ブリッジレポート
(4955) アグロ カネショウ株式会社

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ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.17

(4955:東証2部) アグロ カネショウ 企業HP
櫛引 博敬 社長
櫛引 博敬 社長

【ブリッジレポート】アグロ カネショウ vol.17
(取材概要)
「農産物は、その安定生産・供給と共に、安全性や、生産過程における環境保全への配慮が必須となっており、農薬メーカーにとっては、安全性が高い、環境負荷の少ない農薬の開発・供給が社会的使命となっています。」  続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
アグロ カネショウ株式会社
社長
櫛引 博敬
所在地
東京都港区赤坂 4-2-19
決算期
12月
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2005年12月 12,154 442 385 114
2004年12月 10,742 536 366 186
2003年12月 7,322 -220 -208 -278
2002年12月 7,792 113 150 41
2001年12月 7,733 242 279 63
2000年12月 8,300 662 709 423
1999年12月 7,821 642 656 224
株式情報(11/28現在データ)
株価 時価総額 単元株数 単元株数 決算データ年月 1株配当
909円 6,133百万円 6,702,431株 100株 2005年12月 20.00円
配当利回り PER(連) 1株利益(連) PBR(連) 1株株主資本(連) ROE
2.20% 53.19倍 17.09円 0.56倍 1,630.30円 1.09%
アグロカネショウの2006年12月期第3四半期業績について、会社概要と共にブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
創立55周年を迎えた農薬専業メーカー。農家とのダイレクトチャンネルを武器に高い収益を上げています。
 
 
無農薬栽培や有機栽培といった言葉をよく耳にしますが、「農薬による病害虫や雑草の防除対策をしないと、農産物の世界の収穫量の30%以上が失われてしまう」と言われています。例えば、財団法人 日本植物防疫協会によると、農薬を使用しなかった場合の農作物の減収率は、水稲27.5%、麦35.7%、桃にいたっては100%との事です。また、除草剤は農作業の負担軽減に大きく貢献しています。ともすると、「農薬=悪」と連想しがちですが、世界的な食糧増産の必要性が叫ばれる中で、環境との調和に配慮しつつ農作物を病気や害虫から守り、食糧増産を進めるために農薬は必要不可欠な存在と言えます。
 
<沿革>
1951年8月、農業薬品・肥飼料の売買を目的に櫛引大吉氏が光洋貿易として創業。同年、兼商㈱に商号を変更しました。
99年の自社開発のダニ剤「カネマイト」の登録取得や03年のBASF社からの土壌処理剤事業の買収が原動力となり、日本国内の農薬出荷金額が漸減傾向にある中で業績拡大が続いています。
資本政策面では、93年6月の店頭登録を経て、2000年9月に東証2部に上場しました。
 
 
<事業内容>
事業は、国内農薬出荷額の約50%を占める果樹・野菜向けが中心の農薬事業とその他事業に分かれ、構成比は前者が95%。農薬事業は、ダニ剤、害虫防除剤、土壌処理剤等の病害防除剤、除草剤、その他(植物成長調整剤、展着剤)に分かれます。また、その他事業では、医薬、農薬及び動物薬の中間体、機能性材料、他機能性化学品、表面処理薬剤等を扱っています。
 
主要製品
 
 
新製品
 
<特徴>
1.農家、販売店、当社グループの連携による「トライアングル作戦」
 
販売は特約店を通して行われますが、同社はエンドユーザーである農家とのコミュニケーションを重視しており、実際には支店や営業所に配置されている70名のTCA(Technical&Commercial Adviser)と呼ばれる営業担当者が特約店と連携して、農家に農薬の正しい使い方や経営面での助言を行っています。
同社では、これを、農家、販売店、当社グループの連携による「トライアングル作戦」と呼び、需要開拓と販売促進につなげています。
 
2.研究開発体制
農薬として販売するためには、内閣府食品安全委員会の審査や審査農林水産省の承認・登録が必要です。開発から承認・登録までに約10年の年月と15億円程度の開発費が必要となるため、同社が73%と言う高い株主資本比率を誇るように、農薬メーカーには財務の健全性が必須となります。
同社では、この安定した財務基盤をベースに、土壌処理剤(土壌病害虫&線虫防除剤)及びダニ剤を中心に研究開発に取り組んでいます。
 
(1)土壌処理剤(線虫防除剤)のラインナップ強化
 
(2)ダニ剤のラインナップ強化
 
3.海外展開
日本、韓国、台湾等で食用作物および花類に普及が進んでいるダニ剤の「カネマイトフロアブル」ですが、北米で食用および花用に、また南米でも花用として登録され、普及が拡大しつつあります。欧州各国においても2006年から2009年にかけて登録が得られる見込みです。
 
 
4.グループの総合力
M&Aによる積極的な事業展開も同社の特徴です。02年には三井物産との合弁会社で生物農薬を手掛けるセルティスジャパン㈱(非連結)を設立。03年には同じく三井物産と合弁で、連結子会社Kanesho Soil Treatment(KST:カネショウ ソイル トリートメント)をベルギーに設立しました。KSTは独BASF社から事業買収した土壌処理剤事業を手掛けており、現在、世界97カ国で事業を行なっています。
更に、04年9月には、農薬原体・中間体、医薬及び化学品分野で開発・販売を行う三和化学工業㈱を連結子会社化しました。
 
2006年12月期第3四半期業績
 
<連結>
 
増収・増益となりました。
農薬の残留基準の見直しによるポジティブリスト制度(注.1)導入の影響が見られましたが、防虫剤及び輸出が好調に推移しました。
 
(注.1)ポジティブリスト制度
残留農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度。
 
従来の制度は、「ネガティブリスト制度」と言い、「超えてはならない農薬の残留値リストに無い農薬の残留は規制できない(国内登録のない農薬は規制できない)」と言うものでした。
例えば、A農薬について、トマトは1ppm、キュウリは2ppmと基準値が決まっていますが、レタスやほうれん草については基準値が無い場合、A農薬がどれだけ残留していても、レタスやほうれん草の残留農薬は規制の対象となりませんでした。
 
 
これに対して「ポジティブリスト制度」では、農薬が残留しても良い基準値を設定しました。残留する可能性のある農薬×食品の全てに基準値を設定。国内登録のない農薬であっても、輸入作物に残留の可能性があれば、基準値が設定されています。
 
 
<貸借対照表>
前年同期と比較して総資産が5億24百万円増加しました。
資産では、現金及び預金、受取手形及び売掛金の増加する一方、償却により営業権が減少しました。また負債は12百万円の減少。支払手形及び買掛金が増加する一方、借入金が減少しました。
この結果、自己資本比率は2006年3月末の49.5%から51.5%に2ポイント上昇しました。
 
<損益計算書>
 
セールスミックス(売上構成)や輸出比率によって変化する売上総利益率は36.9%と2.1ポイント低下しましたが、売上高販管費比率が3ポイント低下、営業利益率は7.4%と0.9ポイント高まりました。
 
2006年12月期業績予想
 
<連結>
 
業績は概ね予想通り推移しており、通期の業績予想に変更はありません。
土壌処理剤「バスアミド」の販売及び輸出の好調を予想しています。
また、連結子会社三和化学の収益改善も見込まれます。
 
トピックス
 
<単元株式数の変更>
投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大と更なる流動性の向上を図るため、2006年9月1日より単元株式数を1,000 株から100 株に変更しました。
 
適用拡大等の情報
 
直近では、次の情報が発表されています。
 
(1)2006年11月1日
除草剤「アークエース1キロ粒剤」が農薬登録されました。適用雑草は、水田一年生雑草、マツバイ、ホタルイ、ヘラオモダカ(北海道、東北)、ミズガヤツリ(北海道を除く全域)、アオミドロ・藻類です。
 
(2)2006年11月15日
軟腐病、腐敗病、斑点細菌病の殺菌剤「キノンドーフロアブル」の「非結球レタス」での使用時期が「収穫21 日前まで」でしたが、「収穫30 日前まで」に変更となりました。
 
取材を終えて
農産物は、その安定生産・供給と共に、安全性や、生産過程における環境保全への配慮が必須となっており、農薬メーカーにとっては、安全性が高い、環境負荷の少ない農薬の開発・供給が社会的使命となっています。人々の生活や地球環境への影響までも考慮し、広い視野での農薬開発と使用技術の普及に取り組む同社にエールを送りたいと思います。