ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.7

(2660:東証1部,大証2部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長
寺西 忠幸 会長
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長
【ブリッジレポート vol.7】2009年2月期中間決算業績レポート
取材概要「中間決算は前年同期比では増益になったものの、計画は下回った。通期予想に対して会社側は、中間決算を踏まえて修正を行ったものの、下期予想の・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年11月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長
寺西 忠幸
代表取締役社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(10/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
325円 11,331,492株 3,682百万円 8.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.0円 6.2% 87.05円 3.73倍 969.19円 0.34倍
※株価は10/10終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期実績。
 
キリン堂の2009年2月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
売場面積150~300坪型の郊外型大型店(スーパードラッグストア)を中心にチェーン展開。関西7府県(和歌山県除く関西地域、徳島県、石川県)でドミナント戦略(店舗密度を上げ、地域での知名度や支持を集めることで店舗展開)による多店舗展開を進めている。
 
 
連結子会社2社を含めた2008年8月15日現在のグループ店舗数は、FCを除いて306店。また、子会社(株)健美舎が健康食品と医薬品を企画・販売している。
 
<沿革>
 
 
1958年3月、薬局店舗営業と薬品製造業を目的に設立。1991年10月、大阪市にスーパードラッグストア第1号店をオープン以降、出店を強化、2007年2月期には200店舗を超えた。また、2006年10月には四国地区での販売網の拡充の観点から(株)ジェイドラッグを、また、2006年12月には同じ関西に地盤を置き営業基盤で補完性の高い(株)ニッショードラッグを、それぞれ買収。
さらに今年(2008年)9月には、(株)アライドハーツ・ホールディングスと経営統合に向けた協議を開始すると発表した。詳細についてはまだ発表されていないが、この両社の統合が実現すれば、売上高は2,000億円を上回る見込みで、売上高規模で業界7位の企業が誕生することになる。
 
2009年2月期中間決算
 
<連結決算概要>
 
キリン堂の新店効果に加えて、既存店売上高が前年同期比+2.3%で推移したものの、連結子会社の店舗閉鎖等による売上減少要因もあり、総売上高は前年同期比で微減となった。また第1四半期における花粉症関連商材の販売不振や競争激化の中でも廉売を控えた販売促進を実施したことから計画比でもマイナスとなった。

出退店は予定どおり出店11店舗、退店6店舗であった。この結果、中間期末の店舗数は、キリン堂221店、ニッショードラッグ82店、ジェイドラッグ3店、FC3店の計309店となり前期末比+5店舗となった。

HBC(ヘルス&ビューティケア)商品の強化を目的とした売場レイアウトの変更、品揃えの見直しやメリハリを効かせた販促実施により、粗利率は前年同期比0.1ポイントアップ、さらにコストコントロールに努めた結果、営業増益、経常増益を達成した。ただし、売上高が計画を下回ったこと等から、経常利益も計画に対してはマイナスとなった。

中間純利益においては、経常増益になったことに加え、ニッショードラッグが2007年12月に100%子会社となり少数株主持分利益が発生しなくなった(前年同期の少数株主利益は39百万円)ことから前年同期比では増益となったが、特別損失の発生が見通しを上回った(実績366百万円、計画270百万円)ことにより、計画に対しては未達となった。
 
<総売上高 537億52百万円(前年同期比0.0%減)>

1.小売事業の個別売上高(内部売上高控除後)
(1)キリン堂      39,890百万円 → 寄与額 +1,747百万円
(2)ニッショードラッグ 13,339百万円 → 寄与額 ▲1,692百万円
(3)ジェイドラッグ     411百万円 → 寄与額 ▲92百万円

キリン堂については、新店効果に加え、販促見直し(脱チラシ方針)による影響が一巡し、既存店客数伸び率がプラスに転じ、その結果既存店売上高増収率が+2.3%と堅調に推移したことから増収となった。 一方、ニッショードラッグは、前期に不採算店6店を閉鎖し、前年同期に比べ店舗数が減少したこと等により減収となった。(ニッショードラッグの売上高は、計画も前年同期比マイナスで策定)
 
<キリン堂(個別)の既存店売上高>
キリン堂の既存店売上高増収率は前年同期比+2.3%(客数+1.4%、客単価+0.8%)となったが、計画(+4.0%)に対しては下回った。計画を下回った要因は、3月、4月の近畿圏における花粉の飛散量が前年比3~4割程度にとどまったことなどによる。
 
 
(注)前年5月度は、販促手法を、従来のチラシからダイレクトメールへ変更したことにより、大幅な客単価増・客数減となったが、当年5月度は同様の販促手法継続により、堅調に推移。
 
<品目別売上高(連結・小売事業)>
 
医薬品の売上高が前年同期比マイナスとなった主な要因は、ニッショードラッグの影響(*)による。キリン堂においては、感冒薬は苦戦したものの、栄養補助剤、漢方生薬などが好調で増収となった。
健康食品では、ニッショードラッグの影響(*)に加え、キリン堂におけるサプリメント関連の苦戦により、前年同期比でマイナスとなった。
化粧品は、キリン堂での販売強化継続により前年同期比増収となったが、ニッショードラッグの影響(*)で部門としては減収に。
雑貨は、スーパードラッグストアの店舗増により増収となった。
調剤は、調剤取扱店舗数の増加による処方箋受付枚数の増加によって増収となった。
また、PB(プライベート・ブランド)商品比率は、中間期でキリン堂が9.1%(前年同期9.2%)、ニッショードラッグ8.4%となった。

両社の品目別売上高の状況は下表ご参照。
 
 
(注)キリン堂とニッショードラッグの「その他」から内部売上高を控除して算出。(連結寄与ベース)
 
*ニッショードラッグについて
ニッショードラッグの前年同期比がマイナスの理由は、前期に不採算店6店を閉店し、前年同期と比べ店舗数が減少したこと等によるもの(計画も前年同期比マイナスで策定)。
 
<キリン堂とニッショードラッグの品目別粗利率(商品売上高+調剤売上高)>
 
キリン堂の「その他売上高」にはニッショードラッグへのFC売上高やFC手数料が計上され、両社比較が困難となるため、上表は「その他」を除いた「商品売上高+調剤売上高」ベースで算出している。

キリン堂では、「雑貨等」の値引きコントロールや値入改善、「化粧品」の販売強化、「調剤売上高」の売上構成比アップにより粗利率は改善した。
 
<販管費(連結):129億54百万円(前年同期比0.0%増、計画内で着地>
 
ニッショードラッグの一部店舗におけるチラシ販促開始により、販売費が前年同期比プラスとなった。また、ニッショードラッグでの会計基準の変更に伴うポイント引当金計上、キリン堂での計上科目先変更により、同費目は計画比でもプラスとなった。
一方、人件費はグループシナジー効果により、前年同期比、計画比ともにマイナスとなった。
結果、販管費および販管費率は、ともに前年同期比水準、販管費は計画内での着地となった。

<特別損失:366百万円(前年同期185百万円計上)>
 
主な内容は、①減損損失:272百万円、②過年度借地権償却:44百万円、③店舗閉鎖損失:25百万円である。
 
<新株予約権:「権利行使完了」>

新株予約権は、2008年8月1日をもって、以下のとおり権利行使完了された。
 
1.発行目的
(1)M&A実施(ニッショードラッグ)の借入金の返済に加えて、不採算店の整理、ローコストオペレーションによる経費の効率化を図りながら、積極的な出店を推進するための機動的な資金調達を企図しつつ、資本政策の柔軟性を確保するため。
(2)既存株主ヘの影響に配慮(過度な希薄化の回避)
 
2.第三者割り当てによる第1~5回の新株予約権の概要
(1)割当先:野村證券株式会社
(2)発行日/行使期間:2006年12月25日/2006年12月26日~2008年12月25日
(3)本新株予約権の総数:各回5個ずつ合計25個
(4)本新株予約権の払込総額: 2,825,000円(1個あたり113,000円)
 
3.本新株予約権の行使状況(2008年6月24日現在)
(1)第1回新株予約権:5個すべて行使済(交付株式数698,476株)
(2)第2回新株予約権:5個すべて行使済(交付株式数999,984株)
(3)第3回および第4回新株予約権:各々5個すべてを2008年6月4日に取得および消却済み
(4)第5回新株予約権:5個すべて行使済(交付株式数749,753株)
 
<連結貸借対照表の状況>
 
①たな卸資産の増加 ⇒ 新規出店(店舗数の増加)によるもの
②買掛債務の増加 ⇒ 同上
③借入金の減少 ⇒ 営業キャッシュ・フローおよび新株予約権の行使によるもの
④資本金および資本剰余金の増加 ⇒ 新株予約権の行使によるもの
 
今後の方向性について
 
同社グループの今後の方向性について寺西社長より、以下のような説明があった。
 
 
<アライドハーツ・ホールディングスと経営統合協議を開始した背景と目的>

会社側は2008年9月5日にアライドハーツ・ホールディングスとの経営統合に向けた協議を開始することに合意したことを発表した。統合の時期、方法、統合後の運営など詳細については、今後、経営統合委員会で協議し、決定次第、速やかに発表するとの説明があった。
 
 
(アライドハーツ・ホールディングスの概要)
①関西および中京の有力リージョナルチェーンが統合した企業
②地域に根ざした小商圏対応型ストア
③専門分野に強い ⇒ 調剤売上構成比およびHBC構成比が高い
 
 
<統合による新会社のイメージ>
 
 
 
 
3社(キリン堂連結+ライフォート+ジップドラッグ)合計で423店舗になり、スギHDを大きく引き離す。
 
 
店舗数と同様に、3社合計の売上高(関西地区)は1,346億円となり、同地域でのシェアは20%超となる。
 
(ドラッグストア調剤ランキング)
調剤分野における新会社のランキングは以下のようになると推測され、専門分野の強化も見込まれる。
 
 
 
 
なお、上記の内容(新会社のイメージ)に関する資料は、すべて各種データに基づき同社(キリン堂)が作成したものである。
 
2009年2月期業績予想(連結)
 
上期実績に基づいて会社側は今期(2009年2月期)の主なポイントを以下のように見直した。
 
 
業績については、中間決算を踏まえて、通期予想を下表のように修正している。
修正後の通期予想は、上期を実績値に変更し、下表〝B〟の下期見通しを反映している。
会社側は、グループ内における人員配置や作業の合理化が進み、当初計画よりもコスト削減が可能と判断、当初計画比141百万円の販管費削減を見込んでいる。そのほかの下期予想については、基本的に当初予想から大きくは変えていない。
 
 
これを受けて、通期予想は、下表のとおりとなる。
会社側がポイントとしているのは、経常利益率の計画達成である。
 
 
 
取材を終えて
中間決算は前年同期比では増益になったものの、計画は下回った。通期予想に対して会社側は、中間決算を踏まえて修正を行ったものの、下期予想の大きな変更はない。計画達成の大前提となるのが、キリン堂の既存店伸び率2.8%増だが、現在の景気動向を考えるとこの達成は容易ではないだろう。

今後の展開でもっとも注目されるのは、アライドハーツ・ホールディングスとの経営統合。まだ詳細は発表されていないが、現在の業界環境を考えれば適切な経営判断と言えよう。今後、統合の時期も含めて具体的にどのような計画が発表されるのかに注目したい。