ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.9

(2660:東証1部,大証2部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長
寺西 忠幸 会長
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長
【ブリッジレポート vol.9】2009年2月期業績レポート
取材概要「10/2期は強気な業績予想となった。予想を達成するためのポイントは計画通りに既存店を活性化できるか否かで、特にキリン堂の下期の既存店売上高・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年4月28日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長
寺西 忠幸
代表取締役社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(4/3現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
465円 11,331,440株 5,269百万円 4.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 4.3% 22.06円 21.1倍 967.28円 0.5倍
※株価は4/3終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2009年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。(株)ニッショードラッグ及び(株)ジェイドラッグの連結子会社2社とともに、和歌山県除く関西地域、徳島県、石川県でドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに地域内でのシェアを向上させ、競争優位に立つ戦略)を進めており、2009年2月15日現在、グループで309店舗(FC3店舗を含む)を展開している。
 
 
なお、「SERVER(サーバ)」は連結子会社(株)ニッショードラッグのブランド。また、製造卸売事業として、連結子会社(株)健美舎が健康食品と医薬品の企画・販売を行っている。
 
<沿革>
1958年3月、薬局店舗営業と薬品製造業を目的に設立され、その後、ドラッグストアのチェーン展開を開始した。91年10月、大阪市にスーパードラッグストア第1号店をオープン以降、出店を強化、2007年2月期には200店舗を超えた。また、M&Aにも積極的に取り組み、2006年10月には四国地区での販売網の拡充の観点から(株)ジェイドラッグを、同年12月には同じ関西に地盤を置き営業基盤で補完性の高い(株)ニッショードラッグを、それぞれ買収。「2015年 売上高2,000億円・500店舗」体制を目指し、グループ力の強化を進めている。
 
<2012年にドラッグストアは10兆円マーケットに成長>
日本チェーンドラッグストア協会によると、2012年のドラッグストア市場は10兆円。OTCマーケット、ヘルスケア・ビューティケアマーケット、生活密着商品・コンビニエンスマーケット、調剤マーケット等の拡大を見込んでいる。

セルフメディケーションの普及によるOTCマーケット    1兆円
ヘルスケア・ビューティケアマーケット         2兆円
生活密着商品・コンビニエンスマーケット        3兆円
調剤面分業の受け皿として調剤マーケット        4兆円
 
 
<ドラッグストア関西売上高ランキング>
ドミナント戦略が奏功し、関西では14.4%でシェアトップ。2位のスギ薬局の売上高(ドラッグマガジン推定)を100億円以上上回っている。
 
 
※ スギ薬局の売上高は、ドラッグマガジン推定。
 
2009年2月期決算
 
 
前期比0.6%の増収、同19.7%の経常減益。

新規出店20店舗の寄与で微増収を確保したものの、個人消費の急激な落ち込みの中、キリン堂においてチラシ広告を削減したことで、下期以降の既存店の苦戦が響いた。通期の既存店売上高は、キリン堂が前期比0.6%増(客数:同1.2%減、客単価:同1.8%増)、ニッショードラッグが同1.3%減となったが、上下別では、上期のキリン堂2.3%増、ニッショードラッグ2.0%減に対して、下期はキリン堂が1.0%減、ニッショードラッグが0.7%減。チラシ広告の削減は、収益率改善に向けた取り組みの一環であり、実際、客単価の引き上げには成功したものの、景気悪化も重なり客数が予想以上に落ち込んだ。
この結果、売上高は期初予想の110,480百万円に届かず、新規出店費用など販管費の増加を吸収するために必要な売上総利益を確保できなかった。

なお、子会社については、間接部門をキリン堂に統合したニッショードラッグの経常利益が同149百万円増加したほか、6店舗のうち4店舗の退店を行ったジェイドラッグも経常損失が同41百万円改善した。
 
 
(2)事業別動向
①小売事業    売上高106,483百万円(前期比0.5%増)
内部取引控除後の会社別売上高は、キリン堂が79,675百万円(増収寄与度2,824百万円)、ニッショードラッグが26,138百万円(同 △1,928百万円)、ジェイドラッグが669百万円(同 △314百万円)。
期末店舗数は、キリン堂が224店舗、ニッショードラッグが80店舗、ジェイドラッグが2店舗、及びFC3店舗の合計309店舗。新規出店は20店舗で、関西地域ドミナント化戦略の下、キリン堂がスーパードラッグストア(150~300坪の郊外型大型店舗)として、大阪府7店舗、兵庫県2店舗、奈良県2店舗、滋賀県1店舗、三重県1店舗、石川県2店舗、香川県2店舗の計17店舗を出店したほか、小型店として「表参道店」(東京都渋谷区)、その他として「Cosme de lu-up 江坂西店」(大阪府吹田市)を出店した。子会社では、ニッショードラッグが「宝塚東店」(兵庫県宝塚市)の出店を行った。また、既存店の活性化対策として、キリン堂が、加古川粟津店(兵庫県加古川市)を含め15店舗、ニッショードラッグが7店舗、合計22店舗の改装を実施した。
一方、退店は15店舗。内訳は、キリン堂がスーパードラッグストア2店舗、小型店4店舗、その他1店舗の計7店舗、子会社がスーパードラッグストア7店舗・小型店1店舗の計8店舗。
 
②製造卸売事業    売上高211百万円(同8.0%増)
 
 
新店による増収寄与と既存店が苦戦した結果が品目別売上高構成比に現れている。(新店オープン当初は雑貨等の売上構成比が高く、徐々に医薬品・健康食品・化粧品の比率が高まってくる傾向にある。)
一方、調剤取扱店舗の増加に伴う処方箋受付枚数の増加により、調剤売上高が前期比12.6%増と高い伸びを示し、売上構成比も0.5ポイント上昇した。
 
 
新規出店に伴い人件費や販売費が増加したほか、水道光熱費の増加や(株)アライドハーツ・ホールディングスのデューデリジェンス費用等で営業費が増加した。
 
 
期末の総資産は前期末比377百万円減の42,380百万円。不振店の閉鎖や第4四半期の在庫調整、更にはのれん償却等で全体的にスリム化が進んだ。借方では、現預金、たな卸資産、有形・無形固定資産等が減少する一方、売上債権の回収を外部委託したことに伴い、預け金が増加(流動資産の「その他」)。一方、貸方では、仕入債務、有利子負債、預り金等が減少する一方、新株予約権の行使により純資産が増加した。
 
2010年2月期業績予想
 
 
前期比5.2%の増収、同28.0%の経常増益予想。
新規出店を11店舗に抑えるものの、既存店の堅調な推移を見込んでいる(キリン堂:前期比2.2%増、ニッショードラッグ:同0.7%増)。利益面では、既存店の活性化、専門性の強化、及び新規出店の抑制による収益率改善で売上総利益率を0.4ポイント引き上げる考え。改正薬事法対応等に伴い販管費は増加するものの、増収効果と売上総利益率の改善で吸収、営業利益は同34.8%増加する見込み。当期純利益が大幅に減少するのは、たな卸資産の評価を低価法に変更する際に発生する評価損約900百万円や減損損失等約800百万円を、特別損失として織り込んでいるため。

なお、個別業績予想は、売上高103,000百万円(前期比6.2%増)、経常利益2,400百万円(同18.7%増)。ニッショードラッグは売上高26,060百万円(同0.3%減)、売上総利益率の改善と販管費の伸び抑制で経常利益707百万円(同20.9%増)。
 
(2)収益率改善に向けた取り組み
収益率改善に向けて、既存店の活性化と専門性の強化に取り組むとともに、新規出店を抑制する。
 
①既存店の活性化
クレジットカードの導入や売り場づくり(お買い得感の演出)等により、客単価の高い固定客率の引き上げ(6割→7割)を図るほか、改正薬事法への対応に必要な改装(ほぼ全店)や活性化目的の改装(キリン堂:15店舗、ニッショードラッグ:8店舗)を実施する。また、在庫回転日数の管理も強化する。
 
②専門性の強化
HBC(化粧品)の取り組みを強化するとともに、PB商品の拡販に取り組む。前者においては、顧客の購買動向分析データの活用や化粧品スーパーバイザーやビューティスタッフの機能を強化する。また、後者においては、キャンペーンやコンクールの実施によりモチベーションアップを図る。このほか、登録販売者の受験対策や育成にも取り組む。
 
③新規出店の抑制
出店
 キリン堂      :9店舗(上期2店舗、下期7店舗)
 ニッショードラッグ :2店舗(リローケーション対応で下期2店舗)
退店
 キリン堂      :2店舗(上期1店舗、下期1店舗)
 ニッショードラッグ :4店舗(上期2店舗、下期2店舗)
 
今後の方向性
 
(1)業界環境と同社の現状
①業界環境
少子高齢社会の進展に伴い問題となっている社会保障費の増加を抑えるべく、さまざまな医療制度改革が進められている。例えば、セルフメディケーションの推進や改正薬事法施行による登録販売者資格制度の導入等はその一環である。また、ドラッグストアチェーン上位企業の積極出店と商圏拡大、M&Aや資本・業務提携等、競争が激化しており業界再編の動きも活発化している。
 
②同社の現状
小商圏での郊外型大型店(スーパードラッグストア)のドミナント展開に特化し、自社出店とM&Aにより関西地域で売上高シェアナンバー・ワンのポジションを確立しているものの、収益性の面で課題を残している。
 
(2)同社が目指す将来像 -「地域コミュニティの中核となるドラッグストアチェーン」の確立-
 
 
(3)中期3ヵ年の課題と数値計画
①課題 収益性の改善
課題克服に向け、グループ経営を推進(シナジーの追求)するとともに、既存店の活性化と専門性の強化に取り組む。また、新規出店は関西大商勢圏へ年10~15店舗を目処とする考え(従来は年30店舗前後)。
 
②数値計画(連結)
 
取材を終えて
10/2期は強気な業績予想となった。予想を達成するためのポイントは計画通りに既存店を活性化できるか否かで、特にキリン堂の下期の既存店売上高は前年同期比3.9%増を見込んでいる。前年同期の落ち込みの反動があるとは言え、マクロ経済や個人消費の回復の度合いにもよるが、ハードルは低くない。利益率の高い医薬品、健康食品、化粧品等の購入比率が高く、相対的に利益貢献が大きい固定客を増やすことと固定客の稼働率を引き上げることで、既存店を活性化させるとともに収益率の改善を図っていく、と言う考え自体は理解できるが、今期業績を達成するためには比較的短期間で成果を上げなければならないだろう。