ブリッジサロン
社長ブログ
廣島 武 X 保阪 薫
カレンダー
2012年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

« 2012年09月 | メイン | 2012年12月 »

2012年10月25日

ソフトバンクのスプリント買収で思ったこと

最近の株式市場での最も大きなニュースの一つは何と言っても、ソフトバンクによる米携帯電話第3位スプリント・ネクステル社買収でしょう。
10月1日のイー・アクセス買収に続いて間をおかず、買収額約200億ドルという大型M&Aの実施は、ソフトバンク孫社長ならではというのが素直な感想です。

今回のスプリント社買収については様々な意見が述べられています。

6年前の英国ボーダフォン社買収時に比べ、1%程度低い金利水準、約40円の円高、ソフトバンクの格付け自体も当時を上回っており、買収環境は良好である一方、通信規格の異なった国境を越えた通信会社同士の買収が目論み通りの効果を出せるのか?という疑問の声も多いようです。


私は残念ながら今回の買収について判断できる専門的な立場にはないので、成功するとも失敗するとも申し上げられませんが、別の観点から以下2点感じたことを述べさせていただきます。


一つは、孫社長の決断力、実行力は並外れているという事。

彼の事を「ビッグマウス」と揶揄する人もあり、評価は大きく分かれますが、下の相対株価を見ればわかるように、この10年でソフトバンク株は日経平均のみならず、通信業界のライバルを圧倒的に大きく引き離したパフォーマンスとなっており、色々な評価とは関係なく同社および孫社長は圧倒的な勝者です。


20121025.GIF


もちろん過去の実績が将来を保証するものではありませんが、孫社長の言動というのは当たり前ですが決してその場限りの勢いではなく、周到に計算され、内外における多くの実証的な検証の積み重ねの結果から来ているのではないかと思います。

そうでなければ、10年という期間を幸運や時流だけで勝ち抜くなどという事は出来ないのではないでしょうか?


二つ目は、現在の投資家が極めて短期的な視点となってしまっているのではないかという懸念です。


11日(木)夜に買収検討というニュースが流れた翌12日(金)の同社株は、前日比486円安と大幅に下落し、週明け15日(月)も127円安と続落、2日間で約20%も下落しました。

その理由というのが、「2兆円の買収資金を調達するために新株を発行しなければならず、大規模な希薄化が避けられない」というもののようでした。

その証拠に、15日(月)の大引け後に、孫社長は記者会見し、「増資や転換社債(新株予約権付社債=CB)の発行など、エクイティ・ファイナンス(新株発行を伴う資金調達)は一切行わない。」と表明。

これを受けて16日(火)の株価は217円上昇したのです。


発行株数が増大すれば一株当たり利益、一株当たり純資産の希薄化が起こり、株価にネガティブというのはその通りの理屈です。

でも、株式市場本来の役割とは何でしょうか?

企業が成長するための資金を調達する場ではないのでしょうか?


調達した資金を投資することで達成される企業の成長を投資家が期待する、応援するというのが株式市場の本来あるべき姿ではないかと思います。

それなのに、資金調達を完全にネガティブと捉え、経営者がエクイティ・ファイナンスを否定すると株価が上昇する。

強い違和感を覚えてしまいます。


前回まで何回かに亘って述べたように、長年にわたる日本の株式市場低迷の原因の一つは、「企業が投資家の期待の応えられていない。」という事だと思います。

リスクをとっても報われていない現状は事実として認識し、企業の真剣な取り組みが不可欠です。


しかし、確かに企業の負うべき責任は大きいのですが、それと同じくらい「株式市場本来のあり方は?」という問いを基にして投資家やアナリストの意識改革も、なされなければならないのではないでしょうか?


この10年で極めて優れた実績を挙げてきた企業経営者が並々ならぬ決断、行動を示したにも拘らず、極端に言えば投資家が誰も付いていかない日本の株式市場。


このままにしておいてはいけないと強い危機感を感じます。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 13:08 | コメント (0)

2012年10月11日

投資家の期待に応えられていない日本企業

前回は、日本企業のROE(株主資本利益率)が米国企業に比べると低く、これが株主の期待に応えていないことから、PBR(株価純資産倍率)1倍割れに表わされるように日本株式市場低迷の一要因ではないかという事を書きました。

 


では、投資家が企業に期待ないし要求するリターンはどうやって決まるのかをもう少し詳しく考えてみましょう。


そもそも投資家は、同じ水準のリターンが期待できる投資対象が二つあったとすれば、リスクのより少ない方を選びます。


例えば、償還期限が10年で利回りが1%の日本国債と、同じく償還期間10年・利回り1%の社債(企業が発行する債券)があったとすると、投資家は間違いなく日本国債を選びます。企業は10年の間に倒産する可能性はありますが、日本が破産する可能性は現時点では極めて小さいからです。(最近の財政状況だとやや?もつきますが。)


逆に言えば、リスクのあるものにはもっと高いリターンを投資家は要求します。例えば、この社債の利回りが5%とか10%であれば、倒産のリスクをとっても日本国債よりも高いリターンを獲得したいと考える投資家も出てくるでしょう。


今の例では債券同士の比較でしたが、株式投資と債券投資を比較した際は、株式投資は債券投資に比べればリスクも高くなりますから、債券投資する場合のリターンよりも高いリターンを投資家は当然に要求します。


この、投資家が要求するリターンを「要求収益率」とか「期待収益率」と言います。


この株式の期待収益率は、投資家が企業に「期待する」というものですが、逆に投資を受入れる企業からすれば、その利回りを「期待されている」ことになり、期待に応えたリターンを株主に提供していかなければなりません。


つまり投資家側から見た「期待収益率」とは、企業にとっては「調達した株主資本に対するコスト=株主資本コスト」でもあるのです。


(株式による資金調達は、銀行などからの借入のような利息が無いことからコストがゼロだといわれたり、配当が株主資本に対するコストだといわれますが、これは大きな間違いであり、株主資本には「株主からの期待」という、借入や社債利息とは比較にならないほど高いコストがかかります。)


では投資家はどれだけのリターンを期待している(企業は期待されている)と考えればいいのでしょうか?


株主資本コストの計算方法は少々難しくなるので、詳細な説明は割愛しますが、
(1)日本国債の利回り
(2)株式リスク・プレミアム(株式市場のリターンと日本国債利回りの差。投資家が日本国債の利回りに比べ、株式市場に対し、どの程度高いリターンを要求しているか)
(3)ベータ(個別企業の株価変動が市場全体の動きに比べどの程度大きいか小さいか)

の3つの要素によって決定され、
 「株主資本コスト=日本国債利回り+ベータ×株式リスクプレミアム」という計算式となります。


企業が株主に対して提供するリターンをROEとし考えてみると、各企業は自社の株主資本コストを上回るROEを実現しなければ株主の期待に応えているとはならないわけです。


そこで、東洋経済新報社の会社四季報CD-ROM版を使って、計算可能な企業について「ROE−株主資本コスト」(エクイティ・スプレッド)を計算し、PBR水準との関係を調べてみました。


エクイティ・スプレッドがプラスであれば、株主の期待を上回っている企業、マイナスは期待に応えていない企業と定義できるわけですが、下図のような結果となりました。

data121011.GIF
 

*集計対象となった2,969社中、6割の1,784社がマイナスのエクイティ・スプレッド

*エクイティ・スプレッドがマイナスの1,784社中、82%の1,467社がPBR 1倍割れ。


6割の企業が株主の期待に応えることができておらず、その内8割の企業が投資家から「PBR1倍割れ」という評価を受けているわけです。


PBR1倍割れの要因はこれだけではないでしょうが、日本の株式市場低迷の背景には、「半数以上の企業が株主の期待に応えることができていない」という残念な実態があると言わざるを得ないようです。


金銭的リターンのみではなく、明るく豊かな未来を創る経営者の志を応援する「応援投資家」の立場からは、その志を中長期で暖かく応援しつつも、同時に株主の期待に応える施策・アクションをとっているのかを厳しく見ていく必要があります。


厳しい外部環境であるとは思いますが、日本企業の奮起を期待したいと思います。


*なお、株主資本コストの計算方法については、日本国債利回り 1%、株式リスクプレミアム 7%との前提で計算しました。また、話を簡略化するために企業が投資家に提供するリターンを考える際に配当性向(利益のうち、どの程度を配当として支払っているかを示す指標)を除外しています。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 15:04 | コメント (0)

2012年10月04日

日本株低迷の背景

日経平均と米国NYダウの過去10年間の推移を比較してみたのが下のグラフです。2008年9月のリーマンショック後の安値まではほとんど一致した動きを見せたものの、その後の展開は大きな差がついてしまいました。

graph120121003.GIF


NYダウがリーマンショック前の高値まであと一歩というところまで力強く戻してきているのに対し、日経平均は完全に底を這っている状況です。

この状況を表して、日本市場のPBR(株価純資産倍率)は依然として東証1部全銘柄で0.92倍、東証2部全銘柄で0.62倍と1倍割れが続いています。(平成24年10月3日現在)

 

さて、「PBR 1倍割れ」というと皆さんはどんなことを連想するでしょうか?


株主資本比率が高かったり、現金を豊富に持っている財務的に安全性の高い企業であれば「割安」、そうでなければ「危険」。
または、そもそも投資家から見向きもされていない「放置」といったところでしょうか。


確かにPBR1倍割れの背景として、認知度が低い、会社の事を理解してもらっていないということもあるでしょうが、それでは、日本を代表する企業であるソニーの0.45倍、トヨタの0.93倍はどう考えればいいのでしょうか?


下の表は日本と米国の代表的な企業のROE(株主資本利益率)とPBRを比較したものです。

graph_2120121003.GIF


足下においては圧倒的な違いが存在しており、唯一日立が頑張っているという感じです。


ROEは企業が株主に対しどれだけのリターンを返しているかを示す指標であり、その意味で日本企業は米国企業と比べて株主の期待に十分には応えていない現実があり、これがPBR 1倍割れの大きな原因の一つと考えられます。


もちろんもっと個別に日本企業を見ていけば、ROEも株価評価も高い企業もありますが、総体的に日本企業は株主の期待に応えるだけのリターンを返すことが出来ていないということは残念ながら事実と言えるでしょう。

 

日本の株式市場復活のためには、証券会社や投資家行動に改善すべき点も多いと思いますが、それ以上に重要なことはやはり、投資家の期待に十分応えるだけの企業の収益性向上であると考えます。


次回はこの「投資家の期待に応える」という点をもう少し掘り下げてみたいと思います。

カテゴリー : 保阪 | 投稿者 : invb | 11:07 | コメント (0)

検索
社長プロフィール
代表取締役社長
廣島 武
1963年生まれ。駒沢大学経営学部卒業。1985年三洋証券株式会社入社。日本インベスターズ証券を経て、2000年当社設立。三洋証券時代より、個人投資家への資産運用アドバイス業務に一貫して従事。
代表取締役会長
保阪 薫
1961年生まれ。京都大学法学部卒業。1984年野村證券株式会社入社。シティバンク・プライベートバンク、日本インベスターズ証券などを経て、2000年当社設立。
Copyright (c) 株式会社インベストメントブリッジ All Rights Reserved. ブリッジサロントップ 会社概要