ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

プライム

ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.14

(7839:東証2部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.14】個人投資家向けセミナーレポート
取材概要「過去数年間、高い成長が続いてきたため、当初から今期(09/9期)は足場固めを行なう期との位置付けであったが、昨秋以降の外部環境の厳しさは予・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年7月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
株式情報(6/29現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
932円 14,522,354株 13,535百万円 30.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
53.00円 5.7% 106.73円 8.7倍 493.00円 1.9倍
※株価は6/29終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
東証2部に株式を上場する世界ナンバーワンのヘルメットメーカー SHOEIについて、ブリッジレポートにてご紹介いたします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメットメーカー。オートバイ用を中心にカート用などの4輪車用、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界50カ国以上を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力により、右の3つの世界一を実現する事を経営方針に掲げている。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。
 
<事業内容>
オートバイ用のヘルメット(二輪乗車用ヘルメット)の売上高が約90%を占めている。なかでも、高品質で高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県東磐井郡)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、より高い品質を維持すると共に技術の流出防止にも努めている。
また、業界では唯一の「トヨタ生産方式」導入企業として、高い限界利益率と在庫回転率、及び優れた資産効率を誇る。
 
<沿革>
1954年、ポリエステル加工メーカーとして創業。59年3月に昭栄化工(株)として法人化、一般用ヘルメットの生産を開始。翌60年1月、二輪乗車用ヘルメットの生産に着手。68年7月、アメリカに子会社を設立し海外展開を開始、87年7月には子会社設立によりフランスへも進出した。しかし、拡大戦略が財務を圧迫しバブル崩壊後の92年5月、会社更生手続開始の申し立てを余儀なくされた。同年9月、現山田会長が管財人となり更生手続きを開始し、93年12月に更生計画が認可された。更生手続き中の94年3月には子会社を設立し、ドイツに進出。98年3月、会社更生計画認可から4年3ヶ月という短期間で会社更生手続を終結した。同年12月には社名を(株)SHOEIに変更。04年7月のJASDAQ上場を経て、07年9月に東証第2部に上場した(JASDAQは上場廃止)。
 
<生産拠点>
 
内製化比率の引き上げによる収益力増強を目的に、岩手工場は物流・塗装機能を増強した。また、雇用の確保で地元経済にも貢献している。
 
<海外雑誌による評価>
ドイツ雑誌「PS Magazine」の読者投票によるBest Brands 2009ヘルメット部門で1位を獲得。
 
 
この他、ドイツ雑誌「Tourenfahrer Magazine 2009年7月号」による最新のフリップアップヘルメット比較テストでMultitecが「Recommendation」を獲得した他、アメリカ雑誌「Motocross ACTION」で、VFX-Wが「五つ星」の高い評価を得た。
 
中期計画
 
中期的な目標としてきた「磐石な財務基盤」、「世界に広がる販売ネットワーク」、そして「世界的なブランド力」を手に入れ、成長のために必要な大型投資も09/9期で一巡する。このため、今後は長期安定成長と安定利益の追及に主眼を置き経営を進めていく考えだ。
 
 
具体的な取組みとして、人材の育成と活性化を挙げており、若い社員の想像力とベテラン技術者の職人技術を融合する事で、品質の向上とコストダウンを図ると共に、革新的な設計とグラフィックデザインを生み出していく。また、新製品開発により、10年間で製品ラインナップの全面切り替えを行う他、既存販売先の深耕と新興市場(ロシア、ブラジル、東欧、中東等)の拡大に向けた海外要員の強化にも取り組む。
 
欧州での苦戦が続いている。
しかし、潜在需要の大きい米国の開拓はこれから。
また、ブラジルやオーストラリア等、一時は深刻な通貨下落に見舞われた資源国通貨も足下では値を戻しつつあり、止まっていた受注が動き始めた。
 
<09/9期の主な設備投資>
(1)世界初の大型風洞実験棟/R/Dセンター(年内完成予定)
時速180 kmの走行テストが可能。
設計、シミュレーション、製造の三位一体化により生産性が大きく改善する。
 
本格的なシミュレーションが可能なため、上記施設の完成後は高速道路での走行テストが不要になる。
尚、建築確認の遅れにより、完成が10/9期初頭になる見込み。このため、09/9期に予定している設備投資1,040百万円のうち200百万円が、10/9期の計上となりそう。計上時期に若干の遅れが生ずる可能性はあるが、その場合でも10/9期には設備投資と減価償却費はほぼ均衡する。11/9期以降は設備投資が減価償却費の範囲内に収まり、CFの改善が一段と進む見込むため、配当性向50%を目処に配当を実施していく考え。
 
(2)自動塗装機(社内では「3号機」と呼んでいる)社内製作、設置
キーエンスのセンサ技術(制御技術)を取り入れた自社開発のコンピュータ制御による無人塗装機。
SHOEIの蓄積された職人の技術とノウハウをソフトウェアと精密制御技術で実現し、塗料の使用量にも配慮した。
1人で4台の管理が可能(従来は半自動機であったため1人で2台の管理)。現在、新塗装機への入れ替えを進めており、塗料の削減も含めたコストダウン効果は数千万円に上る。
 
塗装工場の増築と設備の増強が一巡し、外注から内製への転換が進みつつある。現在、2~2.5億円の負担となっている塗料コストを最大20%程度カットできる上、外注費(外注先が14名で対応していた作業を社員2名で対応可能)の削減にもつながる。
 
新シールドシステム
 
この3月に発売されたプレミアムヘルメット“Zシリーズ”の新製品「Z-6」は、従来のデザインを一新すると共に、「Q.R.S.A.システム」と「CW-1シールド」といった革新的シールドシステムが装備された。
 
 
Q.R.S.A.(Quick Release Self Adjusting)システム
新開発のQ.R.S.A.システムは、簡単着脱に加え、シールドの密着性を高める可変軸Wアクション機構を搭載。シールドを下げて閉じる段階でスプリングによってシールドベースが後方にスライドするため(Down&Press!)、シールドがヘルメットに圧着される(シールドの高い密着性を実現)。このため、雨の浸入や風の巻き込みを大幅に低減した他、風切り音の発生も極限まで抑える事ができた(高い静粛性の実現)。また、シールドと窓ゴムの密着性を高めるため、窓ゴムの構造も一新した。上部は弾力性の高いリップ形状、側面と下端はカール&リップ形状とし、Q.R.S.A.システムによって前方からスライドしてくるシールドと窓ゴムが全周にわたってしっかりと密着する。
 
 
CW-1シールド
新シールド「CW-1」を装着するZ-6のアイポートは、従来比(Z-5、Mサイズ比)で上下10mm・左右幅4mmと大幅に拡大した。次項のイメージ写真のようにアイポートが広がると安全性はもちろんライディングの爽快感も高まる。また、CW-1は同社が長年にわたって開発し続けてきた、3次元成形ポリカーボネイト(高い対衝撃性を有する熱可塑性樹脂)製。ゆがみの少ないクリアな視界を確保すると共に、飛び石等に対しても優れた保護性能を有する。
 
 
業績
 
 
前年同期比20.8%の減収、同41.2%の経常減益。
景気悪化や円高で北米を除く海外と国内で売上が減少。原価低減や経費の節減に努めたものの、販売数量の減少による売上総利益率の悪化も響き、営業利益は同55.9%減少した。ただ、為替差益252百万円を計上したため営業外損益が改善、経常利益は同41.2%の減少にとどまった。
 
(2)財政状態
期末総資産は9,459百万円となり、前期末比1,831百万円減少した。配当や法人税等の支払で現預金が減少したものの、依然として借り入れ等の他人資本に依存する事のない健全経営が維持されている。
借方では、売上の減少に伴い売上債権が減少(233百万円)した他、法人税等及び配当金の支払等で現預金が減少(1,514百万円)した。もっとも、現預金の減少は、500百万円を長期性定期預金へ預け入れた影響もある。貸方では買掛金(176百万円)や未払法人税等が減少(557百万円)。配当の支払いによる利益剰余金の減少(366百万円)や大幅な円高に伴う為替換算調整勘定の減少(609百万円)により、純資産も7,159百万円と同1,015百万円減少した。
 
市場動向と同社を取り巻く環境
 
(1)海外市場
10月から8月納入分までの受注累計は、金額ベースで前年同期比27.1%減、数量ベースで同22.4%減。米国向けに投入したVFX-Wの好調で上期前半は堅調に推移したものの、景気悪化と製品の端境期が重なった欧州の苦戦で上期の後半にかけて落ち込んだ。しかし、戦略的新製品(小売店向けの正式な製品発表は7月1日の予定)の受注を開始した6月以降、受注は回復傾向にある。
 
 
(1)海外市場
前年同期比20.8%の減収、同41.2%の経常減益。
景気悪化や円高で北米を除く海外と国内で売上が減少。原価低減や経費の節減に努めたものの、販売数量の減少による売上総利益率の悪化も響き、営業利益は同55.9%減少した。ただ、為替差益252百万円を計上したため営業外損益が改善、経常利益は同41.2%の減少にとどまった。
 
(2)国内市場
足下はシーズンオフ入りと旧製品の在庫調整で若干弱含みだが、価格改定等もあり収益性の改善が進んでいる。
 
 
(3)同社を取り巻く環境と当面の戦略
金融危機に端を発した景気悪化により消費が急激に冷え込む中、同社は今秋からの新製品への切り替えを図るべく、流通在庫の圧縮に取り組んでいる。言うなれば、今は「新シールドシステム装備のヘルメット」と言う新兵器で武装し、ほふく前進で敵陣へ向かっている状態。敵の銃声が止んだ時、SHOEIの反撃の狼煙が上がる。
 
 
社員の生活の安定を重視した独自の人事システム
契約社員を中心にした賃金の引き上げや、時間給社員の月給制への移行に伴う自宅待機中の給与支払いの発生等が09/9期の利益圧迫要因となる。
 
取材を終えて
過去数年間、高い成長が続いてきたため、当初から今期(09/9期)は足場固めを行なう期との位置付けであったが、昨秋以降の外部環境の厳しさは予想を超えており、上期は苦戦を強いられた。ただ、この3月には、革新的シールドシステムを装備した期待の新製品「Z-6」を国内で予定通り発売。同等の製品を海外市場へも投入しており(小売店での販売は欧州が9月1日、米国が10月1日)、来期以降の業績への本格的な寄与が期待される。また、今期は利益の圧迫要因となる社員の生活の安定を重視した独自の人事システムも、技術の伝承と品質の維持、更には地域経済の活性化につながるものだけに、中長期的には競争力の源泉となっていくものと思われる。