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(1754)

ブリッジレポート:(1754)東新住建 vol.20

(1754:JASDAQ) 東新住建 企業HP
深川 堅治 社長
深川 堅治 社長

【ブリッジレポート vol.20】2008年6月期業績レポート
取材概要「2008年6月期の連結業績は、住宅市場の回復が予想以上に遅れたことなどもあり、6%減収、26%営業減益、53%経常減益となった。期初の会社予想・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年9月30日掲載
企業基本情報
企業名
東新住建株式会社
社長
深川 堅治
所在地
愛知県稲沢市高御堂 1-3-18
決算期
6月
業種
建設業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年6月 98,213 1,461 448 357
2007年6月 104,467 1,985 954 267
2006年6月 90,857 2,183 1,255 -147
2005年6月 72,227 3,130 2,518 1,328
2004年6月 58,925 2,567 2,010 989
2003年6月 43,418 1,932 1,629 628
2002年6月 36,722 1,503 1,205 506
2001年6月 31,704 496 230 49
2000年6月 25,736 1,299 1,028 534
株式情報(8/28現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
189円 13,022,620株 2,461百万円 6.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10円 5.3% 38.39円 4.9倍 427.08円 0.4倍
※株価は8/28終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
東新住建の2008年6月期業績について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
独自の商品と独自のシステムを駆使しエリアを拡大するハウスメーカー。中部圏を地盤に、首都圏、近畿圏へ展開している。
 
<事業内容>
事業は、住宅建築請負業(08/6期売上構成比17.1%)、分譲不動産販売事業(同74.6%)、兼業事業(同8.4%)で構成される。
 
住宅建築請負事業
「古き良き長屋文化の承継」をうたった「ザ・借家」に代表される賃貸住宅と、100年品質の「ダグラス」シリーズや環境共生住宅「樹流」などの注文住宅で構成される。同社本体で事業展開するほか、近畿圏ではカメヤグローバル、首都圏では東新ハイトスが展開している。
 
分譲不動産販売事業
分譲戸建販売事業と分譲マンション事業で構成され、同社本体で展開している。
 
兼業事業
不動産の賃貸管理・売買仲介、一括借上システム等による賃貸事業、有料老人ホームの運営等の事業。
 
 
<東海圏下No.1>
マーケティングシステムズ社調査によると、分譲戸建てに限れば、同社は東海圏下分譲戸建着工棟数10年連続№1となった。
 
2008年6月期業績
 
<連結業績>
 
当年度の住宅業界は、新設住宅着工戸数は改正建築基準法施行の影響を受け、前年度比19.4%減の103万戸と前年度を大きく下回る結果となった。また、原油高の影響は建築資材高騰のみならず、個人消費の鈍化を招き、住宅ローン金利が上昇する一方で、所得が伸び悩んだことにより、住宅需要が低迷する状況となった。

このような市場環境のなかで、同社グループ(同社および連結子会社、以下同じ)は、経営理念「ほしいものを、つくります」のもと、市場環境の変化に対応すべく、顧客大満足を目指し、生産、販売体制の見直し等を積極的に図り、諸施策を推した。

しかし、同業他社との販売競争の激化、地価の上昇や建築資材の高騰による原価の上昇を販売価格に転嫁できなかったことにより、売上高および売上総利益が当初予想を下回る厳しい状況で推移した。

以上の結果、当年度における同社グループの売上高は982億13百万円(前年同期比6.0%減)、営業利益は14億61百万円(前年同期比26.4%減)、経常利益は4億48百万円(前年同期比53.1%減)、当期純利益は3億57百万円(前年同期比33.9%増)となった。

(前回予想を修正)
同社は7月31日に、5月9日に発表した前回の通期業績予想を修正した。修正理由は下記のとおり。

同社グループは通期業績の達成に向けて様々な改革を進めてきたが、市場環境の停滞が長引き、住宅市場の回復が前回予想時に想定した以上に遅れたため、通期業績は、売上高、営業利益、経常利益に関して08 年5月9 日に公表した業績予想を下回った。

売上高は、改正建築基準法が施行された影響により、新設住宅着工戸数が大幅に減少するなど、住宅業界が低調に推移した影響などが長引き、5、6月における分譲不動産販売事業の売上が前回予想よりも減少し、その結果前回予想を下回った。

利益面は、期中から進めてきた新商品の開発や生産体制の改革などの様々な対策により、第4四半期において利益率が大幅に改善した。しかし、在庫商品の値引等により相殺される形となり、改善効果が最大限に得られるのは翌期以降にずれ込んだ。

一方で販売費及び一般管理費は、採用の抑制及び業務の効率化を推進することにより削減したが、営業利益、経常利益は前回予想を下回った。

また、関連子会社の収益が改善されたことや、業務効率を高めるための事業展開見直しを進め、子会社同士の合併等を行った。それに伴い、引継いだ繰越欠損金に対する繰延税金資産を計上したことにより、当期純利益は、前回予想を上回った。
 
<事業の種類別セグメント動向>
 
① 住宅建築請負事業
賃貸住宅「ザ・借家」は、地域密着営業の推進により「ザ・借家」の理念の浸透を図ると共に、新商品として、ペットとの快適な暮らしを実現する「ザ・借家P・E・T」の販売を開始した。
注文住宅は、総タイル貼り企画型注文住宅「タイルダグラス」、ツーバイフォー工法の自由設計商品「きららfino」などの新商品を販売開始した。
以上の結果、住宅建築請負事業の売上高は167億54百万円(前年同期比2.5%減)、営業利益は23百万円(前年同期は損失7億1百万円)となった。

② 分譲不動産販売事業
分譲戸建は、愛知県において大型タウンプロジェクト「スマイルコート三好」「ブライトヒルズ東海名和」等の販売を開始した。また、都会の新しいライフスタイルを提案する土地付マンション「デュープレックスハウス」の新商品「プレミアムデュープ」を販売開始した。また、多くの顧客の支持により「東海圏下分譲戸建着工棟数10年連続№1」(1998年~2007年度住宅着工統計より[データ作成/㈱マーケティングシステムズ])を達成することができた。
以上の結果、分譲不動産販売事業の売上高は732億30百万円(前年同期比8.5%減)、営業利益は36億88百万円(前年同期比38.2%減)となった。

③ 兼業事業(不動産の賃貸管理および売買仲介、一括借上システムによる賃貸事業、有料老人ホームの運営等)
兼業事業は、賃貸管理事業における入居率向上のための諸施策を強力に推進した。また、有料老人ホーム「はぴね岐阜」についても、入居促進を図った。
以上の結果、兼業事業の売上高は82億28百万円(前年同期比12.8%増)、営業利益は2億10百万円(前年同期比170.1%増)となった。
 
<財政状態>
 
当年度における総資産は、前年同期比21億59百万円減少し732億27百万円となった。また、負債は、前年同期比22億98百万円減少し676億65百万円、純資産は、前年同期比1億38百万円増加し55億61百万円となった。なお、自己資本比率は、前年同期より0.4ポイント上昇し7.6%となった。主な内容は以下のとおり。

(資産)
資産の減少の主な要因は、流動資産では現金預金が41億82百万円、分譲用不動産が23億33百万円増加したが、分譲不動産仕掛品が90億61百万円減少した。固定資産では有形固定資産が3億80百万円増加した。分譲不動産仕掛品の減少は、翌期の利益計画を勘案し、棚卸資産を適正な残高とするために、分譲用地の仕入を計画的に実施したため。有形固定資産の増加は、兼業事業における自社所有賃貸物件の新規取得によるもの。

(負債)
負債の減少の主な要因は、短期借入金15億83百万円および長期借入金28億10百万円の減少。これは主として用地仕入の減少により金融機関からの借入金が減少したため。

(純資産)
純資産は、当期純利益の増加等により、純資産合計は55億61百万円となった。
 
<キャッシュ・フロー>
 
当年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年度末に比べ41億76百万円増加し、114億20百万円となった。
当年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおり。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は74億70百万円(前年同期は103億21百万円の使用)となった。これは、主に分譲用地の仕入れを計画的に実行したため、棚卸資産が減少したことによるもの。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は13億08百万円(前年同期比14.6%増)となった。これは主に、自社所有賃貸物件などの有形固定資産の取得によるもの。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は19億98百万円(前年同期は49億43百万円の獲得)となった。これは主に、用地仕入れ等が減少したため、それに伴う借入金の減少によるもの。
 
2009年6月期業績予想
 
<連結業績>
 
同社グループは、さらなる生産性の向上を目指し、商品面において高付加価値商品の開発、また販売面においては、エリアに特化したマーケティング戦略をたて、営業の効率化を図っていく予定。
さらに、工事原価圧縮による生産性の向上による原価削減や、管理面での効率化も図り経費削減に取り組んでいくとしている。

以上により、同社グループの09年6月期の見通しは、売上高978億円90百万円、営業利益22億60百万円、経常利益14億円、当期純利益5億円を見込んでいる。
 
取材を終えて
2008年6月期の連結業績は、住宅市場の回復が予想以上に遅れたことなどもあり、6%減収、26%営業減益、53%経常減益となった。期初の会社予想は2%増収、43%営業増益、72%経常増益だったが、期中2度の下方修正を行うこととなった。
同社の株価は、PERが4.9倍、PBRが0.4倍(8月28日現在)と、かなり割安な水準にあると言える、しかし、このことは、投資家が業績予想に対して懐疑的に見ていることの裏返しであるとも言える。まずは今期の業績予想を着実に達成することを期待したい。