ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

スタンダード

ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.7

(4767)テー・オー・ダブリュー 川村 治社長
2005年2月10日(木)

 

テー・オー・ダブリューの中間決算説明会に出席しました。
川村社長を始めとした経営陣が決算概要、経営の現状と課題について説明されました。


川村 治社長

 

2005年3月期中間決算概要
<個別>
(単位:100万円)
 
実績
前年同期比
売上高
5,772
119.9%
営業利益
464
116.6%
経常利益
476
114.4%
当期純利益
274
112.6%
<連結>
(単位:100万円)
 
実績
前年同期比
売上高
5,840
120.9%
営業利益
492
120.8%
経常利益
487
121.6%
当期純利益
273
122.2%

まず川村社長が中間決算の概要及び特色・傾向について説明されました。

<中間決算概要>
ブロードバンドの普及に伴い新商品・新サービスが続く通信業界、薄型テレビ、DVDレコーダー、デジタルビデオカメラなどの需要が好調な家電業界等でキャンペーンが活発化するなど、イベント業界を取り巻く環境は回復基調にあります。また、景況感の好転や顧客企業側の業績回復もあり、イベント直前のキャンセルや規模の縮小等も減少しています。

こうした中、同社の業績も回復基調にあります。増収に大きく寄与したのは浜名湖花博及びさいたま国体関連ですが、これを除いても約6%(個別ベース、以下同じ)の増収となり、売上高の減少に底打ち感が出てきました。利益面では、大型案件の収益性が低く、売上粗利益率が1.9ポイント低下しましたが、販管費の未消費等があり、営業利益率の低下が0.2ポイントにとどまりました。これにより営業利益以下の各利益段階で20%を超える高い利益成長を実現しました。

<中間決算の特色・傾向>
この中間決算では、従来弱かった化粧品・トイレタリーで営業強化の成果が現れてきており、大手化粧品メーカー、介護用品メーカー等の取引が拡大しました。
一方、課題も残りました。一つは、若手社員の育成・強化です。受注した案件の規模別では、小型案件と大型案件が前年同期比で増加する一方、中型案件が減少しました。これは「中型案件で中心となるべき若手社員の力不足(代理店からの信頼不足)」と同社では分析しています。と言うのも、受注案件の規模は代理店からの信頼度を映す鏡であり、社員の営業力を測る尺度ともなります。小型案件で実績を積んだ若手社員が、中型案件の受注を伸ばし、更に大型案件の受注能力を付けていくことが会社全体の成長に不可欠です。しかし、中間決算の実績を見る限りでは、若手社員が順調に営業力をつけているとは言えません。
同社は以前から若手社員の育成・強化の必要性は認識しており、社員教育に力を入れてきましたが、未だ途上にあると言えます。
二つ目は、提案営業の推進不足です。提案営業の推進も課題として取り組んできたことですが、今中間期は、競合案件が増加し、同社が企画・提案した案件の受注が減少しました。この件についても、若手社員の育成・強化と関連した問題です。
ただ、その一方で企画した案件の勝率(成約に至った確率)は、ほぼ目標とする3割に達しました。


2005年3月期  予想

<個別>
(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
11,184
116.5%

営業利益

824
109.9%
経常利益
833
109.5%
当期純利益
489
103.2%
<連結>
(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
11,319
117.4%
経常利益
845
110.3%
当期純利益
489
104.8%

案件は豊富です。中間決算発表前日(2月8日)の時点で、"受注済みだが規模(金額)や実施時期に不確定要素のある案件"や"80%以上の確度で受注できそうな案件"を含めると、既に90億円弱に達しています。このほか、企画書を提出し、現在提案中の案件が31億円弱(前年同期比67.5%増)あります。経験則から、企画書を提出した案件のうち1/3程度が受注に至っていることを考えると、上記31億円のうち10億円程度は受注できそうです。つまり、100億円程度の受注残を抱えているようなものです。イベント直前のキャンセルや規模縮小等が減少していることもあり、通期業績の下振れ懸念は少ないと思われます。


今後の対応と施策

草柳専務、秋元専務、真木副社長がそれぞれ各戦略を具体的に説明されました。

<SP市場開拓に向けた営業の強化・拡大>
同社はイベント制作専業として国内最大手です。このため、イベントに関連したSP(*)では既に高いシェアを有していますが、より市場の大きいイベントを伴わないSPについては依然として受注拡大の余地が大きいと判断しています。 このため、①SP制作のインフラ整備を進め、制作面から受注能力を高めると共に、②キャンペーン事務局の機能強化により差別化を進めています。また、③同社の直接の発注先である広告代理店別に区分されていた第1から第3までの営業本部の有機的な連携を強化するため、SP戦略本部を設置して営業拡大に向けた体制の整備を行いました。

(*)SP:sales promotion(セールスプロモーション)の略。展示会・店頭での実演や見本配布などを通じて、消費者の購買欲を刺激し、販売業者を助ける活動(三省堂提供「デイリー 新語辞典」より)。

(1)SP制作のインフラ整備
具体的には、①データベースの充実、②専門会社からの専任担当者の受け入れ、③金融機関向けのプレミアムの開発で実績のある株式会社KANKOとの業務提携、④SP制作経験者の採用です。

(2)キャンペーン事務局の機能強化
株式会社インテージとの共同開発によるキャンペーンデータマネージメントシステム「TICCS」を稼動させ、顧客対応、応募状況確認及びデータ分析等のシステム化を図りました。更に、物流・在庫管理システムや、倉庫・人材を自前で確保するTOWフルフィルメントシステムの導入により倉庫管理業務と「TICCS」とを連動させ、事務局による一括管理の体制を整えました。また、認証制度ISMSも取得し、4月より施行の個人情報保護法案への対応も済ませました。

<原価低減>
今中間期は、売上粗利益率が1.9ポイント低下しました。大型案件の収益性が低くかったことが直接的な原因ですが、同社では「若手社員の成長遅れにより全社的な収益力の底上げがなされていないことが根本的な問題である」と考えています。このため、社員教育の強化により、若手社員の意識向上を図ると共に、見積もり制作をはじめとした"ウリ"の技術向上及び独自の購入システムの構築による"カイ"の技術向上に取り組んでいます。また、副社長をチーフとしたコストマネジメントチームによるチェック機能の強化にも取り組んでいます。

<ネットワークの構築と強化>
同社は以前から様々なネットワーク構築に注力してきました。演出・運営に関する提携や九州地区における提携等のほか、プレミアムやキャンペーン等でのSPテクニカルネットワーク、あるいは女性のみの専門チームを組織化して女性向け商品の販促キャンペーンの企画立案から運営実施までを一貫して請負う女性ネットワーク、更には海外におけるイベント開催ニーズに応えるための海外ネットワーク等です。今後も業務提携などを含めたネットワーク構築と拡大を進めていく考えです。

<教育・研修の充実>
新入社員を対象に、より実践的なイベント制作力の底上げを目指した「AD基礎研修」、「OJT研修」などが成果を上げている一方で、2年目以降の社員を対象にSP制作専門パートの育成・強化を目指した「プロモーション研修」、「SP制作研修」が十分な成果を上げていると言えません。
このため、これら研修については出欠をポイント化しており、受講者本人はもとより、チーム長の人事考課にも反映させるといった厳しい対応がとられています。


取材を終えて
事業環境は回復基調にあります。同社はこのチャンスを生かし、イベントを核とした総合セールスプロモーションカンパニーとして一段の飛躍を図る考えです。ただ、そのためには、上記のようにSP市場開拓に向けた営業の強化・拡大、原価低減、ネットワークの構築と強化が必要との認識です。そして、これらの課題を克服するために、何よりも必要なことが若手社員のスキルアップです。 上記の施策について、進捗状況を引き続きフォローして行きたいと思います。

http://www.tow.co.jp/