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(7542)

ブリッジレポート:(7542)ビスケーホールディングス vol.4

(7542:JASDAQ) ビスケーホールディングス 企業HP
岸田 登社 社長
岸田 登社 社長

【ブリッジレポート】ビスケーホールディングス vol.4
(取材概要)
「ファッション業界におけるブランドの栄枯盛衰は激しく、一時のブームで拡大してもピークを過ぎれば、規模が急速に縮小してしまいます。こうした中、・・・。」 続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社ビスケーホールディングス
社長
岸田 登
所在地
東京都世田谷区玉川 1-17-9
決算期
8月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2006年8月 7,246 -389 -403 -565
2005年12月 10,127 -132 -145 -743
2004年12月 8,667 -78 -107 -203
2003年12月 6,510 559 501 194
2002年12月 6,953 526 543 3
2001年12月 7,662 939 932 407
2000年12月 7,415 1,016 1,019 509
1999年12月 7,098 1,479 1,533 716
株式情報(11/24現在データ)
株価 時価総額 発行済株式数 単元株数
290円 1,737百万円 5,988,000株 1,000株
ビスケーホールディングスの2006年8月期決算について、会社概要と共にブリッジレポートにてご報告いたします。
 
会社概要
 
同社グループは、持株会社である(株)ビスケーホールディングスと連結子会社13社より 構成されており、婦人服・紳士服の企画・製造及び販売を主要な事業としています。独自性・創造性に富んだブランド展開が特徴です。
 
 
<沿革>
アパレル卸企業として創業した後、小売事業に参入。その後、持株会社化してビジネスモデルの転換を図りました。現在、「卸から小売へのシフト」と「多ブランド化」の戦略を進めています。
 
1985年1月、東京都渋谷区に婦人服卸業を目的とした(株)ビスケーとして設立されました。4年後の89年11月には東京都世田谷区に本社ビルを竣工し、本社を移転。93年01月に婦人服の製造を目的としてバーンズ(株)を設立しました。
96年10月、小売事業を開始し、初の百貨店インショップを高島屋新宿店に出店。97年6月には、日本証券業協会に店頭登録しました。98年02月、初の直営店として銀座店を出店、99年07月には台湾に善美国際股有限公司を設立し、台湾における小売事業を開始しました。03年01月、会社分割により営業を新設子会社4社に承継し、持株会社に移行。商号を(株)ビスケーホールディングスに変更しました。
 
「卸から小売へ」、そして「多ブランド化」を推進
 
 
<ブランド:( )内は06年8月末店舗数>
 
ミセスブランド事業
 
ヤング・キャリアブランド事業
 
インポートブランド事業
 
メンズブランド事業
 
<店舗及び商品(ポール・カ、スナールエクストラ、ドゥニーム)>
 
2006年8月期決算概要
 
売上高 計画:78億円 ⇒ 実績:72億46百万円(差異:5億53百万円)
 
「ビーシーアミ」をはじめとする卸部門の回復が弱く、ミセスブランドの販売が計画未達となった事が主な要因です。
 
 
経常利益 計画:6百万円 ⇒ 実績:△4億03百万円(差異:△4億09百万円)
 
販売管理費はほぼ計画通りの着地となりましたが、売上総利益が減少しました。
売上総利益減少の要因は、次ぎの通りです。
(1)ミセスブランドの売上高未達による利益減少 : 約2億円
(2)ヤング・キャリア、メンズブランドの過年度不良在庫の評価減 :約1億70百万円
(3)決算期変更に伴う返品調整引当金繰入 : 約50百万円
 
当期純利益 計画:4百万円 ⇒ 実績:△5億65百万円(差異:△5億69百万円)
 
上記の要因に加え、期初想定を上回る特別損失が発生しました。特別損失の主なものは次の通りです。
(1)減損損失 : 約1億74百万円
(2)ブランド整理損 : 約41百万円
 
<活動のポイント>
1.ヤング・キャリア及びインポート事業を中心に、ブランド力向上を目指し出店を推進
(1)「デイライル」
名古屋丸栄店(2/25)、心斎橋OPA店(3/3)と、ファッションビルへの展開を進めました。
 
 
(2)「レイブロッサクラリティ」
藤田志保プロデュースブランドです。2006年5月19日、渋谷109にリニューアル・オープンしました。
 
(3)「アナディス」
2006年3月3日、横浜ルミネ店をオープンしました。新宿ルミネ、大宮ルミネに次ぐ3店舗目です。
 
(4)「スウィート フェイス」
ジェニファー・ロペスのプロデュースブランドです。2006年9月より販売を開始しました。
 
(5)「ポール・カ」
スクラップ&ビルドを進めています。2006年6月10日、旗艦店として銀座店がオープン。8月8日には、中国地方初となる三越広島店をオープン。また、8月3日には、東急本店をリニューアル・オープンしました。
 
 
2.販路(SC:ショッピングセンター)の拡大と新たな顧客層の開拓を目指して新ブランドを獲得
(1)英国カジュアルブランド「ベンチ&フーチ」の国内独占販売ライセンスを取得しました。今冬にアンテナショップをオープンする予定です。
 
 
3.ミセスブランド事業、不採算ブランドのスクラップ & 専門店販路活性化ヘの取組
(1)不採算ブランドの見直し実施 → 「カズエアキホ」、「ブランミュー」06AWにてスクラップしました。
(2)店舗スクラップ → 「ビーシーアミ」1店、「キッコミミ」2店、「セットフォア」2店。
(3)「ビーシーアミ」の企画拡充
→ 「プレム」、「エグゼ」、「グレース」の3ラインの展開を開始。マーケットをより細分化し、マーチャンダイジング力の向上を図ります。
(4)個性派ブランド「羽化」の加入 → 「ビーシーアミ」との営業シナジーにより受注が増加。展示会での受注が、件数ベースで116件、金額ベースで約1億増加しました。
 
<連結:8ヶ月決算>
 
売上高総利益率低下の主な要因は、過年度不良在庫の評価減(△1億70百万円)及び決算期変更に伴う返品引当金繰入(△50百万円)等です。
1月~8月の8ヶ月間は1月、7月のセールを2回含むため、もともと収益的には厳しい期間です。
 
<事業別売上高/営業利益>
 
積極的な事業展開に伴う連結調整勘定償却額及び営業権償却額が負担となっています。加えて、ミセスは期末特有の値引・返品により総利益が減少しました。また、ヤング・キャリア及びメンズは過年度在庫の評価減を行いました。
 
ミセスブランド事業
新ブランド「羽化(ウカ)」の投入等により売上高は38億29百万円となったものの、市況低迷による専門店販路の利益率の低下等により、営業損失11百万円(連結調整勘定又は営業権償却額を除く実質営業損失1百万円)となりました。
 
ヤング・キャリアブランド事業
4店舗の出店(退店1店舗)効果により売上高は13億26百万円となったものの、決算期変更に伴う売上総利益率の低下、在庫評価減の実施、出店に伴う費用増等により、営業損失は97百万円(同実質営業損失56百万円)となりました。
 
インポートブランド事業
「ポール・カ」、「シャンテクレール」の販売が好調に推移。不採算ブランドの整理効果も顕在化しました。売上高14億64百万円、営業損失1百万円(同実質営業利益53百万円)となりました。
 
メンズブランド事業
決算期変更に伴う売上総利益率の低下、在庫評価減の実施、12ヶ月分の営業権償却額の計上等により、売上高6億26百万円、営業損失86百万円(同実質営業損失15百万円)となりました。
 
<貸借対照表>
 
8月末は秋冬モノ(重衣料、高単価)の仕入増により、棚卸資産が増加する傾向があります。
今決算より、少数株主持分は純資産勘定として計上されています。
 
<キャッシュ・フロー計算書>
 
キャッシュ・フロー・ベースでは、損益計算書ほど悪くはありません。
 
営業CF
利益の減少や決算期変更に伴う一時的な要因等で営業CFは1億82百万円のキャッシュ・アウトとなりました。ただ、役員退職慰労金支払額の減少で大幅に減少しました。
 
投資CF
連結子会社の出店に伴う有形固定資産の取得よる支出2億69百万円や敷金及び保証金の差入による支出1億19百万円等で、投資CFは2億67百万円のキャッシュ・アウトとなりました。有形固定資産の取得に加え、前期は保険積立金の解約による収入があった事等から、キャッシュ・アウトの金額は前期を上回りました。
 
財務CF
長短借入金の返済や社債の償還、配当金の支払等で財務CFは62百万円のキャッシュ・アウトとなりました。前期に比べて、新規の借入が減少しました。
 
この結果、期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は15億52百万円と、前期末より5億13百万円減少しました。
 
2007年8月期業績予想
 
<連結>
 
ブランド及び店舗のスクラップ&ビルドの実施、販管費の削減等により、経常損益は2期ぶりの通期黒字が見込まれます。
 
<事業別計画>
 
ミセスブランド事業
「羽化」、「CuteBIue」、「ステラブルー」といった新ブランドがフルに寄与します。引き続き不採算ブランドのスクラップを進める考えです。
 
ヤング・キャリアブランド事業
「アナディス」を南青山と新丸ビルに出店します。一方、商品によるバラつきが大きかった(売れるものは売れたが、ヒット率が低かった)「ブロンドラジェ」は、ブランドの見直し・集約により在庫ロスの削減を図ります。
 
インポートブランド事業
「シャンテクレール」はこれまで仮設店舗で営業していましたが、2007年2月に国内第1号(直営店)が東急本店内にオープンします。また、「ベンチ&フーチ」のアンテナショップを11月にオープン。今期は更に1店舗の出店を予定しており、下期以降の業績寄与が期待できます。
 
メンズブランド事業
下期に営業損失が拡大するのは、一般的に下期は利幅が少なくなる傾向があるからです。「ドゥニーム」の首都圏への出店を模索しています。
 
中期経営計画(2007年8月期 ~ 2009年8月期)
 
<位置付け>
過去3年は、「ビジネスモデル転換期」であり、今後の持続的な成長を可能にする為の事業基盤整備の期間でした。ミセスオンリーから多ブランド化に転換すると共に、卸売中心から小売、海外販売など販路の多様化に努めてきました。
今後3年は、「新ビスケーHDの第2次創業期」と位置づけています。過去の"投資"を収益化する時期であり、また、3年後以降の更なる成長継続を可能にするための「準備期間」でもあります。
 
 
<売上高及び経常利益率の計画>
 
卸・小売の比率は、2009年8月期で40:60を計画しています。
 
<事業別営業利益(本部経費配賦前)>
 
1.営業利益の推移
 
2.連結調整勘定及び営業権償却前の実質営業利益
 
<ブランド毎の取り組み>
1.ミセスブランド事業
大きな伸びは見込まず、新ブランドの育成と不採算ブランドのスクラップによる赤字削減で体質改善を図ります。
 
(1)ブランド進化
1985年発売開始の「ビーシーアミ」は、マーケットサイズ重視の戦略を進めます。
 
(2)ブランド強化
「セットフォア」(1997年発売開始)、「キッコミミ」(1998年発売開始)、「アプリカード」(2003年発売開始)のブランド強化に取り組みます。
 
(3)ブランド育成
「羽化」(2006年SS)、「キュート・ブルー」(2006年AW)、「ステラ・ディ・ブルー」(2007年SS)
 
 
2.ヤング・キャリアブランド事業
店舗増によるオペレーションコスト(仕入原価・販促費等)の低減に努めます。
 
(1)成長ドライバーブランド 「アナディス」、「アンカ」、「ルクスルフト」
首都圏を中心に3年で5店舗の出店を目指します。独創的な店舗作りが課題となります。
 
 
(2)パワーブランド 「デイライル」、「レイブロッサ」
“109ブランド”からアジアへの展開を図ります。また、NET販売を強化します。
 
 
(3)ストリートクチュール 「スナールエクストラ」
コラボレーション企画等によりブランドの認知度アップを図ります。
 
 
3.インポートブランド事業
新ブランドの出店により07/8期、08/8期と赤字が続く見込みですが、実質利益ベースでは既に黒字転換しています。既存ブランドの着実な成長と新ブランドの出店により、09/8期には連結調整勘定償却及び営業権償却後で黒字化する見込みです。
 
(1)顧客層拡大 「ポール・カ」
この夏にオープンした旗艦店「銀座店」がフル稼動となります。また、企画とマーチャンダイジングの拡充により、新規顧客層の開拓に努めます。
 
(2)ブランド価値拡大 「シャンテクレール」
07年秋に「ザ・ペニンシュラ東京」内へ出店。アジア地域の旗艦店としての位置付けで、ハイジュエリーブランドの確立を目指します。
 
(3)新販路開拓 「ベンチ&フーチ」
英国カジュアルブランドです(06年AW開始)。グループ初となるSC中心の店舗展開を進め、3年で12店舗の出店を計画しています。
 
 
4.メンズブランド事業
07/8期は在庫評価減負担が続く見込みです。首都圏への出店を強化し、着実な育成を図ります。
 
メンズカジュアル市場の拡大 「ドゥニーム」
1988年発売のロングセラーブランドとしての地位確立に取り組みます。ブランドビジネス化に向けてのマーケットサイズ重視の展開を薦めます。ただ、毎期58百万円の営業権償却が2010年8月期まで続く見込みです。
 
 
長期ビジョン
 
<ビジョン>
ファッション・ブランド・カンパニー(Fashion・Brand・Company)
成熟化された市場のなかで、「単なる規模の拡大」では存在感(差別化)を確立することはできません。このため、アパレルをコア(核)とした独自のジャパニーズブランドビジネスの構築に努めます。具体的には、市場規模、ブランドバリューに見合ったブランド展開を図り、小粒でも良質な利益を獲得できるブランドの集合体(portfolio)の形成を目指します。
 
<「ファッション・ブランド・カンパニー」とは>
目指すところは、アパレル(衣料)をコアとしたファションブランドの集合体(Portfolio)を形成し、独自性のあるブランドビジネスを展開する「ファションブランドカンパニー」です。
 
 
<過去3年間の取り組み>
過去3年間でポートフォリオの構築と販売チャネルの多様化に目処をつけました。
 
1.ポートフォリオの構築
ミセスオンリーから脱却し、多ブランド化を進めました。
 
 
2.販売チャネルの多様化
専門店卸から小売チャネルへの転換を進めました。
 
 
<売上構成比の推移>
1.ポートフォリオの構築 事業別売上構成比の推移
 
多ブランド化が進み、ミセスの構成比が着実に低下しています。
 
2.販売チャネルの多様化 販路別売上構成比の推移
 
8ヶ月決算となり8月に期末を迎えた2006年8月期はイレギュラーな構成比となりましたが、販売チャネルの多様化も着実に進んでいます。
 
<独自のブランド&事業ポートフォリオ>
トレンドの変化や多様化が著しいファッション業界にあって、いつの時代も確実にマーケットを獲得し、継続的な成長を可能にする“ビスケーポートフォリオ”の整備は終わりました。今後は、各ブランドの潜在価値の顕在化に努めます。
 
 
<グループの軌跡とコアブランドの創造>
時間の経過に耐えられるブランドの創造がポイントです。
 
 
取材を終えて
ファッション業界におけるブランドの栄枯盛衰は激しく、一時のブームで拡大してもピークを過ぎれば、規模が急速に縮小してしまいます。こうした中、同社グループは、規模の拡大に固執するのではなく、各ブランドの市場性に見合った規模で、小規模でも一定の支持を得られるブランドを数多く展開する「多ブランド化戦略」を展開しています。
ポートフォリオの構築が一巡し、今期以降、徐々に各ブランドが収穫期に入っていきます。最大(Maximum)より最適(Best)の追求により成長を目指す同社グループの今後の展開に注目したいと思います。