ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.11

(2660:東証1部,大証2部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長兼社長
寺西 忠幸 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.11】2010年2月期上期業績レポート
取材概要「上期は大幅な減益となったが、下期は増益に転じる見込みだ。景気の2番底が懸念される等、下期についても先行きの不透明感は強く、また、消費者心理・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年10月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長兼社長
寺西 忠幸
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(10/2現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
467円 11,331,440株 5,292百万円 4.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 4.3% - - 915.51円 0.5倍
※株価は10/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2010年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告いたします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。(株)ニッショードラッグ及び(株)ジェイドラッグの連結子会社2社とともに、和歌山県を除く関西地域、徳島県、石川県でドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2009年8月15日現在、グループで307店舗(FC3店舗を含む)を展開。製造卸売事業として、連結子会社(株)健美舎が健康食品と医薬品の企画・販売も手掛けている。
 
<沿革>
1958年3月、薬局店舗営業と薬品製造業を目的に設立され、その後、ドラッグストアのチェーン展開を開始した。91年10月、大阪市にスーパードラッグストア第1号店をオープン以降、出店を強化、2007年2月期には200店舗を超えた。また、M&Aにも積極的に取り組み、2006年10月には四国地区での販売網の拡充の観点から(株)ジェイドラッグを、同年12月には同じ関西に地盤を置き営業基盤で補完性の高い(株)ニッショードラッグを、それぞれ買収。「2015年 500店舗」体制を目指し、グループ力の強化を進めている。
 
 
2010年2月期上期決算
 
 
前年同期比1.6%の減収、同38.7%の経常減益となった。 セグメント別では、消費低迷と競争激化による来店客数の伸び悩みや天候不順による季節商材の販売不振等で小売事業の売上高が52,817百万円と同1.5%減少。競争激化による販売価格の下落等で、製造卸売事業の売上高も93百万円と同15.7%減少した。
 
小売事業    売上高52,817百万円(前年同期比 1.5%減)
内部売上控除後企業別売上高
キリン堂
40,145百万円
(寄与度255百万円)
 
ニッショードラッグ
12,489百万円
(同 △ 850百万円)
 
ジェイドラッグ
182百万円
(同 △ 229百万円)
製造卸事業   売上高  93百万円(前年同期比15.7%減)
利益面では、コストコントロールに注力した結果、販管費が計画を下回ったものの、減収と消費者の節約志向の高まりから、制度化粧品や天候不順に伴う季節商材の売上が伸び悩んだこと等による売上総利益率の低下で、営業利益が同45.3%減少。営業店内の商品在庫の評価方法を従来の売価還元原価法から売価還元低価法へ変更したことに伴うたな卸資産評価損919百万円など特別損失1,255百万円を計上したため、485百万円の四半期純損失となった。

第2四半期末のグループ店舗数は307店舗(キリン堂224店舗、ニッショードラッグ78店舗、ジェイドラッグ2店舗、FC3店舗)。新規出店は同社が大阪府に出店したスーパードラッグストア1店舗。一方、閉店は、同社がスーパードラッグストア1店舗を、連結子会社(株)ニッショードラッグがスーパードラッグストア2店舗を、それぞれ閉店した。また、同社の205店舗と(株)ニッショードラッグの78店舗の合計283店舗において、改正薬事法施行に伴うレイアウト変更等の簡易改装を実施した。
 
 
量よりも質を重視した販売が奏功したこと等で客単価がコンスタントに前年同月を上回ったものの、買い控えが強まったことや競争激化による来店客数の減少が響き、減収となった。
 
 
花粉症や新型インフルエンザ関連商品の寄与で医薬品が伸びたほか、まだ構成比は小さいものの、1店舗当たりの処方箋枚数の増加で調剤売上高も高い伸びを示した。ただし、全般には消費低迷等の影響を受けた。主要品目では、制度化粧品の不調で化粧品が落ち込んだほか、ニッショードラッグの苦戦で雑貨等の売上も減少した。
 
③売上総利益率
(株)ニッショードラッグの売上総利益率の低下が響き、連結売上総利益率が26.1%から25.8%に0.3ポイント低下した。(株)キリン堂は利益率の高い医薬品や調剤売上高の売上構成比並びに粗利率の上昇で、売上総利益率が21.5%から21.6%に上昇。一方、競争激化や利益率の高い商品の売上減少により、(株)ニッショードラッグの売上総利益率が26.7%から25.7%に低下した。
 
 
これまでの取り組みの成果で販売費が前年同期比減少。また、前年同期比で増加した人件費(給与関係が161百万円増加)、営業費、施設費(地代家賃が70百万円増加)についても、当初の計画を下回った。
なお、主要会社別(内部取引控除後)では、(株)キリン堂の販管費が前年同期比4.4%増の9,865百万円(計画比△334百万円)で売上高に対する比率は24.6%。(株)ニッショードラッグの販管費が同6.5%減の2,921百万円(同△161百万円)で売上高に対する比率は23.4%。
 
⑤特別損失
特別損失1,255百万円の主な内訳は、たな卸資産評価損919百万円、減損損失237百万円、店舗閉鎖損失94百万円である。なお、前年同期は減損損失等で366百万円の特別損失を計上した。
 
(2)財政状態及びキャッシュ・フロー
第2四半期末の総資産は前期末比422百万円減の41,958百万円。たな卸資産評価損の計上や有利負債の削減等で財務の健全化を進めた。一方、在庫コントロールが機能してきたことに加え、仕入債務の増加や全般的な資金効率の改善等もあり現預金は増加した。同様の理由により営業CFが増加する一方、新規出店の抑制により投資CFのマイナスが減少したため、フリーCFも大幅に増加した。
 
 
 
2010年2月期業績予想
 
 
下期は前年同期比0.3%の増収、同13.9%の経常増益予想。
既存店売上高の前提は(株)キリン堂が同0.5%増、(株)ニッショードラッグが同2.0%減。出・退店は出店6店舗、退店2店舗を予定。のれん償却208百万円、特別損失350百万円を織り込んだ。

なお、(株)キリン堂の前09/2期の9月度は営業損失216百万円、経常損失190百万円だったが、今期の9月度は新型インフルエンザ関連の需要等で営業損失20百万円、経常損失3百万円と、それぞれ改善した。また、(株)ニッショードラッグも前年の9月度が営業損失22百万円、経常損失21百万円だったが、この9月度は営業利益21百万円、経常利益28百万円と改善。2社の営業損益の改善は合計で239百万円に達しており、既に下期の営業利益の増益幅199百万円(09/2期:717百万円 ⇒ 10/2期予想:917百万円)を上回っている。
 
<下期の主な施策>
 
 
 
通期では前期比0.7%の減収、同16.3%の経常減益予想。
既存店売上高の前提は(株)キリン堂が同1.3%減、(株)ニッショードラッグが同3.6%減。出・退店は出店7店舗(上期に1店舗を出店済み)、退店5店舗(同3店舗を退店済み)を予定。のれん償却420百万円、たな卸資産評価損919百万円など特別損失1,605百万円を織り込んだ。配当は、1株当たり年20円を予定(第2四半期末10円)。
 
 
前期比0.7%の増収、同11.0%の経常減益予想。
出店は上期1店舗、下期6店舗、退店は上期1店舗、下期1店舗。たな卸資産評価損697百万円等、特別損失1,296百万円を織り込んだ。
 
 
前期比5.1%の減収、同28.2%の経常減益予想。
出店は下期1店舗、退店は上期2店舗、下期1店舗。たな卸資産評価損218百万円等、特別損失358百万円を織り込んだ。
 
今後の方向性
 
(1)組織・店舗の構造改革を断行
現場中心の経営(顧客視点での経営)を目指して、組織・店舗の構造改革を行った。
 
①5月12日付 ⇒ 代表取締役の移動
結果に対する責任を明確化すると共に、権限の集中による構造改革の早期達成と一段の経営体質の強化を目指す。
 
②6月16日付 ⇒ 組織変更
・組織変更の主な目的
経営環境の変化に対応し、より一層の経営戦略の充実を図るため、経営トップと現場が意思疎通しやすいフラットな経営体制を構築すると共に、PB商品の開発と販売企画の強化体制を整えた。
・組織変更の概要
エリアマネジャーを廃止し、ブロック長中心の運営に移行
運営部長のスタッフとして、スーパーバイザーを設置(重要課題の現場適用及び会社方針の徹底)
化粧品インスペクター(旧化粧品SV)を運営部長直轄とし、化粧品組織の再構築
マーケティング戦略室を新設
 ブロック長の育成、“モデル店舗”の再構築、リロケーションの実行
 
(2)業界環境と同社の対応
①業界環境
超少子高齢社会への突入        ⇒ 医療制度改革
改正薬事法施行(登録販売者資格制度) ⇒ 業界再編加速
薬学部6年制              ⇒ 医療の担い手である薬剤師への期待
景気低迷               ⇒ 所得低迷による低価格志向
 
②同社の対応
上記の業界環境を踏まえて、同社は、今後のドラッグストアを「セルフメディケーション」の担い手と位置付けている。そして、同社はこの役割を果たすために、経営の量から質への転換を進めていく考え。
 
(3)今後の方向性
ローコスト経営への転換を図ると共に、専門性とサービスを強化し、「地域コミュニティの中核となるドラッグストアチェーン」の確立を目指す。
 
 
取材を終えて
上期は大幅な減益となったが、下期は増益に転じる見込みだ。景気の2番底が懸念される等、下期についても先行きの不透明感は強く、また、消費者心理が大きく改善しているとも思えないが、9月が順調であったことに加え、第2四半期の営業利益率が第1四半期に比べて改善していること、たな卸資産の評価損計上による原価低減効果が期待できること、更にはインフルエンザ関連製品の需要が一段と高まるものと思われること等、下期回復の根拠となる要因は多い。既存店の活性化やヘルス&ビューティ商品の販売等の面で、下期に成果を上げることができれば来期にもつながる。