ブリッジレポート
(1754)

ブリッジレポート:(1754)東新住建 vol.8

(1754)東新住建/ 深川 堅治社長
2005年2月17日(木)


深川 堅治社長

東新住建の中間決算説明会に出席しました。
深川社長、飯野常務取締役が決算概要、中期計画について説明されました。

 

2005年6月期中間決算概要
<連結>
(単位:100万円)
 
実績
前年同期比
計画
売上高
29,018
119.2%
26,970
営業利益
-177
-
-540
経常利益
-459
-
-770
当期純利益
-422
-
-800

事業環境
新設住宅着工戸数は比較的堅調に推移しましたが、地盤である中部地区では、中部国際空港(2月17日オープン)や愛知万博(3月25日から開催)といった大型工事が進行していたため、人手や資材の単価の上昇が見られました。また、注文住宅の販売不振から注文住宅メーカーが分譲事業を強化したことで仕入れ競争が激化、用地の仕入れ価格も上昇しました。

計画を上回った中間決算
こうした中、同社はコスト上昇を吸収すべく、高付加価値新商品の投入や人気エリアへのシフト等で販売価格の引き上げを図る一方、人気商品の規格化、工期短縮、自社工場でのノウハウ蓄積や稼働率の向上などに努めました。
この結果、主力の分譲不動産販売をけん引役に売上高は伸びましたが、昨年秋の天候不順等による工事の遅れが原価削減の障害となった(原価率3.3ポイント悪化)ことに加え、営業人員の採用や首都圏での営業拠点(千葉営業所)開設等の先行投資負担から利益面では厳しい状況が続きました。
営業損益以下の各段階で損失計上となりましたが、慎重な販売計画であった事と販管費の圧縮が計画以上に進んだことで売上高、損益共に当初の計画を上回りました。

<セグメント別の状況>
事業セグメント別売上高・営業利益
(単位:100万円)
 
実績
前年同期比
住宅建築請負
4,357
135.1%
分譲不動産販売
22,328
116.2%
兼業事業
2,332
121.8%
売上高
29,018
119.2%
 
住宅建築請負
-158
-
分譲不動産販売
1,339
77.8%
兼業事業
11
-
消去
-1,369
-
営業利益
-177
-

住宅建築請負事業
(賃貸住宅・注文住宅の設計、施工及び請負)

賃貸住宅では、庭・駐車場付の1、2階併用(メゾネット)型で高級感を前面に出した新商品「ザ・借家 High Nexus(ハイ・ネクサス)」の販売を強化すると共に、千葉営業所の開設など販売拠点の拡充を進めました。
また、注文住宅では、「樹流」、「新an 樹」、「クラスダグラス」といったオリジナルラインナップの改良に努めると共に、単独展示場の出展を進めました。
注文住宅は、当社に限らず、業界全体が苦戦しています。加えて、拠点新設などの先行投資負担から営業損失の計上を余儀なくされました。

分譲不動産販売事業
(分譲戸建、分譲マンション、定期借地権付住宅販売)

町田(東京都町田市)周辺での土地勘が付いてきたことから営業エリアを南へ拡大、ブランド力があり需要の大きい横浜(神奈川県横浜市)での営業を強化しています。首都圏での売上高は順調に拡大し、計画を7%弱上回りました。一方、中部圏では、年収が高く雇用も安定している名古屋市内及び三河地区での営業を強化しました。加えて、一戸建て感覚のデザインマンション「デュープ」を改良し、名古屋市内での販売を強化しました。ただ、中部地区でシェア確保のため、収益性に目を瞑り仕入れを行った土地等もあり、営業減益となりました。

兼業事業
(不動産の賃貸管理及び売買仲介、一括借上システムによる賃貸事業、インテリア商品の販売等)

一括借上契約による家賃収入が増加、営業損益が黒字化しました。


005年6月期  計画
<連結>
(単位:100万円)
 
計画
前期比
売上高
67,260
114.1%
営業利益
2,860
111.4%
経常利益
2,300
114.4%
当期純利益
1,105
111.7%

例年、年度末の3月や同社の決算期末である6月に売上が集中する傾向があること、また、既に今期計画の前提となる用地の取得も済ませてあること等から、現時点では通期計画の達成に不安はないようです。

下期の施策
通期での目標は、(1)中部圏分譲7年連続シェアNo.1、(2)首都圏売上高100億円、及び(3)「ザ・借家」売上100億円、の3点です。

(1)中部圏分譲7年連続シェアNo.1
前期13.7%であった中部圏での分譲シェアを、今期は15%に引き上げる考えです。用地の仕入れ競争は激化していますが、既に計画を6%上回る用地を確保済みです。商品戦略としては、総タイル貼りで高級感のある分譲戸建「Tグレード」の販売拡大に加え、コストパフォーマンスの高い商品についても一段の商品力強化を進めます。

(2)首都圏売上高100億円達成
首都圏では、同社が分譲中心に展開し、戦略子会社東新ハイトスが請負・兼業を担っています。
エリア特性に応じた商品戦略を進める考えで、分譲事業を例に挙げると、東京都下では付加価値の高い「Tグレード」、郊外ではコストパフォーマンスの高い商品、城南地区では戸建て感覚の土地付きデザインマンション「デュープ」といった具合です。
土地仕入から売上代金回収までの期間短縮を追及した短期回転型分譲戸建システム(HRB システム、現在、7.4ヶ月)に磨きをかけ、営業活動の効率化も含めて一段の収益性アップを図る考えです。

(3)ザ・借家売上100億円
土地有効活用の一環としての借家事業は、同社が設計・施工を請け負うと共に一括して借り上げ、転貸するシステムです。壁材などに用いるパネルを工場生産することで建築コストを押さえる一方、メゾネット方式の斬新な設計で人気を集め、新商品「High-Nexus」はタイル貼りの施工等による高級感のある外観が好評を得ています。このため、20~30代前半の新婚世帯層を中心に高い入居率を誇っています。
営業社員の増員と新規営業拠点の開設を進め、営業力の更なる強化と新商品の開発を進める考えです。


新中期計画

今2005年6月期(以下、05/6期)は新中期計画の1年目にあたります。この計画では最終の08/6期に連結売上高1,000億円(04/6期比70%増)、経常利益50億円(同2.5倍)の達成を目指します。分譲系事業と賃貸系事業をコア事業と位置付け、08/6期に前者で700億円(同52%増)、後者で200億円(同2.9倍)、その他で100億円の売上高を計画しています。

分譲系事業では、中部圏で一段の基盤固めを図る一方、首都圏での事業拡大で成長を加速させます。具体的には、中部圏ではHRBシステム(前出)に磨きをかけ、土地仕入から売上代金回収までの期間を5ヶ月間に縮めると共に、自社工場の生産性を高め原価低減を図ります。首都圏では、HRBシステムの確立を急ぐと共に、住宅着工戸数の多い横浜、川崎(いずれも神奈川県)、さいたま(埼玉県)、千葉(千葉県)での営業を強化します。
また、賃貸系事業では、浜松営業所を開設して中部圏と首都圏に次ぐ第3の営業エリアの開拓を進めると共に、「ザ・借家」コンセプトの新商品投入も計画しています。首都圏においては、関東全域から東北進出を視野に営業拠点及び人員の拡充を図ります。

新中期経営計画の概要
(単位:億円)
 
04/6期実績
05/6期計画
08/6期計画
04/6期比
分譲系事業
460
518
700
152.2%
(中部圏戸建)
(363)
(410)
(首都圏戸建)
(54)
(150)
(マンション等)
(101)
(140)
賃貸系事業
69
87
200
289.9%
(うち首都圏)
(47)
(120)
その他
60
68
100
166.7%
連結売上高
589
673
1,000
169.8%
経常利益
20.3
23
50
246.3%


取材を終えて
今中間決算では、主力の中部圏でシェア確保を優先したため土地の仕入れ単価が上昇したことと、首都圏での先行投資が負担となり、赤字となりました。地価上昇は収益圧迫要因となるほか、需要減退につながりかねませんから注意が必要です。しかし、売上高、損益共に期初計画を上回っており、今期の事業計画が狂ったわけではありません。
同社は営業エリアの拡大余地が大きく、またメゾネット方式の賃貸住宅を商品化するなど企画力も優れています。首都圏で実績を積むことで知名度向上が図られれば、業績や株価へ与えるインパクトも大きいと考えます。

http://www.toshinjyuken.co.jp/