ブリッジレポート
(2157) 株式会社コシダカホールディングス

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ブリッジレポート:(2157)コシダカ vol.1

(2157:JASDAQ) コシダカ 企業HP
腰髙 博 社長
腰髙 博 社長

【ブリッジレポート vol.1】事業概要レポート
取材概要「国内経済の成熟化と消費者の娯楽ニーズの多様化によりカラオケボックス市場自体の成長性は限られるが、カラオケは手軽な娯楽として我々の生活に・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年3月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社コシダカ
社長
腰髙 博
所在地
群馬県前橋市大友町1-5-1
決算期
8月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年8月 18,955 1,496 1,427 549
2008年8月 13,649 691 731 421
2007年8月 11,332 535 561 134
2006年8月 8,878 552 560 319
2005年8月 6,360 403 400 233
2004年8月 3,552 340 337 192
2003年8月 2,037 104 99 57
株式情報(2/24現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
215,800円 24,000株 5,179百万円 - 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5,800.00円 2.7% 31,214.88円 6.9倍 112,570.54円 1.9倍
※株価は2/24終値。
 
JASDAQに株式を上場するカラオケボックス大手の株式会社 コシダカについて、ブリッジレポートにてご紹介いたします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
郊外型カラオケボックス「カラオケ本舗まねきねこ」を全国で直営展開。第2の柱として育成中のカーブス事業では、連結子会社(株)カーブスジャパンが女性専用フィットネスクラブ「CURVES(カーブス)」のFC(フランチャイズ)本部運営を手がけており、連結子会社(株)北海道コシダカがそのフランチャイジーとして施設運営を行っている。
 
(1)沿革
1954年、東京世田谷桜新町で腰髙善治氏が創業した屋台の中華そば屋が同社のルーツ。1964年に出身地(栃木県佐野市)に近く人口も多い群馬県前橋市に拠点を移し、「新盛軒」の屋号で中華料理店を開業した。1967年に有限会社 新盛軒として法人組織に改組し、1970年に「上州ラーメン」の屋号にてチェーン展開を開始。現社長の腰髙博氏も大学卒業後に会社運営に加わった。店は繁盛し最盛期には6店舗を出店したが、必ずしも個人経営の域を脱する事ができず売上の割には利益が上がらず有利子負債が膨らんだ。

経営権の禅譲が徐々に進められる中で腰髙博氏が感じていたのは、個人経営の延長線上にあったラーメン店チェーンの限界だったが、そんな折、市場の草創期にあったのがカラオケボックスだ。レーザーディスクを使ったスナックやバー等でのカラオケから通信システムを活用したカラオケボックスへ需要は徐々に移行しつつあり、カラオケボックスは「これから市場拡大が見込める成長ビジネス」で、「ラーメン店チェーンとは異なるビジネスだが、接客ノウハウ等を活かせる比較的近い業種・業態のビジネス」と言う新規ビジネスのイメージに合致した。

1990年8月にカラオケボックス「オイコット」をオープンし、1993年12月にはブランドを「カラオケ本舗まねきねこ」に変更し、その1号店をオープンした。「オイコット」をオープンした頃のカラオケボックスは個人経営が中心で、大手と言えば、第一興商(7458)程度だったが、その後、不動産バブル崩壊と金融引き締めによる景気悪化が深刻化。1990年代半ば以降は、個人経営のカラオケボックスの多くが廃業に追い込まれた。同社は、1995年8月に腰髙博氏が代表取締役に就任。厳しい経済環境下にありながらカラオケボックス事業が順調に拡大(3店舗を運営)し経営面での不安こそ無かったが、金融引き締めが足かせとなり新規出店が難しかった。

そんな同社に舞い込んできたのが、不況で廃業するカラオケボックスの利用(居抜き出店)の話。内装等から手掛ける通常の出店(以下、建築出店)が5,000万円~1億円程度の初期投資を要したのに対して、居抜き出店であれば、当時はその1/20程度で済んだ。1997年6月に「カラオケ本舗まねきねこ」の居抜き出店1号店をオープンし、その後、居抜き出店を本格化。2000年3月には株式会社コシダカに組織及び名称を変更した。また、2006年には(株)カーブスジャパンのフランチャイジーとしてフィットネス事業に進出し、同年3月に「カーブス」1号店をオープンした。2007年6月のJASDAQ上場を経て、2008年10月に(株)カーブスジャパンの株式を100%取得。現在、フィットネスクラブの展開と並行してFC本部の運営を手掛けている。
 
(2)事業の概要
事業はカラオケ事業とカーブス事業に分かれ、売上構成比は10/8期予想ベースで、カラオケ事業が76.7%、カーブス事業が23.3%。
 
①カラオケ事業
「カラオケ本舗まねきねこ」及び新業態開発を目的とした「アミューズメントリゾートORTO&K」と「下町唱酒場浅草まねきねこ本店」の3業態により、全国に296店舗(2009年11月末現在)を展開。カラオケ業界では、売上高で6位、店舗数でシダックス(4837)に次いで2位のポジションにある(2009年11月日経MJによる)。上位企業が大商圏の繁華街で大型店(50ルーム規模)中心の出店であるのに対して、同社は1990年の事業開始以来、地方や郊外の中規模店(20ルーム前後)が中心。このため、商圏人口の小さいエリアでの出店・集客ノウハウの蓄積が進んでおり、こうした商圏では全国的な知名度で勝る上位企業といえども太刀打ちできない。地域密着と接客サービス重視の経営により、同社の各店舗は、安価で・近くて・短時間の手軽な娯楽スポットとして地域の生活に溶け込んでおり、リピート率は80%に達すると言う。こうした高いリピート率と初期投資を抑えた居抜き出店が相まって、客単価が低い地方中心の店舗展開ながら、業界トップのシダックスや第2位の第一興商を上回る投下資本利益率(営業利益ベース)を実現しており、成熟したカラオケボックス業界にあって、高成長を続ける原動力となっている。
 
 
<業態別概要>
「カラオケ本舗まねきねこ」は、“地域密着によるリーズナブルでフレンドリーな接客サービス”をコンセプトに、2009年11月末現在、294店舗を展開。居抜き出店を中心にした郊外・ロードサイド型の出店により初期投資及びランニングコストを抑える一方、来店から帰るまでを一人のスタッフが全ての場面で接客する「互いの顔が見える気配りとコミュニケーション」により顧客満足度を高めている。また、店舗によっては、平日昼間の室料を30分10円(1オーダー制)に設定している他、飲食物の持ち込みを自由にしている店舗もあり、ローコストオペレーションならではの独自サービスにより集客力を高めている。尚、1オーダー制では、料理かドリンクを1品注文する必要があり、10円の室料と注文した商品の合計が支払額となる。
 
 
また、新業態開発を目的とした「アミューズメントリゾートORTO&K」と「下町唱酒場浅草まねきねこ本店」は、それぞれ1店舗を出店している。このうち「アミューズメントリゾートORTO&K」は、大都市圏の繁華街に立地を絞った夜営業特化のアミューズメントリゾート。ダイニングレストランとカラオケに加え、ダーツバーやシュミレーションゴルフといったアミューズメント設備を備える。また、「下町唱酒場浅草まねきねこ本店」は、“居酒屋とカラオケが融合した飲食と歌を楽しむ唱酒場”をコンセプトとし、飲食メニューを充実させた居酒屋に近い業態のカラオケ店舗。2号店の出店を計画している。
 
②カーブス事業
「カーブス」は米国発の女性専用サーキットトレーニング・ジムで、「女性のための30分フィットネス」をコンセプトに世界60ヶ国で約1万店舗を展開、約430万人の会員を有する世界最大のフィットネスチェーン。同社は、2006年からフランチャイジーとしてカーブス事業に取り組み、運営ノウハウを蓄積。2008年9月に(株)北海道コシダカを設立してカーブス事業を移管し、同年10月に日本国内での独占的事業展開権利(米国総本部からマスターフランチャイズ権利を取得)を有する(株)カーブスジャパンを子会社化した。(株)カーブスジャパンは、2009年11月末現在、776店舗のネットワークと28.1万人の会員を有し、地域に密着した店舗展開と運動に縁のなかった中高年層でも気軽に来店できるサービスの仕組み作りにより、健康でイキイキとした生活を送るための運動習慣づくりを提案している。
 
<サービスの概要>
女性専用の1回30分で構成されるフィットネスクラブで、中高年女性が主要顧客(会員の60%が50歳以上)。科学的な効果が検証された効率的な運動プログラムに加え、日常生活に溶け込む利便性と低価格(月会費5,250円~6,000円)が特徴。コミュニティが形成され、運動が日常生活の一部となるため、会員の継続性が高い。
 
 
<施設と設備>
・郊外住宅地に立地する40坪程度の小スペース店舗
・女性専用に開発された12の油圧式マシーン
・トレーニングサポートコーチがサーキットに常駐
・運動前のトレーニングアドバイス
・継続した健康カウンセリング
 
<30分フィットネス>
筋力トレーニング+有酸素運動を交互に繰り返す事で、効率的な運動効果が得られる。女性用にデザイン設計された油圧式トレーニングマシーン12台とボードをサーキット(円形のスタジオ)に並べ、各30秒おきに運動と休憩を交えながら合計24分間で12台のマシーンを2周し、最後にストレッチを行うとトータルで約30分。
 
 
(3)市場動向
①カラオケ市場
カラオケ白書によると、カラオケ市場は、ここ数年4,100~4,300億円で安定的に推移しており、参加人口も4,600万人~4,800万人で推移している。また、レジャー白書によると、施設数が減少傾向にある一方、施設の大型化が進んでおり、中小のカラオケ店の淘汰と大手チェーンのシェアアップが進行している事がうかがえる。
 
 
 
②フィットネス市場
経済産業省特定サービス産業動態統計調によると、フィットネス市場は健康志向の高まり等で2008年にかけて堅調に推移している。
 
 
 
(4)今後の展開
カラオケ事業では全国展開を進め、2009年11月末現在で296店舗のネットワークを早期に500店舗に拡大させたい考え。また、カーブス事業では、2014年を目処に1,500店舗(2009年11月末現在、776店舗)、会員数60万人(同28.1万人)を目指しており、この目標達成のための前段階として2012年に1,200店舗を目標としている。尚、(株)カーブスジャパンの買収に要した約20億円の投資資金は3年程度で回収できる見込み。このため、1,200店舗を達成する頃には買収に伴い膨らんだ有利子負債の削減が進み、財務内容の改善が進んでいるものと思われる。

また、中期的には、総合余暇サービス提供企業を目指して、顧客満足度、人材育成、地域活性化、及び環境保護を念頭に「既存業種新業態」を展開していく考え。
 
 
(5)株主還元
株主還元は、配当と株主優待を二本柱としている。配当性向を公約しているわけではないが、ここ数年は16~21%で推移しており、10/8期は1株当たり5,800円(上期末2,900円)を予定、配当性向は18.6%。
 
 
また、株主優待として期末(8月末日)の株主名簿及び実質株主名簿に記載された、1株以上保有の株主に、保有株式数に応じて優待券(1,000円券)を発行している(利用の際には利用上の注意を確認の事)。
 
 
 
2009年8月期決算
 
 
非連結業績は前期比4.8%の増収、同65.1%の経常増益
景気悪化による厳しい事業環境を踏まえて、期中にカラオケボックス事業の出店計画の見直しを行うと共に不採算店の閉鎖を加速した。このため、売上高が同4.8%増の14,310百万円にとどまったものの、出店関連の費用が減少したため、営業利益率が8.4%と3.3ポイント改善。営業利益は1,195百万円と同73.0%増加した。尚、当期純利益が同29.5%の増加にとどまったのは、減損損失など230百万円を特別損失に計上したため。
 
カラオケ事業の店舗状況
「カラオケ本舗まねきねこ」の期末店舗数は18店舗増の292店舗。27店舗の新規出店(居抜き出店21店舗、建築出店6店舗)と1店舗で「ORTO & K NEXT」からの業態転換を実施する一方、不採算店舗など10店舗を閉鎖。この他、7店舗で大規模リニューアルを実施した。アミューズメントリゾートORTO&K」と「下町唱酒場浅草まねきねこ本店」を含めたカラオケボックス事業全体の店舗数は294店舗。尚、新規出店27店舗のうち、24店舗が2008年12月までに出店したもの。
 
(株)カーブスジャパンの全株式を取得
カーブス事業により主体的に取り組むべく、日本におけるFC本部である(株)カーブスジャパンの全株式を子会社(株)カーブスホールディングスが2008年10月に取得。これに伴い、09/8期第2四半期より連結決算を導入した。カーブスの期末加盟店舗数は754店舗で、このうち(株)カーブスジャパンの直営店舗が4店舗、(株)北海道コシダカの運営店舗が7店舗。また、加盟会員数は254千人。
 
新業態の開発に向けた取り組み
「ORTO&K仙台一番町店」において施設の見直しと設備の増強を行い、ダイニング&ラウンジ、ダーツバー&パーティ、ダイニングカラオケ、シミュレーションゴルフの4つの柱からなる「アミューズメントリゾートORTO&K」に業態を変更した。また、「歌声カラオケ浅草まねきねこ本店」については、居酒屋としての魅力を高めるために料飲機能を強化すると共に、人材の増強及び設備の改良を実施。店舗名を「下町唱酒場浅草まねきねこ本店」に変更した。
 
(2)財政状態
 
 
2010年8月期業績予想
 
 
カーブスジャパンの通期寄与と出店費用の減少で営業利益が1.5倍に拡大
売上高は前期比16.2%増の22,018百万円。新規出店の抑制でカラオケ事業の売上高が同7.8%にとどまるものの、前期は8ヶ月決算となった(株)カーブスジャパンが通期で寄与する。利益面では、新規出店の抑制による関連コストの減少でカラオケ事業の利益が大きく伸びる他、(株)カーブスジャパンの通期寄与もあり、営業利益が同55.7%増加する見込み。カラオケ事業の新規出店は15店舗(居抜き出店10店舗、建築出店5店舗)を計画しており、合わせてリニューアルや不採算店のスクラップを進める。また、カーブス事業の店舗数は新規加盟100店舗程度を見込んでいる。
 
 
 
カラオケ事業における低収益店舗のテコ入れや店舗運営全般の効率化による原価低減の進展、及び出店が下期中心となる事。また、カーブス事業おける会員数の順調な増加と販促用商品や通信商品の販売の好調等を理由に上期の業績予想を上方修正した。ただ、下期は新規出店が進むため出店関連費用が増加する事、及び大規模リニューアル工事等による既存店のブラッシュ・アップを計画しているとして、通期の業績予想を据え置いた。
 
 
取材を終えて
国内経済の成熟化と消費者の娯楽ニーズの多様化によりカラオケボックス市場自体の成長性は限られるが、カラオケは手軽な娯楽として我々の生活に定着しており、市場がシュリンクしているわけではない。このため、経営努力は必要だが、中堅チェーンや小規模カラオケ店の閉店が続く中では、シェアアップによる大手各社の事業拡大余地は大きい。実際、小商圏での店舗運営に長けた同社は、その強みを活かし着実にシェアを伸ばしており、過去5年間で営業利益を4.4倍に拡大させた。また、高齢化社会の到来を前に中高年の健康意識が高まる中、地域に密着した店舗展開と運動に縁のなかった中高年層でも気軽に来店できるサービスの仕組み作りにより、会員数を伸ばしているカーブス事業も今後の展開が楽しみだ。
難点を挙げるとすれば、店舗のスクラップやリニューアル等による特別損失の計上で最終利益ベースでの伸びが営業利益ほど大きくない事だが、今後業容の拡大と共に、こうした損失が業績へ与えるインパクトが小さくなっていくものと思われる。
もっとも、最終利益ベースで考えても、現在の株価は割安感が強い。最終利益の予想成長率から適正PERを算出するPEG倍率を用いて同社の適正株価を考えた場合、当面の最終利益の成長率を過去5年間の平均並み、PEG倍率を0.7倍として、予想PER 16倍程度の評価が可能だ。