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(2437) Shinwa Wise Holdings株式会社

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ブリッジレポート:(2437)シンワアートオークション vol.18

(2437:大証ヘラクレス) シンワアートオークション 企業HP
倉田 陽一郎 社長
倉田 陽一郎 社長

【ブリッジレポート vol.18】2010年5月期上期業績レポート
取材概要「上期は期初予想を上回る損失計上となったが、評価性の損失のためキャッシュ・フローに影響はなく、資金効率の改善によりキャッシュポジションは前年・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年1月26日掲載
企業基本情報
企業名
シンワアートオークション株式会社
社長
倉田 陽一郎
所在地
東京都江東区有明3-7-26 有明フロンティアビル
決算期
5月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年5月 1,077 -198 -191 -279
2008年5月 1,621 194 201 98
2007年5月 2,228 449 451 256
2006年5月 2,334 562 567 311
2005年5月 1,940 440 410 235
2004年5月 1,680 319 311 174
2003年5月 1,222 234 231 122
2002年5月 1,158 139 129 70
2001年5月 1,105 200 202 38
2000年5月 1,302 218 201 109
株式情報(1/15現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
22,100円 54,781株 1,211百万円 - 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% - - 24,061.74円 0.9倍
※株価は1/15終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
シンワアートオークションの2010年5月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
美術品オークション運営のパイオニアで業界唯一の上場企業。高額落札作品市場シェア32.9%(「月刊美術」2009年3月号による)を誇る最大手であり、日本に高額美術品の換金市場を確立するため、公明正大なオークション市場の創造と拡大に取り組んでいる。
 
<事業内容>
同社の売上高は、オークション落札価額やプライベートセールの取引価格に対する手数料収入を中心に、商品売上高、及びカタログの販売やオークションの出品者から徴収するカタログ掲載料で構成されている。プライベートセールとは、美術品の直接取引を希望する顧客間のマッチングを行うもので、オークションを介さない美術品の仲介販売。また、営業戦略上、同社が買取った後にオークションに出品するケースや、プライベートセールで売却するケースもあり、この場合、オークション落札価額や売却額が売上高(商品売上高)として計上される。
 
 
2010年5月期上期決算
 
 
損失計上ながら、実質的にはほぼ予想通りの着地
主力の近代美術オークションを中心に全てのオークションで取扱高が減少。人件費を中心に販管費の削減が進んだものの、取扱高の減少に伴う手数料収入やカタログ収入の落ち込みに加え、在庫商品の評価損54百万円を売上原価に計上した事もあり135百万円の営業損失となった。ただ、取扱高、売上高共に期初予想を上回り、在庫商品評価損を考慮すると、実質的には損失も期初予想を下回った。
 
 
厳しい事業環境の中、全てのオークションで取扱高が減少したものの、営業努力によりプライベートセールの取扱高が増加した。また、アジアの有力オークション会社3社と共に3回目となる「Asian Auction Week」(コンテンポラリーアート)を開催した他、北京匡時國際拍賣有限公司(以下、Council オークション)と「Council&SHINWA Alliance Auction」(Jewellery&Watches)を香港で開催した。Council オークションとの提携では、日本人コレクターが保有する中国古書画や骨董品をシンワアートオークションが集荷し、Council オークションが開催する中国でのオークションにかける。日本人コレクターにしてみれば、日本企業に預けた安心感があり、かつオークションが活発な中国市場で高値売却できる。
 
 
本社機能の移転(銀座→有明)や前期末から今期の期初にかけて実施した人員削減等の合理化策により固定費の大幅な削減が進んだ。
 
 
上期末総資産は前期末比44百万円増の2,018百万円。上期末に「Asian Auction Week」を開催したため、オークション未収入金とオークション未払金が両建てで増加する一方、在庫商品評価損の計上により商品が減少した他、損失の計上で純資産も減少した。尚、在庫商品(美術品)は時価評価が難しいため、強制的に毎期50%の評価減(半期25%)を実施していく考え。このため、今後も評価減の計上が続くが、今上期が半期ベースでの評価減のピークとなる見込み。
 
 
損失は増加したものの、損失の増加要因が現金支出を伴はない評価損であった事、オークション未払金の増加が多かった事等で営業CFのマイナス幅が大幅に縮小した他、貸付の減少や差入保証金の回収等で投資CFのマイナスも幅も縮小したため、フリーCFが収支均衡に近い水準にまで改善。ほぼ期初と同水準のキャッシュポジションを維持した(前年同期比では増加)。
 
 
早期黒字化に向けたリストラと事業戦略
 
(1)早期黒字化に向けたリストラ
08/5期の期末から09/5期の期初にかけて、役員報酬や役員賞与のカット等、全ての経費アイテムの徹底的な見直しと削減を進めた(配当は継続)。しかし、2008年9月のリーマンショック後、市場が急激に縮小し同社の事業規模も半減したため、会社規模の適正化に向けて迅速な対応を迫られた。このため、2009年5月に会社規模を従来の1/2にする緊急リストラ策を断行し、損益分岐点を09/5期の取扱高33億円を下回る32億円程度に引き下げた。
 
緊急リストラ策
・希望退職者募集(正社員54名を27名へ)
・本社機能の移転(銀座→有明)
・定期賞与を臨時削減
・全ての経費アイテムの更なる見直しと削減
 
(2)事業戦略
①国内戦略  富裕層ネットワークの更なる拡大と深化
・落札営業
クオリティの高い作品の販売に注力すると共に、景気の影響を受けやすいミドルクラスの富裕層ではなく、安定したハイクラスの富裕層を対象としたネットワークの構築に取り組む。尚、ハイクラスの富裕層ネットワークの構築に当たっては、会員制の導入を検討している。
・出品営業
特約店の拡大により法人営業を強化すると共に、不況下における企業の美術品換金需要の取り込みに注力する。
・新規事業開発を模索
美術品融資事業や楽器等の新たなオークションアイテムの開発に取り組む。
 
②海外戦略  より広範なAllianceの模索
PRやマーケティングの強化によりアジアにおけるコネクションを構築し、平均単価の引き上げを図る。
・中国を中心としたアジアの早期市場回復をにらんだアジアの富裕層開拓
・アジア作家の発掘
・香港でのオークションの継続開催
・海外オークションアイテムの拡大
・海外企業との更なる提携の模索
・欧米市場開拓
 
海外でのオークション開催
2009年5月15日と11月30日に、昨年の「Asian Auction Week in Macao」に続く「Asian Auction Week in Hong Kong」を香港 コンラッドホテルにおいて開催した。Kオークション(韓国)、キングスレー(台湾)、サラサティ(シンガポール)、及びシンワアートオークションの4社の共同開催であり、各社が30~50点程度を出品。マカオでの経験を活かしたスモールオペレーションによりコストを抑えた。シンワアートオークションでは、「Asian Auction Week」をマーケティングの橋頭堡と位置づけており、これを足がかりにアジア主要都市(北京、上海、台北、ソウル、香港、シンガポール)でのコネクション構築を進めていく考え。次回は2010年5月29日の開催を予定している。
Council オークション(北京)との業務提携
2009年2月1日、グローバルマーケティング強化の一環としてCouncil オークション(北京)と業務提携した。Council オークションの豊富な知識と経験を活用して、シンワアートオークションが扱う中国古書画・骨董の安定的販路を中国本土に確立する。具体的には、シンワアートオークションが日本国内で集荷した作品の査定及びオークションへの出品をCouncilオークションに委託する。Councilオークションは、同社が中国国内で開催するカウンシルオークションで作品を売却し、シンワアートオークションへ代金及び紹介手数料を支払う。そして、シンワアートオークションが出品者へ代金を支払う。2009年6月(北京)、9月(香港)、及び12月(北京)のカウンシルオークションに出品しており、日本国内のコレクターにも徐々に浸透してきた。
 
 
2010年5月期業績予想
 
 
前期比14.5%の減収、125百万円の経常損失予想
取扱高及び売上高の予想を上方修正する一方、通期で100百万円強の在庫商品評価損の計上を織り込み利益予想を下方修正した。ただ、下期(12-5月)は在庫商品評価損を吸収して、10百万円の営業利益を確保できる見込み。取扱高の増加要因として、大型案件が進行している事、ハイクラスの富裕層を対象にした会員制の導入効果及び特約店の拡大効果を挙げている。
 
 
取材を終えて
上期は期初予想を上回る損失計上となったが、評価性の損失のためキャッシュ・フローに影響はなく、資金効率の改善によりキャッシュポジションは前年同期を上回った。当面、資金的な懸念は無く、また、固定費を中心にコスト削減も進んでいるため、残された課題は取扱高の増加である。この点についても、会員制の導入によるハイクラスの富裕層ネットワークの構築、特約店の拡大による法人営業の強化、美術品融資や新たなオークションアイテムの開発、更には海外でのより広範なAllianceの推進等、施策は既に示されている。これら施策の進捗に注目したい。