ブリッジレポート
(6672)

ブリッジレポート:(6672)レイテックス vol.3

(6672:東証マザーズ) レイテックス 企業HP
高村 淳社長
高村 淳社長

【ブリッジレポート】レイテックス vol.3
(取材概要)2008年2月19日掲載
「事業の特性上、今後も業績の振れはあると思いますが、方向性が見えてきました。製品のバリエーションを紹介しましたが、同社はユーザーニーズに応えるため、・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社レイテックス
社長
高村 淳
所在地
〒206-0033 東京都多摩市落合1-33-3
決算期
5月 末日
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年5月 5,980 290 211 67
2006年5月 4,875 297 214 103
2005年5月 3,622 362 281 135
2004年5月 3,205 352 275 147
2003年5月 1,448 69 42 15
2002年5月 1,063 59 49 4
2001年5月 820 77 63 0
株式情報(2/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
390円 6,069,685株 2,367百万円 5.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12円 3.1% 25.84円 15.1倍 486.49円 0.8倍
※株価は2/12終値。発行済株式数は直近中間期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
レイテックスの2008年5月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
半導体製造工程において、主に前工程(ウェーハ製造、マスク、ウェーハプロセス等の各工程)で使われるウェーハ検査装置、ウェーハ測定装置のファブレスメーカーです。創業以来、オンリーワン製品を開発し、独自のマーケティング力で市場を開拓しシェアを獲得することで、ビジネスを拡大してきました。
自社開発したウェーハ検査装置やウェーハ測定装置をウェーハメーカーやデバイスメーカーに販売するほか、米国Chapman 社等の代理店として、薄膜測定装置、表面粗さ計等を輸入販売しています。
 
*ウェーハ(シリコンウェーハ、又はシリコンウェーハ)
高純度な珪素(シリコン)の薄円盤です。珪素のインゴット(金属を精製して一塊りとしたもの)を厚さ1mm 程度にスライスしたもので、半導体製造に使われます。インゴットの直径は、6 インチ (150mm)、8 インチ (200mm)、12インチ(300mm)等があり、直径が大きくなるほど1 枚のウェーハから沢山の半導体チップを作る事ができるため、半導体チップ1 個あたりのコストが安くなります。
 
<製品及び商品>
 
ウェーハ検査装置
シリコンウェーハのエッジ(端面)、裏面のキズ等の有無を独自のレーザースキャン方式を用いて検査する装置です。同社の製品では、エッジ検査装置「Edge Scan」、裏面検査装置「Back Scan」、エッジ裏面複合検査装置「EdgeScan B+plus」等があります。
ウェーハ測定装置
シリコンウェーハ表面の凹凸を測定する装置です。同社の製品では、360 度のウェーハロールオフ測定が可能な「DynaSearch XP」、ウェーハの両面を非接触で測定できる「NanoPro NP2」等があります。
表面粗さ計
測定物の粗さやうねりなどの表面形状を解析する装置です。
 
 
<沿革>
 
1988年7月に設立され、90年7月にChapman社製非接触表面粗さ計「Chapman」の販売を開始しました。95年12月に自社製品第1号となるウェーハエッジ欠陥自動検査装置「Edge Scan」の開発に着手し、96年5月に市場投入しました。以後、ディスク用表面粗さセンサー(97年3月)、ウェーハ裏面自動検査装置「Back Scan」(2001年4月)など自社製品のラインナップを拡充。04年4月に東証マザーズに株式を上場しました。
 
2008年5月期中間決算
 
<連結>
 
 
売上高は前年同期比56.1%増の2,509百万円。ウェーハメーカーの300mmウェーハ増産を受けてウェーハ検査装置「エッジスキャン12インチ」の販売台数が増加した他、エッジ・裏面複合機も堅調に推移しました。
ただ、開発費の増加で売上総利益率が47.8%と12.3ポイント低下。(株)ナノシステムソリューションズの子会社化(07年3月)に伴う人件費の増加やのれん償却(77百万円)の発生等による販管費の増加を吸収できず、452百万円の営業損失となりました。
尚、売上高が期初予想に対して下振れしましたが、引合や受注は堅調です。また、予想外の販売価格の下落や経費の増加もなく、利益面での予実の差は誤差の範囲にとどまりました。
 
<セグメント別動向>
 
 
ウェーハメーカーの300mmウェーハ増産を受けてウェーハ検査装置「エッジスキャン12インチ」の販売台数が増加した他、エッジ・裏面複合機も堅調に推移しました。
 
 
競合先の戦略転換に伴い、同社も製品戦略を変更しました。具体的には、長年の販売実績があり、利益率も高い「ダイナサーチ」の販売を強化すると共に、開発資源をウェーハ検査装置にもシフトします。このため、通期で15台の販売を見込んでいる「Nano pro」が、期初予想程には伸びない可能性があります。
また、三井金属より買収したウェーハ内部欠陥検査装置の第1号機を韓国のデバイスメーカーに納入しました。今後の事業拡大が期待できます。
 
レイテックスの事業
 
<レイテックスのターゲットマーケット>
今では当たり前となりつつあるウェーハ表面の検査や測定ですが、その必要性に早い段階から注目していたのが同社です。同社は、ウェーハ表面の検査装置や測定装置の市場を創造してきたパイオニアと言えます。
 
 
同社の顧客は、半導体デバイスメーカー、シリコンウェーハメーカー、及び半導体の製造・検査装置メーカーです。
かつての半導体需要はシリコンサイクルの影響を受けて大きく変動しましたが、最近では、テレビ、白物家電、自動車など裾野が拡大し、好不調の波が小さくなっています。
 
 
 
上記の図のように、同社製品の検査・測定項目は短期間に大幅に増加しています。言い換えると、年々顧客の要求が厳しくなっており、技術的な難易度が上がっています。このため、昨年子会社化した(株)ナノシステムソリューションズの技術者の大半をレイテックスに異動し、技術・生産面での底上げを図りました。
 
 
また、同社は中期的な技術動向を見据えて、先行して新たな分野での研究開発に取り組んでいます。
 
 
上場来、開発が中心のステージが続き売上・利益が伸び悩みましたが、この中間期にほぼ地盤固めが終わりました。これまでの先行投資を回収する新たなステージに入ったと言え、利益の増加を伴った売上の増加が期待できます。
 
 
ダイナサーチ(ナノトポ)は安定的な出荷が続いており、また、ナノプロ(平坦度)は、競合企業と同レベルの製品が完成しました。三井金属から買収した事業であるMO(内部欠陥)もほぼ技術的な完成を見ました。
(株)ナノシステムソリューションズのマスクレス露光装置も今後の業績への貢献が期待できます。
 
これからのレイテックスについて
 
<208年5月期業績予想>
 
 
業績予想に変更はありません。
足元の引合や受注は堅調に推移しており、コストコントロールも上手くいっているようです。このため、大幅な増益予想ですが、業績が下振れする不安は少ないと思われます。
 
<業績推移>
 
 
<利益の出る会社への転換>
 
 
利益の出る会社への転換を図るため、従業員1人当たりの売上高を増加し販管費率を引き下げると共に、総資産の増加を抑えて資産効率の向上を図ります。
 
1.従業員1人当たりの売上高の引き上げと販管費率の引き下げ
これまで開発の遅れにより業績予想の下方修正を余儀無くされるケースがしばしばありました。新製品開発を加速するべく人員を増強しましたが、開発がスムーズに進まなかったためです。しかし、今回、(株)ナノシステムソリューションズを子会社化して同社の技術者を取り込むと共に、開発体制の再構築を図りました。今後、開発の早期完了により売上を拡大させ、ひいては従業員1人当たりの売上高の引き上げと販管費率の引き下げを実現していく考えです。
 
2.総資産の増加を抑え資産効率を向上
これまでは、売上債権の回収期間の長期化とたな卸資産の増加により、総資産が増加しがちでした。売上債権の回収期間の長期化は、新製品の増加や売上の増加に伴い、装置の立上・検収の効率性が低下したためです。また、たな卸資産の増加については、新製品の開発スピードを重視した結果、全体的な開発・生産効率が低下したためです。しかし製品ラインアップがほぼ出揃いました。今後は、出荷時の完成度を高める事で検収までの期間の短縮を図る考えです。
 
<企業価値の向上戦略>
企業価値の向上に向け、製品戦略の多層化、財務体質の健全化、損益分岐点の引き下げに取り組んで行く考えです。
 
1.製品戦略の多層化
ウェーハエッジ検査装置以外の製品ラインナップの拡充に努めます。
 
2.財務体質の健全化
売上債権の流動化を含めた債権回収の迅速化と有利子負債の削減を進めます。
 
3.損益分岐点の引き下げ
立上げを含む製造の効率化に取り組みます。例えば、サービス要員を協力工場に出向させ、出荷時の完成度を高める事で検収までの期間の短縮を図る考えです。
 
取材を終えて
事業の特性上、今後も業績の振れはあると思いますが、方向性が見えてきました。製品のバリエーションを紹介しましたが、同社はユーザーニーズに応えるため、ウェーハ検査装置7種類、ウェーハ測定装置3種類、この他、(株)ナノシステムソリューションズのマスクレス露光装置を含めた8種類の装置の開発・製造に取り組んできました。この成果もあって、2001年5月期に8.2億円だった売上高が6年後の2007年5月期には59.8億円に急拡大しましたが、開発費負担や新製品開発を重視し過ぎたために全体の生産効率が落ち、利益は頭打ちの状態が続きました。
しかし、この中間期でほぼラインアップが出揃いました。このため、業績は、この中間期を底に、上昇トレンドに乗るものと思われます。それを考えると、配当利回り3%、PBR0.8倍の水準にある株価は魅力的です。