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(2426)

ブリッジレポート:(2426)ピーアンドピー vol.5

(2426:JASDAQ) ピーアンドピー 企業HP
山室 雅之 社長
山室 雅之 社長

【ブリッジレポート vol.5】2010年3月期業績レポート
取材概要「日本経済新聞によると、上場企業(3月決算企業のうち1,560社)の10/3期は売上高が11%減少したものの、コスト削減により経常利益が24%増・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年6月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピーアンドピー
社長
山室 雅之
所在地
東京都新宿区新宿3-27-4
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 21,934 374 377 67
2009年3月 18,853 635 642 372
2008年3月 15,808 822 827 404
2007年3月 14,056 678 684 340
2006年3月 6,075 269 255 133
2005年3月 4,667 312 295 156
2004年3月 3,637 281 270 110
2003年3月 2,586 171 172 93
2002年3月 1,891 151 158 28
株式情報(5/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
17,900円 103,379株 1,850百万円 2.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
900.00円 5.0% 2,418.28円 7.4倍 27,186.64円 0.7倍
*株価は5/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピーアンドピーの2010年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
携帯電話、デジカメや薄型TV等のデジタル家電、或いは食品等、様々な商品の販売促進活動を受託するセールス・プロセス・アウトソーシング(SPO)を中心に、小売店向け棚卸サービス等も手掛けている。全国に広がるサービスネットワークと、接客マナー研修、販売技術研修、商品知識研修などスタッフのスキルアップを支援する充実した教育・研修システムを強みとする。グループは、同社の他、一般事務及びコールセンター事業に強みを持つ(株)ピーアンドピー・キャリア(同、PPC)、棚卸サービスの(株)ピーアンドピー・インベックス(以下、PPI)、携帯ショップへの人材派遣を手掛ける(株)ジャパンプロスタッフ(同、JPS)、及びPPIの100%子会社である迎倍客股有限公司(台北市)。
 
<沿革>
1987年1月、メーカーの商品販売促進活動の支援を目的に設立。2000年8月に一般労働者派遣事業の許可を、03年10月に事業分野拡大を目的に有料職業紹介事業の許可を、それぞれ取得。04年12月、JASDAQに株式を上場した。現在、全国31の主要都市に展開しており、北海道から沖縄まで国内一斉のセールスプロモーションがワンストップで実現できる。
 
<サービス内容>
モバイル・デジタル関連サービス
・セールススタッフ:日時、キャンペーン形態等に応じて販売員を派遣・業務請負
・キャンペーンスタッフ:年末年始、シーズン毎にキャンペーンスタッフを派遣・業務請負
・ラウンダー:店舗に出向き、販売状況やスタッフ等を管理する管理者の派遣・業務請負
 
ストア支援サービス
・レジスタッフ:レジスタッフ、レジトレーナーの派遣・業務請負、マニュアル作成等
・生鮮技術スタッフ:生鮮加工技術と現場管理能力を備えたプロフェッショナルを派遣・業務請負
・デモ・スタッフ:店頭での試食販売、キャンペーン等の販促活動支援スタッフの派遣・業務請負
 
人材サービス
銀行・クレジットカード会社等のカード加入促進、コールセンター業務、事務・IT人材派遣、流通・小売業を中心とする人材紹介等。
 
棚卸サービス
棚卸業務を代行し、業務の効率化と営業時間の有効活用を実現。365日、24時間体制で多様なニーズに対応。
 
その他サービス
・調査サービス:店頭調査をはじめとした、各種調査業務。
・デジタルサイネージ:販促シーンにおける電子看板・電子POPのコンサルティング及び管理運営等。
 
2010年3月期決算
 
 
キャンペーンの減少と子会社の不採算事業処理で41.0%の営業減益。
売上高は前期比16.3%増の21,934百万円。主力のデジタル分野でキャンペーン案件の規模縮小が顕著となる等、厳しい事業環境が続く中、棚卸等でのコスト削減ニーズの取り込みと09年7月に子会社化したPPC(旧株式会社 プレミア・スタッフ)の寄与で23期連続の増収を達成した。
利益面では、利益率の高いキャンペーン案件の縮小やPPCの不採算部門の影響、更には派遣の売上構成比の上昇もあり、売上総利益率が2.8ポイント低下。利益率の低下で増収ながら売上総利益がほぼ前期並みにとどまる中、グループ会社の増加で人件費を中心に販管費が増加したため(固定費及び経費削減の取組実施によりピーアンドピー個別ベースの販管費は減少)、営業利益は374百万円と同41.0%減少した。加えて、PPCの子会社化に伴い発生した事務所移転費用やシステム統合費用など132百万円を特別損失に計上したため、当期純利益は同82.0%減少した。配当は予定通り1株当たり50円増配の900円を実施する考え。
尚、予想との比較では、年度末のキャンペーン規模縮小で売上が下振れする中、PPCの不採算部門への対応が第4 四半期にまで及んだ事が響いた。
 
(2)セグメント別動向
 
モバイル・デジタルはモバイル分野の売上が同2.5%増加したものの、キャンペーン案件の規模縮小によるデジタル分野の苦戦をカバーできなかった。また、ストアサービスは大手GMS・SMの業績に連動して生鮮技術者やレジ受け等の派遣需要が減少した。一方、人材サービスはPPCの子会社化で売上が大幅に増加。棚卸サービスも業務効率化・人件費抑制を目的としたニーズの拡大やコンビニの他社枠獲得により売上が増加した。
 
 
一般事務派遣は縮小傾向が続いているが、事業の91%以上を派遣契約で実施しているPPCが連結対象となった事に加え、地方拠点での官公庁案件の獲得もあり、人材派遣事業の売上が大きく伸びた。一方、アウトソーシングは店頭調査・接客調査等の新たなアウトソーシングサービスの売上が増加したものの、キャンペーン案件の縮小が響いた。
 
 
東西両地区共にPPCの子会社化による拠点拡大効果で売上が増加した。地区別では、東日本地区でサテライトオフィスを活用した営業エリア拡大効果が見られた他、西日本地区で入札参加による官公庁案件の獲得が進んだ。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
M&Aにより事業規模の拡大で、期末総資産は5,364百万円と前期末比435百万円増加した。CFの面では、M&A関連支出の減少で投資CFのマイナスが減少したものの、運転資金の増加で前期は485百万円の黒字だった営業CFが138百万円のマイナスとなり、フリーCFが271百万円のマイナスとなった。配当の支払で財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物期末残高は前期末比358百万円減少した。ただ、有利子負債に依存しない健全経営が続いており、流動資産が資産全体の80%を占める等、資産の流動性も高く財務内容は良好。
 
 
 
(4)トピックス
10/3期は、「クライアントの全てのニーズに応えるためのサービス体制の強化」、「高付加価値サービス提供のための新サービスの開発」、及び「グループ体制強化による利益体質の組織作りの実施」の3点を「重点実施内容」として掲げ、①大型M&Aを実施すると共に、②新たなサービスの開発・顧客ニーズの開拓、及び③リバイバルプランによる販管費削減に取り組んだ。
 
①大型M&Aの実施
2009年7月1日、事務派遣・コールセンター業に強みを持つ、旧(株)プレミア・スタッフの株式を取得。これにより、売上規模の拡大とクライアントへの提供サービス範囲の拡大、及びカテゴリー毎の売上構成比率の分散化が進んだ。
 
 
②新たなサービスの開発・顧客ニーズの開拓
「既存クライアントへのサービス範囲の拡大」と「新たな顧客・事業・業種へのサービス範囲の拡大」に取り組み、下記の施策を実施した。
 
 
③リバイバルプランによる販管費削減
販管費削減対策及び管理部門統合による業務効率化を進めた。
 
実施項目
・グループ全体での求人費用の削減
・拠点統廃合・移転等による賃借料削減
・不動産等各種契約条件の見直し実施
・管理部門のシステム化及びシステム統合実施
・管理部門のグループ間統合実施
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比9.4%の増収、同32.4%の経常増益予想
ブロードバンド回線の販売代行の増加やキャンペーンの回復等で主力のモバイル・デジタルの売上が伸びる他、人材サービスや棚卸サービスの売上もコンビニ向けを中心に増加する。増収効果や不採算事業の終息に加え、リバイバルプランの実施による販管費削減効果が通期で現れ、営業利益が同33.4%増加する見込み。配当は1株当たり900円の期末配当を予定。
 
 
(3)市場環境
①派遣業法改正
2010年3月19日に派遣法改正案が閣議決定され、現在、国会で審議されている。登録型派遣や製造業派遣の原則禁止や派遣労働者の待遇改善等が改正のポイントになっているため、改正法が施行された場合、人材派遣業界全体に与える影響は大きく、また、業界再編と業態変化が加速すると同社では見ている。また、同社にとっても、メリット、デメリットの両面が考えられるが、企業規模、財務能力、コンプライアンス等の観点からメリットの方が大きいと言うのが同社の考え。
 
 
②クライアントの状況変化
リーマンショック後のコストカット一色の姿勢から前向きな姿勢に転じており、成長分野に対する投資意欲が回復してきた。具体的には、小売・流通系クライアントの場合、集客・販売促進の取組を強化しており、また、通信・家電・消費材系クライアントにおいても販促費が拡大傾向にある。ただ、その一方で、販促方法が複雑化すると共に、結果重視の姿勢が強まっている。
 
(4)重点施策
11/3期は、「将来を見据えた選択と集中」、「他社と差別化のための価値の創造」、及び「請負会社への回帰」の3点を重点目標として掲げており、具体的には、①グループ組織体制の強化、②請負サービス提案の継続実施、及び③成長分野への投資と新たなサービスの開発に取り組んでいく考え。
 
 
①グループ組織体制の強化
グループ会社間の事業整理及び管理部門の統合を進める。具体的には、不採算事業及び拠点の見直しを行うと共に、グループ・拠点間の人事交流を活発化する。
 
②請負サービス提案の継続実施
労働者派遣法の改正を睨み、コンプライアンスに則った請負の提案と付加サービスの追加により他社との差別化を図り、売上拡大につなげていく(10/3期に30.8%だった売上構成比を早期に45%に引上げる)。
 
 
<付加価値サービスPPRを用いたサービス提供の強化>
付加価値サービス提供の一環として、PPR(P&P Reporting system)を開発した。従来のサービスにスピード力と情報収集力等を加え、これまで以上に付加価値のあるSPOサービス提供の強化を図る。
 
 
③成長分野への投資と新たなサービスの開発
・デジタルサイネージ事業
個人消費が伸び悩む中で小売店や飲食店を中心に集客・購入促進を支援するべく、デジタルサイネージ事業を開始した。同事業の拡大に注力する事で、人的支援以外の分野でクライアントへのサービス範囲を広げていく。
デジタルサイネージ事業はクライアントから委託を受けて、同社がデジタルサイネージの仕組みを提供すると共に、コンテンツの管理・運営を行い、必要な機材の調達やコンテンツ制作は同社のアライアンス先が行なう。尚、11/3期は725百万円の売上を見込んでいる。
 
 
・業務提携・M&A戦略及び海外事業
業務提携及びM&Aについても、積極的に対応していく考えだが、基本方針として次の2点を挙げている。
 
 
具体的には、Webプロモーション、販促物の企画・制作、マーケティングリサーチ、コンテンツ制作、コンサルティング等の分野でサービスの強化及び高付加価値化を図りたい考え。
 
 
また、成長著しい東アジア諸国の動向と国内メーカー・小売企業の東アジアへの進出・注力状況を鑑み、台湾の孫会社を足掛かりに、海外事業への本格展開のための準備調査も開始する。
 
(5)今後の成長ビジョン
年率10%以上の売上成長を維持すると共に、利益率6%の確保を目指している。
 
 
 
取材を終えて
日本経済新聞によると、上場企業(3月決算企業のうち1,560社)の10/3期は売上高が11%減少したものの、コスト削減により経常利益が24%増加した。増益は売上の増加よりもコスト削減を優先した結果であり、同社が強みを持つセールスプロモーションも影響を受けたようだが、同社は23期連続の増収を達成した。M&A効果が大きかったものの、モバイルや棚卸サービスが健闘しており、多面的な人材サービスを展開する同社の強みも示された。不採算事業の整理等、M&A後の体制整備に伴うコストが利益を圧迫し大幅な減益となったものの、体質改善が進んだ事で今後は売上の増加が素直に利益に反映される。
改めて日本経済新聞によると、上場企業の11/3期は売上が6%増加し、経常利益が35%増加する見込みであり、企業活動は縮小均衡から拡大均衡に転じるようだ。このため、主力の営業支援サービスに対するニーズの高まりが予想されるが、消費に力強さが欠けるだけに従来通りのサービスにとどまっていては顧客満足度を高める事は難しい。もう一工夫、二工夫が必要であり、同社の場合、その解が「PPR」であり、「デジタルサイネージ」である。今期の業績は同社の予想に沿った大幅な増益が達成できると考えるが、来期以降の成長につながる新サービスや新規事業の進捗にも注目したい。