ブリッジレポート

(4849)エン・ジャパン 越智通勝社長
2月27日(水)

エン・ジャパンを訪問。越智通勝社長にお話を伺いました。

設立の経緯

エン・ジャパンの設立は2000年1月。それだけ見ると設立から公開まで1年余りということで、スピード公開が注目を集める一方、「若い企業で、経営基盤は?」という疑問も出てくるかと思いますので、設立の経緯を理解しておく必要があります。


越智通勝社長

越智社長は1980年に大手教育コンサルティング会社に入社して大企業に対し組織開発・教育研修の企画・提案業務に従事した後、1983年に求人広告の代理業を行う株式会社日本ブレーンセンターを設立。その後、教育・評価コンサルティングや総合的人事システムを開発するなど「採用」、「教育」、「評価」の実績を積み上げていきました。
そうした中、これからの求人媒体は紙からインターネットへ移り変わると考え、またネットによる単価低下の下では代理店業務は難しいと判断、「メーカー」機能を付加し、1995年に求人業界の先駆けとして求人求職サイト[en]Employment Netの運営を開始しました。
その後、内容に対する評価も高まり1999年には「Yahoo 転職サイト」からコンテンツ提供を依頼されるなど、順調に拡大していきました。


そして2000年1月に日本ブレーンセンターのデジタルメディア事業部を分離独立させ、[en]社会人の就職情報を継承させたエン・ジャパン株式会社が設立されたのです。
つまり、20年近く採用、人事に関するキャリア・実績を積み、既に紙媒体でやってきたことをネットに絞ってやり始めたということで、しっかりとした経営基盤を持っている会社なのです。

 

事業内容

同社の求人求職情報サービスは、

  • 100%インターネットによる提供
  • 社会人の転職のみ(新卒は無し)

というのが特徴です。
求人のための企画・提案を行った求人広告掲載企業からの広告掲載料が同社の売上です。
またキャリアエグゼクティブの場合は、採用成立の場合の成功報酬制をとっています。
2001年12月末の広告掲載社数は646社。登録ユーザー(求職者)は34万人です。

商品内容は以下のとおりです。

  1. 総合転職情報サイト:[en]社会人の就職情報
    掲載企業数約350社。掲載職種件数約1600。 掲載企業全社にわたり、1社1社独自の取材・撮影を行った「詳細な求人情報」を発信しています。
    キャリアマッチ検索といって、ユーザー(求職者)のキャリアと求人企業が求めるキャリアを自動的にマッチングさせるサービスを行っています。自分のスキル・キャリアがどのような企業に求められているかを把握し、キャリアを活かした転職を可能にします。現在ビジネスモデル特許を出願中です。
    売上高の73%を占めています。(2001年12月期。以下同じ)
  2. 紹介会社集合サイト:[en]転職コンサルタント
    全国の人材紹介会社約141社をデータベース化した日本最大の人材紹介会社集合サイトです。 ユーザーは各社の特徴と約13,000件の求人案件を横断的に検索できます。
    自分の履歴書・職務経歴書を匿名で公開し、コンサルタントからの打診を受けることができます。この匿名公開により転職活動に対するリスクの軽減や自分の強み・市場価値を知ることができます。
    また、求人サイトとして初めて「ユーザーからの評価」を導入しました。 ユーザーは自分と同じ立場にある転職者の、コンサルタントに対する5段階評価を知ることができ、自分に適した人材紹介会社やコンサルタントを選べます。
    売上に占める構成比は16%です。
  3. 派遣会社集合サイト:[en]派遣のお仕事情報
    仕事選びの利便性を実現する完全カスタマイズ機能を備えた派遣情報のポータルサイトです。
    勤務地、仕事内容、時給、勤務時間、期間などユーザーの希望就業条件に合致した求人情報のみが表示される「MYページ」や「仕事情報配信メール」機能を備えています。
    仕事情報の検索結果は、ユーザーの希望条件の「マッチ度順」に並べることができるので、自分の希望に合った仕事を見つけたいユーザーと、条件に合ったスタッフを確保したい派遣会社双方のより高いマッチングを図ることが可能です。
    売上高構成比は10%です。

この他に1000万円クラスの転職情報:[en]キャリアエグゼクティブを2000年12月にオープンさせました。(売上高構成比 1%)

 

急拡大が予想されるネット求人マーケット

「求人広告」、「人材派遣」、「人材紹介」、「人材教育」を中心とする人材マーケットは、経済産業省認定の新規成長15分野の一つに選定されており、2000年6.3兆円(推定)が2010年には12.6兆円まで成長すると予測されています。
このうち、同社がかかわる求人広告市場は約7000億円、その中で中途求人広告市場は約4000億円と推定されます。(いずれも2000年。新卒 1000億円、アルバイト2000億円)
また紙媒体市場が前年比約30%アップなのに対し、ネットによる求人広告市場は前年比約3倍とその急成長ぶりが目立ちます。
もちろん規模そのものが200億円以下ということもありますが、将来的には90%が「ネット」へ移行すると予想されており、その場合は4000億円×90%=3600億円という急成長が見込まれます。
求人広告の足元の環境は折からの不況から厳しく、広告件数は今年1月、2年8ヶ月ぶりに前年同月比2桁のマイナスとなっています(紙媒体)。中でも正社員は22%のマイナス。掲載社数もマイナスが数ヶ月続いています。これに対して同社の掲載社数は前年比170%近い伸びを見せています。現在ネット求人は同社とリクルートが2大大手で、この環境下で利益を出しているのもこの2社くらいと見られています。

 

競争力の源泉

同社の中核的な能力として以下の3点を上げることができます。

  1. 人事コンサルティングで培った採用課題に対する問題解決能力
  2. 企業の魅力を的確に表現することができるクリエイティブ能力
  3. 経験から蓄積されたネットに関する知識
繰り返しになりますが、20年近く採用、人事に関するキャリア・実績を積み、既に紙媒体でやってきたことを、他者に先駆けてネットに絞ってやり始めたということが同社の競争力の源泉になっているのです。

 

企業理念:人間成長

人間的成長ではなく『人間成長』です。
「ビジネスを自らの成長ステージと捉え「心技一体」のプロとして心物両面で豊かになること」と定義され、具体的な行動指針として、「一人一人が新しいサービスシステムを開発し続ける独自性」、「顧客から求められるものより、真に喜ばれるものは何かを考える顧客パートナー主義」、「最大の資産は人の成長」を掲げています。
こうした「人間成長」を支えるために、職場環境としては現場第一主義を徹底しておりCS(顧客満足)視点を浸透させるため、多くの社員を営業職からスタートさせています。また、「社長は教える立場ではなく教えてもらう立場。偉くも何ともない」というのが越智社長の考えです。自分の役割は、現場の社員から顧客や求職者が何を考えているのかを教えてもらい、その上で会社の方向性を判断するだけのことであり、会社で最も重要なのは現場で顧客・求職者に接している社員だと考えています。
また、人事評価システムも大変ユニークです。
昇格するには自らが立候補し全従業員の前で自分の実績、今後やりたいこと、何故立候補したかなどをプレゼンします。その後、本人にはわからない形で挙手をさせ、挙手しなかった人間に「何故挙手しなかったか」の理由を聞き、それらを判断材料に加えて昇格を決定するというものです。主体性と積極性が問われると同時に、日々の仕事ぶりの誠実さや裏表のない真面目さなどが要求されます。

 

サービスコンセプト:職縁

同社ではそれまでユーザー(求職者)が登録なしに自由に利用できたのを、2001年4月から登録制に切り替え、属性を登録したユーザーのみが利用することができるようにシステムを変えました。
これに踏み切るには越智社長も、応募者減少のリスクも考え悩んだそうですが、結果的には応募者は減少することなく大幅に増加しました。 これは同社がいかにユーザーからの支持が厚いかを示しています。
越智社長は「いい求職者を多く集めること」が結果的には掲載企業数を増加させることにつながると考えています。
サービスのコンセプトは「職縁」。人と仕事、人と企業を結びつけるのは不思議な力やめぐり合わせであり、仕事を大切にする人と「人間成長」を実現する仕事場との出会いを実現させ、世界の人々に今日もいい出会いがありますようにとの願いを込めてサービスを提供しています。(「エン・ジャパン」の「エン」は、「御縁、職縁」の「縁」からきています。) ですからその人にとって本当に転職が有利なのかどうかを重視し、「仕事は大切に。転職は慎重に」をモットーに、決して転職をあおるようなことはしません。また、前にも書いたように紹介会社集合サイト:[en]転職コンサルタントでは求人サイトでは初の「ユーザーによるコンサルタント評価」を導入するなど、掲載企業に迎合することなくユーザー重視のスタンスを徹底しています。
掲載企業の紹介ページを御覧になるとわかりますが、社内の様子の写真が必ず掲載されています。写真の掲載を拒否する企業は「社内も見せられない企業を紹介できない」との考えで、掲載を拒否するそうです。

 

今後の戦略

上にも書いたように、求人広告、中でも<中途採用>に関する市場はまだまだ大きな成長余力を持っています。同社では、その高い競争力を活かして、当面この分野を伸ばしていくだけでも充分と考えています。
市場全体3600億円のシェア10%を取り、経常利益率40%であれば「売上高 360億円、経常利益 140億円」という姿が見えてきます。
最も強い本業部分へ経営資源を集中していくことを基本戦略としています。

 

取材を終えて

「いかにユーザーに支持され、いい求職者を集めることができるか」がポイントという点が最も印象的でした。そこそこの商売をするなら広告掲載企業をある程度取ってくれば成り立つのでしょうが、それでは企業として本当の成長は果たせないということであり至極当然なことです。
しかしそれを実際に行うのは言うほどは簡単ではなく、ベースとしての企業理念「人間成長」と、それを実現する手段としてのサービスコンセプト「職縁」や同社の組織形態、人事制度が明確であるからこそ実現できているのでしょう。
越智社長は企業としての成長性、将来性を考える場合に、単なる損益を中心とした表面の数字だけではなく、企業にとって最も重要な資源である「ヒト」とそれを活かしていく「人事制度」、「組織」の重要性に目を向けるべきであることを繰り返し強調されました。
今後も、長年のノウハウを活用した新しい人事制度を取り入れていくそうで、その内容にも是非注目していきたいと思います。

 
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