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(2426)

ブリッジレポート:(2426)ピーアンドピー vol.3

(2426:JASDAQ) ピーアンドピー 企業HP
山室 雅之 社長
山室 雅之 社長

【ブリッジレポート vol.3】2010年3月期上期業績レポート
取材概要「年末年始のキャンペーン受注に不透明感があるとして会社側は慎重な姿勢を崩していないが、グループをあげての販管費削減やPPCの事業再編の進展に加え・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年11月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピーアンドピー
社長
山室 雅之
所在地
東京都新宿区新宿3-27-4
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 18,853 635 642 372
2008年3月 15,808 822 827 404
2007年3月 14,056 678 684 340
2006年3月 6,075 269 255 133
2005年3月 4,667 312 295 156
2004年3月 3,637 281 270 110
2003年3月 2,586 171 172 93
2002年3月 1,891 151 158 28
株式情報(11/6現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
19,000円 103,379株 1,964百万円 13.7% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
900.00円 4.7% 1,934.63円 9.8倍 27,079.71円 0.7倍
※株価は11/6終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピーアンドピーの2010年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
携帯電話、デジカメや薄型TV等のデジタル家電、或いは食品等、様々な商品の販売促進活動を受託するセールス・プロセス・アウトソーシング(SPO)を中心に、小売店向け棚卸サービス等も手掛けている。全国に広がるサービスネットワークと、接客マナー研修、販売技術研修、商品知識研修などスタッフのスキルアップを支援する充実した教育・研修システムを強みとする。また、取引先も幅広く、最大手のKDDI(株)でも売上高全体の8.9%を占めるに過ぎない(上位10社で38.5%にとどまる)。
グループは、同社の他、棚卸サービスの(株)ピーアンドピー・インベックス(以下、PPI)、携帯ショップへの人材派遣を手掛ける(株)ジャパンプロスタッフ(同、JPS)、一般事務及びコールセンター事業に強みを持つ(株)ピーアンドピー・キャリア(同、PPC)、及びPPIの100%子会社である迎倍客 股有限公司(台北市)。
1987年1月、メーカーの商品販売促進活動の支援を目的に設立。2000年8月に一般労働者派遣事業の許可を、03年10月に事業分野拡大を目的に有料職業紹介事業の許可を、それぞれ取得。04年12月、JASDAQに株式を上場した。現在、全国31の主要都市に展開しており、北海道から沖縄まで国内一斉のセールスプロモーションがワンストップで実現できる。
 
<サービス内容>
(1)モバイル・デジタル関連サービス
・セールススタッフ   :日時、キャンペーン形態等に応じて販売員を派遣・業務請負
・キャンペーンスタッフ :年末年始、シーズン毎にキャンペーンスタッフを派遣・業務請負
・ラウンダー      :店舗に出向き、販売状況やスタッフ等を管理する管理者の派遣・業務請負
(2)ストア支援サービス
・レジスタッフ     :レジスタッフ、レジトレーナーの派遣・業務請負、マニュアル作成等
・生鮮技術スタッフ   :生鮮加工技術と現場管理能力を備えたプロフェッショナルを派遣・業務請負
・デモ・スタッフ    :店頭での試食販売、キャンペーン等の販促活動支援スタッフの派遣・業務請負
(3)人材サービス
銀行・クレジットカード会社等のカード加入促進、コールセンター業務、事務・IT人材派遣、流通・小売業を中心とする人材紹介等。
(4)棚卸サービス
棚卸業務を代行し、業務の効率化と営業時間の有効活用を実現。365日、24時間体制で多様なニーズに対応。
 
2010年3月期上期決算
 
 
M&A効果やモバイル分野の好調で二桁の増収ながら、子会社の事業再編等で営業減益
売上高は前年同期比13.8%増の10,381百万円。デジタル分野でキャンペーン案件が縮小する等、厳しい事業環境が続いたものの、7月1日に子会社化したPPC(ピーアンドピー・キャリア)が寄与した他、モバイル分野も伸びた。
営業利益は同52.5%減少の137百万円。採用環境の改善による求人採用費の減少や事務所統合等による固定費削減で販管費の伸びを抑えたものの、利益率の高いキャンペーン案件の減少やPPC及び10月に吸収合併した子会社(株)ピーアンドピー・コンシューマーズの事業再編等による売上総利益率の悪化が響いた。尚、四半期純利益の減少幅が大きいのは、M&Aや合併に伴い発生した固定資産及びシステム等の除却損や事業構造改善費用など43百万円を特別損失に計上したため。
 
 
モバイル・デジタル(事業主体:同社及びJPS)
料金体系やサービス内容の複雑化や顧客獲得競争の激化によりモバイル分野が前年同期比14.7%増加したものの、一部クライアントのキャンペーン案件縮小等によるデジタル分野の苦戦が響いた。
ストアサービス(事業主体:同社)
大手GMS・スーパー等の業績悪化や生鮮技術者の抵触日の影響等で、生鮮技術者派遣の雇い止めや直接雇用の動きが広がり、レジ請負・派遣及び技術者派遣のニーズが減少した。
人材サービス(事業主体:同社及びPPC)
事務派遣を中心とするPPCの子会社化により大幅な増収となった。
棚卸サービス(事業主体:PPI)
業績が悪化した大型店の一部で需要が減少したものの、コンビニ分野での他社枠獲得により売上高が増加した。
 
 
アウトソーシング
アウトソーシングで実施していたキャンペーン案件の縮小が響いた。ただ、店頭調査・接客調査等の新たなアウトソーシングサービスが始まった他、アウトソーシングフローの積極提案の成果で、下期以降、派遣からの切替えニーズが顕在化しつつある。
人材派遣
一般事務派遣は引き続き縮小傾向にあるものの、事務派遣を中心としたPPCの寄与で大幅な増収となった。また、地方拠点での官公庁案件向けの営業が軌道に乗りつつあり、今後の受注増が期待できる。
 
 
東日本地区
PPCの子会社化による拠点拡大(札幌・盛岡・仙台・新宿・栄・豊田の追加)やサテライトオフィスを活用した営業エリアの拡大により売上高が増加した。
西日本地区
東日本地区同様、PPCの子会社化による拠点の拡大(梅田・広島・高松・山口・福岡の追加)に加え、入札参加により官公庁案件を獲得できた事も増収要因。
 
(5)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
PPCを子会社化した事で、上期末の総資産は5,412百万円と前期末比483百万円増加した。借方では、PPCの子会社化で売上債権や固定資産が増加(PPCの「のれん」は120百万円)した他、有価証券の現金化等により現預金も増加した。一方、貸方では、未払費用や未払金等が増加する一方、純資産が減少したものの、有利子負債に依存しない健全な財政状態が続いており、自己資本比率は51.7%。
CFについては、PPCの株式取得と利益の減少及び運転資金の増加で一時的に悪化した。
 
 
(6)上期のトピックス
①PPCの子会社化
人材サービスのバリエーション強化を目的に、7月1日、事務派遣・コールセンター業に強みを持つ、旧プレミア・スタッフ(現PPC:ピーアンドピー・キャリア)の株式を取得した。PPCの子会社化により、これまで手薄であったオフィス、事務業務やコールセンター等へのサービス提供を強化できる。また、今後は企画や調査等のオフィス系の周辺サービスも強化し、業種を問わず多角的なサービスの提供ができる体制を整える。
 
 
②新たな顧客ニーズの開拓
新たな顧客ニーズの開拓を目的に、薬事法改正に合わせて医薬分野の派遣を開始した他、SPOサービスの川上・川下の業務請負ニーズを開拓するべく店舗・接客調査分野でのサービスを開始した。
 
・6月1日薬事法改正に合わせ、医薬分野の派遣を実施した
薬剤師・登録販売者の派遣を開始し、既に売上規模が月額100万円を超えている。同社が強みを持つ小売・流通業界における医薬分野のニーズの掘り起こしに取り組むと共に、人材紹介・紹介予定派遣への展開をも視野に事業を進める。
・SPOサービスの川上・川下の業務請負ニーズの開拓
店舗・接客調査分野でのニーズの開拓
小売・流通業の既存クライアントに対して、衛生管理や接客マナー等の店舗調査・接客調査といった新たなサービスを提供する事で、1クライアントに対する提供サービスの多角化を図る。
 
 
 
2010年3月期業績予想
 
 
前年同期比27.6%の増収、同1.9%の経常減益予想。
年末年始のキャンペーン受注に不透明感があるため、売上・利益共に予想を下方修正した。ただ、M&Aや子会社の吸収合併に伴う不採算事業の整理がほぼ9月で一巡(第3四半期まで影響が残るものが一部ある)、下期の営業・経常利益は前年同期並みの水準を確保できる見込み。
 
 
前期比20.9%の増収、同25.2%の経常減益予想。
上期の苦戦が響き営業利益が同24.4%減少する見込み。子会社の事業再編に伴う特別損失の計上で当期純利益は同46.2%減少する見込みだが、配当は期初発表の通り、1株当たり50円増配の900円を実施する予定。

尚、今期のスローガンとして、「品格と高付加価値の創造」を掲げている。
 2009年3月期 品格と高付加価値の創造という理念を浸透させる。
 2010年3月期 品格と高付加価値の創造を行動に移す。
 2011年3月期 品格と高付加価値を定着させる。
 
(3)通期業績達成のための施策
通期業績予想を達成するための下期の重点目標として、グループ関係強化による企業力の強化(営業力強化・販管費率削減)と高付加価値創造による利益率の向上を挙げている。この目標達成に向け、次の4つの施策を進める。
 
①グループ体制の強化
グループ全体での営業力の底上げを図ると共に、グループでワンストップの人材サービスを提供できる体制を整える。
 
グループ間営業協力体制の強化策
・グループ間情報交換会の実施(11月~随時開催)
・クライアント情報の共有化
・グループ全体での営業実施(11月~)
 グループ案内を活用し、新規・既存クライアントにグループ会社を紹介
・グループ間人事交流の実施(7月~随時実施)
 P&P→PPC間:事務系人材派遣部門・人材紹介部門のPPCへの統合
 PPC→P&P間:流通事業部門・各地方拠点のP&Pへの統合
 
シナジー効果発揮のためのPPCの体制作り
・経営陣の交代と社名の変更
 旧体制の取締役4名、監査役1名の退任、P&Pより取締役7名、監査役2名の就任
 (いずれも7月1日付)
 プレミア・スタッフからピーアンドピー・キャリアへの社名変更を実施(10月1日付)

・グループネットワークの統合と新システムの導入
 旧グループのネットワークからP&Pグループネットワークへの切替え実施(9月末完了)
 旧グループよりリースしているシステムの切替え、新基幹システムの導入(10月末完了)

・各拠点の移転及び統廃合の実施(M&A前:12拠点→ M&A後:4拠点)
 各拠点の統廃合の実施(1拠点閉鎖、7拠点P&Pへの統合、9月末完了)
・不採算事業部門の体制整理
 特定技術者派遣事業・再就職支援事業の体制整理の実施(~12月末完了予定)
尚、PPCは4ヶ月で上記施策を完了する予定で、10月は単月黒字が見込まれている。
 
②請負サービス提案の継続実施
国内景気悪化に伴い企業のコスト削減の動きが強まりを見せる中、2009年問題に象徴される抵触日の問題や民主政権確立による派遣法改正の問題(規制強化、登録型派遣の原則禁止等)等の影響もあり、派遣事業を取り巻く環境は厳しさを増している。一方、こうした動きは請負サービスにとって追い風であり、コンプライアンスの問題から市場が縮小した請負サービスが改めて見直されつつある。このため、同社では大手クライアントを中心にSPOサービスのアウトソーシングフローの提案を強化しており、既に10月以降にサービスが始まる案件を多数獲得している。下期も引き続きクライアントの業務効率化とコスト削減に対するアウトソーシング・業務代行の提案に注力すると共に、コールセンター請負、事務代行、棚卸サービス、ショップ請負等の分野での営業を強化する考え。当面の目標を「アウトソーシングの売上構成比45%(上期実績:32.9%)」としている。
 
 
③新たな顧客ニーズの創造と開拓
高付加価値化を図るべく、10月1日付で営業開発部を設立した。業務分掌を、新商材・新サービスの創造、人材サービス以外のワンストップソリューションサービスの提案及び営業開拓、未取引業種のニーズ開拓としている。また、複数クライアントの依頼を受けて、PPIが台湾に子会社 迎倍客股有限公司を設立した。台湾の棚卸サービス市場は30億円程度の規模で、現在、コンビニ系2社と独立系1社がサービスを提供している。ただ、3社のサービスはコンビニ向けが中心で、スーパーやアパレル等の大型店は自社で対応している状態。子会社はコンビニ向けで事業基盤を確立した後、コンビニ以外の業種へ展開していく考え(初年度は売上高1億円、利益3,000万円が目標)。
 
 
(4)今後の成長ビジョン
通期ベースで10%以上の売上成長率を維持すると共に、6%の営業利益率の確保を目指している。
 
 
 
取材を終えて
年末年始のキャンペーン受注に不透明感があるとして会社側は慎重な姿勢を崩していないが、グループをあげての販管費削減やPPCの事業再編の進展に加え、医薬分野の派遣や店舗・接客調査分野でのSPOサービスといった新規分野での展開等、来期以降の業績を考える上で注目材料は多い。また、コンプライアンス問題で市場が縮小した請負(アウトソーシング)事業に、抵触日の問題や民主党への政権交代で追い風が吹き始めた事も興味深い。コンプライアンスの問題にしても、請負そのものに問題があったわけではなく、「李下に冠を正さず」と言った意識が強かったに過ぎないのだから。派遣に比べて利益率の高い請負が拡大すれば、収益性の改善が加速する。