ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

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ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.12

(4767:東証2部) テー・オー・ダブリュー 企業HP
川村 治 社長
川村 治 社長

【ブリッジレポート】テー・オー・ダブリュー vol.12
(取材概要)2007年9月4日掲載
「同社にとって3年ぶりの中期計画発表となりました。向こう3年間、毎期最高益を更新するという内容はもちろん、中期計画を発表するということ自体が今後の・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社テー・オー・ダブリュー
社長
川村 治
所在地
東京都港区虎ノ門 1-26-5 虎ノ門17森ビル
決算期
6月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年6月 13,070 1,051 1,041 551
2006年6月 12,341 781 784 423
2005年6月 10,705 771 782 465
2004年6月 9,638 781 765 466
2003年6月 9,441 1,103 1,073 537
2002年6月 8,600 940 920 462
2001年6月 7,555 756 730 371
2000年6月 5,995 556 537 238
株式情報(8/9現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
620円 11,612,319株 7,200百万円 13.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
16円 2.6% 55.58円 11.2倍 365.37円 1.7倍
※株価は8/9終値
 
テー・オー・ダブリューの2007年6月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
イベントの「企画」・「制作」・「運営」・「演出」及びセールスプロモーションに関するグッズ・印刷物の制作を行っています。
イベントが広告ツールとして社会的に認知され始めたのは大阪万博以降と言われていますが、まさに同社の歴史と軌を一にしています。以来、30年、同社は「ウォークマン(第1号モデル)発売キャンペーン」、「東京湾横断道路(アクアライン)開通記念式典」、「Windows95発売キャンペーン」、「FIFA2002ワールドカップ抽選会」等を手掛け、常に業界をリードしてきました。
 
 
2007年6月期決算
 
<連結>
 
 
当期純利益が過去最高を更新。5月21日に上方修正した予想(売上高12,787百万円、経常利益949百万円、当期利益504百万円)を上回る着地となりました。
 
<財政状態及びキャッシュフロー>
 
 
フリー・キャッシュ・フロー(営業CF-投資CF)も黒字化しました。財務キャッシュフローが766百万円の赤字となったのは、借入金を返済したためです。
 
2007年6月期決算の特色・傾向
 
<価格帯別:個別>
小型案件(~1,000万円)で力を付けた若手社員(2000年以降、入社)が中型案件(1,000~5,000万円)の受注を伸ばしています。
 
 
<受注形態別:個別>
自動車メーカーであれば車種別、化粧品メーカーであればブランド別といった具合に、車種毎、ブランド毎に広告代理店を決めて責任を持たせる"責任代理店制"が昨今の特徴です。このため、ある車種やブランドのプロモーションで競合に勝つと、その車種やブランドの次のプロモーションも受注できる可能性が高まります。つまり、競合の結果、受注した案件が増えると、指定受注も遅れて増加します。
 
 
<粗利率:個別>
粗利率は想定していたとおりです。となりました下期に若手が対応した大型案件を増やしたため、通常案件(粗利率15%以上)の平均粗利率は前期の26.9%から26.2%に低下しましたが、低営収案件(同15%未満)の粗利率が6.83%と1.44ポイント改善しました。
 
<企画勝率:個別>
企画提案に若手社員を参加させたため、中間期の勝率は27.7%にとどまりましたが、下期に入り成果が現れ始め、ほぼ3割に回復しました。
 
 
<業種別売上高:個別>
本来、食品・飲料・嗜好品の広告は、情報・通信や自動車の広告と同じくらいの市場規模があります。同社が手掛けるSP(販売促進)の評価が高まってきた事で食品・飲料・嗜好品業種向けの売上高が増加しました。
 
 
<カテゴリー別:個別>
販促・広報等の複合案件が増加しました。SPの比率が70.3%から75%に上昇しました。最終的にはSPを80%程度にまで引き上げたい意向です。
 
 
<得意先別売上高:個別>
平成18年6月期は、「万博」が電通向けの売上高を約5億円、「TXつくば」が博報堂向けの売上高を約5億円、それぞれ押し上げました。博報堂向けはこれを補って増収、電通向けも実質的には増収です。
 
 
2008年6月期の業績予想
 
<連結>
 
増収・増益の予想です。
活発な新商品・サービスの投入が続く情報通信業界、新商品販売と市場競争が活発な家電業界、更には、自動車業界等、幅広い業種で積極的な広告活動が見込まれます。
 
<受注残の状況>
 
 
上記の期首受注残高(5,398百万円)は6月20日時点のものですが、8月7日現在、約69億円に増加しています。6月20日時点で竹・梅に計上されていた案件が振り替えられたためですが、新規案件で竹・梅は61億円を維持しています。
 
2008年6月期の戦略
 
<博報堂グループに対する進捗>
2007年6月期は、関係強化が進み、SP・プロモーションの受注が拡大しました。
 
 
2008年6月期は、組織営業基盤の拡大及びプロモーション領域の拡大に取り組みます。
 
1.組織営業基盤の拡大
SPプランニング部暑(博報堂カスタマーマーケティング事業局)及びイベント実施部署(博報堂プロダクツPRイベント事業本部)への専任担当の常駐を継続します。また、企画から制作まで、博報堂グループの体制に合わせたサポートの実現に取り組みます。
 
2.プロモーション領域の拡大
プランニング機能を充実させSP総合提案を行う事で複合型プロモーションの獲得につなげます。また、SPプロモーションの主要クライアントからの受注拡大にも取り組みます。加えて、SP制作専門社員の配置により制作機能を充実させ、SPにおける実施領域の拡大と実施領域の深耕に努めます。
 
<ADKグループに対する進捗>
2007年6月期は、前期より案件数は増加したものの、平均単価が減少したため売上高は減少しました。また、SP専門部署への取組が計画に達しませんでした。
 
 
2008年6月期は、営業力の強化と商品力の強化に取り組み、360度コミュニケーションアプローチを強化します。
 
 
1.営業力の強化
連結子会社 ティー・ツー・クリエイティブ(以下、T2クリエイティブ)を中心とした制作支援グループを充実させる事で、担当者の制作業務負担の軽減を図ります。
TOW企画部門において、ADK企画チームの再結成を行い企画力・提案力を強化します。
TOW担当者の週間進捗管理及びADK個別部門の情報収集・分析により個別営業担当の管理を強化します。
 
2.商品力の強化
SPツール制作プロセスの短縮化
イベント・プロモーション個別案件の品質向上
発注先ネットワークの整備
 
<電通グループに対する進捗>
大型案件(万博)のカバーには至らなかったものの、案件数は増加しました(1件あたりの単価が減少)。若手は確実に成長していますが、未だイベントパートのみの受注が中心です(イベントとSP共に受注できれば、単価が上昇します)。
 
 
2008年6月期は、イベントだけでなく、SPパートも含んだプロモーション領域全体での受注で単価の引上げを図り、売上高を拡大させる考えです。
 
 
イベント担当の出向、名刺保持者の増加に加えSP部門からも出向を実施し連携を強化する事で、イベントからSP、SPからイベントヘと受注を拡大させていきます。
 
若手チームリーダーの登用で、東京は5チーム体制へ移行します。これまでの営業対象部門を細分化して、新規顧客を徹底的にフォローする事で開拓につなげます。また、大阪支社に加え、名古屋を支社化します。ベテランのチームリーダーを支社長に送り、中部エリアにおける雷通グループ内でのNo1プロダクションを目指します
 
<中堅代理店に対する進捗>
新規中堅代理店の開拓は進みましたが、一部得意先の予算縮小もあり売上高は微増にとどまりました。
 
 
ワンストップソリューションサービスに加え、代理店各社が強みを持つ得意先や分野へのサービスを強化します。
 
企画からSP全般制作業務(WEB・印刷・ブレミアム・イべント)のワンストップサービスのニーズは続く
新規代理店の開拓は一旦止め、各代理店が強い得意先の新規開拓を行い、売上高の拡大、安定化を図る
大手との差別化を図る中堅代理店の戦略を理解し、ワンストップサービスを提供するために、一部代理店との定例勉強会を開催する(WEB+流通・交通プロモーション=特徴を活かしたクロスメディア)
各代理店の専任担当の常駐を拡大する(2社から3社)
入社3年未満の社員を提案案件に積極的に投入する
利益率改善のために案件チェックを週単位で実施する
 
中期事業計画(2008年6月期~2010年6月期)
 
同社の企業理念である「イベント及びプロモーションを通して人と人のコミュニケーションを大切に心豊かな社会作りに貢献すること」を再認識し、プロモーションの総合制作会社として成長を目指します。具体的には、イベントを含めたプロモーションの総合提案力と総合制作力でTOW ブランドを確立します。そして、安定した受注・制作力により、2010年6月期には、売上高経常利益率10%を復活させる考えです。
 
<概要:連結>
 
 
<基本方針>
広告市場(6兆円)・イベント市場(4兆円)・プロモーション市場(4兆円)が各々重層的に展開されている市場のなかで、従来からのイベント領域から、更に増加が続くプロモーション領域へと事業領域の拡大を図ります。
 
 
 
宣伝・販促・広報等、媒体を含む予算の垣根がなくなり商品戦略にとどまらず企業ブランドから購買機会の店頭までの一元管理が進んできました。このため、プロモーション力のある総合的・複合的なプランニング力・制作力が求められています。
 
 
<具体的な施策>
1.プロモーションの提案力の拡大
WEBクリエイターとのネットワーク構築及び外部プランニングスタッフの拡大によりプロモーション提案力を強化します。具体的には、SP領域と関係が深いWEBの次世代クリエイターと顧問契約を結び、総合企画に活用します。また、TOWの企画をプロモーション全体に移行するために、専門性の高い外部のイベント、映像、空間プランナー等を活用します。
 
*スケジュール
クリエイター :08年6月期2名、09年6月期4名、10年6月期8名
外部プランナー(07年6月期4名) :08年6月期6名、09年6月期8名
 
2.SP制作力と収益率の向上
直接輸入(中国・東南アジア)を念頭に、プレミアム・ノベルティの海外制作体制を見直します。中国語専門スタッフの採用や現地工場と業務請負契約を締結する事でコスト及びコミュニケーションロスの低減を図ります。
 
*スケジュール
08年6月期 :候補企業の選定、契約内容の策定
09年6月期より実施 :09年6月期5社、10年6月期10社
 
3.イベント制作力と収益率の向上
 
(1)イベント業務管理の専門部署化を進め、イベントの「品質」及び「価格」の管理体制強化
具体的には、07年6月期に実施した専門人員を補強し、制作過程や本番・実施で、問題点の洗い出しを行い全社で共有化する他、若手の原価管理に積極的に相談に乗る等で収益率の向上を図ります。また、外部発注先の妥当性を毎月チェックして最適な協力機関の選定基準を策定します。
 
*スケジュール
08年6月期は個別対応でのテストを実施し、09年6月期より本稼動。10年6月期には購買部門を正式に設立する考えです。
 
(2)T2クリエイティブの成長
T2クリエイティブの事業を軌道に乗せる事でTOWのイベント制作を支える体制を強化します。外注比率の多い演出・映像を内製化する事は、TOWの強みとなります。
TOW内にT2社員やT2スタッフを専属配備する事で発注量に合わせたアシスト業務の徹底や会場調査、キャスティングなどアシスト業務の充実を図ります。
 
(3)イベントスタッフネットワークの拡大
ネットワークを通した発注体制を拡大させます。07年6月末でメンバー500名体制のネットワークを確立しています。トップミーティング等でメンバーが所属する会社の囲い込みを図ると共に連携体制を全国に広げます。
 
4.人材育成強化
過去の実績を踏まえた研修プログラムを統合し、既存の職階別研修に加えて、テーマ別研修や女性研修等様々な研修プログラムを展開します。また、全社的なナレッジミーティングを開催して、SP情報や成功事例を紹介するなど若手向けナレッジ体制を強化します。
 
5.ブランド構築
出版の定例化、JACE(イベント産業振興協会)への積極的な参加、及び大学キャリア教育プログラムへの参加によりブランド構築に取り組みます。
 
(1)出版の定例化
毎年2冊の発行継続(2007年6月発行済み、年末にも発行予定)
 
(2)JACEへの積極的な参加
イベント大賞「制作賞」の継続(2007年実績を定例化)
 
(3)大学キャリア教育プログラムへの参加
研修ソフト開発との連動による講座化(来年度より3校で実施する計画)
 
6.その他の施策
 
(1)内部統制の構築
財務報告の信頼性向上、コーポレートガバナンスの向上、リスク管理体制の強化、及びITインフラの再構築等、全社横断型プロジェクトを推進します。
 
(2)福利厚生の充実
育児手当の充実や全社での学資保険の加入を検討しています。
 
「言行一致」を行動スローガンに中期事業計画に取り組みます
 
 
取材を終えて
同社にとって3年ぶりの中期計画発表となりました。向こう3年間、毎期最高益を更新するという内容はもちろん、中期計画を発表するということ自体が今後のマネジメントに対する自信の表れであると思います。この自信の背景にあるのは、社員育成プログラムの確立であると思います。社員の育成は、人が資産の同社にとって生命線であり最大の課題でした。この課題を克服した事で、中期的な展望が開けてきたのだと思います。
一方、株価はPER11倍弱の水準にあり、配当利回りに至っては2.6%。人的資産の価値を適正に評価する事は難しい問題ですが、株価は企業価値を十分に反映していないように思われます。