ブリッジレポート

(4955)アグロ カネショウ/櫛引 博敬社長
2003年3月6日(木)

2月21日、所沢にあるアグロカネショウの研究所、所沢工場を見学。
古内常務、渡部取締役研究開発本部長、野沢取締役製造本部長、IR担当の片山部長に案内していただきました。
また3月6日に行われた2002年12月期決算説明会に出席しました。


1.研究所&工場見学

まず会議室で、概要を伺いました。

<研究開発本部>
研究所には34名の研究員が在籍しています。ほぼ全員が最低でも大学院修士課程を修了しており、高いレベルのスタッフが集まっています。
このレポートで何度か触れていますが、同社は国内農薬マーケット自体の飛躍的な拡大が難しい中、自社による利益率の高い独自品の開発による利益成長を目指しています。



櫛引 博敬社長


古内常務、野沢取締役から話を伺う。
そうした独自の地歩、地位を確立・維持していくために大変重要な役割を担っているのがこの研究所です。
メインは化学合成に基づく研究で、最近注力中の生物農薬の試験も行っています。

農薬として販売するためには厳しい環境基準をクリアする必要があり、開発スタートから上市まで約8年ほどかかります。
現在カネマイトフロアブルが同社の中心的な大型商品ですが、継続的に新製品を送り出していくためには、常に次を見据えて今から手を打っていかなければいけないわけです。
現在は平成18−19年上市予定の線虫剤、ダニ剤の開発の最中ですが、この後のターゲットとして、広範囲な効用を持つ殺虫剤、ニッチ分野に適応する殺菌剤を考えており、その研究も既にスタートしています。

<製造本部>
製造本部では「品質マネジメントシステム」の実行を主眼におき、生産計画に基づいた資材などの購入、実際の生産、品質検査、出荷を行っています。
同社は全国で3ヶ所の工場を持っています。所沢は昭和31年にスタートした同社発祥の地でもあります。
中心の工場は福島工場で、主力商品カネマイトフロアブルなどを製造しており、所沢工場は一部薬剤のビンへの充填や、箱詰め、包装、出荷などが主たる作業となっています。
同社の取り扱っている農薬は大変幅広く、70−80種類の農薬を、様々な容量、容器に入れ約150品目を製品として送り出しています。
現在全国の工場の稼働率は約70%で、稼働率向上のために外部からの生産委託も受け始めているということです。
また、人件費の変動費化やカネマイトフロアブルが海外でも順次認可され拡販が期待される中で、海外生産も検討中とのことでした。

続いて、研究所の中を案内していただきました。
研究所の敷地内には、研究、開発のための様々な施設が設けられています。


稲の生育状況を観察

 実験

  • 害虫となるカメムシ、ヨコバイ、アズキゾウムシなど20種類の虫を常に絶やさないように飼育しています。また菌も常時10種類を培養、保存しています。これらはいうまでもなく農薬の効果、効能を調べるための材料です。
  • これらの害虫、菌を付着させた作物(稲、小麦、キュウリ、トマト、大麦など)が時間経過と共にどう変化するかを観察するとともに、様々に条件(気温、湿度、農薬の使用量など)を変えてどのような効果が現れるかを観察します。
 開発
化学合成によって新たな農薬を開発する他に、既にある農薬を組み合わせるなどして新しい効能を有する農薬を開発しています。
また、「農家がより使いやすいように」という視点を重視しており、均質にかつ素早く広がるようにする等、より効果的な農薬の散布方法やそのための技術(材質、形状など)も工夫を重ねています。
同社の特徴の一つは最終顧客である農家との密接なコミュニケーションであり、実際に使用する農家の声をフィードバックして開発のヒントとしています。

化学合成による農薬の開発

<農薬に対する正しい理解について>
見学の後、古内常務、渡部取締役、片山部長に再度お話を伺いました。
渡部取締役は農学博士でもいらっしゃるのですが、現在の日本における農薬の位置づけ、国民の認識、マスコミの理解度などに関し、様々な問題点を指摘されました。
日本における農薬の環境基準は近年非常に厳しくなっており、人が一生の中で摂取しても問題ない量を決めた上で、様々な動物による実験を経て人間に適用するそうで、その測定単位は0.01PPM(1PPMは百万分の一)で、これは東京とロンドンの間の1メートルを分析するのと同じくらいの小ささであり、いかに厳密な基準をクリアしなければならないかということを示しています。

一方で、日本の食糧自給率は先進国で最低となっており、生産者である農家が経済的にも安定して農作物を生産・供給していくためには農薬の使用は欠かすことのできないものとなっていますが、にもかかわらず、依然として「農薬=危険」という認識が大勢を占めています。また、最近は「自然食品」などとして自然にある作物から直接抽出した商品が人気を集めていますが、これらの中には毒性試験を経ていないなど、その安全性には何ら根拠がないものも多いということです。
こうした実状を正確に国民が認識してもらいたいというのが、同社の強い願いとなっています。

 

決算説明会に出席

3月6日に開催された2002年12月期決算説明会に出席しました。

<日本の農薬市場の概要&日本の農業の概要>
日本の農薬出荷額は2002年農業年度(10月−翌年9月)で3,353億円とここ数年を見ると緩やかに減少してきています。その中でも水稲用の減少幅が大きく、同社が主に取り扱っている果樹・野菜はほぼ横這いとなっています。
こうした中、農薬会社の合併、統合、廃業が内外で進んでおり、大手によるシェアが一段と上昇しています。

日本の農作物の生産は、輸入野菜の影響などから軒並み減少しています。

1992年からの増減率
2002年度(ha)
変化率
穀物類・イモ類
2,104,530
−17.9%
主要果樹
243,610
−15.9%
主要野菜
355,579
−14.8%
その他の作物
99,524
−36.4%

<2002年12月期実績>
実績金額
対前期比
売上高
7,792百万円
+0.8%
売上総利益
3,234百万円
+0.2%
経常利益
150百万円
−46.0%
当期純利益
41百万円
−35.7%

害虫防除剤のカネマイトフロアブル、アルバリン、除草剤のアークエースは伸びましたが、病害虫防除剤のバスアミド微粒剤が価格競争に巻き込まれ減少しました。
また販売管理費の中の委託試験費(主として大規模な施設、人員が必要な毒性試験を海外に委託しています)が、798百万円 前期比+38.5%と増加しており、営業利益以下を押し下げています。ただ、これは開発中の新剤AKD−3088にかかるもので今がピークにかかっているということです。

<2003年12月期予想>

予想金額
対前期比
売上高
8,100百万円
+4.0%
売上総利益
3,300百万円
+2.0%
経常利益
100百万円
−33.3%
当期純利益
10百万円
−75.6%

カネマイトフロアブルが、地方によっては1年おきに使用せよという自治体の指導もあり微減を見込んでいますが、バスアミドの回復、上市2年目となるアルバリンの更なる拡販を目指しています。
委託試験費は678百万円と減少するものの、引き続き研究開発に力を入れるため高水準の研究開発費により利益は減少が見込まれます。

研究開発費は2002年12月期の1,251百万円がピークと考えており、今期1,204百万円、来期1,100百万円を見込んでいます。
研究開発負担の減少に伴い、ピーク8%から1%まで低下した営業利益率も来期は3%台に回復するものと見ています。

配当は引き続き一株あたり20円を予定しています。

<無登録農薬問題>
櫛引社長が今回の説明会でトピックスとして説明されたのが、無登録農薬問題です。

これは、昨年7月に山形県で無登録農薬を販売していた2業者が農薬取締法違反などで逮捕され8月には同じく東京の業者が逮捕されたものです。
その後の調べで、44都道府県で約270の業者が約4,000戸の農家に10種類の無登録農薬を販売したことが判明しました。

中国産野菜問題への関心が強まっている中でのこの事件によって、消費者の国内農産物への信頼は著しく損なわれました。
スーパー等小売業は、果樹・野菜等の生産者に、無登録農薬を使用していないという確認書を要求するなど調達方法を見直すこととなりました。
またこれを機に、農薬取締法が一部改正されこの3月10日から施行され、無登録農薬の使用は厳重に規制されることとなりました。
これによって、登録農薬の市場拡大が期待されます。

<今後の取組み>
以下の重点施策を進めていきます。

トライアングル作戦
正しい農薬の使い方を理解してもらった上での販売促進を目指して農家、JA、販売店、会員店との密な連携、情報交換を全国8支店、76名のTCAを軸に行っていきます。 人対人のコミュニケーションによる信頼関係を強化していきます。

海外展開
カネマイトフロアブルは現在、韓国、台湾で既に販売が開始されています。
今後は平成15年南米、平成16年アメリカ、平成17−18年ヨーロッパでの認可が予定されています。

適用拡大
バスアミド、カネマイト、アルバリンなど主力製品の適用拡大が多くの作物において認可予定であり、売上拡大が期待されます。

M&A
期日2003年4月1日で三菱ガス化学が大株主となっている菱陽商事から、植物調節剤の製造販売に関する営業を譲受けました。植物調節剤部門の更なる充実が目的です。

有力新製品の上市見通し
*新規大型線虫剤「AKD−3088粒剤」
カネマイトに次ぐ自社開発の大型剤で、10億円の開発費をかけ平成16年申請、平成17年登録取得の予定です。
年商20億円を見込んでいます。

*新タイプダニ剤「AKD−1102」
抵抗性がつきにくく、商品寿命が長い果樹・園芸用の新ダニ剤です。
平成18年申請、平成19年ごろの登録取得を見込んでいます。
これも年商20億円を見込んでいます。

どちらも順調に開発は進んでいるということです。

生物農薬対応
前回のレポートでも紹介した、生物農薬の開発、輸出入を手掛ける「セルティス・ジャパン(同社50%、三井物産50%出資)」は2003年1月から本格的に営業を開始しました。
園芸分野における生物農薬の市場規模は、現在のところ国内30億円(園芸農薬の2%)、全世界500億円(園芸農薬の5%)ですが、将来は国内150億円(同10%)、全世界1,500億円(同15%)と急拡大すると予想されています。

 

取材を終えて

化学会社の合従連衡の中、日本企業による自社開発はますます少なくなっているそうです。
確かに時間も金もかかりリスクがあるものの、農家のニーズに応え持続的成長を実現していくためにも、自社による新剤開発を進めていきたいと考えています。
また同時に3.5兆円といわれる世界市場にも目を向けていく方針です。 カネマイトやAKD−3088(商品名は近々決定予定)、これに次ぐ大型商品で輸出比率を現在の2%から10%まで拡大させることを目標としています。

既に何度かお話を伺っている櫛引社長、古内常務に加え、研究開発の先頭に立っていらっしゃる渡部取締役のお話を伺えたことで、自社開発に注力する同社の経営方針、ビジョンが今まで以上によく理解できました。
また農薬を取り巻く誤った認識など問題点もより深く確認することができました。
足元の業績は厳しいものの、新剤や生物農薬の開発進捗状況などを含めて今後も引き続きフォローしていきたいと思います。

 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。
Copyright(C) 2017 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

« ブリッジレポート:(7631)マクニカ vol.3 | ブリッジレポート:(2304)セントラルサービスシステム vol.2»

コメント

下記規定に同意の上、コメントしてください



※ 公開されません


保存しますか?


ブリッジレポート(バックナンバー)
アンケート
アラートメール登録
メールアドレス
パスワード
CLOSE