ブリッジレポート
(2468) 株式会社フュートレック

スタンダード

ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.8

(2468:東証マザーズ) フュートレック 企業HP
藤木 英幸 社長
藤木 英幸 社長

【ブリッジレポート vol.8】2009年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「携帯電話出荷台数は新販売方式による影響等により減少するなど、同社の事業を取り巻く環境は決して順風ではない。それにも関わらず、第1四半期・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年8月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フュートレック
社長
藤木 英幸
所在地
大阪市淀川区西中島 6-8-31
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 1,598 264 277 159
2007年3月 1,253 249 256 162
2006年3月 1,443 173 165 99
2005年3月 1,059 69 79 33
2004年3月 907 9 6 -1
2003年3月 736 12 12 3
2002年3月 435 17 34 29
株式情報(8/8現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
247,000円 23,648株 5,841百万円 8.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,300円 0.9% 9,307.51円 26.5倍 84,223.81円 2.9倍
※株価は8/8終値。
 
フュートレックの2009年3月期第1四半期業績について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
携帯電話用音源LSI(音を鳴らすための半導体)の開発・販売を中心に、分散音声認識技術を用いた音声認識事業、各種LSIの受託開発等を行っている。携帯電話用音源LSI事業では、LSIを製造して売るのではなく、IP化して販売している。「IP化して販売する」とは、LSIの設計データとそのLSIを駆動させるためのソフトウェア(組込ソフトウェア)を知的財産権化して販売するという事で、言わば、LSIの設計図をライセンス提供しているようなものだ。このため、大規模なLSI工場を建設する必要はなく、開発・設計に経営資源を集中できる。販売先は通信キャリアや半導体ベンダー、携帯電話端末メーカーである。
グループは、同社の他、ソフトウェア開発の(株)インストーム、組込みソフトウェアとアウトソーシングの(株)シンフォニック、及び音声認識技術事業のサービスを手掛ける(株)ATR-Trekの連結子会社3社。
 
<沿革>
会社設立は2000年9月。01年3月には現在の主力商品となっている音源IPが完成し、ライセンス販売を開始した。02年5月、ソニーからメモリースティックROMの製造権・販売権を取得。03年にはインストームを子会社化してソフトウェア開発を強化した。04年には松下電器産業から3D音響IPライセンスを受けて提携。05年1月にNTTドコモと音源の利用許諾契約を締結。NTTドコモの携帯電話の音源が同社の音源で統一される事となった。また同年同月、大手予備校が実施する模擬試験向けコンテンツをメモリーカードへ書き込む業務を受託し、メモリーカードを販売するビジネスに参入。同年12月に東証マザーズに株式を上場した。06年5月には、NTTドコモと資本・業務提携契約を締結。これにより、当社の株式の10%以上をNTTドコモグループが所有する事となり、NTTドコモが開発する様々なサービスに協力する事になった。
 
ハード音源等、半導体の設計からスタートした同社だが、ソフト音源や分散音声認識技術などソフトウェア分野へ活動範囲を広げている。ソフトウェア技術をベースとした音声認識システムの販売や音声翻訳サービスの提供等も始めており、中期的には「技術開発型会社」から「技術開発サービス型会社」へと業態転換を進めていく考え。
 
<事業の概要>
事業部制を敷いており、音源事業の第一事業部、受託開発事業とカード事業の第二事業部、音声認識事業の第三事業部に分かれる。08/3期の売上構成比は、それぞれ64.3%、17.3%、18.3%。
 
1.第一事業部
  (携帯電話音源LSI設計データと組込みソフトウェアの開発・設計)
携帯電話用音源LSI設計データと組込ソフトウェアのパッケージを音源IPや3D音源IPとして知的財産権化して、キャリアや携帯電話端末メーカー等にライセンス販売している事は既に説明した通り。同社が受け取る対価には、LSI設計データと組込ソフトウェアの使用許諾契約時に発生するイニシャル収入(初回のみ)、顧客の生産台数に応じて発生するロイヤルティ収入(生産1台当たり)、IPをユーザーのインターフェイスに合わせる実装設計(カスタマイズ)に伴う収益、及び音源動向の情報提供やコンテンツ作成のアドバイス等に伴うコンサルティング収入がある。
 
2.第二事業部(カード事業及び研究開発を兼ねた受託開発)
カード事業は、大学受験生向け模擬試験の英語リスニングテストで使われるメモリーカードや携帯電話のコンテンツ入りメモリーカードの書き込み事業を行っている。また、受託開発事業は、付加価値の高いセンサや携帯関連の受託開発が中心だが、単なる受託開発ではなく、新たな技術の習得や商品開発につなげるための研究開発として位置付けている。受託開発の1事業であった音声認識事業が、事業部として独立した他、08/3期には従来品に比べ小型化が可能なADコンバータ(バーニアADコンバータ:VAD)が開発フェーズを終え、販売フェーズに入った。
 
3.第三事業部(音声認識事業)
06年12月に(株)国際電気通信基礎技術研究所(以下、ATR)と業務提携した事を受けて、07年4月に受託開発事業から分離・独立した。ATRが保有する音声認識の技術とフュートレックが保有する携帯電話関連の技術及びフュートレックグループが保有するサーバーシステム開発技術を融合した音声認識・音声翻訳等の事業を進めている。システムの使用許諾契約時に発生するイニシャル収入や毎月の生産数及びサービス数に応じたロイヤルティ収入が収入源となる。さらにフュートレックグループ自身がコンテンツプロバイダとなった「しゃべって翻訳」のサービス提供を始めている((株)ATR-Trek)。
 
尚、音声認識とは、機器に向かって音声で入力すると、様々な発音・声質から言葉を聞き分け、語彙を特定し、文字等に変換するものである。携帯電話以外でも、カーナビや医療分野など、様々なサービスの実現が期待されている。
 
 
2009年3月期第1四半期業績
 
<連結業績>
 
 
同社の主たるビジネスマーケットである携帯電話業界では、2008年度の携帯電話出荷台数は新販売方式による影響等により前年度比約9%減の4,600万台と予想されている。
 
このような環境のもと、同社では音源事業を核に前期より積極的に取り組んできた音声認識事業が順調に推移し、前期に比べて大幅な売上げ、利益の増加を計上することができた。
 
同社グループの第1四半期間における業績は、売上高は513百万円(前年同期比181百万円、54.5%増)、営業利益は136百万円(同101百万円、283.8%増)、経常利益は139百万円(同99百万円、251.1%増)、四半期純利益は76百万円(同56百万円、277.2%増)と各々大きく増加した。
 
<事業部別の動向>
 
 
①第1事業部(音源部門)
売上高は334百万円(前年同期比80百万円増)となった。
当第1四半期間における同社の音源搭載台数は、国内で6,800千台(同1,034千台増)、海外では2,896千台(同2,475千台増)となった。
当期における音源搭載台数は、前第3四半期間以降NTTドコモ製のFOMA全機種搭載が実現したため、当第1四半期間において、国内音源搭載台数は前年同期を上回っている。また計画比も同社音源搭載機種の販売増加により国内、海外ともに音源の搭載台数は順調に推移した。
 
②第2事業部(受託開発・カード部門)
売上高は82百万円(前年同期比15百万円増)となった。
受託開発部門は、59百万円(同10百万円増)、カード部門は、23百万円(同3百万円減)と、カード部門における書込み数量の減少により前年同期比微減となったが、受託開発は、新たな開発の増加等により前年同期を上回り、事業部門としても順調に推移している。
 
③第3事業部(音声認識部門)
売上高は96百万円(前年同期比85百万円増)となった。
同事業部は、前期より受託開発部門から分離され新設された事業部であり、音声認識を新たな商品として事業化した部門。
前第1四半期間は、事業部として発足当初であり売上高も小額だったが、当第1四半期間の売上高は、音声認識搭載機種の販売増加によりランニングロイヤルティによる収入が予想以上に順調に推移したため大きな売上増となった。
 
<財政状態>
 
 
当第1四半期間末の総資産は、前年度末に比べ59百万円増加し、2,355百万円となった。
総資産の内訳は、流動資産が1,882百万円(前年度末比31百万円増)、固定資産が472百万円(同28百万円増)。
流動資産の主な増加要因は、現預金の増加29百万円によるもの。
負債の部では、流動負債が買掛金の減少19百万円および納税による未払法人税の減少27百万円等により、254百万円(同42百万円減)となった。
純資産の部では、利益剰余金の増加39百万円、資本金および資本準備金の増加38百万円等により2,100百万(同102万円増)となった。
 
<キャッシュ・フロー>
 
 
当第1四半期間末における現金および現金同等物は、前年度末に比べ29百万円増加し、1,360百万円となった。当第1四半期間のキャッシュ・フローの概況は次のとおり。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期間においては、主な増加要因は、税金等調整前四半期純利益の計上139百万円であり、主な減少要因は、仕入債務の減少19百万円、法人税等の支払額77百万円であり、営業活動による資金は40百万円の増加となった。
 
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期間においては、無形固定資産の取得13百万円および投資有価証券の取得6百万円による支出等により、投資活動による資金は21百万円減少した。
 
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期間において、株式発行による収入38百万円、配当金の支払27百万円により、財務活動による資金は10百万円の増加となった。
 
2009年3月期業績予想
 
<連結業績>
 
 
(第2四半期連結累計期間を上方修正)
当第1四半期間の実績は、利益面で第2四半期連結累計期間の期初予想値を上回った。
売上高は、音源の携帯電話への搭載台数の順調な推移並びに音声認識ビジネスの伸張により、前回予想を77百万円上回り947百万円予想となった。
経常利益は、売上高の増加に加え、経費の効率的な運用により、前回公表予想より100百万円上回り、201百万円となる見通し。第2四半期純利益は、前回予想より56百万円上回り、108百万円となる見通し。
 
(通期予想)
通期予想は、研究開発並びに増員による費用の増加、関連子会社の業績推移および携帯電話を取り巻く環境の変化等の不安定要素もあり、現時点での業績予想の修正は行わない。
 
トピックス
 
<「DX版日中しゃべって翻訳」で中国語の翻訳結果を読み上げるサービスを開始>
同社の子会社であり、株式会社国際電気通信基礎技術研究所の関連会社である、株式会社ATR-Trekは、NTT ドコモが発売する携帯電話向けに行っている音声翻訳サービスアプリ「DX版日中しゃべって翻訳」で、翻訳結果の中国語を合成音声で読み上げるサービスを8月より開始すると発表した。
 
2008年6月より開始した「日中版しゃべって翻訳」では、中国語の翻訳結果は文字で表示されていた。今回、音声合成技術により、翻訳結果を音声でも取得し、読み上げることができるようになる。これによって中国語を話す人達との、よりスムーズでスピーディなコミュニケーションが可能になる。アプリをダウンロードして利用する。
 
取材を終えて
携帯電話出荷台数は新販売方式による影響等により減少するなど、同社の事業を取り巻く環境は決して順風ではない。それにも関わらず、第1四半期の利益は、当初予想した第2四半期連結累計期間の利益を上回る好業績となった。前第3四半期間以降NTTドコモ製のFOMA全機種搭載が実現したが、一方で、音声認識を新たな商品として事業化するなど、次への布石には怠りない。同社は上場前の05/3期から増収・増益・実質増配を続けているが、今期もこのトレンドを継続することは間違いなさそうだ。