。

この説明が合理的で株主や投資家を納得させるものであれば、「希薄化」の懸念を上回って株価は上昇する可能性が高くなります。
株価を形成する要因は、市場全体の需給など諸々ありますから、単純ではありませんが、少なくとも増資に伴う投資家への説明は絶対不可欠であることは間違いありません。


その観点で全日空のIR(投資家向け広報)サイトを見てみると、正直なところ「?」という感じです。

2012年3月期の決算説明会の資料などは掲載されていますが、少なくとも私には中期的にアジア市場でどう勝負して、どう勝ち上がっていくのかという道筋が読み取れませんでした。

また、社長メッセージもあるにはあるのですが、7月なので七夕の起源や全日空が実施する七夕イベントの紹介など、どう考えても投資家が期待している経営トップの声ではありません。
これではなかなか株価も振るわないのではないでしょうか?


増資を発表した企業や実施が予想される企業の株価が総じて軟調なのは、需給悪化というテクニカルな部分もあるでしょうが、企業側の説明不足も大きな要因であるように感じます。


投資家の皆さんは企業の説明力もしっかりと見極めていただきたいと思います。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 13:36 | コメント (0)

2012年07月05日

日本航空の再上場について

日本航空が再上場に向けて動きだしています。

2010年1月に会社更生法の適用を申請し、翌月、上場廃止となりましたが、政府支援のもとで経営再建を進め、今年6月に東京証券取引所に上場を申請しました。再上場は9月19日の予定とのことです。



同社のウエブサイトを見ると、2011年度の連結営業利益は2049億円で、2008年度の508億円の営業損失から急速なV字回復を遂げ、過去最高利益を更新。同じ期間に有利子負債も8087億円から2084億円へと大幅に削減されています。


日航が破綻した時、私は「投資家の視点で日航破綻を見ると……」(2010年1月23日)と題したコラムで、「優れた企業の経営の質を見極める一つの視点が取締役の数」だということを書きました。


日航は当時、「社長1人、副社長3人、常務取締役3人、取締役8人」と、実に15人の取締役を抱えていました。

現在は「名誉会長1人、代表取締役会長1人、社長1人、取締役3人」と半分以下になっており、意思決定のスピードは格段に上がったと想像できます。
また、現場の社員の意識に大きな変化があったことも様々なメディアで報じられています。

3年足らずのスピード再上場は、日航自身の努力の賜物であると大いに評価したいところですが、そうとも言えない面があるようです。

業績が急回復した最大の要因は、売上高が2008年度の1兆9511億円から2011年度の1兆2048億円へと4割近い減収となる中で、営業費用が2兆20億円から9998億円に半減したことです。

コスト減少の背景には、大幅な人員削減や路線の廃止、負債圧縮による支払い利息の減少など大幅なリストラがありますが、それだけではありません。

会社更生法適用による航空機の資産価値見直しの特例で減価償却費の負担が減少したことや、黒字をそれまでの欠損金で相殺できる金額の割合が通常は課税所得分の80%であるのに対し、更生法の適用会社は7年目まで100%の相殺が可能という制度により日航単体では2011年度に法人税を払っていないなど、前期の好決算は一時的な特殊事情が大きいということが多方面から指摘されています。


加えて日航は今2013年3月期の連結業績について、売上高は1.2兆円とほぼ横ばいながら、営業利益は前年比27%減少の1500億円、当期純利益も同30%減少の1300億円と予想しています。

燃油費の見通しを厳しめにしているとはいえ、上場直前期が過去最高益という、これまでのIPO(新規株式公開)銘柄で何度か経験した嫌な感じです。


一方で、日航株式の96%を公的ファンドである企業再生支援機構が保有しています。

同機構は日航に3500億円を投資しましたが、再上場時の日航株の時価総額は7000億円に達するとの見方もあります。
同機構は来年1月までに売却する見通しと報じられていますが、同機構の大株主は預金保険機構で、預金保険機構の資本金の99%は政府が出資していますから、日航株への投資は日本国民としては極めて良好な案件だったと言えるかもしれません。


ただ、再上場時に売り出される株式を購入するのは個人投資家が中心となるでしょうが、その際、上場直前期が過去最高利益で、なおかつその利益も更生法適用会社としての特殊事情によるところも大きいという状況をどう考えるべきでしょうか?


また、このスピードとタイミングで再上場に向かう(向かわなければならない?)背景や理由も気になるところです。


せっかく日本国民として良いリターンを得ることができたのに、再上場時に高値でつかまされてしまったのでは何のことやらわかりません。


日本のフラッグシップである日航の復活は大変喜ばしいことですし、相次ぐLCC(格安航空会社)の参入など話題に事欠かない航空業界ですが、個人投資家の皆さんには、ムードに惑わされず、「競争に勝ち残る資質を備えた会社になったか」「応援すべき企業か」という視点で日航の再上場を考えていただきたいと思います。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 18:41 | コメント (2)

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社長プロフィール
代表取締役社長
廣島 武
1963年生まれ。駒沢大学経営学部卒業。1985年三洋証券株式会社入社。日本インベスターズ証券を経て、2000年当社設立。三洋証券時代より、個人投資家への資産運用アドバイス業務に一貫して従事。
代表取締役会長
保阪 薫
1961年生まれ。京都大学法学部卒業。1984年野村證券株式会社入社。シティバンク・プライベートバンク、日本インベスターズ証券などを経て、2000年当社設立。
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