ブリッジレポート
(2687) 株式会社シー・ヴイ・エス・ベイエリア

スタンダード

ブリッジレポート:(2687)シー・ヴイ・エス・ベイエリア vol.2

(2687)シー・ヴイ・エス・ベイエリア 泉澤 豊社長
11月5日


泉澤 豊社長

  京葉線・新浦安駅近くのCVSベイエリアを訪問しました。
  泉澤社長、谷取締役に足元の状況および、社長の理念、今後のビジョンなどを伺いました。
 

中間決算概要

 10月5日に発表した平成14年2月期中間決算は、大変好調なものでした。

加盟店を含む売上高 
10,127百万円(前年同期比+26.9%)
経常利益 
480百万円(前年同期比+19.7%)
中間純利益
247百万円(前年同期比+21.7%)
 新規開店7、閉店2で8月末の店舗数は81店舗となりました。
 新規開店店舗数は、開店日が下期にずれ込んだため2店舗マイナスでしたが、新店の平均日販が高水準で推移したため、新店売上高としてはマイナス分をカバーできました。
 また、既存店売上高も前年同期比+1.6%となっています。
 通期では、売上高 20,003百万円(+23.2%)、経常利益 914百万円(+26.6%)、純利益 456百万円(+18.1%)を予想しています。

 

FA24の展開

  前回のレポートでも触れましたが、同社の特徴は、生活者の視点に立った様々なサービスを展開し、「コンビニを超えた便利さを提供できる会社」を目指しているということです。 それは「街のお母さん」というコンセプトの下、昔は一家のお母さんが行っていた作業を、代わってコンビニエンスストアが「安心感」・「便利さ」・「満足感」をもってサービスを提供する「FA(ファースト・エイド)24」に代表されています。



FA24の各種サービス


 「24時間いつでもクリーニングの依頼、引取りが可能」であったり、布団丸洗いや、 10分1,000円のヘアーカットやクイックマッサージであったり、今年8月から始まった「ネットランドリー」など、「日常生活の中におけるワン・シーンを実際に置き換え、実現して行くことでビジネスにして行く」という考え方から成り立っています。
  ネットランドリーに関しては、コンビニ店舗でのサービス提供を進めていますが(2001年10月末 29店舗)、同時に各種施設に対するサービスを展開していく方針です。 これは、学校の寮や介護事業者を対象とするものです。例えば介護においては1拠点あたり200―300人の老人を介護している事業者を対象に実験中ですが、手ごたえはかなりあるとのことです。
  まず認知度向上のために、プロモーション用のビデオを施設、事業者に送付し、その後マスマーケットでの認知度を上げていく考えです。施設での売上をマスの宣伝広告費に回す考えであり、マスのために新たな資金調達や投資を行なう考えはないそうです。

ネットランドリーサービス

 

新規事業の取り組み状況(2001年10月末)

クリーニング取次ぎ
29店舗
ネットランドリー
29店舗
ふとん丸洗い
全店
引越し取次ぎ
全店舗
クイックマッサージ
7店舗
1000円ヘアーカット
6店舗
靴修理取次ぎ
29店舗
音楽配信端末設置
8店舗

中期的には売上高の10%まで持っていきたいと考えています。

 

新しいコンビニ業界の枠組み作りに向けて

  今回の取材中、泉澤社長が繰り返し強調していたのは「コンビニ業界は従来のビジネスモデルでは通用しなくなる時が来る」ということです。
  「いままで順調に成長してきた小売業界の中で、デパート、スーパーマーケットは昨今の状況から明らかなようにビジネスモデルの耐用年数が到来。コンビニ業界はまだ表面的にはそうとはいえないものの、遅かれ早かれ今のやり方では世の中に通用しない時がくるだろう」と、社長は考えています。
  これは、コンビニ業界におけるFC制度に対する社長の大いなる疑問がベースにあります。 「本部=黒字、加盟店=赤字」という図式が当然のようになっているコンビニ業界は、いずれ変革を余儀なくされ、それに代わって「チェーン全体の利益を考える新しい枠組み、あり方を構築すること」を泉澤社長は目指しているのです。
  FC制度の先進国である米国では、法律によって本部に対する加盟店の情報開示請求権は厳格に守られ、経営に関わる重要な情報を事細かに知ることができるそうです。ただその反面、経営結果に対する自己責任も強く求められ、加盟店の経営者は本部に頼ることは許されません。日本でも同様な法律が、早晩制定されると見ています。
  また、本部の加盟店に対する指導に関して、公正取引委員会から排除勧告も出るようになってきたということも合わせ、旧来のコンビニエンス業界を支えてきた枠組みが大きく変化する時もそう遠くないと見ています。

 

直営体制へのこだわり

  このように、大きな変革が予想されるコンビニ業界において、同社はそれに対応する戦略の一つとして、「直営体制へのこだわり」を挙げています。
  10月末現在の85店舗の内、約80%が直営店というのが同社の大きな特徴の一つです。
 加盟店が少ない理由としては、他のチェーンに比べ、3ヶ月という長期の研修期間後の適・不適認定など、ハードルが大変高く設定されていることもありますが、加盟店には必ず成功してもらうという同社の基本理念も理由の一つです。
  とおり本部と加盟店の不均衡はこのデフレの中で一段と強まっており、各店舗の売上を本部の収益に直結させるためには、「直営」という形がベストであると考えています。
 また、FA24を始めとする新事業、新サービスを展開していくにあたっても、容易に意識の統一を図るためには「直営」でなくてはならないのです。

 

訪問を終えて

  泉澤社長の発想、着眼点には毎度のことながら、本当に感服します。
  今回の取材でもここには書けませんでしたが「なるほど」と思わずうなってしまうビジネスアイデアを沢山聞かせていただきました。そして、それが全て決して突拍子もないことではなく、全て日常生活のワンシーンから生まれているということも「コンビニを超えた便利さを提供できる会社」を理念とする同社にとって大変重要なポイントです。
 しかし、この発想もただ単に面白いから考えてみる、やってみるということだけで出てきているのではありません。
 コンビニエンス業界は「労働集約型産業」。人材とサービスの質をより高いレベルでキープするには、「脱・労働集約型」を目指す必要があり、そのためには新規事業、新サービスを積極的に展開していかなければならないと考えているからで、これも新しい枠組み作りの一つのなのです。
 また、現在は東京9区・千葉10市とエリアを限定した展開となっていますが、より広いエリアを目指して、サンクス以外のチェーンとの話し合いを行なっており、将来的にはコンビニエンスストアのマルチブランド化も視野に入れています。ただ、前述のように「変革期のコンビニ業界」において、「新しい枠組み、あり方を構築すること」を目指している泉澤社長にとって、どこと組んでもいいということは決してなく、慎重に進めて行く意向です。
 コンビニ業界に対する主要な投資基準は「店舗数とその拡大スピード、エリアの広さとエリア拡大のスピードがどうか?」ということが一般的で、アナリスト、ファンドマネジャーも大半はその視点で見ています。その点からは同社の拡大テンポに物足りなさを感じている投資家も多いようですが、長期的に見た場合はどうでしょう?
 社長が予見するように、「コンビニ業界自体がビジネスモデルの変革を余儀なくされたとしたら?」「そごうやマイカルが全国にエリアを急拡大した結果は?」
 半年、1年の運用競争とは縁のない、長期投資が可能な個人投資家ならではの発想に立って考えてみてはいかがでしょう?