ブリッジレポート
(2680)

ブリッジレポート:(2680)日本オプティカル vol.1

(2680)日本オプティカル 長村 隆司社長
2006年2月17日(金)

コンタクトレンズのカテゴリーキラーとして全国展開を目指す、日本オプティカルを訪問しました。
長村社長にお話を伺いました。


長村 隆司社長

 

創業の経緯

長村社長は1980年に大手コンタクトレンズメーカーに入社し、コンタクトレンズの直営店出店や店舗管理に携わっていました。当時のコンタクトレンズは1枚25,000円、2枚で50,000円。洗浄液などケア商品も含めると合計で60,000円もする高額商品である中、医療用具として眼科内で販売されるという仕組みが中心であったため、価格が一向に引き下がらない状況にありました。

こうした状況に対し、これでは一般の利用者にいつまで経っても普及しないと感じた長村社長は、もっと消費者側に立った商品へと変革させることを目指し、1989年「有限会社日本オプティカル」を愛知県豊田市に設立しました。
社長は「医療と販売の分業」を基本理念とし、コンタクトレンズ販売における市場原理の導入を第一に考えました。

〝コンタクトレンズの処方箋があれば、顧客は自分の利用したい店舗でコンタクトレンズを購入することができる〟この仕組みを作ることによって自由競争が生まれ、適正な販売価格帯とサービス向上が実現し、顧客の満足度が高まるという流れです。
ただ、業界自体が保守的で既得権益に守られた土壌にあったため、同社の動きに対しては「医療用具であるコンタクトレンズをディスカウントし、チラシで宣伝するとは何事だ」というような声や様々な圧力もあったとのことですが、消費者からは一様にして歓迎され、事業は好スタートをきり、スムーズにビジネスは拡大していきました。

こうして消費者の支持を得た同社は順調に店舗数を拡大し、設立4~5年目の年商10億程度の頃から、現在注力しているPB(プライベートブランド)商品の開発にも着手。
「コンタクトレンズ販売の認知度向上(当時はメガネ屋やメーカーと間違われることが多かったそうです)」と「自分で作り上げた新しいビジネスモデルを是非成功させたい」との想いから、2000年11月に店頭市場(現JASDAQ市場)に上場し、その後も業容を拡大させています。



事業内容

コンタクトレンズおよびメガネ、栄養補助食品などの小売販売を行っています。全国に175の店舗を展開し、コンタクトレンズの売上高においては業界第2位です。

<コンタクトレンズ事業>

店舗展開
主に「ハートアップ」というブランド名で、「ハートアップコアショップ(医療機関隣接型の販売店舗)」と「ハートアップウェブショップ(医療機関が隣接しない販売店舗)」の大別して2種類の店舗形態にて展開しています。
また「EDNS(Eye-Data Network System)」を利用した携帯電話やパソコンを利用してのインターネット販売等も行っています。

「Eye-Data Network System」とは?
同社のコンタクトレンズ事業における大きな特徴が「EDNS(Eye-Data Network System)」の利用です。
(詳細は同社HPの事業戦略:独自のビジネスモデル内の、イメージムービーをご覧ください。)
http://www.nopt.co.jp/strategy/c1_01.html 

1. ハートアップコアショップに行き、隣接眼科医のコンタクトレンズの診察・検査を受け、その処方箋を基に、データ登録(アイデータ登録)します。

2. 携帯電話にバーコードを登録します(バーコードがアイデータの会員認証となります)。

3.登録後は、実際に店舗で購入することもインターネットで購入することも顧客のニーズにあわせて選択することが可能です。


店舗:携帯に登録されたバーコードを見せるだけで、処方箋データの照会が可能であり、待ち時間なくコンタクトレンズを購入することができます。

ネット:パソコン、携帯にてID、パスワードを入力。これがキーとなり本人の処方箋データを確認。商品は指定の場所へ配達されます。

同社は眼科にて発行された処方箋データ(使い捨てコンタクトレンズ及び定期交換コンタクトレンズ)をEYE-DATA BANKに登録し、顧客のEYE-DATAとして集中管理を行っています。
処方箋の有効期限や顧客の目の状態(眼科医の診断による使用制限指示など)に問題がなく、本人認証できれば、インターネット上の店舗「EYE-D mall」や、眼科に隣接していないウェブ店舗(クイック購入店舗)でも処方箋通りのコンタクトレンズを購入することができます。
つまり、時間、場所、場面にあわせて顧客自身が購入方法を選択することが可能なわけです。
同社では「Eye-Data Network System」がコンタクトレンズ購入のスタンダードになると考えています。


ビジネスモデル特許を取得
処方箋データの登録によって安全性を担保しながら、顧客のライフスタイルに合わせて購入方法を選択できる「EDNS(Eye-Data Network System)」は、ビジネスモデル特許(特許番号 特許第3462828号) 登録日 2003年8月15日)を取得しています。


<メガネ事業>

2001年9月よりメガネ事業に参入しました。
他の有名眼鏡店と同一水準以上の商品を国内外から調達し、明確に価格訴求しています。また、既にコンタクトレンズ専門店として収益基盤をもっているため、メガネ事業における損益分岐点が低く、価格競争に対する抵抗力が高いことも特徴です。全てのメガネ取り扱い店舗でコンタクトレンズの購入が可能です。

店舗展開
従来型メガネ店舗に加え、ターゲットを顧客のライフスタイルによって絞り込んだコンセプチュアルショップ(※)の集合体「ハートアップビジョンスクエア」を展開しています。メガネに対するこだわりを提案するとともに、複数のコンセプチュアルショップに生じやすい機会ロスを相互の機会創出によって補完し、メガネ選びの楽しさを実現させた世界でも類を見ないショップです。
※年齢・性別やライフスタイルによって異なる顧客のこだわりを追求したメガネショップ

商品戦略
遠近両用メガネの大型フレームに抵抗感を抱いているシニア世代の悩みを解消するべく、小型フレーム(フレーム天地幅24mm~32mm)と遠近両用8mm累進レンズの組み合わせによって、小型フレームでも快適な視力を提供できる「小振り革命」を展開し、シニア層に若々しさ・軽やかさを提案しています。
また、メガネの購買担当者(GlassMD)の活動領域は、日本、韓国、中国、イタリア、アメリカなど複数の国や地域におよび、顧客ニーズに適合する商品を単に取引先から調達するだけではなく、これら取引先の拡充や関係強化によってオリジナルデザインの開発にも取り組み、提案力のある商品を調達しています。


<サプリメント事業>

中長期的に成長が期待できる事業として、眼にいいとされるブルーベリーや各種サプリメントの新しい商品をプライベートブランド商品として開発しています。



特徴&強み

①コンタクトレンズを主事業とする唯一の上場企業

同社と比較される上場企業というと三城、愛眼、メガネトップ、ビジョンメガネ、メガネスーパーなどがあげられます。
ただ、これら他社はメガネの売上が主、コンタクトレンズは従です。

これに対し、同社はコンタクトレンズが中心です。2001年からはメガネ市場にも参入した同社ですが、「逆に他社がコンタクトレンズ市場への参入することはないのでしょうか?」と長村社長に伺ったところ、以下の2つの理由による同社の優位性を解説していただきました。

1. 利益率
メガネの粗利率は70~75%。これに対してコンタクトレンズはPBを持つ同社で60%。PBを持たない会社であれば30%程度も珍しくなく、メガネ販売を主とする企業が、敢えて利益率の低い市場に投資を行って参入する可能性は極めて低いと予想されるとのことです。

2. オペレーションの違い
メガネと違いコンタクトレンズは長らく医療用具(2005年4月より高度管理医療機器)として位置付けられてきたため、現在でも処方箋を出してくれる医療機関との関係作りが不可欠であり、同社では、メディカルプロモーション部という部署を設けているように、医療機関とのリレーション作りに先行して取り組んできました。メガネ販売のオペレーションとはまったく異なり参入障壁は高いとのことです。

逆に、メガネ市場へ参入した同社は、既にコンタクトレンズ事業でコスト吸収できているため、プラスアルファで積み上げていけば十分他社に追いつくことが可能と考えています。

②徹底した差別化戦略

長村社長が、同社成長の源泉としてあげているのが「徹底的な差別化戦略」です。
上記のEDNS(Eye-Data Network System)はビジネス特許を取得していますし、商品に関しても「正しく」「安全に」をキーに販売するだけではなく、「便利さ」「快適さ」を付加することこが顧客満足度を高めると考え、以下のような商品戦略を進めてきました。

1. 1ヵ月定期交換型ソフトコンタクトレンズ、2週間使い捨てソフトコンタクトレンズなど、顧客に経済性や新機能を提案する新しいカテゴリーのPB商品開発
2. 遠近両用のコンタクトレンズ、乱視度数付きソフトコンタクトレンズ等の高付加価値PB商品の開発
3. コンタクトレンズアクセサリーの開発と豊かなコンタクトレンズライフの提案

こうしたプライベートブランド商品の積極的な展開とナショナルブランド商品を共存させることで、多様な顧客ニーズに対応する商品ラインアップを目指しています。また、顧客一人一人の角膜の形状に合わせたカスタムメイドコンタクトレンズ販売にも着手しています。


③ストアオペレーションセンターによる現場管理


店舗による販売においては「接客ノウハウ」も大変重要です。これも含めた店舗の管理・運営においても同社は独自の方法を採用しています。長村社長は「現場主義とは決して管理の責任者が現場に行くことではなく、現場の情報をしっかりと集めること」と仰っていました。

よく一日に何軒も店をまわって現場の人間と会話することを〝現場主義〟と言われることがありますが、たまたまその店に行った時の状況や情報しか得ることができないようでは正確な情報を把握ができているとは言えず、移動の時間なども考えれば大きな無駄とも考えられます。

こうした問題に対して、同社では本社にストアオペレーションセンター(通称 ビッグアイ)を設置し、エリアマネージャーは、個別のブースに設置された店舗モニタリングシステムを活用することによって担当する複数の店舗を即時指導することが可能であり、現場とのコミュニケーション強化に最大限活用しています。

一人のエリアマネージャーに用意された個別ブースには複数のパソコンが設置されており、画面には、各店舗の状況がカメラで映し出されると同時に、現在どういう顧客が来店しているか?(新規か再購入か)、店舗の滞留状況はどうか?(待たされている顧客はいないか)などが刻々と伝えられ、解決すべき問題があればエリアマネージャーが即時に指示を出すことができます。
当初、現場では監視されているという意識が強かったものの、円滑なコミュニケーションによる売上増大、コストの削減などが可能になったことで、エリアマネージャーと現場の間の信頼感も増しているそうです。
また、ストアオペレーションセンターは情報基地としての役割も担っており、あらゆる情報が集約されています。例えば、同社店舗と競合する他社が投下したチラシは即時かつ安定的にストアオペレーションセンターに収集され、これらの情報を元に販売促進の変更を検討し、販売方針の指示を出しています。

戦略や戦術決定の速度を高めるとともに店舗売上の増大や顧客サービスの向上、販売管理費の削減に、このブースマネジメントは大きな効果をあげているそうです。

長村社長は、「社員は平均的な力を有する人間でいい。優秀な人間は自ら成長していく。ただし、平均の社員が120%~130%の力を発揮させるような仕組みづくりが経営者の役割」と考えており、このストアオペレーションセンターも平均的な社員の力を最大限に引き出す仕組のひとつといえるようです。


将来ビジョン

同社は中期計画として「Vision Supplyマーケットでパイオニアとしての地位確立」を目指し、2008年12月期に「売上高380億円 経常利益38億円」を掲げています。
経常利益率も現在の3%程度から10%までの向上を目指しています。これを実現するための施策として主要なものは以下の通りです。

①「EDNS(Eye-Data Network System)」の拡大

他社にはないこのシステムを最大の武器として更なる拡大を目指し、利便性と簡便性による顧客囲い込みによって「EYE-DATA BANK」登録者数を一段と増加させます。
また、立地による顧客の利便性を実現するために「ハートアップ5ミニ」の積極的な展開を推進する予定です。同店舗はわずか2坪という店舗面積による高効率化を実現したコンタクトミニショップで、駅前など好立地への出店がしやすいメリットを活かし、今後の販売網を拡大によって顧客の利用頻度のアップと、認知度向上を狙っています。

②PB商品のシェアアップ

現在のPB商品の売上に占めるシェアは約45%。これを、1Monthly、2Weeksの拡販や周辺商品のPB化によって、最大60%まで高めます。利益率の高いPB商品シェアアップによって、経常利益率の向上への寄与を図ります。

③全国展開

2008年までに日本全国47都道府県への展開を目指しています。
開発本部(店舗開発部・メディカルプロモーション部)を強化し、資金を効率よく利用して効果的な出店戦略を推進していきます。景気回復などで好物件の確保は競争率が高まることも考えられますが、「様々なネットワークを活用して計画通りの出店は可能」と長村社長は考えています。



課題

「今後の課題は何であると認識していらっしゃいますか?」という質問に、「幹部社員の意識改革」とのお答えでした。
2000年に上場を果たし、それにとどまることなく更に上を目指している同社ですが、「成長とともに会社や社員自身のおかれているステージが確実に変化しているという現実に対して、まだまだ意識の足りない幹部社員も存在する」というのが社長の認識です。

現在、役員クラスの平均年齢が50~53歳に対し、一般社員は27から28歳が中心とのことで、30~40歳代の社員の成長を大いに期待しており、今後の組織再編時にはこうした中堅クラスをどんどん中核ポストにつけて育成していきたいと考えています。


投資家へのメッセージ

同社は、「透明性の高い企業」であることを意識し、オープン可能な情報は良いものも悪いものもタイムリーにディスクローズするという姿勢を強く打ち出しています。
HPによる開示も、同業他社と比較すれば格段に進んでいるとのことです。是非長い目で応援してほしいという長村社長のメッセージでした。

また同社では社会貢献型株主優待制度を実施しています。コンタクトレンズを通じて眼に携わる企業として以前より支援させていただいていた日本盲導犬協会との連携により、2002年中間期以降の株主には優待品として「日本盲導犬協会寄付金付オリジナルグッズ」に採用しています。


取材を終えて

実は長村社長は大手コンタクトレンズメーカー在職時にもコンタクトレンズのカテゴリーキラーとしての新しいビジネスモデルを会社に対して提案したものの受け入れられず、描いたビジネスモデルを機敏にかつ具体的に実現することを目指し、自ら創業することを選択したそうです。

創業時からコンタクトレンズに関しては「10年で追いつく自信はあった」とのことで、独自のビジネスモデル構築によって見事にこれを現実のものにしました。これに満足することなく「EDNS(Eye-Data Network System)」の拡大、全国展開で更なる成長を追及する同社をこれからも注目していきたいと思います。

http://www.nopt.co.jp/

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