ブリッジレポート
(1754)

ブリッジレポート:(1754)東新住建 vol.2

(1754)東新住建/ 深川 堅治社長
2003年3月10日(月)

東新住建をフォローアップ取材しました。深川社長にお話を伺いました。

 


深川 堅治社長

2003年6月期中間期概要

 
実績
対前年同期比
売上高
17,021百万円
+18.2%
営業利益
264百万円
+109.9%
経常利益
155百万円
前年同期
-41百万円
中間純利益
45百万円
前年同期
-181百万円

住宅業界は、賃貸住宅は低金利やペイオフ解禁を背景に比較的堅調に推移しましたが、持家、分譲は住宅取得意欲の停滞から減少傾向が続き、新設住宅着工戸数は、上半期としては19年ぶりの低水準となりました。
こうした中、同社は、中期経営計画「GO !GO !GO !ビジョン」達成に向けて、販売エリアの拡大ならびに新規事業の推進と新商品開発を行い、業容の拡大に積極的に取り組みました。

中間決算発表(2月20日)に先立ち、2月14日に業績の上方修正を行っています。

<修正要因>
売上高
  中部圏・首都圏ともに販売エリアの拡大に努めました。とりわけ、中部圏の分譲戸建が好調に推移しました。
経常利益
  売上高の増加のほか、以下の要因で上方修正となりました。
  商品の規格化の推進による工期短縮および購買価格の見直し等による売上総利益率の改善。
  経費の効率的な使用管理による販売費及び一般管理費の削減。
中間純利益
  当初予想していた投資有価証券評価損、ゴルフ会員権評価損等の特別損失の発生が軽微でした。 この結果、売上、利益ともに大幅な改善となりました。

<主な商品別動向>
賃貸住宅「ザ・借家」
新たな営業拠点として、首都圏では八王子営業所、つくば営業所、茨城営業所の3営業所を開設したほか、関西圏進出の足がかりとして滋賀県守山市に滋賀営業所を開設し、販売エリアの拡大を進めています。

平成15年1月1日付けで、首都圏ザ・借家事業部門を会社分割し、子会社東新ハイトスに承継しました。
首都圏ザ・借家事業部門は、賃貸住宅として同社が独自に開発した庭付き、駐車場付きの一・二階併用型連棟住宅「ザ・借家」の販売を行っています。
首都圏におけるザ・借家事業部門は平成11年3月に神奈川県厚木市に厚木営業所を開設して以来、その高品質・高収入・低家賃を実現する「ザ・借家」の商品性により、順調に販売棟数を伸ばし新規営業拠点の開設とともに、販売エリアを拡大してきました。
同社としては市場の大きい首都圏において、借家事業のさらなる事業展開を図り、より一層の経営の効率化と販売エリアの拡大を推進するなど、成長事業の早期育成を目的としています。

注文住宅
独自開発のB ・B ・D システムを装備した環境共生住宅「樹流」の蟹江展示場を新設し、展示場戦略の推進と集客活動を推進しました。


蟹江展示場

商品面では、分譲戸建を中心に、アメリカンタイプの「アーリーアメリカン」、南欧風イメージの「プロヴァンス」といった建物と外構・内装の一体的なコーディネートを図ったリニューアル化を推進しました。
また新規事業として、高級マンション感覚の都市型土地付き集合邸宅「デュープレックス」の開発・販売を行いました。
一方、生産面では、分譲マンションの自社施工体制の構築に取り組むほか、稲沢工場を中心に生産性向上に注力し、さらなる工期短縮、原価削減に取り組みました。
また、新しいチャレンジとして掲げたISO14001の認証取得については、環境マネジメント・システムの構築を強力に推進中です。

こうした営業活動のほか、グループを挙げて組織、制度、システムを見直し、経営効率の向上と経営体質の強化を図るとともに、生産性の向上と施工体制の充実に努めてきました。

<セグメント別動向>
1. 住宅建築請負事業

賃貸住宅では、戦略商品である「ザ・借家」が、首都圏での営業拠点の新設等による積極的な営業展開により、順調に推移しました。
一方、注文住宅においては、全国的な受注不振の中、強力に営業活動を行いましたが、営業費用を吸収するまでにはいたりませんでした。
その結果、住宅建築請負事業の売上高は2,646百万円(前年同期比-18.3 %)、営業損失は290百万円となりました。

2.分譲不動産販売事業
分譲戸建は、短期回転型HRB システムのもと、自社工場生産のパネル材を使用した規格型住宅を中心に、営業活動を積極的に展開し、好調に推移しました。一方、分譲マンションにおいては、物件の完成が下期に集中するため、上期での販売実績は微増にとどまりました。
その結果、分譲不動産販売事業の売上高は1,277百万円(前年同期比+31.0%)、営業利益は1,263百万円(前年同期比+39.3%)となりました。

3.兼業事業(不動産の賃貸管理および売買仲介、インテリア商品の販売等)
賃貸住宅の売上棟数が伸びたことにより、家賃収入が順調に伸び、兼業事業の売上高は1,667百万円(前年同期比+14.3%)、営業利益は68百万円(前年同期比+71.6%)となりました。


2003年6月期通期予想

 
予想
対前年同期比
売上高
43,877百万円
+19.5%
経常利益
1,420百万円
+17.8%
中間純利益
560百万円
+10.7%

住宅業界においては、低金利政策や住宅減税効果等、住宅取得の需要促進要因はあるものの景気の影響を強く受けることから、市場規模が若干の縮小傾向となる状況は否めず、同業他社との競争激化がさらに進むものと予測しています。
このような環境の中で、同社は、生産面における品質の向上と工期短縮による原価削減および顧客の求める品質・価格・サービスの提供を強力に進めていく方針です。
また同時に業務の効率化と経費削減にも積極的に取り組み、一層の経営体質の向上と収益の確保に取り組んでいきます。

 

環境への取り組み

同社は、「住まいを通じて社会に奉仕する」という考え方を基本理念としています。住宅を提供するだけでなく、環境に優しい住まいをつくること、そして環境に優しい企業となることを理念とし、環境保護についての考え方を今年1月1日に「環境方針」として掲げ、また事業の中にもその考え方を取り入れ、反映しています。

<環境方針>
1. 当社の住宅、製品及び事業活動において、環境影響を適正に評価し対策を実施する。
2. 技術的、経済的に可能な範囲で環境目的・目標を定めて環境マネジメントシステムの継続及び質的向上を図る。
3. 環境保全に関する法律や条令等を遵守し、当社の住宅、製品及び事業活動が及ぼす汚染を予防する。
4. 事業活動の効率化により消費される資源、エネルギー及び廃棄物の低減とリサイクルを推進する。
5. 環境教育、社内広報活動を実施し、全社員の環境基本方針の理解と環境に関する意識向上を図る。
6. 内部環境監査を実施し、自主管理による環境マネジメントシステムの維持向上に努める。

具体的には以下のような環境に対する取り組みを行っています。

*環境に優しい「木」の家を作っています
同社の家は全て木造住宅。樹木は木材に加工された後も二酸化炭素を吸収します。また木材は再生可能な資源。環境にも人にも優しい「木」を使っての家づくりを基本としています。

*環境共生住宅認定
注文住宅商品「樹流」 家の真ん中の大きな筒「B.B.D(Bio Breath Duct)が特徴の『樹流』。この大きな筒が「負圧」という自然の力を借りて家中の空気をきれいにしてくれます。究極のゼロエネルギー換気。環境共生住宅の認定も受けたオリジナルの商品です。

*間取りを自由に変えられる
長くすめるSI住宅 間取りを自由に変えることができるSI(スケルトンインフィル)住宅も展開しています。家族の人数やライフスタイルの変化に合わせて間取りを自由自在にレイアウト。建て替えないで長く住まうことができる夢の住まいです。

*オール電化住宅・太陽光発電を積極採用
火災や換気不良による事故の危険性がなく、一酸化炭素や窒素酸化物など有害物質が発生しないオール電化住宅。暮らしに必要な電力を太陽光発電でまかなう太陽光発電システム。環境に優しい住まいづくりのため、これらのシステムを積極採用しています。

*長く住むことのできる60年保証住宅
安心して長く住んでもらうための60年保証(注文住宅の場合。分譲住宅は20年保証)。確かな設計・施工、万全の品質管理と入居後の細やかなメンテナンスで長期の保証を実現しています。長く住んでもらうことで、改築の必要性が少なくなり、その結果廃棄物の減少につながります。

*自社工場での廃棄物削減への取り組み
木材はリサイクルできる貴重な資源です。自社工場の製造過程で発生する廃木材をそのまま捨てるのではなく、チップ材などに加工して2次利用するため、提携先企業へ提供しています。

*自然素材のみを使った地盤補強・安心造工法
安心造工法とは、環境に優しい砂利・砂・空気といった自然素材のみを使って地盤補強を行う工法です。このような環境対応型杭工法を取り入れるなど、建築過程においても環境への配慮を怠りません。

 

取材を終えて

住宅業界を取り巻く環境は決して良好ではないものの、顧客ニーズをしっかりと捉えて業績は堅調に推移しています。
また、成長商品である「ザ・借家」を首都圏においてよりスピードアップして展開していくために、会社分割を行うなど積極的な経営姿勢を見せています。
今後も、足元の状況とともに「ザ・借家」の広がりなどを注目していきたいと思います。