ブリッジレポート
(8911)

ブリッジレポート:(8911)創建ホームズ vol.4

(8911)創建ホームズ 丸本 吉紀社長
2006年4月13日(木)


丸本 吉紀社長

創建ホームズの2006年2月期決算説明会に出席しました。
丸本社長が、会社概要、前期決算の概要、及び今期の予想について説明されました。


会社概要

戸建分譲・注文住宅事業を基盤として、マンション事業及びAM(アセットマネジメント)事業の育成に取り組んでいます。いずれの事業も、東京城南(世田谷、目黒、品川、大田)地区、同城西(杉並、世田谷、武蔵野)地区、及び横浜(東横線、田園都市線)地区を中心とした高級住宅街にエリアを絞り込み、事業部制の導入による地域密着型の事業展開を進めています。

<エリア戦略 : 高級住宅地>

(1)事業展開エリア
本店事業部、自由が丘事業部、東京西事業部、横浜事業部、そして2005年3月に開設したふじみ野(埼玉県)事業部において、地域密着型の事業展開を進めています。エリアを絞り込んでいるものの、同社の事業エリアにおける人口は、日本の人口の約1/10を占める巨大マーケットです。

(2)エリア毎の特徴

①平均販売価格 : 7,700万円
事業部別の平均販売価格は次の通りです。
自由が丘事業部 : 11,400万円
本店事業部 : 6,800万円
東京西事業部 : 7,800万円
横浜事業部 : 6,300万円
ふじみ野事業部 : 4,400万円

②競合するハウスメーカー : ダイワハウス、積水ハウス
③競合するデベロッパー : 三井不動産(ファインコートシリーズ)、野村不動産(プラウドシリーズ)

 

<商品戦略 : 戸建・マンション・AM>

(1)同社商品の特徴 : プライスではなく、クオリティ(意匠性に優れた商品の供給)
同社の平均販売価格は7,700万円と高額です。安さをセールスポイントにしたパワービルダーやマンション事業者は一気に事業を拡大させることが可能な反面、参入障壁が低く価格競争に巻き込まれがちです。一方、同社が得意とする高級住宅地の高額物件の場合、単に地価が高いための高額物件というだけでなく、その地域のブランドに見合った建物のクオリティが要求されます。このため、事業展開に先立ち、デザインや居住性・安全性等の技術スタッフの充実が欠かせません。平均販売単価が1億円を超える自由が丘事業部では、競合らしい競合はないそうです。消費者ニーズを掴み、クオリティの高い魅力ある商品を提供できるかがポイントになります。

(2)マンション事業への進出
生活スタイルの多様化に伴う様々なニーズに応えるため、戸建住宅事業で培ったノウハウや情報網を活かしマンション分譲事業に着手しました。
①既存エリアである事、②利便性が高い事、③一定の広さを確保できる事を事業化の条件としています。現在、次の7物件が具体化しており、このほかにも企画中のプロジェクトがあります。

(3)AM事業への進出
高利回りで高品質な賃貸マンションや商業ビルなど新しい投資商品を提供する事業です。また、物件によっては自社保有することで、安定収益源とする考えです(安定した経営基盤を確保)。2006年2月期は1億75百万円の賃貸収入を計上しました。現在、次の9物件が具体化しており、このほかにも企画中のプロジェクトがあります。

 

<戦略を支える同社の強み>

上記の戦略を支える同社の強みとして、(1)高品質な商品供給を実現する仕組みと(2)高級エリアに特化できる仕入れ能力の高さ、を挙げることができます。

(1)高品質な商品供給を実現する仕組み
社員の6割が設計施工担当で、しかも設計5人中4人が1級建築士資格を保有しています。また、大量供給を回避し、商品企画室の設置をする等でブランドの確立と維持に努めています。
品質管理の面では厳格な自社施工基準が設けられており、戸建では、各建設現場に監督者(社員)を常駐させ、密度の高い施工管理を実施すると共に、全戸自社スタッフによる構造計算を実施しています。マンション事業やAM事業では、社内、設計事務所、第3者による構造計算書のトリプルチェックを実施しています。

(2)高級エリアに特化できる仕入れ能力の高さ
販売アウトソース先との連携により構築された情報網によって、エリア内の物件情報がいち早く集められます。そして、5億円までは事業部長が決裁できるなど、事業部制により権限委譲が浸透しているため、情報網を通して集められた情報はスピーディに決裁されます。

 

<今後の取り組み>

(1)戸建分譲住宅のシェア拡大、(2)事業領域の拡大、(3)コスト削減の3項目を、今後の取り組みとして掲げています。

(1)戸建分譲住宅のシェア拡大
既存エリアの深耕と拡大に努めると共に、創建ブランドの浸透及び知名度の向上を図ります。
「お客様にご満足いただける家創りが、どんな宣伝広告にも勝る」との方針の下、特徴をより明確化して積極的なIR活動を実施していく考えです。

(2)事業領域の拡大
マンション事業及びAM事業の強化により、事業領域の拡大を図ります。事業領域の拡大により、高い仕入れ能力を活かし、従来以上に取得用地の面積と用途に幅を持たせ、顧客ニーズに幅広く応えることが可能になります。

(3)コスト削減
売上規模拡大により、資材の大量購入によるスケールメリットを追求します。また、生産ラインの業務効率化により人的生産性の向上を図ります。
エリア拡大戦略(新規出店)と事業領域拡大戦略(マンション・AM事業の強化、直販開始、及びリフォーム事業の強化)を並行して進めることにより、売上規模拡大を図ります。一方、人的生産性を上げることで規模拡大に伴うコストの増加を最小限にとどめる考えです。


<業績見通し>
(単位:100万円)
 
06年2月期
(実績)
前期比
07年2月期
(予想)
前期比
08年2月期
(計画)
前期比
売上高
38,553
+41.2%
47,000
+21.9%
57,000
+21.2%
営業利益
2,068
+75.7%
2,770
+33.9%
3,800
+37.1%
経常利益
1,654
+63.1%
2,350
+42.0%
3,300
+40.4%
当期利益
989
+69.3%
1,340
+35.4%
1,880
+40.3%
社員数
167人
+24人
190 人
+23人
220 人
+30人
備考
ふじみ野事業部開設効果
自由が丘拡充
マンション事業部寄与
ふじみ野拡充
マンション拡充
アセットの寄与
新規出店効果

<「株主の皆様へ」と題して次のメッセージがありました>
(1)在庫状況を注視して、不良在庫を残さない施策を講じていく考えです。
(2)目標配当性向 : 25%
(3)目標とする経営指標 : ROA 10%(06年2月期 8.7%)、自己資本比率30%(同 26.3%)


2006年2月期決算概要

<連結>
(単位:100万円)
 
実績
前期比
売上高
38,553
41.2%
営業利益
2,068
75.6%
経常利益
1,654
63.2%
当期純利益
989
69.5%

増収・増益となりました。
注文住宅は、販売棟数こそ前期と同じ43棟でしたが、販売価格の上昇により売上高は14億47百万円と前期比25.3%増加しました。分譲住宅は262棟と前期比65棟増加、販売価格も10%弱上昇して売上高は202億32百万円と同45.2%増加しました。
また、マンション分譲としては「ウェルフェアステージ大井二葉」の販売を開始。11戸、6億40百万円の売上を、不動産賃貸事業は1億75百万円の売上を、それぞれ計上しました。
この他、宅地分譲が増加、リフォームも規模は小さいながら売上がほぼ倍増しました。


2007年2月期業績予想

<連結>
(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
47,000
+21.9%
営業利益
2,770
+33.9%
経常利益
2,350
+42.0%
当期純利益
1,340
+35.4%

エリアの絞込みは、同社の特徴の一つであり、また強みでもあります。しかし、「営業エリアが限定されるため、足下はともかく、中期的には成長の制約要因になりかねないのでは?」と懸念される方がいるかもしれません。しかし、首都圏の新設住宅着工は年間で約30万戸。同社の事業エリアの需要がこの半分の年間15万戸とした場合、今期の販売計画である戸建350棟、マンション80戸を前提にしても、同社のシェア(マンション1戸を戸建1棟と考える)は0.28%に過ぎません。今後、マンション事業やAM事業との相乗効果も期待できるため、エリア深耕の余地は大きいと言えます。しかも、この2月に東証1部への指定替えを果たした事で、ブランド構築に不可欠な知名度の向上も期待できます。
決算説明会には、100名前後のアナリスト、ファンドマネージャーが出席しました。株式を上場している住宅メーカーは数多くありますが、高級住宅地の高級住宅に絞り込んだ住宅メーカーは同社が唯一。東証1部への指定替えに加え、こうした希少性の高さも注目を集める要因ではないかと思われます。


取材を終えて
同社は、田園調布(東京都大田区)等の一等地での1億円を越える戸建住宅など、高額・高付加価値物件の建売を得意としています。「自ら"ブランド力が課題"としている同社が、なぜこれほどのハイグレードな物件を売り切ることができるのか」と疑問に思い方も多いと思います。
こうした一等地の土地取引では、比較的狭小な物件の取引が多いため、大手のハウスメーカーは敬遠しがち。また、郊外で値ごろ感のある物件を得意とするパワービルダーはこうした高額物件には目もくれません。このため、競争が少ないそうです。一方、施主側の立場に立つと、個人では土地の入手自体が難しく、仮に土地が手当てできたとしても、設計、施工等の手配の手間に加え、注文住宅となると建築コストも割高になってしまいます。
こうした背景の中で、同社は地域密着・顧客密着の営業展開により収集した顧客ニーズを物件の仕入や商品開発に生かし、成果を上げてきたわけです。ただ、地域密着・顧客密着型の営業は、エリアの拡大が難しくスケールメリットを追求し難いという問題があります。高額物件を扱っている同社の収益性が必ずしも高くないのはそのためです。このため既存事業エリアの更なる深耕はもちろん、埼玉県南部エリアの開拓や新規事業行の育成に取り組んでいく考えです。

http://www.sohken-homes.co.jp/

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