ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.12

(2660:東証1部,大証2部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長兼社長
寺西 忠幸 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.12】2010年2月期第3四半期業績レポート
取材概要「高収益商品であるヘルス&ビューティの販売強化や経費削減の推進により(株)キリン堂の収益性改善が進む一方、(株)ニッショードラッグの・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年1月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長兼社長
寺西 忠幸
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(1/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
419円 11,331,403株 4,747百万円 4.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 4.8% - - 916.53円 0.5倍
※株価は1/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2010年2月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。(株)ニッショードラッグ及び(株)ジェイドラッグの連結子会社2社とともに、和歌山県を除く関西地域、徳島県、石川県でドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2009年11月15日現在、グループで308店舗(FC3店舗を含む)を展開。製造卸売事業として、連結子会社(株)健美舎が健康食品と医薬品の企画・販売も手掛けている。
 
<沿革>
1958年3月、薬局店舗営業と薬品製造業を目的に設立され、その後、ドラッグストアのチェーン展開を開始した。91年10月、大阪市にスーパードラッグストア第1号店をオープン以降、出店を強化、2007年2月期には200店舗を超えた。また、M&Aにも積極的に取り組み、2006年10月には四国地区での販売網の拡充の観点から(株)ジェイドラッグを、同年12月には同じ関西に地盤を置き営業基盤で補完性の高い(株)ニッショードラッグを、それぞれ買収。「2015年 500店舗」体制を目指し、グループ力の強化を進めている。
 
 
2010年2月期第3四半期決算
 
 
前年同期比0.7%の減収、同14.0%の経常減益
新型インフルエンザの流行による関連商品の販売増と調剤部門の好調な推移で、第3四半期(9-11月)の売上が前年同期比増収に転じたものの、第2四半期(3-8月)までの売上の落ち込みをカバーできず、累計売上高は78,530百万円と同0.7%減少した。セグメント別では、消費低迷と競争激化による来店客数の伸び悩みや天候不順による季節商材の販売不振等で、小売事業の売上高が78,380百万円と同0.7%減少。競争激化による販売価格の下落等で製造卸売事業の売上高も149百万円と同8.8%減少した。
利益面では、消費低迷や夏場の天候不順等で利益率の高い制度化粧品や季節商材の売上が伸び悩んだこと等で売上総利益が減少。経費の効率的な活用と削減を進めたものの、営業利益は860百万円と同20.7%減少した。受取情報処理料の増加や賃貸費用の減少等で営業外損益が改善したものの、営業店内の商品在庫の評価方法を従来の売価還元原価法から売価還元低価法へ変更したことに伴うたな卸資産評価損919百万円など特別損失1,278百万円を計上したため、356百万円の四半期純損失となった。

第3四半期末のグループ店舗数は308店舗(キリン堂226店舗、ニッショードラッグ77店舗、ジェイドラッグ2店舗、キリン堂FC3店舗)。(株)キリン堂が、スーパードラッグストア3店舗・小型店1店舗の合計4店舗を出店する一方、スーパードラッグストア1店舗・小型店1店舗の計2店舗を閉店。(株)ニッショードラッグはスーパードラッグストア3店舗を閉店した。また、(株)キリン堂の205店舗と(株)ニッショードラッグの78店舗の合計283店舗において、改正薬事法施行に伴うレイアウト変更等の簡易改装を実施した。
 
 
 
新型インフルエンザ関連商品と調剤部門の伸長で増収・増益
売上高は前年同期比1.1%増の25,619百万円。新型インフルエンザの流行により関連商品の販売が増えたほか、プライベートブランド(PB)を含むヘルス&ビューティ商品の販売強化が成果を上げ、(株)キリン堂を中心に健康食品も堅調に推移。1店舗当たりの処方受付枚数の増加と処方箋の平均単価の上昇により調剤部門の売上も伸びた。
 
小売事業  売上高25,563百万円(前年同期比 1.1%増)
内部売上高控除後企業別売上高 キリン堂 19,378百万円  
(寄与度742百万円)
  ニッショードラッグ 618百万円  
( 同 △416百万円)
  ジェイドラッグ 76百万円  
( 同 △ 49百万円)
製造卸事業 売上高   55百万円(前年同期比 5.7%増)
利益面では、売上高の増加に加え、プライベートブランド(PB)を含む利益率の高いヘルス&ビューティ商品の販売強化が奏功し、売上総利益率が同0.1ポイント改善。さらに、経費削減プロジェクトを中心とした経費の効率的な活用と削減が進み販管費が同2.4%減少したため、営業利益は前年同期の21百万円から278百万円に拡大した。店舗の異動は、(株)キリン堂が3店舗出店・1店舗閉店、(株)ニッショードラッグが1店舗閉店。

計画との比較では、(株)ニッショードラッグの苦戦が響き、売上高及び売上総利益が計画を下回ったものの、経費削減に努めたことに加え、保守的な経費予算編成だったこともあり、営業利益以下の各段階で計画を大幅に上回った。なお、売上高については、(株)キリン堂が計画を1.4%上回ったものの、(株)ニッショードラッグが計画を2.1%下回った。
 
 
(株)キリン堂の既存店売上高前年同期比は、3Q(9-11月)、3Q累計ともに計画どおり着地。12月度は、計画の△3.8%を上回った。一方、(株)ニッショードラッグはいずれも計画値(3Q:△2.5%、3Q累計:△4.2%、12月度△2.1%)を下回った。(株)ニッショードラッグは、客単価は堅調に推移しているものの、客数の落ち込みが顕著である。今後は、収益性の高いヘルス&ビューティの品揃えや(株)キリン堂のノウハウを活用して販促強化に取り組んでいく方針である。
 
 
新型インフルエンザ関連商品の寄与で医薬品の売上が伸びたほか、1店舗当たりの処方受付枚数の増加と処方箋の平均単価の上昇で調剤売上高も増加。プライベートブランド(PB)を含むヘルス&ビューティ商品の販売強化により健康食品が増収に転じたほか、化粧品も減収幅が縮小した(連結子会社は両品目ともに減収)。一方、連結子会社を中心にした食品の落ち込みで雑貨等の売上が減少した。
 
③売上総利益率(連結)
売上総利益率は26.4%となり、前年同期比0.1ポイント改善。このうち(株)キリン堂は、利益率の高い医薬品、健康食品の売上構成比並びに粗利率の上昇により、21.8%と0.2ポイント改善。一方、(株)ニッショードラッグは利益率の高い医薬品、調剤の売上構成比は上昇したものの、雑貨等や化粧品の落ち込みで26.0%と0.1ポイント低下した。
 
 
前年同期との比較では、回数、枚数、サイズ等を含めたチラシ販促の内容変更により販促費が減少したほか、水道光熱費や備品消耗品費の減少で営業費が、リース料や減価償却費の減少で施設費が、それぞれ減少。一方、人件費は従業員募集費が減少したものの、退職給付費用の増加等でわずかに増加した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比577百万円増の42,957百万円。CFの改善により現預金が増加。有利子負債は長期へのシフトを進めつつ、全体で1,000百万円弱削減した。なお、CF改善の要因は、仕入債務の増加や税負担の減少による営業CF大幅な増加と、新規出店の抑制による投資CFのマイナス幅の縮小による。
 
 
 
2010年2月期業績予想
 
 
通期の業績予想に変更は無く、前年同期比0.7%の減収、同16.3%の経常減益予想
第4四半期(12-2月)はほぼ前年同期並み(前年同期比0.5%の減収)の売上高を予想。利益率の改善により売上総利益が増加する見込みだが、経費の見積りが保守的なため営業利益は同7.9%減少する見込み。出店は(株)キリン堂が3店舗(既に2店舗を出店済み)、(株)ニッショードラッグが1店舗(出店済み)を計画(いずれも300坪型のスーパードラッグストア)。一方、閉店は(株)キリン堂が小型店1店舗を計画。配当は、1株当たり期末配当10円を予定している(上期末配当と合わせて年20円)。
 
 
 
 
取材を終えて
高収益商品であるヘルス&ビューティの販売強化や経費削減の推進により(株)キリン堂の収益性改善が進む一方、(株)ニッショードラッグの苦戦が続いている。(株)ニッショードラッグは、もともとコンビニ型のドラッグストアで、食品や雑貨等を買うついでに薬を買うといった利用者が多いとのこと。また、コンビニ型であるだけに、これまでは集客手法のひとつであるチラシを使った販促等もほとんど行ってこなかったことから、消費低迷の影響を強く受けている。現在、ヘルス&ビューティを中心にした品揃えや販促への取り組み等でドラッグストア本来の姿への転換を進めている。今後の成果に注目したい。