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廣島 武 X 保阪 薫
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2012年09月13日

企業と投資家:「増資」に対する認識のギャップ

前回は、「ROE」についての認識において、企業と投資家の間で大きなギャップがあるという現実を、(社)生命保険協会の行った「株式価値向上に向けた取り組みについて」という調査から見てみました。

この調査は、企業にとっても投資家にとっても関心の高い、「増資」についても同じように企業と投資家の意識を調査していますので、ご紹介したいと思います。


時価総額上位1,200社中、アンケートに回答した613社の中で過去3年の間で増資を実施した企業は10%の約60社。

実施した企業に増資の理由を尋ねたところ、以下の様な回答でした。


1位:将来の成長に向けた布石(62.3%)

2位:喫緊の財務体質改善の必要性(6.6%)

3位:予防的な措置としての自己資本の充実(4.9%)


当然のことながら、「将来に向けての投資資金を市場から調達する」という教科書的な、まっとうな回答がトップでした。


しかし増資は、既存株主への割当てでない限り、利益や資産の株主一人あたりの持分を減らすことになりますから、投資家・株主は企業が増資をすることに対し、必ずしも諸手を上げて賛成ということはなく、何故今増資が必要かを企業が説明することを要求するわけです。


そこでこの調査では投資家に対して「増資の必要性について株主・投資家に対して十分な説明がなされていると感じられますか?」という質問を行っており、回答は以下のようになりました。


1位:あまり説明されていない(51.9%)

2位: 一定程度説明されている(36.7%)

3位:ほとんど説明されていない(11.4%)


1位と3位の合計が63.3%なのに対し、「一定程度説明されている」は36.7%にとどまり、「十分に説明されている」にいたっては0%でした。


これを受けた「最も不足していると感じる点は?」という質問に対しては、


「増資に見合った将来的な収益向上策」が82.3%で圧倒的な1位で、前年調査に引き続き大半を占める形となっています。

希薄化や発行価格という答えもありましたが、それ以上に「どう収益に結び付けるのかが説明不足」という点に、投資家は強い不満を抱いているようです。


続けて、「増資を実施した企業について、増資時に企業が説明していた内容(株主還元、利益成長など)は、その後達成されていると思うか?」という質問に対しては、

「一定程度実現した」は24.1%、「説明通り実現した」はゼロという寂しい回答に対し、
「あまり実現していない」が55.7%、「ほとんど実現していない(説明そのものがなかった)」が19.0%で合計74.7%の投資家が未達成と認識しているという結果となっています。


では企業は「増資をする際に掲げた成長戦略・株主還元等の方針は実現できたか?」との問いに対しどう答えたのでしょうか?

1位:一定程度実現した(60.7%)

2位:計画通り実現した(21.3%)

3位:あまり実現していない(1.6%)

4位:ほとんど実現していない(0.0%)


程度の差はあれ「実現した」と思っている企業が圧倒的多数となっています。


増資が行われる過程及びその後の結果(企業の業績推移)は一つしかない筈なのですが、この企業と投資家間のこの認識ギャップはどう考えるべきなのでしょうか?

投資家が求め過ぎなのでしょうか?それとも、企業が自らの理屈・理論に偏っているのでしょうか?


いずれにせよ、こういう状況が続くと、日本企業は日本の株式市場において資金調達が出来なくなってしまうかもしれません。


もちろんこれは総論であって、しっかりと投資家とコミュニケーションを取り、信頼関係を構築できる企業であれば、株式市場を利用して成長資金を取り込むことは可能です。


個人投資家の皆さんはそうした企業を、様々なIRツールと実際の業績推移から判断しなければなりません。
企業を見抜く目を自ら育てることは、みなさんにとって最も必要な課題といえるでしょう。


それに加えて強く望まれるのは、多くの企業において、ROEや増資などに対する意識をもっと高めてもらうことです。

私も微力ながらも企業側の意識改革のお手伝いをしていきたいと思っています。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 09:06 | コメント (0)

2012年09月04日

企業と投資家:「ROE」に対する理解のギャップ

このコラムでは何度か「株主に対し企業がどれだけリターンを返しているか?」、「株主の期待に応えているか?」を表す指標である「ROE」について触れてきました。

ROEは、企業を評価する指標として、投資家はもちろん企業にもかなりメジャーなものとなっていると自分では考えていましたが、ある調査結果に目を通してみたところ、実際には「企業」と「投資家」の間ではずいぶん認識が異なっているのが現状のようです。


社団法人 生命保険協会という団体があります。
1898年(明治31年)に設立された生命保険会社談話会がその前身という大変歴史のある組織で、生命保険業の健全な発展および信頼性の維持を図ることを目的として、「生命保険に関する理論および実務の調査・研究」、「生命保険に関する広報活動」、「生命保険に関する意見の表明」などを事業として行っています。


ご存知の通り生命保険会社は、保険契約者から預かった保険料を、最善の注意の下、誠実に一定の利回りで運用する責務(受託者責任)を持った代表的な機関投資家であり、銀行と共に多くの上場企業の株主として顔を出す大きな存在です。


そこで生命保険協会では、「企業と株主が十分なコミュニケーションを行いつつ、課題の共有化とともに長期的な視点で株式価値の向上が進むことを望んでおり、各企業の株式価値向上への取り組みが日本の株式市場の活性化につながるものと期待している。」と考え、企業側に様々な要望を提示していますが、要望の一つに「ROEの目標設定と水準向上」という項目があります。

つまり機関投資家としては、具体的な指標としてROEについての重要性を企業に認識して欲しいと言っているわけです。


また、上記の考えの下、企業と投資家の株式価値向上に対する取り組みや意識についての調査を定期的に実施しています。

平成23年度の調査結果(2012年3月16日リリース)を同協会HPで見ることができますが、ROEに関する部分を抜粋してみると、企業と投資家の認識の違いが明らかです。


まず、「投資家が中期経営計画での公表を望む指標は?」という質問に対しては、投資家の回答は「ROE」が82.3%で断然の1位であるのに対し、企業が実際に公表している指標は、「利益額・利益の伸び率(61.9%)」、「売上高・売上高の伸び率(59.5%)」、「売上高利益率(48.0%)」が多く、「ROE」は32.8%の4位となっています。


また、「ROE水準が資本コストを上回っているか?」との質問に対しては、企業側は「上回っている」が21.9%に対し、「上回っていない」が26.9%、「わからない、どちらともいえない」が41.3%となっています。


投資家側は「上回っている」が8.9%に対し、「上回っていない」が70.9%と回答しており、企業側に比べ、現在のROE水準に対してかなり厳しく見ていることがわかります。


加えて企業側の「わからない、どちらともいえない」という回答が多数なのも気になります。

もしかしたらROEそのものの意味や資本コストとの比較という視点さえも理解していないのでは?と邪推してしまいます。


そこまでレベルが低いということは無いにしても、調査対象企業は、時価総額上位1,200社の内、回答した613社ということですから、日本を代表する有名企業においてさえもこのROEに対する意識の低さというのはちょっと心配です。


投資家の意見が絶対的だとは言うつもりはありませんが、企業の意識改革は日本の株式市場活性化のためには絶対不可欠なのではないでしょうか。

(この調査、他にも興味深い結果が出ていますので、次回もご紹介したいと思います。)

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 17:51 | コメント (0)

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社長プロフィール
代表取締役社長
廣島 武
1963年生まれ。駒沢大学経営学部卒業。1985年三洋証券株式会社入社。日本インベスターズ証券を経て、2000年当社設立。三洋証券時代より、個人投資家への資産運用アドバイス業務に一貫して従事。
代表取締役会長
保阪 薫
1961年生まれ。京都大学法学部卒業。1984年野村證券株式会社入社。シティバンク・プライベートバンク、日本インベスターズ証券などを経て、2000年当社設立。
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