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ブリッジレポート:(2437)シンワアートオークション vol.17

(2437:大証ヘラクレス) シンワアートオークション 企業HP
倉田 陽一郎 社長
倉田 陽一郎 社長

【ブリッジレポート vol.17】2009年5月期業績レポート
取材概要「09/5期は、もともと経営効率の高かった同社が更なるコストダウンに取り組み、成果も上げたが、事業環境の悪化は経営努力をはるかに凌いだ。このた・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年7月28日掲載
企業基本情報
企業名
シンワアートオークション株式会社
社長
倉田 陽一郎
所在地
東京都中央区銀座 7-4-12
決算期
5月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年5月 1,077 -198 -191 -279
2008年5月 1,621 194 201 98
2007年5月 2,228 449 451 256
2006年5月 2,334 562 567 311
2005年5月 1,940 440 410 235
2004年5月 1,680 319 311 174
2003年5月 1,222 234 231 122
2002年5月 1,158 139 129 70
2001年5月 1,105 200 202 38
2000年5月 1,302 218 201 109
株式情報(7/14現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
23,510円 54,772株 1,288百万円 - 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - - - 26,909.03円 0.9倍
※株価は7/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
シンワアートオークションの2009年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
美術品オークション運営のパイオニアで業界唯一の上場企業。高額落札作品市場シェア32.9%(「月刊美術」2009年3月号による)を誇る最大手であり、日本に高額美術品の換金市場を確立するため、公明正大なオークション市場の創造と拡大に取り組んでいる。
 
<事業内容>
同社の売上高は、オークション落札価額やプライベートセールの取引価格に対する手数料収入を中心に、商品売上高、及びカタログの販売やオークションの出品者から徴収するカタログ掲載料で構成されている。プライベートセールとは、美術品の直接取引を希望する顧客間のマッチングを行うもので、オークションを介さない美術品の仲介販売。また、営業戦略上、同社が買取った後にオークションに出品するケースや、プライベートセールで売却するケースもあり、この場合、オークション落札価額や売却額が売上高(商品売上高)として計上される。
 
 
2009年5月期決算
 
 
前期比33.5%の減収、191百万円の経常損失となった。

昨年9月の米国証券大手リーマンブラザーズの破綻を契機とする金融危機の深刻化・長期化に対する不安が実体経済の悪化を加速させ、セカンダリーマーケットである美術品オークション市場も年後半からは世界規模で負のスパイラルに陥った。
09/5期については同社も当初から厳しい事業環境を想定していたが、リーマンブラザーズの破綻以後、世界規模で美術品の取引量が大幅に減少した。同社においてもメインオークションである近代美術オークションやこれまで急拡大してきたコンテンポラリーアートオークションを中心に出品数及び落札単価が大幅に減少し、取扱高、売上高共に期初の想定を大きく下回った。このため、経費削減など経営の合理化に取組み販管費を圧縮したものの、取扱高の急減による売上総利益の減少をカバーするには至らず、198百万円の営業損失となった。尚、当期純利益の減少幅が大きいのは、繰延税金資産の取り崩しによる。
 
①早期黒字化へ向けたリストラの断行
08/5期の第4四半期以降リストラに着手し、09/5期の第1四半期には役員報酬の減額や役員賞与の停止に加え、全ての経費の見直しと削減にも取り組んだ。一方、オークション市場も6月から8月にかけて回復の兆しが見えたが、9月のリーマンブラザーズの破綻後は急速に収縮。同社の取扱高も従来の1/2以下に激減し、市場規模に見合った会社規模の適正化を迫られる事となった。このため、09年1月以降、会社規模を1/2にするための緊急リストラ策に着手、損益分岐点取扱高32億円体制の構築に取り組んだ。
 
緊急リストラ策の具体的な取組み
①希望退職者募集(正社員54名を目標25名へ。現在28名)
②本社機能の移転
③定期賞与を臨時削減
④全ての経営アイテムの更なる見直しと削減
 
②新たな取組み
08年11月(マカオ)と09年5月(香港)の2度にわたり、アジアの有力オークション会社3社(韓国・Kオークション、台湾・キングスレー、シンガポール・ララサティ)と「Asian Auction Week」を共催し、アジアの富裕層に対するマーケティングに取り組んだ。リーマンブラザーズ破綻後の開催であったため、収益面での貢献は無かったものの、コンテンポラリーアートを中心にアジアの富裕層の開拓や関係強化で大きな成果を上げた。 また、新規顧客開拓と新アイテム(中国骨董)の本格的な取扱いを主な目的として、Councilオークション(北京)と業務提携を行なった。
 
 
厳しい事業環境ではあるが、健全な財務内容が維持されており資産の流動性も高い。更に厳しい状況が続いたとしても、向こう数年間は経営を進める上で資金的な問題が発生するような事はないと思われる。
 
 
オークション事業の取扱高は前期比42.8%減の3,219百万円、売上高は同31.5%減の991百万円(内商品売上高は同98.3%増の152百万円)。
このうち、主力オークションである近代美術オークションは取扱高が同43.2%減の1,613百万円、売上高が同23.3%減の502百万円(内商品売上高は同348.5%増の128百万円)。出品点数の減少に加え、落札単価も前期実績を大きく下回った。コンテンポラリーアートオークションは取扱高が314百万円と同59.3%減少、売上高も同50.8%減の96百万円と落ち込んだ。
 
 
リーマンブラザーズ破綻以降の価格下落で商品の買取・販売もリスクが高まったため、商品売上高も減少した。
 
 
全社的なコスト削減の取組みにより、不動産関係費(計画比ではマイナス)を除く全ての科目で前期実績及び期初計画を下回ったが、急激な事業環境の悪化が経営努力を上回った。
 
 
落札予想価格(エスティメイト)を低めに設定する事で落札率が改善しつつあるが、如何せん物が出ない状態が続いている。
 
(7)主な落札実績
レオナール・フジタ 「猫と少女」 08年9月13日 近代美術オークション
落札予想価格 2,500万円~3,500万円
落札価額 4,700万円
 
坂本繁二郎 「馬」 08年9月13日 近代美術オークション
落札予想価格 4,000万円~6,000万円
落札価額 4,000万円
 
岸田劉生 「静物(砂糖壺・リーチの茶碗と湯呑・林檎)」 09年3月21日 近代美術オークション
落札予想価格 1億円~1億5,000万円
落札価額 1億3,500万円
 
09/5期は落札価額が1億円を越えたのは、「静物(砂糖壺・リーチの茶碗と湯呑・林檎)」1件にとどまった。
 
2010年5月期業績予想
 
 
前期比19.0%の減収、27百万円の経常損失予想。
 
上期はリストラ関連の損失が残るものの、下期以降は取扱高32億円体制が整い営業損益が黒字転換する見込み。
取扱高は主力の近代美術オークションで回復を見込むものの、その水準は低い。海外コレクターに人気のあるJewellery&Watchesオークションを強化する他、アジア主要都市(北京、上海、台北、ソウル、香港、シンガポール)でのコネクション構築とマーケティングの橋頭堡として「Asian Auction Week」の開催を継続していく考え。
 
 
(3)2010年5月期の事業戦略
①国内戦略 富裕層ネットワークの更なる拡大と深化、及び法人営業強化と新規事業の模索
・落札営業
クオリティの高い作品の販売に注力すると共に、景気の影響を受けやすいミドルクラスの富裕層ではなく、安定したハイクラスの富裕層ネットワークの構築と強化に取り組む。
・出品営業
法人営業を強化し、不況下における企業の美術品換金需要を取り込む。
・新規事業の模索
美術品融資事業の開発
 
②海外戦略 PR、マーケティングを強化し、アジアにおけるコネクションの構築と平均単価の引き上げ
・中国を中心としたアジアの早期市場回復をにらんだアジア富裕層の開拓
・アジア作家の発掘
・香港でのオークションの継続開催
・海外オークションアイテムの拡大(Jewellery&Watches)
・更なる海外企業との提携の模索
・欧米市場向けアイテムの模索
 
海外でのオークション開催
アジアの有力オークションハウスとの海外でのオークション共同開催により、アジアコネクションの一層の強化を図る。「Asian Auction Week」は、アジア主要都市(北京、上海、台北、ソウル、香港、シンガポール)でのコネクション構築とマーケティングの橋頭堡として位置づけられている。
 
Councilオークション(北京)との業務提携
グローバルマーケティング強化の一環として、2009年2月1日、北京に本社を置くCouncilオークションと業務提携した。Councilオークションの中国国内における美術品取扱いの豊富な知識と経験を活かし、シンワアートオークションが扱う中国古書画・骨董の販売チャネルを中国本土に確立する。具体的には、シンワアートオークションが日本国内で集荷した作品の査定及びオークションへの出品をCouncilオークションに委託する。Councilオークションは、同社が中国国内で開催するオークションで作品を売却し、シンワアートオークションへ代金及び紹介手数料を支払う。そして、シンワアートオークションが出品者へ代金を支払う。
 
取材を終えて
09/5期は、もともと経営効率の高かった同社が更なるコストダウンに取り組み、成果も上げたが、事業環境の悪化は経営努力をはるかに凌いだ。このため、10/5期は組織を少数精鋭組織に再編し、更なるコストダウンに取り組む考えだ。
未だ事業環境は不透明で今後の展望を描き難い状況が続いている事は事実だが、3月以降、落札予想価格の設定を引き下げたところ、60%程度に落ち込んでいた落札率が70~80%に回復してきたと言う。出品作品の確保と言う課題が残っているものの、緩やかながら状況が改善しつつあるようだ。