ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.1

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 社長
和田 憲昌 社長

【ブリッジレポート vol.1】2008年2月期決算業績レポート
取材概要「浮き沈みの大きい不動産業界にあって、同社は安定成長志向。急激な利益の拡大は無かったものの、その反動も無・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年5月7日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
社長
和田 憲昌
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(4/18現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
567円 10,000,000株 5,670百万円 12.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25円 4.4% 170.00円 3.3倍 1,374.66円 0.4倍
※株価は4/18終値。
 
和田興産の2008年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
兵庫県神戸市を地盤に、明石市、芦屋市、西宮市、尼崎市、大阪市等で、マンション分譲を中心に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び戸建分譲等を手掛けています。マンション分譲は、「ワコーレ」ブランドで50戸前後の中規模マンションが中心。神戸市内では、7年連続で「供給戸数」第1位、10年連続で「供給棟数」第1位の実績を誇り、2008年2月末現在の累積供給実績は282棟10,269戸(着工べース)。戸建分譲は、これまで試験的に行ってきましたが、09/2期以降、本格的に展開する考えのようです。
また、安定収益源として育成中の不動産賃貸では、住居、店舗、事務所、駐車場(月極・時間駐車)等を扱っています。事業はマンション分譲を中心とする不動産販売事業と賃貸その他事業に分かれ、2008年2月期は、不動産販売事業が売上高の92.8%を、売上総利益の85.2%を占めました。
 
 
<沿革>
1899年1月、神戸市にて不動産賃貸業を創業。1966年1月に和田興産(有)として法人化され、79年9月に和田興産(株)に改組致しました。分譲マンションの一棟売りで実績をつくり、91年3月、自社ブランド「ワコーレ」ブランドによる分譲マンション事業を本格化。95年1月の阪神淡路大震災を受けて、96年6月には震災復興のための優良建築物等整備事業にも従事されました。なお、04年9月に、株式をJASDAQ市場に上場致しました。
 
 
2008年2月期決算
 
<非連結>
 
減収ながら、5期連続の経常増益を達成。経常利益は30億63百万円と初の30億円台乗せとなり、過去最高を更新されました。また、期中(07年6月)にワコーレ分譲マンションシリーズの販売が1万戸を突破致しました(08年2月末現在10,269戸)。
不動産販売事業は、分譲マンションの落ち込みが響き減収となったものの、利益率の高い案件の寄与で増益を確保。一方、積極的な新規賃貸物件の投入により、賃貸事業は売上が拡大致しました。

尚、1株当たりの年間配当を、5円増配して25円とする方針のようです。また、不動産事業部内に「戸建事業推進室」を設置しました。これまで試験的に行ってきた戸建事業を本格的に展開する考えのようです。
 
*計画との差異
 
分譲マンション市場が軟調に推移した事や、改正建築基準法施行に伴う混乱で期ズレ案件が発生した事等で、不動産販売事業が計画を6.4%下回りました。一方、賃貸その他事業は計画を6.9%上回りましたが、不動産販売事業の未達を補う事ができず、売上高全体では計画を5.5%下回ってしまいました。
利益面では、利益率の高い物件の寄与により、営業利益以下の各利益段階で計画を上回ったようです。
 
<セグメント別動向>
 
分譲事業への依存度が低下し収益の多様化、収益基盤の強化が進んでいるようです。
 
分譲事業
地価や建築コストの上昇等による販売価格の上昇や顧客ニーズの多様化等で事業環境が軟調に推移したものの、分譲マンション販売は堅調に推移しました。ただ、建築基準法改正による混乱で3ヶ月間の空白期間が生じた事が響いたようです。発売戸数は、前期比56.4%減の343戸(10棟)。契約戸数は、同23.9%減の471戸。期末時点の受注残戸数は同23.1%減の377戸。引渡戸数は同10.9%減の783戸。ワコーレ神戸本山ガーデンズ等13棟が竣工致しました。
 
その他不動産販売
戸建住宅15戸及び1棟卸しマンション等10物件を販売しました。また、これまで試験的に行ってきた戸建住宅分譲を、09/2期以降、本格的に展開する考えのようです。
 
賃貸事業
賃貸物件が16棟353戸増加しました。また、賃貸住宅は90%以上(2月は95%)の高い入居率を安定的に維持しているようです。
 
その他売上
上記3事業に付帯して発生する保険代理手数料、解約手付金収入等をその他売上として計上しております。
 
<トピックス>
1. 初の100億プロジェクトをはじめ3つの大型プロジェク卜販売が好調のようです。

08/2期はKOBEハウス、神戸本山ガーデンズが売上・利益に大きく貢献しました。また、トアロードレジデンスは08年6月に引渡しを予定しているようです。
 
2. 07年6月にワコーレシリーズの累積供給戸数1万戸を達成、08年2月末現在、282棟10,269戸(着工べース)。
3. 7年連続神戸市内「供給戸数」第1位、10年連続神戸市内「供給棟数」第1位。
4. 10/2期までの分譲マンション用地を概ね取得済みのようです。
5. 賃貸事業が収益基盤(売上構成比7.1%、売上総利益構成比14.1%)として着実に成長しております。
6. 賃貸物件(事業用固定資産)に40億円強の投資を実施されました。
 
<財政状態>
 
08/2期の期末総資産は、60億67百万円増の597億88百万円。1棟卸しマンション等の取得に伴う棚卸資産の増加(46億80百万円)や事業用固定資産取得等に伴う有形固定資産の増加(10億02百万円)が要因のようです。尚、今後の売却を視野に入れ、木造の賃貸物件約40億円を棚卸資産に振り替えを行いました。
負債は、46億69百万円増の460億41百万円。分譲マンションの建築資金等の仕入債務の決済資金等として短期借入金が58億37百万円増加。この他、前受金が7億60百万円増加する一方、大型物件の引渡しに伴い長期借入金が27億88百万円減少したようです。
純資産は137億46百万円。当期純利益計上による利益剰余金の増加により、13億97百万円増加しました。
 
<キャッシュ・フロー>
 
営業活動によるキャッシュ・フロー 13億07百万円
マンションの用地購入及び建築費支払等に伴うたな卸資産の増加(25億69百万円)や法人税等の支払(12億22百万円)等のマイナス要因を、税引前当期純利益(29億30百万円)の計上に加え、減価償却費(5億80百万円)や前受金の増加(7億60百万円)、及びその他の負債の増加(4億52百万円)等のプラス要因で吸収されました。
尚、営業活動によるキャッシュ・フローがプラスとなったのは3年ぶりです。
 
投資活動によるキャッシュ・フロー 38億04百万円
有形固定資産の売却による収入(4億29百万円)等の計上があったものの、有形固定資産の取得による支出41億29百万円をカバーできなかったようです。
 
財務活動によるキャッシュ・フロー 28億49百万円
マンション用地の購入資金及び賃貸不動産の購入資金等を長期借入金(113億95百万円)で調達した他、運転資金等の増加を短期借入金(58億37百万円)の増加で賄いました。一方、長期借入金141億83百万円を返済致しました。
 
2009年2月期業績予想
 
<中期経営計画(経常利益を5年で倍増)における位置付け>
現在進行中の中期経営計画では、04/2期を起点に経常利益ベースで毎期15%の成長を維持し、5年で倍増を目指しているようです(09/2期に経常利益34億円を達成)。
 
 
中期経営計画における09/2期の経常利益目標は34億円ですが、改正建築基準法の施行による混乱の影響で1、2のプロジェクトの売上が来期にズレ込む可能性がある事、地価や建築コストの上昇で需要にかげりが見られる事、及び不動産流動化の遅れ等を踏まえて、期初予想を31億円と発表されています。
 
*改正建築基準法施行による影響
 
<同社を取り巻く環境>
同社では、08年の近畿圏及び首都圏のマンション市場は、契約率が低水準で推移し、在庫の増加傾向が続くと見ています。また、原材料価格の高騰を受けて分譲マンションの建築費用は上昇が続くものの、価格転嫁は困難な状況が続くと考えているようで、このため、主力のマンション事業は厳しい事業環境が予想されます。
 
<非連結業績>
 
厳しい事業環境が予想される中で経常利益が過去最高を更新する見込みですが、中期経営計画が未達に終わる可能性が出てきました。
同社では、09/2期のポイントを「原点回帰」としています。基本戦略は変わっていませんが、外部環境の変化に柔軟に対応していく考えです。具体的には、分譲マンション市場は軟調な推移が予想されるため、賃貸事業に注力すると共に戸建事業を本格的に展開してゆくようです。賃貸事業においては、引き続き非レジデンス系の賃貸物件の取得に力を入れ、09/2期の賃貸事業に占める非レジデンス系の売上構成比を約30%に引上げる考えです。また、戸建事業を中心とする「その他不動産販売」の売上高は、前期比57.4%増の80億円を見込んでおられます。
尚、事業エリアは、神戸・阪神間に経営資源を集中してゆくようです。
 
<セグメント別計画>
 
不動産販売事業において、分譲マンション販売は、売上高277億円(引渡717戸)を計画されています。また、その他不動産販売は、戸建て住宅事業への本格参入と賃貸マンション等の販売により売上高80億円を計画されています。賃貸その他事業は、新築賃貸マンションの稼動利率を向上させることで売上高23億円を計画されています。
 
<事業部基本施策>
分譲事業部(成長を牽引する主力事業)
神戸・阪神間を中心に良質な住まいを着実に販売していく計画です。初の100億円プロジェクトであるトアロードレジデンスをはじめ、足下の販売は好調のようです。用地取得戦略としては、地元流通業者とのネットワークを強化すると共に、需要創造と付加価値率向上に努めます。尚、10/2期まで分譲マンション用地を概ね取得済みのようです。この他、資金調達負担やリスク分散の観点から、共同事業にも積極的に取り組んで行く考えのようです(アーバンライフとの共同事業である三宮タワーマンションの販売は直前に迫っています)。
 
不動産事業部(総合不動産業を目指して、2005年6月新設)
将来的な成長・変革の機会を創出する事業であり、同社資産の出口戦略の多様化にもつながります。不動産金融化(流動化・証券化)への対応を進めると共に、複眼的な視点に立った仕入を行なう事でソリューション機能を強化する予定です。また、戸建事業に本格的に進出して行くようです。(09/2期は70戸を計画しています)。
 
賃貸事業部(収益性・安定性の高いストックビジネスを展開)
07/2期~09/2期の3期間に賃貸物件(事業用固定資産)へ100億円以上の投資を行う模様です。「三つの15」戦略の下、賃貸収入の拡大に向けた優良物件の取得を進め、年間3億円規模の賃貸収入の拡大を図ります。また、バリューアップ方式による収益率の向上、資産の入替え、既存物件の改修による資産の優良化に努め、LTV(負債額/資産価値)50%以下を持続して行く予定です。
 
 
<戸建事業への本格的な進出>
08年3月1日付けで、不動産事業部内に「戸建事業推進室」を設置致しました。戸建事業へ本格的に進出する事で、総合不動産事業への「原点回帰」を図るようです。賃貸事業同様、主力の分譲マンション事業に次ぐ収益の柱に育成する方針で、神戸・阪神間で1次取得所者向けを中心に展開。10/2期には神戸市須磨区で大型プロジェクト(用地面積11,300㎡、住宅57戸)が始動を予定しています。
 
<収益力の強化と総合不動産業への「原点回帰」>
 
非分譲マンション事業の拡大により分譲マンション事業への依存度が年々低下しており、総合不動産業として収益基盤の強化が進んでいます。09/2期以降、戸建事業を本格化する事で総合不動産化を更に加速して行くことでしょう。
 
目標とする経営指標
 
小さな体で大きな利益 ⇒ 少数精鋭の頭脳集団を目指します
目標とする経営指標 株主資本利益率(ROE)10%以上確保
従業員1人当たり経常利益の向上
 
取材を終えて
浮き沈みの大きい不動産業界にあって、同社は安定成長志向。急激な利益の拡大は無かったものの、その反動も無く、着実に利益を増やし、配当を増やしてきました。過去数年間、好況を謳歌してきた不動産産業界にあって比較的地味な存在の同社でしたが、当面、厳しい事業環境が予想されるため、存在感を高めるのではないでしょうか。好況に浮かれることなく、「三つの15」戦略の推進やLTV50%以下を維持する事で財務の健全性を維持してきた同社に期待したいと思います。
ただ、強いて注文をつけるとすれば、配当性向の低さでしょうか。財務の健全性維持と裏腹な一面もあるため、難しい問題ではあります。