ブリッジレポート
(1754)

ブリッジレポート:(1754)東新住建 vol.4

(1754)東新住建/ 深川 堅治社長
2003年9月30日(火)

東新住建をフォローアップ取材しました。
深川社長、瀬川執行役員にお話を伺いました。

 


深川 堅治社長

2003年6月期決算概要

<連結>
 
(単位:百万円)
 
実績
対前年比
売上高
43,418
+18.2%
営業利益
1,932
+28.6%
経常利益
1,629
+35.1%
中間純利益
628
+24.2%

全国新設住宅着工は115.2万戸と3年連続で前期を下回る状況でしたが、同社は順調に売上、利益を成長させています。
中期経営計画「GO! GO! GO! ビジョン」に基づき、業容拡大を確実なものにするために以下のような施策を進めていきました。

  • 賃貸住宅「ザ・借家」の新規営業拠点として、首都圏に「つくば」、「八王子」、「茨城」、中部圏に「滋賀営業所」を開設しました。
  • 今年1月には、首都圏ザ・借家事業部門を分社化し、100%子会社の「東新ハイトス」に事業移管しました。
  • 静岡県下初の分譲戸建の営業拠点「浜松支店」を開設
  • 前回のレポートで紹介した、独自開発の自然通気システム(B.B.Dシステム)を装備した環境共生住宅「樹流」の展示場を新設しました。
  • 高級マンション感覚の都市型集合独立住宅「デュープレックス」、耐久性・可変性・デザイン性を追求した「CUBIC SI(スケルトン・インフィル)」を開発、販売開始しました。
  • 生産面については、分譲マンションの自社施工体制に取り組むほか、生産部門を中心に生産性の向上に努め、工期短縮、原価削減を図りました。
セグメント別動向
1.住宅建築請負事業
売上高
7,780百万円
(前期比 -0.7%)
賃貸住宅では、「ザ・借家」にらせん階段とハーフコラムを常設した「ザ・借家 NEXUS」を新規開発し、首都圏、中部圏で積極的に販売活動を行いました。 注文住宅では、「樹流」、「新an樹」、高耐久「クラスダグラス」の販売を展示場を拠点に進めました。

2.分譲不動産販売事業
売上高
32,143百万円
(前期比 +24.4%)
短期回転型分譲戸建システム(HRB システム)による、低コスト・高品質を実現した規格型住宅「スーパーランド」を中心に、東海三県、首都圏での販売を積極的に展開しました。他にも、大型開発物件を早期に完売しました。

3.兼業事業(不動産の賃貸管理、売買仲介、インテリア商品の販売など)
売上高
3,494百万円
(前期比 +14.3%)
一括借上制度の利用件数が増加しました。「ザ・借家」の期末入居率は95%と高水準を維持しています。

2004年6月期決算見通し

<連結>
(単位:百万円)
 
実績
対前年比
売上高
55,714
+28.3%
経常利益
1,969
+20.9%
当期純利益
865
+37.7%

今期も引き続き好調な業績の推移を予想しています。
中期経営計画「GO! GO! GO! ビジョン」の最終年度にあたる今期は、売上高500億円突破を目指して、引き続きエリア拡大に取り組みながら新商品の開発・供給を行い、また強固な企業体質構築、合理化・効率化を推進して業績向上と経営基盤の強化に努めていきます。


中期ビジョン「グッドカンパニーからストロングカンパニーへ」

今期売上高500億円を突破した後、平成20年6月には「売上高  1,000億円、経常利益 50億円」を目指しています。 この目標を実現するためのポイントは以下のとおりです。

巨大なマーケット
平成15年度の全国住宅投資額は約18兆円。住宅着工件数で見ると、首都圏、中部圏は合わせてシェア53%で、約10兆円の巨大マーケットと推測されます。

シェア拡大戦略
この巨大なマーケットを背景に一段のシェアアップを図ることで、1000億円の売上高を実現する考えです。
この目標を実現するため、深川社長は新たに「ほしいものを、つくります」という経営理念を掲げました。これは、株主、顧客、取引先など全てのステークホルダー(利害関係者)に満足を与えるという想いを表現したもので、深川社長が6ヶ月かかって練り上げたものです。この経営理念をベースに、以下のような具体策をもってシェアアップを進めていきます。

  1. マーケット戦略:エリア戦略
  2. 事業戦略:ザ・借家
  3. 新商品戦略:デュープレックス
  4. 分譲戦略:HRBシステム
  5. 開発戦略:大型プロジェクト
  6. 生産戦略:パネル工場

1.エリア拡大戦略
従来の基盤である中部圏から首都圏への進出をより一段と進めます。 首都圏、中部圏に経営資源を集中し、日本一のボリュームゾーンでのシェア拡大を目指します。
8月11日には名古屋の国際センタービルに名古屋本社を開設。高鮮度な情報収集、低コストでの生産体制の確立、SPCを利用した資金調達の実施、顧客ニーズ調査に基づく新商品の開発、優秀な人材の確保を目的としています。
また、7月22日には新宿NSビルに東京本社を開設。こちらも、情報収集力の向上、分譲戸建事業の千葉・埼玉への展開、賃貸住宅の首都圏シェアアップを図るのが目的です。 加えて、毎年営業所を1、2ヶ所増設していく予定です。

2.ザ・借家
土地オーナー、入居者、同社の三方にとってメリットの大きい、庭・駐車場付1、2階併用型のテラスハウスで、高い入居率となっています。
平成6年以降の累積実績は1,116棟、4,188戸となっています。
首都圏での売上高も、前々期2,083百万円(前年比 +111.5%)、前期2,516百万円(同 +20.8%)、今期見通し3,672百万円(同 +45.9%)と大幅な伸びを見せており、一段の拡大を目指します。

3.新商品「デュープレックス」
2戸一棟建の土地付マンションで、地下鉄より徒歩10分圏内の交通の至便な場所に建設します。都心回帰志向を実現する新しい住まいの提案として、同社の新しいビジネスモデルが生み出した「究極の都市型マンション」と位置付けています。
2戸一棟のため、通常のマンションと違い資産として土地を所有できる点も「デュープレックス」の特徴です。名古屋市内で分譲中で、大変評価が高いということです。

4.HRBシステム
ハイスピードリターンズビルドの略で、分譲戸建の用地取得から販売・資金回収を一貫した体制で行う「短期回転型分譲戸建システム」を駆使して、分譲住宅を多数販売していきます。
東海3県では5年連続して着工戸数No.1でシェア9.3%となっていますが、この実績を首都圏へも拡大していきます。

5.大型プロジェクト
前期に、岐阜県大垣市で戸建56戸、マンション2棟40戸の「ヒューマンネイチャー大垣緑園」、名古屋市近郊で戸建39戸の「オアシス津島」を分譲しました。
これらは、同社のこれまでのノウハウを結集して取り組んだ大型開発物件であり、早期完売となりました。この成功ノウハウを基にして、今後も愛知県、岐阜県で40戸以上の大型案件を計画しています。

6.パネル工場
公開時の資金で建設したパネル工場が品質、コスト面で寄与しています。深川社長によればこの工場は損益分岐点の低い「21世紀型の重くない工場」です。
生産性の高い自社工場からのパネルをHRB分譲、ザ・借家両方に供給することが可能です。 また高品質、高生産性を発揮する同社独自のソフト&ノウハウに強い自信を持っています。

以上のような施策によって、東海3県ではシェア15%を目指し、このノウハウ、実力とより改良したシステムによって、分譲戸建住宅着工戸数58,579棟(平成14年度)という巨大な首都圏マーケットでシェアを獲得していく考えです。
ちなみに、平成14年度の首都圏分譲最大手A社の着工戸数は3,400棟で、シェア5.8%となっています。

以上の6つの戦略を推進し、従来のグッドカンパニーからストロングカンパニーへ一段の成長を遂げる中で、平成20年6月には、「東証一部上場、売上高1,000億円」を実現させるというのが、同社の中期ビジョンです。

 

株主への取り組み

1.記念配当の実施
株主への利益還元を優先し、1株当たり15円の普通配当に加え、ジャスダック上場5周年を記念して、5円の記念配当を実施しました。

2.売買単位の変更
多くの個人投資家が投資しやすいように、2003年11月4日から、売買単位を1000株から100株に引き下げます。

3.株主優待制度の新設
長期安定株主作りをめざし、一単元以上保有の株主に対し、株主優待制度を新設。「おこめ券」を進呈します。2004年6月末日から実施します。

 

取材を終えて

住宅産業を取り巻く環境は決して良好とはいえませんが、同社の場合は商品開発力と効率的な生産体制などで好調な業績となっています。
今期売上高500億円突破、5年後1000億円を目指し、東京本社の開設など、従来から進めていた首都圏の進出が、一段と具体化しつつある同社を引き続きフォローしていきたいと思います。