ブリッジレポート
(4955) アグロ カネショウ株式会社

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ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.16

(4955:東証2部) アグロ カネショウ 企業HP
櫛引 博敬 社長
櫛引 博敬 社長
企業基本情報
企業名
アグロ カネショウ
社長
櫛引 博敬
所在地
東京都港区赤坂 4-2-19
決算期
12月
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2005年12月 12,154 442 385 114
2004年12月 10,742 536 366 186
2003年12月 7,322 -220 -208 -278
2002年12月 7,792 113 150 41
2001年12月 7,733 242 279 63
2000年12月 8,300 662 709 423
1999年12月 7,821 642 656 224
株式情報(9/22現在データ)
株価 時価総額 発行済株式数 単元株数 決算年月 1株配当
950円 6,367百万円 6,702,431株 100株 2005年12月 20.00円
配当利回り PER(連) 1株利益 PBR(連) 1株株主資本(連) ROE(連)
2.11% 55.59倍 17.09円 0.58倍 1,630.30円 1.09%
アグロ カネショウの2006年12月期中間決算について、会社概要と共にブリッジレポートにてご報告いたします。

会社概要
 
創立55周年を迎えた農薬専業メーカー。農家とのダイレクトチャンネルを武器に高い収益を上げています。
 
無農薬栽培や有機栽培といった言葉をよく耳にしますが、「農薬による病害虫や雑草の防除対策をしないと、農産物の世界の収穫量の30%以上が失われてしまう」と言われています。例えば、財団法人 日本植物防疫協会によると、農薬を使用しなかった場合の農作物の減収率は、水稲27.5%、麦35.7%、桃にいたっては100%との事です。また、除草剤は農作業の負担軽減に大きく貢献しています。ともすると、「農薬=悪」と連想しがちですが、世界的な食糧増産の必要性が叫ばれる中で、環境との調和に配慮しつつ農作物を病気や害虫から守り、食糧増産を進めるために農薬は必要不可欠な存在と言えます。
 
<沿革>
1951年8月、農業薬品・肥飼料の売買を目的に櫛引大吉氏が光洋貿易として創業しました。同年、兼商㈱に商号を変更。59年には研究開発及び製造を行なう兼商化学工業㈱を設立、60年には販売特約店との共同出資により販売会社を設立、以後、販売網を全国へ広げました。
85年、兼商化学工業と兼商が合併し現商号へ変更。89年には、全国の販売会社を吸収合併し支店化、製販を統合。93年6月の店頭登録を経て、2000年9月に東証2部に上場しました。
99年の自社開発のダニ剤「カネマイト」の登録取得や03年のBASF社からの土壌処理剤事業の買収が原動力となり、日本国内の農薬出荷金額が漸減傾向にある中で業績拡大が続いています。
 
 
<事業内容>
事業は、国内農薬出荷額の約50%を占める果樹・野菜向けが中心の農薬事業とその他事業に分かれ、構成比は前者が95%。農薬事業は、ダニ剤、害虫防除剤、土壌処理剤等の病害防除剤、除草剤、その他(植物成長調整剤、展着剤)に分かれます。また、その他事業では、医薬、農薬及び動物薬の中間体、機能性材料、他機能性化学品、表面処理薬剤等を扱っています。
市場規模と同社の製品
 
 
<特徴>
 
1.農家、販売店、当社グループの連携による「トライアングル作戦」
販売は特約店を通して行われますが、同社はエンドユーザーである農家とのコミュニケーションを重視しており、実際には支店や営業所に配置されている70名のTCA(Technical&Commercial Adviser)と呼ばれる営業担当者が特約店と連携して、農家に農薬の正しい使い方や経営面での助言を行っています。
同社では、これを、農家、販売店、当社グループの連携による「トライアングル作戦」と呼び、需要開拓と販売促進につなげています。
 
2.研究開発体制
農薬として販売するためには、内閣府食品安全委員会の審査や審査農林水産省の承認・登録が必要です。開発から承認・登録までに約10年の年月と15億円程度の開発費が必要となるため、同社が73%と言う高い株主資本比率を誇るように、農薬メーカーには財務の健全性が必須となります。
同社では、この安定した財務基盤をベースに、土壌処理剤(線虫防除剤)及びダニ剤を中心に研究開発に取り組んでいます。
 
土壌処理剤(線虫防除剤)のラインナップ強化
 
 
ダニ剤のラインナップ強化
 
 
3.海外展開
日本、韓国、台湾等で食用として登録されているダニ剤の「カネマイトフロアブル」ですが、花用として北米・南米での登録が進んでいる他、2006年から09年にかけて欧州でも登録が進む見込みです。
 
 
4.グループの総合力
M&Aによる積極的な事業展開も同社の特徴です。02年には三井物産との合弁会社で生物農薬を手掛けるセルティスジャパン㈱(非連結)を設立。03年には同じく三井物産と合弁で、連結子会社Kanesho Soil Treatment(KST:カネショウ ソイル トリートメント)をベルギーに設立しました。KSTは独BASF社から事業買収した土壌処理剤事業を手掛けており、現在、世界97カ国で事業を行なっています。
更に、04年9月には、農薬原体・中間体、医薬及び化学品分野で開発・販売を行う三和化学工業㈱を連結子会社化しました。
 
2006年12月期中間決算概要
 
<連結>
 
増収・増益となりました。
主要商品である土壌処理剤(区分は病害防除剤)「バスアミド」、「D-D92」、害虫防除剤「アルバリン剤」、「ペンタック水和剤」、「バイスロイドEW」の販売が好調に推移しました。
 
<セグメント別動向>
農業事業
害虫防除剤及び輸出の増加により、売上高は69億32百万円と前年同期比1.4%増加しました。
 
 
その他事業
機能性化学品の受注が伸長、売上高は3億75百万円と前年同期比32.3%増加しました。
 
2006年12月期業績予想
 
<連結>
 
増収・増益の予想です。
土壌処理剤「バスアミド」の販売及び輸出の好調を予想しています。
また、連結子会社三和化学の収益改善も見込まれます。

尚、事業の性質上、同社グループの売上高は上期偏重型です。一方、経費は期を通して平準化されていますから、通期の利益は中間決算よりも少なくなります。
 
<セグメント別予想>
 
配当政策
 
1株につき20円を予定しています。利益は3分割して、配当、内部留保、従業員への還元に等しく配分することが同社の方針です。
 
適用拡大情報
 
2006年7月31日付けで、以下の製品の適用が拡大されました。
 
薬剤名 主な拡大内容
カネマイトフロアブル あけび(果実)、さんしょう(果実)、りんどう
アルバリン顆粒水溶剤 すもも、みずな、食用ぎく
アルバリン粒剤
ビリーブ水和剤 らっきょう
兼商モレスタン水和剤 食用さくら(葉)
バスアミド微粒剤 にがうり、食用ぎく、葉しょうが、みぶな、つぼみな、さといも(葉柄)
D-D92 しそ、しそ(花穂)、バジル、うど、薬用にんじん、食用ぎく
モゲトン粒剤 使用時期、使用回数の変更およびくわい
モゲトンジャンボ 使用時期、使用回数の変更
アークエース粒剤 使用時期、使用回数の変更
モゲブロン粒剤 使用時期、使用回数の変更
マデック乳剤 ポンカン、まりひめ、ひめのつき、南風、バレンシアオレンジ、アンコール、マーコット、愛媛果試第28号
 
取材を終えて
同社の中期ビジョンは、売上高100億円、経常利益10億円、当期純利益6億円。創立60周年を迎える2010年には、東証1部への指定替えと共に上記数値目標を達成したい考えです。
一方、株価は、ここ一月余り900~1,000円のボックス圏にあります。しかし、配当利回りは2%を超え、しかも、今後、土壌処理剤やダニ剤で、自社開発の新製品が相次いで上市されるため、中期的な業績展望も良好です。現在の配当政策が継続されていれば、当期純利益6億円が達成された折には、1株当たり配当は2.5倍の50円になる計算です。今後の株価動向に注目したいと思います。