ブリッジレポート
(2435) 株式会社シダー

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ブリッジレポート:(2435)シダー vol.11

(2435:JASDAQ) シダー 企業HP
山崎 嘉忠 社長
山崎 嘉忠 社長

【ブリッジレポート vol.11】2009年3月期業績レポート
取材概要「施設ネットワークの拡充と各施設の稼働率の上昇で収益基盤が強固なものとなってきた。介護付有料老人ホームをはじめとした特定施設の総量規制に・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年8月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社シダー
社長
山崎 嘉忠
所在地
北九州市小倉北区大畠 1-7-19
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 7,075 149 100 46
2008年3月 5,921 56 42 16
2007年3月 4,519 -403 -406 -247
2006年3月 4,251 309 297 166
2005年3月 3,649 352 288 164
2004年3月 3,125 122 97 41
2003年3月 2,352 111 104 30
2002年3月 1,594 17 21 11
2001年3月 281 -20 -21 -14
株式情報(5/28現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
287円 5,738,000株 1,647百万円 5.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 1.7% 31.37円 9.1倍 158.96円 1.8倍
※株価は5/28終値。
 
シダーの2009年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
デイサービス及び有料老人ホームを中心とした介護サービスを、御社のある福岡県を中心に、北海道、首都圏、関西圏、中国・四国地区、山口県で展開している。有料老人ホームでは施設数で業界(全国有料老人ホーム開設事業者)12位、総居室数で16位のポジションにある(月刊シニアビジネスマーケット09年5月号より)。
事業は、同社の施設の来場者にサービスを提供するデイサービス事業、有料老人ホーム等の施設の入居者を対象にサービスを提供する施設事業、及び利用者の自宅を訪問して日常生活訓練や機能訓練等を行うリハビリサービスや日常生活のお手伝いを行うホームヘルパーサービス等の介護サービスを提供する在宅サービス事業に分かれる。09/3期の売上構成比は、それぞれ41.3%、49.1%、9.6%。
 
 
2009年3月期決算
 
 
前期比19.5%の増収、同132.7%の経常増益。
デイサービス事業において認知症対応型デイサービス1施設、施設サービス事業において有料老人ホーム4施設とグループホーム1施設を新たに開設。既存施設も、サービスの質の向上や積極的な営業活動によりデイサービス施設の稼働率が上昇した他、施設数の増加が続く有料老人ホームも入居者が順調に増加した。利益面では、人員配置や業務手順の見直しなど運営の効率化に努めた結果、売上総利益率が改善。施設の増加により人件費や租税公課など販管費が増加したものの、増収効果と売上総利益率の改善により営業利益は同2.7倍に拡大した。
 
 
デイサービス事業
新たに「あおぞらの里 小松川デイサービス(認知症対応型)」(東京都江戸川区)を開設。既存施設においてサービスの質の向上に努めると共に積極的な営業活動を進めた結果、登録利用者数が大幅に増加し、稼働率も上昇した。
 
 登録者  08/3期:3,749人 ⇒ 09/3期:4,028人
 稼働率  08/3期: 66.9% ⇒ 09/3期: 74.5%
 
施設サービス事業
新たに開設した施設は、「ラ・ナシカ あらこがわ」(愛知県名古屋市)、「ラ・ナシカ おとがな」(福岡県大野城市)、「ラ・ナシカ あさひかわ」(北海道旭川市)、「ラ・ナシカ こまつがわ」(東京都江戸川区)、「あおぞらの里グループホーム小松川(併設)」。既存有料老人ホームも利用者獲得に注力した結果、施設入居者が順調に増加した。
 
 入居数  08/3期:798室/923室 ⇒ 09/3期:1,012室/1,162室
 入居率  08/3期:   86.4% ⇒ 09/3期:     87.0%
 
在宅サービス事業
デイサービス事業及び施設サービス事業に経営資源を集中させたため、売上高が減少した。
 
 
介護報酬改定の影響
 
介護報酬がプラス改定され(09年4月より実施)、負担が重い夜間勤務や認知症ケアに手厚く配分する等、主なサービス40種類について新たに加算が設けられた。今回の改定は、介護従事者の処遇改善に主眼が置かれており、全体でプラス3%の改定が実施され、内訳は在宅系1.7%、施設系1.3%。

施設系サービスでは、夜勤の負担の重さが考慮され、基準より多い夜勤職員を配置した場合に加算される。この他、重度化が進む老人保健施設でターミナルケアなど看取り、状況を把握が難しい独居高齢者のケアプランの作成も加算された。認知症対応型グループホームでは、看取り介護加算や退去時に地域での生活に戻るための相談援助加算に加え、65歳未満の若年性認知症患者の入所を受け入れた場合の加算も設けられた。

また、従事者のキャリアアップと離職防止にも配慮し、介護福祉士など有資格者を一定割合以上置いている事業所やデイサービスなどで3年以上の勤続経験者がいる場合にも加算する。更に、地域毎の単価基準の見直しも行なわれた。これまで原則「1単位10円」で、都市部ではこれに上乗せがあったが、人件費負担が重い大都市の事業所では上乗せがあっても経営が苦しかった。このため、上乗せ幅を拡大した。
同社では、介護報酬改定の業績への影響を次のように説明している。
 
(1)デイサービス事業
23施設中17施設が通常規模型大規模事業所減算から、今回の改定により大規模型(Ⅱ)に変更となった。また、23施設中17施設で事業所評価加算が申請可能となった為、増収となる見通し。前期の売上に今回の改定分を加算して試算すると、売上高は概算で103百万円(3.6%)増加する。

利用者1人当たりの平均利用単価:7,500円 ⇒ 7,900円
 
(2)施設サービス事業
要介護の基本報酬がアップされ、医療連携加算分が増収となったが、要支援の基本報酬及び地域区分で9施設が引き下げられた。前期の売上に今回の改定分を加算して試算すると、売上高は概算で62百万円増(1.8%)増加する。
 
(3)在宅サービス事業
訪問看護事業、ヘルパー事業における増収は軽微だが、ケアプラン事業の収益が目に見えて改善する。前期の売上に今回の改定分を加算して試算すると、売上高は概算で15百万円増(2.5%)増加する見込み。部門別の見通しは次の通り。
 
訪問看護部門
訪問リハビリに課せられていた「訪問看護計画において、理学療法士等の訪問が保健士又は看護師による訪問の回数を上回るような設定がなされることは適切ではない」という規制が緩和された。このため、同社の強みである理学療法士や作業療法士といったリハビリ部門での利用者獲得がより強化できるようになった。
 
ヘルパー部門
今回の改定では特定事業所加算等の加算が申請できるようになったものの、全体としての影響は軽微。
 
ケアプラン部門
特定事業所加算が3事業所で申請可能となっており、その他加算を加えると約7%の売上増となる見通し。
 
2010年3月期業績予想
 
 
前期比14.3%の増収、同260.7%の経常増益予想。
新規の有料老人ホームの開設を1施設に抑え、財務体質の強化を優先する考え。また、内部管理体制の整備と社員の教育・研修に注力し、コンプライアンスを重視した施設運営に取り組む。利益面では、新規開設の抑制で開設費用が減少する他、介護報酬の改定に伴う報酬増もあり、営業利益は約3倍に拡大する。
配当は1株当たり5円の期末配当を予定しており、06/3期以来の復配となる。
 
 
デイサービス事業
小規模施設で稼働率の低い施設があり、これらの稼働率引上げがポイントとなる。このため、稼働率が高い鎌ヶ谷(87.0%)や和白(86.1%)等を参考に運営モデル作りを進めると共に、積極的なリハビリテーションの推奨や利用者の健康チェックのための「体組成計Physion Physion XP」の導入により他社との差別化を進めている。また、認知症患者の利用が増えている事から認知症デイサービスを強化する他、余裕のある施設では施設の改築を行い利用スペースを拡大する(※)。

 稼働率   09/3期: 74.5% ⇒ 10/3期: 80%

※ 徳力デイサービスにおいて、既存施設の改築により利用スペースを拡大した(第1デイサービスと第2デイサービスを開設)。その他、戸ノ上デイサービス、福岡西デイサービスも改築の予定。
 
 
施設サービス事業
今期は前期開設した施設及び新規施設の入居率向上に注力する。新規開設は、今期以降、1道1都2県で5施設を計画しており、このうち今期は「ラ・ナシカ こうふ」(山梨県甲府市)の開設を予定している。来期以降については、毎期1~2施設を開設していく考え。

 入居率   09/3期: 87.0% ⇒ 10/3期: 98%
 
 
在宅サービス事業
今回の介護報酬改定で、「訪問看護計画において、理学療法士等の訪問が保健士又は看護師による訪問の回数を上回るような訪問の回数を上回るような設定がなされることは適切ではない」という規制が緩和された。このため、改めて、訪問リハビリを強化する。

 1日当たり平均リハビリ件数  09/3期:平均3.6件 ⇒ 10/3期:平均5.0件
 
 
取材を終えて
施設ネットワークの拡充と各施設の稼働率の上昇で収益基盤が強固なものとなってきた。介護付有料老人ホームをはじめとした特定施設の総量規制に対応するため、過去数年間は前倒しで施設の開設を進めてきたが、この動きがほぼ一巡し今期の新規開設は1施設にとどまる。物足りなさを感じる向きもあるだろうが、利益体質が定着してきたところで、財務体質の強化に加え、内部管理体制の整備と社員の教育・研修に改めて取り組む事で足元を固めようとする同社の姿勢を評価したい。急成長を続ける中、足下を見ずに、遠くばかりを見ていがために、思わぬところで躓いた高成長企業は少なくない。