ブリッジレポート
(2680)

ブリッジレポート:(2680)日本オプティカル vol.2

(2680)日本オプティカル 長村 隆司社長
2006年2月28日(火)

日本オプティカルの決算説明会に出席しました。
長村社長が、会社概要、決算概要、及び2006年12月期の重点施策について説明されました。


長村 隆司社長

 

会社概要

<事業内容>

コンタクトレンズ及びメガネ、サプリメント等の小売販売を行っています。全国に177(FCを含む)店舗を展開し、コンタクトレンズの売上高では業界第2位です。
事業は、コンタクトレンズ事業、グラス(眼鏡)事業、及びその他に分かれ、構成比は下の表の通りです。売上高の65.7%を占めるコンタクトレンズ事業は、主に「ハートアップ」というブランド名での店舗販売とインターネット販売を行っています。
同社と比較される上場企業として、三城、愛眼、メガネトップ、ビジョンメガネ、メガネスーパーなどが挙げられます。ただ、いずれもメガネ販売が中心で、比較的コンタクトレンズの売上構成比の高いメガネトップでさえも、その構成比は23%強にとどまります。

(単位:%)
 
コンタクトレンズ
眼鏡
その他
同社
65.7
11.8
22.5
メガネトップ
23.4
69.6
7.0
メガネスーパー
19.6
71.6
8.8
愛眼
7.7
86.1
6.2
三城
5.9
82.5
11.6
ビジョンメガネ
5.5
88.5
6.0


<店舗展開>

コンタクトレンズは、主に" ハートアップ "というブランド名で、「ハートアップコアショップ(医療機関隣接型の販売店舗)」と「ハートアップウェブショップ(医療機関が隣接しない販売店舗)」において販売しています。更に、現在推進中の中期計画においては、ファーストフード、コンビニ、サービスエリア等とのタイアップによる小型店舗(2坪ショップ)「5MINI(ファイブミニ)」の出展戦略を進めています。
グラス(眼鏡)事業は、従来型眼鏡店に加え、顧客ターゲットをライフスタイルによって絞り込んだコンセプチュアルショップ(注)の集合体「ハートアップビジョンスクエア」を展開しています。

(注)コンセプチュアルショップ
年齢・性別やライフスタイルによって異なるコンセプト(顧客のこだわり)を追求したグラス(眼鏡)ショップ


<「EDNS」を利用した販売>


コンタクトレンズ事業の特徴は、コンタクトレンズ指示書(処方箋など)のデータの登録・管理・配信・販売システム「EDNS(Eye-Data Network System)」を利用した販売にあります。
(詳細は同社HPの事業戦略:独自のビジネスモデル内の、イメージムービーをご覧ください。)
http://www.nopt.co.jp/strategy/c1_01.html

同社は、眼科にて発行されたコンタクトレンズ指示書(処方箋など)データを、「EDNS」のデータベースであるEYE-DATA BANKに登録し集中管理を行っています。コンタクトレンズ指示書(処方箋など)の有効期限や顧客の目の状態(眼科医の診断による使用制限指示など)に問題がなく、本人認証ができれば、インターネット上の店舗「EYE-D mall」でコンタクトレンズ指示書(処方箋など)通りのコンタクトレンズを購入することができます。また、通勤・通学等の途中に、眼科に隣接していない駅前等のウェブ店舗(クイック購入店舗)でも時間をとらずに購入できます。この一連のシステムが「EDNS」です。

店舗 : 携帯に登録されたバーコードを見せるだけで、コンタクトレンズ指示書(処方箋など)データの照会が可能であり、待ち時間なくコンタクトレンズを購入することができます。
ネット : パソコン、携帯にてID、パスワードを入力。これがキーとなり本人のコンタクトレンズ指示書(処方箋など)データを確認。商品は指定の場所へ配達されます。


<ビジネスモデル特許の取得>

コンタクトレンズ指示書(処方箋など)データの登録によって安全性を担保しながら、顧客のライフスタイルに合わせて購入方法を選択できる「EDNS」は、ビジネスモデル特許(特許番号 特許第3462828号) 登録日 2003年8月15日)を取得しています。同社では「Eye-Data Network System」がコンタクトレンズ購入のスタンダードになると考えています。


<ビジョン産業の市場規模・推移>

底打ちから上昇へ : コンタクトレンズ市場は成長軌道、グラス・眼鏡市場は単価が上昇

コンタクトレンズ(CL)市場
販売単価上昇と装用人口の増加で成長
 
2003年
2004年
2005年
市場規模
1,958億円
1,980億円
2,009億円
装用人口
1,370万人
1,420万人
1,500万人
平均販売単価
19,045円
19,926円
20,102円
 
平均販売単価:ソフト・ハードCLは2枚1組、使い捨てCLは年間購買単価
コンタクトレンズ市場は同社推計

 

グラス・眼鏡(GL)市場
ゼロサム市場の中で販売単価が上昇
 
2001年
2002年
2003年
2004年
市場規模
5,623億円
5,256億円
5,153億円
5,459億円
購買人口
1,961万人
1,852万人
1,781万人
1,811万人
平均販売単価
28,662円
28,374円
28,927円
29,814円
         
出典:「眼鏡白書2003-2004」「眼鏡白書2005-2006」(株)サクスィード編集

 

2005年12月期決算概要

<連結>
(単位:100万円)
 
実績
前期比
売上高
19,240
+18.8%
営業利益
845
+33.0%
経常利益
800
+34.6%
当期純利益
226
-24.6%

中部・関西地域での豪雪の影響を受けて売上高が1億円強計画を下回り利益面でも影響を受けましたが、コンタクトレンズの直接販売や通信販売の拡大により営業利益、経常利益共に高い伸びを示しました。
当期純利益が前期実績を下回ったのは、前期に保有株式の売却に伴う利益を計上したことと、当期に既存店舗の業態変更及び移転統合等のスクラップ・アンド・ビルドに伴い特別損失が増加したためです。


<事業別動向>

コンタクトレンズ事業
価格安定政策と利便性訴求により売上高、売上総利益共に増加しました。また、コンタクトレンズ「ノプト2Weeksメディアル」及び「ノプトCS30/TypeAC」と同ケア用品「ノプトモイストティアラ」を発売、利益獲得基盤であるPB商品を強化しました。EDNS(ネット販売)の利便性も確実に浸透しています。

(1)価格安定政策と利便性訴求による売上・売上総利益の増加
①通信販売「EYE-D mall」及び新業態「5MINI」(ファイブミニ:2坪ショップ)の利用促進による好循環
②売上高前期比21.0%増、売上総利益率同0.9ポイント上昇

(2)利益獲得基盤の強化
①(株)ノプトにおける子会社化後のPB売上比率向上(04年下期 2%→05年下期 24%)
②CL業界での新商品ラッシュにより平均単価が上昇

(高付加価値商品の伸長) →  NBでも利益が得られる仕組み
  NBと同方向でのPB展開

(3)EDNS(ネット販売)の利便性浸透
売上は前期比34.0%増、売上総利益率は前期比15.0ポイント向上
(利便性浸透が寄与し継続会員数も前期比14.8%増加、更に会員利用率も上昇しました)

 

グラス(眼鏡)事業
高級ブランドフレームの販売と「小振り遠近両用メガネ」をはじめとした独自手法による高品質・高機能商品の販売に注力した結果、顧客の購入単価が上昇しています。ただ、期中において在庫過多を回避する目的で旧商品との在庫調整を行い新規商品の補充が遅れたため、増収ながら購入客数は伸び悩みました。

 

<出退店等の状況>

① 新規出店12店舗
② 退店7店舗
③ 店舗統合による3店舗退店
④ 移転9店舗
⑤ 改装3店舗
⑥ 業態変更11店舗


2006年12月期業績予想

<連結>
(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
21,583
+12.2%
経常利益
1,053
+31.6%
当期純利益
386
+70.8%

増収・増益が見込まれます。
5MINIの出店に加え、EDNSの登録者数及び利用頻度、それぞれの拡大を図ります。

 


中期計画に基づく2006年経営基本方針


<市場環境の特殊要因>

医療費改正による保険適用の見直しに伴いコンタクトレンズ診療所の収入の減少が予想され、当業界全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。

マイナスの影響
1.コンタクトレンズ診療を行なう新規開業医の減少 (コアショップの新規出店に影響)
2.既存協力医療機関からの債権回収の長期化 (収入減少による診療所の財務体質の悪化)
3.業務受託料の減少 (その他売上高の減少、取引先診療所から厳しいコストダウンの要求)

プラスの影響
1.業界内の淘汰が進行 (オーバーストアの解消とM&Aのチャンス)
2.販売価格の正常化による公正な競争環境 (診療報酬頼みの販売方式が消滅し、市場は拡大)
3.同社のEDNSの普及拡大 (コンタクトレンズ指示書発行の一般化)



<2006年12月期重点施策>


2006年12月期は、「EDNS普及拡大の加速的展開」を中心戦略としつつ、出店戦略、コンタクトレンズ事業、グラス(眼鏡)事業、基盤作り、その他の5項目において、次に示す施策を講じていく考えです。

1.出店戦略
(1)5MINI(2坪ショップ)の新規展開 ⇒ タイアップ政策による大量出店
5MINIの年間出店見込み数 : 従来型(駅ナカ、SCインショップ)出店24店舗+α(タイアップ出店:店ナカ等)
タイアップ出店とは、ファーストフード、コンビニ、サービスエリア等とのタイアップによる店ナカ出店です。メリットとして、①複数同時出店等の戦略展開、②低コスト(家賃、店舗規格統一化)、③集客相乗効果等を挙げることができます。

(2)47都道府県網羅出店戦略(M&Aも視野に入れた店舗展開)
2008年までにEDNSの全国インフラ構築完了する考えです。
直営出店 : 地方商圏市場の独占的地位を狙う出店
M&A政策・同業他社の営業施設譲受 : 首都圏での戦略展開の一環として
5MINI ⇒ 2008年 250店舗(1店舗当たり 年商36百万円:月商3百万円、1店舗当たり会員 4,700人を想定)
3月の5MINIの出店は、1日松阪マーム、10日イオン岡崎、金沢百番街、18日長野駅前を予定しています。


2.コンタクトレンズ事業
(1)EDNSの登録者数及び利用頻度、ぞれぞれの拡大を図ります。また、協力医療機関に加え、一般眼科との協力体制を強化することで、既存会員以外の購入顧客獲得(=コンタクトレンズ指示書発行クリニックの大量開拓)に努めます。

(2)安定的な利益を確保するための価格政策
コンタクトレンズ指示書(処方箋)に関する医療保険制度改革に対応した施策を進める必要があります。また、業務提携・M&A案件のチャンスも拡大すると思われます。
医療費改正に伴い、先程で説明しましたようにコンタクトレンズ販売価格は正常化に向かって動き出すことが予想されます。同社においてもプライスリーダーとして、正常化への取り組みを開始する予定です。
市場価格主導(価格引き上げ)のための施策として、顧客の理解促進(制度改革の影響についてPR)、同社の優位性のアピール(価格<利便性のPR)、価格政策(メーカー新製品、同社PB商品の活用)、の3点に取り組みます。
ただ、実際の価格政策は、売上総利益率60%を目標に、マーケットへの影響度を見ながら慎重に対応していく考えです。

(3)PB商品のラインナップ強化
売上の36%を占めるPB商品の平均粗利率は83.6%(NB 35.9%)と高いことが特徴です。
ボリュームゾーンであり、今後も引き続き市場拡大が予想される2Weeks(2週間使い捨て)市場へ新PB商品(後述)を投入、圧倒的なコスト競争力と提案力で市場制覇を目指します。また、新たな市場が形成されつつある1Monthly市場における戦略商品の開発・発売にも取り組みます。

コンタクトレンズタイプ別市場シェア2004
2Weeks
35.9%
1Week
1.8%
1Day
37.3%
コンベンショナルソフト
7.5%
ハード
13.1%
1Monthly
4.3%
*同社調べ

(4)戦略商品の開発
戦略商品として環状青色レンズを開発しました。今上期中に発売される見込みです。
虹彩の輪郭を着色し強調することで瞳を大きく見せることができます。視力矯正機能とコスメティック要素を持ったコンタクトレンズです。日本初の2Weeksタイプで、着色剤が染み出さない独特の製造方法を採用。製造法特許を申請中です(早ければ年内取得)。


3.グラス(眼鏡)事業
新たな挑戦として、日本の人口高齢化に対応した遠近両用マーケット(シニアマーケット)の取り込み、及びコンサルティングセールスの推進によるコンタクトレンズ顧客へのグラス販売(既存の近視マーケット深耕)に注力します。

(1)シニア層の取り込みによる対象顧客層の拡大
シニア層にも満足を提供する総合グラス販売店の展開で高成長を維持すると共に、大手メガネチェーン店平均売上レベルへの到達に向けて商品の差別化を図ります。この一環として開発・商品化されたのが、小振りの遠近両用対応フレームです。従来、遠近両用対応はその機能を維持するため大型フレームを使用する必要がありましたが、同社では8mm累進レンズを対応させることで小振りの遠近両用対応フレーム(天地幅24~32mm)の商品化に成功しました。

(2)コンタクトレンズユーザーへのメガネ提案に新機軸
コンタクトレンズユーザーを対象として、オリジナル商品(Switch&Switch)を開発しました。Switch&Switchは自分の好みでパーツの組み合わせをオーダーすることができます。コンタクトレンズの主流客である20代女性をメインに、男女年齢を問わず全てに対応します。導入時の組み合わせは384通り(アイテムカラー増強予定)、価格は9,450円~(フレーム・レンズセット)フロントとテンプルのパーツ交換も可能です。
Switch&Switchの発売によるグラス販売業態の充実を図り、メガネの楽しみ方や「お客様だけのメガネ」を提案します。

①Switch&Switchの商品特性
・同社オリジナル商品
・オーダー商品なので展示商品ではなく、新品の状態でお渡し
・組み合わせによって全く違う商品となるため、複数所有も可能

②波及効果
・商品構成を単純化することによる接客の効率化
・ネジ等組み合わせ部品を共有化したことによる在庫管理の効率化


4.ITを駆使した戦略経営システム
(1)コックピット経営の完成へ向けてSOMS(Store Operation Monitoring System)の更なる活用とマネジメントバイブルの作成及び活用による業務のハイレベルでの標準化を図ります。

①SOMSの更なる活用
・画像と音声による店舗 ⇒ 本社のリアルタイムコミュニケーション
・戦略立案に必要な内外のデータを集約した全店舗をリアルタイムに遠隔指導
・販売ロールプレイング教材として活用

②マネジメントバイブルの作成及び活用による業務のハイレベルでの標準化
・効率的な店舗管理項目の統一と標準化(店舗マネジメントメニュー)
・エリアマネージャーの店舗指導等に関する問題点や成功事例の収集と共有化(マネジメントバイブル)
・店長のマネジメント業務に関する規格

(2)小売業初の市販後安全管理を実現
安全への配慮に加え、コスト削減効果も期待できるトレサビリティシステムの導入を完了しました。

主な導入効果
・安全性の強化
不具合品の使用者を個人単位で正確・迅速に特定 ⇒ 健康被害の拡大を最小限に抑えることが可能
・コストの削減
不具合品の使用者を特定できないために余儀なくされる全品回収を回避 ⇒ 時間・費用等の無駄の削減
PB商品の不具合リスト対応(全品回収を回避します) ⇒ リスクヘッジコストの削減

(3)EDNS登録者のコンタクトレンズ指示書1億枚が登録可能な高信頼システムの完成
2010年のコンタクトレンズユーザーを2,000万人とした場合、1人4枚までのレンズを重複登録可能なキャパシティがあります。


5.その他
(1)社員満足度の向上への取り組みとして、労務管理と福利厚生の充実を図ります。
・カフェテリアプランの導入
・残業時間管理を含む安全衛生管理の徹底
・年次有給休暇の計画的使用の奨励
・社員対象のストックオプション付与
(勤続年数3年以上の本社社員・店舗責任者以上を対象)
・本社内カウンターバーの設置

(2)中国現地法人の展開
中国は2011年までに装用人口ベースで日本を抜く見込みです。Heart Upコアショップ・ビジネススクエア(大型店舗)・5MINI)による上海でのドミナント展開を進め、EDNSの登録・利用の促進を図ります。

①現地の現状
コンタクトレンズ使用者のコンプライアンスの不徹底
コンタクトレンズ専門店は同社しか存在しない

②同社の施策
医師が発行した指示書に基づく販売の促進
小売業の責任としてコンプライアンスの啓発
EDNSを活用した販売 ⇒ 5MINIとネットの展開


(3)M&A候補先の開拓

 



取材を終えて

現在進行中の中期計画では「Vision Supplyマーケットでパイオニアとしての地位確立」と最終の2008年12月期に売上高 380億円、経常利益 38億円の達成を目指しています。同社と比較される上場企業は、いずれもメガネ販売が売上高の大半を占めています。単価の高い商品に対応したコスト構造の会社が、単価の低い商品へシフトするには大きな困難が伴いますから、メガネ中心の大手企業は中期計画達成の妨げにならないだろうと思われます。5MINIを中心にした店舗網の急拡大が計画達成の原動力になるわけですから、大規模な店舗網をマネジメントするシステムの整備と人材の育成等が課題になってくるのではないでしょうか。引き続き中期計画の進捗状況をフォローしていきたいと思います。

http://www.nopt.co.jp/

このレポートは公開された企業情報の提供を目的としており、対象企業に対する投資の推奨、勧誘などを目的としたものではありません。投資の最終判断は御自身で行ってください。仮にこのレポートに基づいて投資を行った場合でも、その結果に対し弊社には一切の責任は生じません。