ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.9

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
横山 林吉 社長
横山 林吉 社長

【ブリッジレポート vol.9】2009年3月期業績レポート
取材概要「09/3期は急激な需要の減少に対して、全社を上げてのコスト削減で営業・経常黒字を確保した。10/3期も厳しい事業環境を想定しているものの、営業黒・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年6月2日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
横山 林吉
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(5/22現在データ)

株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
260円 4,551,540株 1,183百万円 - 500株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% - - 618.51円 0.4倍
※株価は5/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
朝日ラバーの2009年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明の他、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、文房具用・スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。ベースとなるのはシリコーン材料の配合技術と調色技術で、前者を活かして、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も手掛けている。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)ファインラバー研究所、米国の販売会社ARI International Corp.、及び中国・東莞市に工場(来料加工工場)を持つ朝日橡膠(香港)有限公司の連結子会社3社からなる。
 
<事業内容と主要製品>
事業は、自動車の内装照明の光源向けや各種センサ向け、或いは液晶表示装置のバックライトで使われる冷陰極蛍光管(CCFL)ホルダー、Oリング、電池用ゴム等に使われる工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓等の医療・衛生用ゴム事業に分かれる。 09/3期の売上構成比は、それぞれ、83.9%、16.1%。

工業用ゴム事業は、更に彩色用ゴム製品(売上構成比49.1%)、弱電用高精密ゴム製品(同 15.4%)、卓球のラケット用ラバー等のスポーツ用ゴム製品(同 8.0%)、その他工業用ゴム製品(同 11.4%)に分かれる。
 
 
2009年3月期決算
 
 
前期比21.9%の減収、同95.7%の経常減益。
第3四半期以降、主要販売先の在庫調整や減産の影響で、売上の大半を占める自動車関連製品・情報関連製品の受注が急減した。このため、人件費等の固定費の圧縮や投資・経費の見直し等を進めたものの急激な売上の落ち込みの影響をカバーできず、営業利益は同88.8%減少した。補助金収入の計上や為替差損の減少で営業外損益が改善したものの、金融費用等の負担で経常利益は同95.7%減少。固定資産の除却損64百万円など特別損失87百万円を計上したため、80百万円の最終損失となった。
 
 
第2四半期(7~9月)の売上の落ち込みは顧客の仕様変更による液晶バックライト用ホルダーの受注減が要因。下期は、ASA COLOR LEDをはじめ、自動車関連製品の受注が激減した。一方利益面では、第3四半期までの売上の減に対しては、原価低減や経費の削減等で利益を確保していたが、第4四半期は急激な売上の減少にコスト削減が追い付かなかった(2月以降の経営合理化策で約48百万円のコストを削減した)。
 
 
工業用ゴム事業   売上高4,112百万円(前期比25.0%減)、営業利益144百万円(同74.75.0%減)
彩色用ゴム製品
彩色用ゴム製品の売上高は前期比24.5%減の2,408百万円。内訳は、独自開発製品である「ASA COLOR LED」が同13.1%減の1,809189百万円。新規車種の内装照明用で採用が進んだものの、11月以降、自動車生産減少の影響を受けた。また、光透過率94%以上の特性を持つ透明シリコーン製品の売上高は、同54.5%減の279百万円。携帯ゲーム機向けの応用製品の受注が減少、高輝度LEDと組み合わせた「ASA COLOR LENS」の取引減少も響いた。この他、小型電球彩色用ゴムの「ASA COLOR LAMPCAP」も車載機器の光源のLED化及び自動車生産の減少により売上高が減少した(同35.8%減の320百万円)。
 
弱電用高精密ゴム製品
弱電用高精密ゴム製品の売上高は前期比43.3%減の754百万円。顧客の仕様変更により液晶テレビのバックライト用ホルダーの売上高が308百万円と同61.4%減少、自動車関連製品も自動車の減産を受けて減少した。
 
スポーツ用ゴム製品
スポーツ用ゴム製品の売上高は前期比17.5%増の392百万円。卓球ラケット用ラバーの北京オリンピック向け新製品が、オリンピック後に一般向けに販売され受注が増加した。
 
その他の工業用ゴム製品
その他の工業用ゴム製品の売上高は前期比11.2%減の556百万円。ラバーファントム(電波測定用模擬人型検体)をNTTドコモ、アルプス電気、パナソニック、三菱電機等に納品したものの、自動車関連製品の減少をカバーできなかった。
 
 
医療・衛生用ゴム事業  売上高791百万円(前期比0.5%減)、営業利益93百万円(同42.39%増)
医療用ゴム製品は販売先の在庫調整か終わり、下期以降、自社開発製品の販売が回復、売上高が725百万円と同0.3%増加した。一方、衛生性、通気性、衝撃吸収性を追求した衛生用ゴム製品の売上高が、得意先の在庫調整の影響等により66百万円と同7.9%減少した。
 
 
(5)財政状態及びキャッシュ・フロー
大幅な減益となったものの、資金効率が改善したため、キャッシュポジションに大きな変化はない。
 
 
期末総資産は6,530百万円と前期末比1,353百万円減少。借方では、前期末と同水準の現預金(1,004百万円)を維持する一方、売上の減少により売上債権が1,117百万円減少した他、減価償却費や除却損の計上等で有形固定資産が238百万円減少した。貸方では、仕入債務(599百万円減)、短期借入金(204百万円減)、及び純資産(186百万円)等が減少した。
 
 
売上の減少で全般に資金繰りはタイトになったものの、売上債権の回収が進んだ事等で資金効率が改善したため営業CFは795百万円の黒字を確保(前期は872百万円の黒字)。LED関連の生産設備等への投資で投資CFは541百万円のマイナスになったものの、フリーCFは254百万円の黒字(前期は277百万円の黒字)となった。借入金の返済や配当の実施等で財務CFは271百万円のマイナスとなり、この結果、現金及び現金同等物の期末残高はほぼ前期末(516百万円)並みの水準である508万円を維持した。
 
2010年3月期業績予想
 
(1)事業環境
自動車
底を脱した感があるものの、受注の回復ペースは鈍い。特に同社が強みを有する中・高級車向けの製品群の受注の回復が遅れており、一方で価格の下げ圧力は一層厳しさを増している。
情報通信
受注の回復ペースは鈍く、価格の下げ圧力も厳しさを増している。
医療介護
医療現場での安全性に対するニーズの高まりを受けて、安全性に配慮した高付加価値製品が引き続き好調。
一般照明
照明器具のLED化の流れは加速しており、市場拡大が続いている。LEDの持つ特徴を生かした照明提案が求められている。
 
(2)製品戦略
技術開発と製品開発を強化する事によりニッチ市場でトップシェアを目指す。具体的には、固有の技術力を深化させ、また、組み合わせる事で更なる特徴を生み出していく。また、市場の広がりと顧客ニーズを分析し、製品の将来性を考慮した市場ターゲット戦略と価格戦略を立案し、最も効率の良い生産体制を整えていく。
 
技術開発の強化
表面改質処理技術、コントロール管理技術、光学設計技術と言った他社に真似のできない独自の要素技術の深化と組み合わせる事で差別化を図る。
 
製品開発の強化
市場ターゲットと価格戦略を明確にして製品企画を進めると共に、プロセス設計(材料、設備、生産工程の確立等)を強化する。
 
 
 
前期比20.1%の減収、40百万円の経常損失予想。
自動車関連製品、情報通信関連製品共に販売先の在庫調整が一巡し受注に底打ち感があるものの、回復ペースは鈍く先行きの不透明感も強い。このため、上期、下期共に、極めて厳しい売上予想となったが、役員報酬の減額や従業員一律の賃金カット、生産部門のワークシェアリング、生産性の改善、経費の削減等の取り組みを全社一丸となって進めると共に、設備投資を新製品・開発製品の量産化に必要な投資に絞り込む事で減価償却費も抑え、営業黒字の確保を目指す。尚、設備投資は160百万円(09/3期は308百万円)、減価償却費は400百万円(同470百万円)を予定している。
 
 
医療用ゴム製品が前下期からの好調を維持するものの、工業用ゴム事業の苦戦が続く見込み。彩色用ゴム製品では、市場が拡大しているLED関連分野を強化する。具体的には、「ASA COLOR LED」の原価の低減と付加価値向上に取り組み、色の調整が求められる車載以外の照明市場に向けたPRを進め、来期以降の売上げにつながる活動を進める。また、開発製品では、前期に引き続き、人体の存在を視野に入れた電波環境を測定する機関向けにラバーファントムの供給を続ける他、ゴムならではの弾力性と防水性の機能をもち、接着剤を使わない同社独自の接着技術を生かした、RFID向けのシリコーンゴム製半導体保護用ゴム製品の販売を強化する。
 
 
 
 
取材を終えて
09/3期は急激な需要の減少に対して、全社を上げてのコスト削減で営業・経常黒字を確保した。10/3期も厳しい事業環境を想定しているものの、営業黒字を確保できる見込みであり、また、資金繰りも前期以上にタイトになるものの、資金効率の改善で営業CFの黒字を維持できる見込みである。
生産性の改善や経費の削減にとどまらず、役員報酬の減額や従業員一律の賃金カット、更には生産部門のワークシェアリングといった思い切った施策を迅速に実施できる事が同社の強みである。表面改質処理技術、コントロール管理技術、光学設計技術等、技術面での同社の優位性は数多いが、それだけではない。