ブリッジレポート
(3433:東証1部) トーカロ 企業HP
町垣 和夫 社長
町垣 和夫 社長

【ブリッジレポート vol.1】2008年3月期決算業績レポート
取材概要「同社は、鉄鋼等の成熟分野から半導体・液晶、産業機械等の成長分野へシフトを進め、2000年以降の高い利益成長を実現すると共・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年6月3日掲載
企業基本情報
企業名
トーカロ株式会社
社長
町垣 和夫
所在地
神戸市東灘区深江北町4-13-4
事業内容
部品等の溶射加工最大手。半導体・液晶製造部品向けが主力。自動車鋼板関連も柱、広州に合弁
決算期
3月末日
業種
金属製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 24,359 4,684 4,772 2,838
2007年3月 25,212 6,646 6,698 3,860
2006年3月 20,965 5,389 5,413 3,177
2005年3月 18,463 4,615 4,611 2,746
2004年3月 13,947 2,721 2,657 1,566
2003年3月 11,966 1,633 1,574 861
株式情報(5/27現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,848円 15,589,578株 28,810百万円 17.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
45円 2.4% 186.02円 9.9倍 1,103.21円 1.7倍
※株価は5/27終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
トーカロの2008年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
表面改質加工大手、主力の溶射加工では国内トップの実績を誇る。
溶射とは、金属、合金、セラミックス等種々の材料を燃焼ガスやプラズマフレーム等で微粒子状に溶かし、高速で被覆対象物表面に衝突・積層させて皮膜を作る事で基材の表面を改質する加工技術である。表面改質により基材に新たな機能を付与することから機能溶射とも言われる。溶射の材料は1,000種類以上あり、応用範囲が広く、市場のニーズに応じ無限に近い用途開発の可能性を秘めている。とりわけ同社の溶射は鉄鋼向けから出発して、石油化学、自動車、造船、電力等の基幹産業へ拡大、今日では原子力、エレクトロニクス等あらゆる産業分野にわたって広く使われ、他社との差別化。
 
<事業内容と市場規模>
事業は、溶射加工部門とその周辺技術を用いる周辺事業部門に分かれ、08/3期の売上構成比は、溶射加工部門が82.6%、周辺事業部門が17.4%。
・溶射加工部門は、更に半導体・液晶製造装置用部品加工、産業機械部品加工、鉄鋼用設備部品加工、その他(紙・パルプ・石油化学等)に分かれる。(溶射については後述)
・周辺事業部門は、加工技術別にTD処理加工部門、ZACコーティング加工部門、PTA処理加工部門、及び子会社日本コーティングセンター(以下、JCC)の事業領域で物理蒸着法(PVD)処理を中心とするPVD部門に分かれる。 (各部門の詳細については後述)

溶射の市場規模は、450億円(2005年度同社調べ、2008年現時点推定では500億円)であり、約4割のシェアを持つトップ企業である。半導体・液晶関連に至っては、シェアは9割を超える。
 
 
<溶射と周辺技術>
(1)溶射技術

溶射とは
耐摩耗性」、「耐食性」、「耐熱性」、「電気絶縁性」など、さまざまなニーズに応じて自在に皮膜を形成できるのが特徴である。皮膜形成により、設備や装置の「耐久性」、「信頼性」、「加工精度の向上」が図られるとともに、「省エネルギー化」、「省資源化」にも効果をあげる。
電力、鉄鋼、自動車、産業機械等の基幹産業から半導体・液晶、エレクトロニクス、宇宙開発利用に至るまで、きわめて広範囲の先端産業分野において必要不可欠な技術である。
 
・溶射による表面改質の一例
 
溶射の方法は電気式溶射とガス式溶射に大別され、同社が得意とするのは、電気式溶射の中のプラズマ溶射(減圧プラズマ式、大気プラズマ式)とガス式溶射の中の高速フレーム溶射。いずれもハイテク分野の溶射方式である。
 
・溶射の付加機能
 
(2)同社及び子会社JCCが手掛ける溶射周辺技術

TD処理加工とは
塩浴法による超硬薄膜コーティングである。自動車プレス金型の表面処理等に用いられ、複雑な形状の加工物でも均一で極めて硬い皮膜を作ることができる。
 
 
ZACコーティング加工とは
化学的緻密化法によるセラミックコーティングである。化学反応を利用して酸化クロム(Cr2O3)を主成分とする複合セラミックス皮膜を形成する。高密度、高硬度皮膜、高密着力、低い摩擦係数等の優れた特徴を有し、耐摩耗性や耐食性が要求される機械部品に用いられる。
 
 
PTA処理加工とは
高エネルギーを持つ移行性プラズマアークを利用するプラズマ粉体肉盛である。肉盛材料として粉末を用いるので、従来、ワイヤーや棒に加工できなかった難加工材である高硬度材料やセラミックスを肉盛材料とした肉盛溶接ができる。高温下でも高硬度を維持し、優れた耐摩耗性、耐焼付性、耐食性を有するため、第一級の品質管理が求められる石油、船舶、航空機、輸送機、原子力発電等、その応用範囲が広がりつつある。
 
 
PVD処理とは
真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の処理方法があり、同社子会社のJCCのPVDは、最先端をゆくカソードアーク方式のイオンプレーティング装置が中心。また切削工具の分野で実績の高いHCDホロカソード方式のイオンプレーティング装置を揃えている。
 
 
<沿革>
1951年に東洋カロライジング工業(株)して設立された。カロライジング(加工)とは熱処理による鉄鋼部材の耐熱加工だが、鉄鋼の技術革新に伴い次第に需要が減少。同社は研究開発を進めていた溶射へ事業の軸足を移していった。81年には完全にカロライジングを廃して事業転換が完了。現商号のトーカロ(株)に社名を変更した。
その後、業績が順調に拡大し、96年には株式を店頭市場に公開。設立50周年に当たる2000年には史上最高の業績を達成したが、好事魔多しで、外国企業から買収を仕掛けられた。大株主が株式の売却を希望したため、ジャフコとパートナーを組み、特定目的会社ジャフコエスアイジーを設立しTOBを実施した。
上場廃止後、同社を存続会社、トーカロを消滅会社として両社を合併したため、TOB資金のかなりの部分が借入金に振り替わり、TOB以前は無借金であった財務体質が一気に悪化した。財務体質を健全化し、5年以内の再上場を果たすべく業績拡大に取り組んだ結果、03年12月、5年を待たず2年余で再上場(東証2部)を果たした。
 
 
<特徴と強み>
同社の特徴と強みとして、次の3点を挙げる事ができる。
 
(1)溶射を主業とした開発主導型企業
(2)三位一体型の事業展開
(3)ハイエンド商品に注力した高収益体質

(1)溶射を主業とした開発主導型企業
溶射をメインに市場ニーズに即した新商品を開発に取り組む「市場創造」型企業である。大手企業が溶射技術の自社製品への適用を検討する際は、溶射のパイオニア的な存在である同社に相談が持ち込まれ、これが共同開発の契機となる事が多い。
 
(2)三位一体型の事業展開
営業、製造、開発が三位一体となったビジネス展開も同社の特徴である。営業は主要産業毎に横断的なプロジェクトチームに編成されており、セールスエンジニアの70%は理工系出身者で、提案営業・個別ニーズ吸い上げに注力。製造は、溶射加工はもちろん、TD処理加工、ZACコーティング加工、PTA処理加工等、表面処理加工における広範な技術を有し、営業サイドからの多様なニーズに応える。そして、こうした技術のバックボーンとなっているのが、溶射技術開発研究所を核とする開発部門である。
尚、溶射技術開発研究所は、全国20大学との産学共同による基礎技術開発や大手企業30社との実用化技術の開発や特許出願等を行う事でビジネスのシーズを確保。商品差別化の原動力となっている。
 
(3)ハイエンド商品に注力した高収益体質
技術要求度が高く他社の追随を許さない案件へ経営資源を集中させる事で他社との差別化を図り、高収益体質を維持している(08/3期売上高営業利益率は19.2%)。
尚、08/3期の新規登録件数は19件(07/3期は18件)
 
 
<同社の目指すところ −全天候型経営に向けて−>
特定の分野、企業、商品に依存し過ぎず、また、豊富な商品ラインアップを取り揃える事で、外部環境に左右され難い安定した収益体質を構築する事。そして、伸びる分野や伸びる技術への経営資源の集中と不断の技術開発・商品開発・市場開発により、中・小型ながらも差別化した商品を開発し一段の技術力及び収益力の強化を図る事、それが同社の目指すところだ。
 
2008年3月期決算
 
−半導体・液晶関連の売上が落ち込む中、固定費が増加−
 
<事業環境>
鉄鋼や産業機械分野は引き続き好調を維持したものの、メモリー価格の大幅下落を受けた半導体メーカーの投資抑制や液晶メーカーによる設備投資の大幅削減でIT関連が大きく落ち込んだ。
 
 
半導体・液晶関連の売上が落ち込む中、減価償却費や人件費等の固定費が増加、前期比3.4%の減収、同28.8%の経常減益となった。
 
 
(1)部門・業界別売上高
 
主力の溶射加工は前期比2.8%の減収。半導体・液晶関連の減少自体は期初から予想していたものの、下期に至って、予想以上に悪化したことが要因。一方、産業機械関連が風力用絶縁ベアリングやガスタービン向けなどエネルギー分野を中心に伸長。鉄鋼関連や、石油化学、ガラス、窯業向けを中心にその他分野向けの売上も増加したが、半導体・液晶関連の大幅な落ち込みを吸収できなかった。
周辺事業は同6.0%の減収。自動車関係のプレス金型等の受注減少でTD処理加工部門が減少した他、半導体・液晶分野向け及び鉄鋼分野向け加工が堅調に推移したZACコーティング加工部門も、産業機械向けの苦戦で微減収。自動車エンジン部品向けの減少でPTA処理加工部門も減収となったが、自動車関連の切削工具及び金型向けが堅調に推移したPVD処理加工部門は微増収となった。
 
2009年3月期業績予想
 
 
前期比0.6%の増収、同2.7%の経常増益を予想。
半導体中心に厳しい事業環境が続く見込みで、上期は減収・減益予想。ただ、シャープ、松下電器等の液晶パネルの大型設備投資を追い風に液晶関連の受注が回復傾向にあり、下期以降、増収・増益に転じる見込み。
利益面では、増収効果に加え、液晶関連の外注加工費、消耗品費、及び修繕費等の減少により、人件費及び減価償却費の増加を吸収、売上高は横ばいながら営業利益は前期比5.3%増加する見込み。
 
(1)部門・業界別予想売上高
 
半導体・液晶関連は、半導体メーカーの設備投資意欲減退で厳しい事業環境が続く見込みだが、液晶関連の回復が見込まれる。前期大きく伸びた産業機械関連は、ベアリング、ガスタービン部品が減少する見込み。周辺事業も、自動車金型向け(TD部門)、IT関連(ZAC部門)、自動車パーツ関連(PTA)部門の減少が見込まれる。

苦戦が続く半導体分野において、半導体チップの微細化に対応した次世代皮膜の開発を促進すると共に、液晶分野で、大型パネルに対応した生産・品質管理体制の確立に取り組む。また、並行して半導体・液晶分野以外の需要の取り込みにも注力する。この他、薄膜や複合皮膜を中心に新しい皮膜を開発し、用途の拡大を加速させると共に、JCCとの連携を強化や非連結子会社 東華隆(広州)表面改質技術有限公司の育成強化にも取り組む考え。
 
*半導体・液晶関連売上高の推移
 
*設備投資及び減価償却費の推移(個別ベース)
 
09/3期の設備投資は通常の投資25億円に加え、土地取得費5億円を織り込んでいる。
 
取材を終えて
同社は、鉄鋼等の成熟分野から半導体・液晶、産業機械等の成長分野へシフトを進め、2000年以降の高い利益成長を実現すると共に、NAS電池やガスタービン等のエネルギー関連分野、製紙、化学プラント分野へと展開する事で収益の安定化で一定の成果を上げてきた。こうした中、08/3期の減益幅が大きなものとなったが、これは限界利益率が高いため。限界利益率の高さは付加価値の高さと裏腹の面があるが、限界利益率の高い会社は、わずかな売上高の振れで利益が大きく振れてしまう。また、09/3期は液晶関連の回復が見込まれるものの、全体としては厳しい事業環境が続く見込み。
同社は溶射を主業とする開発主導型であることはすでに述べた。現在、半導体チップの微細化に対応した次世代被膜の開発が進んでおり、次の収益の柱として期待されるところだ。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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コメント

 会社の歴史を見て、再上場企業であることを初めて知りました。また製品別の紹介が丁寧で、素人でも会社の中身が分かりましたし、溶射加工市場で存在感があり、魅力的な会社だと思いました。
 平成19年度の減益要因内容や今後の業績見通しにおいても、半導体・液晶分野の市場環境が重要であることなど、ポイントを絞った解説で分かり易かったです。

投稿者 tm_dream463 : 2008年06月08日 03:30

業績的にはやや踊り場の局面を迎えているようです。
ただ、技術力が今後の競争に打ち勝てるか、分析する必要があるが、感覚的には面白い企業のような気がしますので、注視していきたい。

投稿者 S.S. : 2008年08月04日 14:26

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