ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

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ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.9

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
小阪 堅三 社長
小阪 堅三 社長
【ブリッジレポート vol.9】2010年2月期業績レポート
取材概要「10/2期は経常赤字となったものの、たな卸資産の入れ替えが進み資産内容が良化しており方向性は悪くない。また販売面でもローン減税等の政策効果が・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年5月18日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
小阪 堅三
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年2月 29,890 573 -370 -226
2009年2月 32,333 2,577 1,548 118
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(4/27現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
326円 10,000,000株 3,260百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 3.1% 20.00円 16.3倍 1,322.96円 0.2倍
※株価は4/27終値。
 
和田興産の2010年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
明治32年創業の老舗不動産会社。全てのステークホルダーとの共存共栄を目指す「共生(ともいき)」を企業理念とする。兵庫県神戸市を地盤に、明石市、芦屋市、西宮市、尼崎市で、マンション分譲を中心に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び木造戸建分譲等を手掛けており、「ワコーレ」ブランドで展開するマンション分譲は50戸前後の中規模マンションが中心。神戸市内では、9年連続で「供給戸数」第1位、12年連続で「供給棟数」第1位の実績を誇り、2010年2月末現在の累積供給実績は308棟(11,444戸)。事業はマンション分譲を中心とする不動産販売事業と、住居、店舗、事務所、駐車場(月極・時間駐車)等の賃貸を中心とする賃貸その他事業に分かれ、2010年2月期は、不動産販売事業が売上高の91.4%を、売上総利益の65.1%を占めた。
 
 
ブランド力  兵庫県神戸市を中心にした明石~尼崎間において、「ワコーレ」
       ブランドの高い認知度
価格競争力  常設ギャラリーは内装の変更で繰り返し利用が可能なため、物件
       毎に新設の必要なし
 
 
 
2010年2月期決算
 
 
共同プロジェクトの苦戦が響き、上場以来初の赤字計上
売上高は前期比7.6%減の29,890百万円。収益物件販売(23物件)や08/3期から再開した戸建分譲(32戸)等のその他不動産販売が伸びた他、物件の入れ替えを積極的に行った賃貸その他事業も厳しい事業環境の中で健闘したものの、市場動向を踏まえて慎重な販売スタンスを取った事や共同事業プロジェクト(アーバンライフ神戸三宮ザ・タワー、以下、ULタワー)の苦戦で主力の分譲マンション販売が落ち込んだ。
利益面では、ULタワーの評価損約500百万円を計上した事に加え、用地高・建築コスト高の影響を受けた分譲マンションの竣工により売上総利益率が11.1%と6.2ポイント低下。広告宣伝費や人件費を中心としたコスト削減努力により販管費が減少したものの、営業利益は同77.7%減少。金融費用やULタワーのプロジェクト変更に伴う雑損失等が負担となり370百万円の経常損失となった。
 
 
<不動産販売事業>
不動産販売事業は分譲マンション販売の苦戦が響き売上高が27,305百万円と前期比8.0%減少。ULタワーの評価損約500百万円の計上や用地高・建築コスト高の影響を受けた分譲マンションの竣工により売上総利益も2,166百万円と同49.5%減少した。
 
①分譲マンション販売
優良用地の不足、需給バランスの悪化、景気後退による一次取得者層の購買意欲の減退等、厳しい事業環境を踏まえて仕入及び発売を抑制する一方、販売価格の見直し等によりたな卸資産の圧縮を進めた。この結果、発売戸数が10棟(374戸)と前期比33.2%減少。一方、契約戸数が566戸と同31.9%増加(金額ベースでは24.3%増の18,677百万円)したため、期末の受注残戸数は129戸と同30.6%減少した(受注残高は同38.9%減の4,208百万円)。引渡し戸数は623戸(竣工はワコーレ須磨名谷ステーションマークス等17棟)と同0.5%増加したものの、売上高は21,359百万円と同13.0%減少した。
 
分譲マンション引渡戸数   623戸(前期比 0.5%増)
同      契約戸数   566戸(同   31.9%増)
同      発売戸数   374戸(同   33.2%減)
同      受注残戸数  129戸(同   30.6%減)
同      仕入戸数   503戸(同   0.4%減)
 
②その他の不動産販売
戸建て住宅32戸及び1棟卸マンション等23物件を販売。売上高は前期比15.5%増の5,946百万円、売上総利益は小型の戸建分譲が多かった事や軟調な不動産市況を反映し461百万円と同18.7%減少した。
 
<賃貸その他事業>
売上高は前期比2.1%減の2,584百万円。このうち賃貸収入は前期比1.1%増の2,535百万円(この他、分譲マンション事業に係る解約手付金収入等が当セグメントの売上として計上される)。物件の入れ替えに伴い住居系の売上がわずかに減少したものの、概ね堅調に推移した。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比べ4,173百万円減の53,249百万円。物件の売却が進み、たな卸資産(販売用不動産+仕掛販売用不動産)が4,352百万円減少。回収した資金で有利子負債を削減した。有形固定資産の減少は事業用固定資産をたな卸資産に振替えた(1,814百万円)事等による。CFの面では、たな卸資産の削減等による運転資金の減少で営業CFが大幅に改善する一方、事業用固定資産の取得が減少したため投資CFのマイナス幅が縮小。この結果、前期は4,473百万円のマイナスだったフリーCFが5,706百万円の黒字に転換。有利子負債の削減を進めたため、財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物期末残高は1,928百万円から3,523百万円に増加した。
 
 
 
2011年2月期業績予想
 
(1)基本戦略
基本戦略として、①分譲マンション事業の再生、②賃貸事業の安定成長、③戸建事業の推進、及び④コストの最適化を挙げている。
 
 
 
前期比7.0%の減収、300百万円の経常利益予想
売上高は前期比7.0%減の27,800百万円。前期に発売を抑制した影響で主力の分譲マンション販売の売上が減少する他、物件入れ替えの影響で賃貸その他事業の売上も減少する。ただ、利益面では、高コスト物件が一巡する分譲マンションを中心に売上総利益率が大幅に改善する一方、人件費を含めた経費の圧縮により販管費はほぼ前期並みにとどまる見込み。この結果、営業利益が同2.4倍に拡大し、経常損益が黒字転換する見込み(引渡し物件の6割程度が第4四半期に集中するため、上期は700百万円の経常損失となる見込み)。
配当は1株当たり5円増配の年10円を予定している。
 
 
<不動産販売事業>
①分譲マンション販売
小型戦略に基づき1棟30戸程度の小型マンションを中心に15棟(479戸)の竣工を予定しており、引渡戸数584戸、売上高19,200百万円(前期比10.1%減)を見込んでいる。地域特性に応じた柔軟な価格設定を行う考えで、一戸当たり販売価格が11%弱低下するものの、用地コストや建築コストの低下により粗利率は8ポイント改善する見込み。
 
 
②その他不動産販売
神戸市の事業コンペによるワコーレノイエ須磨名谷(開発戸数57戸)の分譲が寄与する戸建住宅の販売が前期の32戸から50戸に拡大する。この他、賃貸マンション等の販売も見込まれ、売上高は6,150百万円と前期比3.4%増加する見込み。
 
 
<賃貸その他事業>
前期に行った物件の入れ替えの影響等で売上高が2,450百万円と同5.2%減少する見込み。引き続き築年数など考慮して物件の入れ替えを進めつつ、稼働率の維持向上に努める考えで、早期のカバー率〔(人件費等+支払利息)/売上総利益〕100%を目指している。
 
 
 
取材を終えて
10/2期は経常赤字となったものの、たな卸資産の入れ替えが進み資産内容が良化しており方向性は悪くない。また販売面でもローン減税等の政策効果が徐々に現れてきており、11/2期のスタートとなる3月は巡航速度である月間50戸を大幅に上回る70戸を販売。主力の分譲マンション販売を中心に今期は期待が持てそうだ。
ただ、安定成長を実現していくためには、分譲マンション販売を中心としつつも、戸建分譲や賃貸とのバランスを取りながらの舵取りが求められる。戸建分譲は分譲マンション販売に比べて事業サイクルが短いため地価や建築価格の変化に対応しやすく、また、これまでマンションに限られていた土地利用の幅が広がるため不動産情報を多面的に活用できる。人件費や支払利息等の75%までをカバーするまでに成長した賃貸事業と共に今後の展開に注目したい。