ブリッジレポート
(7590) 株式会社タカショー

スタンダード

ブリッジレポート:(7590)タカショー vol.17

(7590:JASDAQ) タカショー 企業HP
高岡 伸夫 社長
高岡 伸夫 社長

【ブリッジレポート vol.17】2011年1月期上期業績レポート
取材概要「上期の苦戦で業績予想を下方修正したものの、下期は前期比二桁の増収となり、営業損益が黒字転換する見込み。実際、梅雨明け前後から好天が続いて・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年9月14日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社タカショー
社長
高岡 伸夫
所在地
和歌山県海南市南赤坂20-1
決算期
1月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年1月 12,756 580 584 296
2009年1月 13,118 440 393 246
2008年1月 13,437 597 474 289
2007年1月 12,420 424 414 183
2006年1月 11,112 528 541 305
2005年1月 10,895 528 498 270
2004年1月 10,153 466 346 213
2003年1月 10,057 360 257 162
2002年1月 9,457 -17 -83 -89
2001年1月 9,045 523 467 177
2000年1月 8,535 580 575 258
株式情報(9/3現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
353円 8,479,910株 2,993百万円 7.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
14.00円 4.0% 40.68円 8.7倍 512.03円 0.7倍
※株価は9/3終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
タカショーの2011年1月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「やすらぎのある空間づくり」を基本コンセプトに、人工・天然の竹木製フェンスやガーデンファニチャー、緑化資材等の庭園資材を製造・販売。LED(発光ダイオード)ライト等の照明機器、池・滝・噴水等のウォーターガーデンや坪庭等も手掛けている。商品の企画から製造、販売まで一貫体制をグループで確立しており、製造は国内及び中国、販売は国内のみならず、欧州、アジア、オセアニアへも展開。天候要因で業績が振れやすい面はあるものの、日本においても確立した市場となりつつある「ガーデニング市場」の牽引役として期待がかかる。
 
<販売ルート(営業部門)>
営業部門は、販売ルート別に設計・施工が必要な工務店向け「プロユース」、ホームセンターへの卸売を中心にした一般消費者向け「ホームユース」、「e-コマース・通信販売」、「輸出」に分かれる。個別ベース売上構成比は、それぞれ48.1%、46.2%、2.9%、2.8%(10/1期実績)。
「プロユース」では、プロユーザー向けのカタログ「PROEX(プロエクス)」を業界最大の約25万冊印刷し、造園業者、設計士、エクステリア施工店、商業施設等にダイレクトメールで配布している。カタログには商品を使った庭園イメージの写真が掲載されており、この写真を見ながら実際に施工する場所と庭園の簡単な図面を書いてファックスもしくはWebで発注すると、CAD(コンピュータによる設計支援システム)、CG(コンピュータ映像)を駆使した完成予想図と共に見積書を当日中に返送し、正式な注文があれば商品を短納期する仕組み作りが確立している。
 
 
 
2011年1月期上期決算
 
 
①ホームユース部門の苦戦が響き、減収・減益
売上高は前年同期比5.4%減の7,080百万円。家と庭をつなぐ空間となる「ポーチガーデン」シリーズや夜の庭を演出するソーラーライト等の照明機器が堅調に推移したプロユース部門の売上が増加したものの、春先から初夏にかけての天候不順やホームセンターの在庫調整等によるホームユース部門の苦戦が響いた。利益面では、物流の合理化による配送費、支払手数料、賃借料等を中心に販管費が減少したものの、減収の影響をカバーするには至らず営業利益は517百万円と同18.1%減少した。為替の影響(外貨建債権の時価評価によるもの。差益17百万円→差損14百万円)等で営業外損益が悪化した他、税効果会計の影響もあり四半期純利益は274百万円と同25.3%減少した。
予想を下回った要因もホームユース部門の苦戦。上期のホームユース部門の売上予想は3,512百万円だったが、着地はこれを811百万円下回る2,701百万円。2月から5月にかけては、ホームセンターが低価法による減損会計の適用に伴い店舗在庫の圧縮を進めた事に加え、ゴールデンウイーク前の冷え込みと家庭菜園の導入遅れで定番商品の商流が鈍化し、前年同期比29.7%(250百万円)の減収。また、6月から7月にかけては、低温や天候不順による日除け商材の落ち込みで同32.8%(430百万円)の減収。
 
 
プロユース部門では、夜の庭を演出する「光」について同社認定制度である「エクステリア&ガーデンライティング」マイスター制度の導入による施工の支援が奏功し照明機器(ライティング)が新商品を中心に伸びた他、人気の「エバーアートウッド」を用いた家と庭をつなぐ空間「ポーチガーデン」シリーズが順調に売上げを伸ばした。ホームユース部門では、すでに説明した通り、異常気象による春の立ち上がりの遅れや天候不順による夏物商材の販売低迷に加え、ホームセンター各社の在庫調整が響いた。この他、ファーニチャー関連を中心に通販の売上が増加した。
 
 
ガーデンフェンスでは、「エバーアートウッド」が前年同期比15.7%増加したものの、人工竹垣関連(6.3%減)の落ち込みが響いた。庭園資材では、6月から7月にかけての低温や天候不順により日除け商品の売上が同32.8%減少。一方、照明機器ではソーラーライトが215百万円と同0.4%増加した他、今期より取り扱いを本格化したローボルトライトの売上33百万円を計上した(前期は3百万円)。
 
 
販管費は前年同期比3.2%減の2,582百万円。物流の合理化がほぼ一巡しその効果が顕在化した。今後は業務の効率化を進め生産性の向上に努める考えで、具体的には、業務の標準化(システム化)を進めると共に、売上に直結する部門へ人員をシフトさせ、かつ、マルチタスク化を図る事で社内での人の流動化(固定費から変動費へ)も進める。一方、国際化への準備として、国際関係業務の人材投資を継続する。国際関係業務の人員は、現在、32人で、5年前に比べて13人増加しており、上期の人件費の増加要因となっている
 
②財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比1,848百万円増の11,170百万円。プロユース部門の好調に加え、上期末にかけての天候の回復やホームセンター各社の在庫調整の一巡で運転資金が増加したため、長期借入金を中心に有利子負債を積み増した。CFの面では、上期末にかけての運転資金の増加と税負担(80百万円→281百万円)の増加で営業CFがマイナスとなったことに加え、設備投資や海外子会社の設立等の支出も増加したため、フリーCFが140百万円のマイナスとなった。ただ、借入金の積み増しで財務CFが黒字となり、現金及び現金同等物の上期末残は2,075百万円と前期末比511百万円増加した。
 
 
 
2011年1月期業績予想
 
 
プロユースの伸長とホームユースの回復で営業増益へ
下期は新商品効果や住宅メーカーとの取引拡大でプロユース部門が伸びる他、梅雨明け以降の好天やホームセンターの在庫調整完了でホームユース部門も回復。中国(2社)やオーストラリアの新設子会社の寄与もあり、前年同期比で二桁の増収が見込まれる。上期の落ち込みをカバーして、通期の連結売上高は前期比1.5%増の12,946百万円が見込まれる。
利益面では、増収ながら物流関係を中心にしたコスト削減の進展で販管費が減少、営業利益が同6.7%増加する見込み。為替差損益の悪化や企業立地奨励金等が無くなる等で経常利益が減少するものの、韓国子会社関連の特損がなくなる事や前期は修正申告に伴う税負担の増加があった事等から当期純利益は同16.6%増加する見込み。
 
 
(2)今後の事業展開
リフォームや中古住宅流通等の住宅再生市場が堅調に推移している他、住宅版エコポイント制度や住宅ローン減税等の住宅施策や税制面での優遇処置の後押しもあり新築住宅着工も回復傾向にある。また、ガーデニング業界では新築先付けに加え、築後にライフスタイルをメンテナンスしながら作りこんでいく後付けの市場も拡大している。
同社は、この市場環境を生かしてプロユース部門及びホームユース部門の両部門で事業拡大を図る考え。
 
 
新築市場では、大手ハウスメーカーの開拓が進んでおり下期以降業績への寄与が始まる見込み。また、中古住宅では「企業マイスター制度」の導入によりライティング等の基本的な施工技術の教育はもちろん、同制度によるネットワークを活用した業界活性化の仕組みづくりにも取り組んでいる。尚、庭のプロフェッショナル集団を目指すRGCの会員企業数は、8月26日現在、問屋、施工店等659社を数える。
商品戦略の一環として、今夏(7月20日~21日、東京流通センター)に単独開催した「タカショートータルガーデンフェア」は2,338人の入場者を集め、8月下旬から販売を開始する新商品が高い評価を得た。特に「アートウッド」を用いた「ポーチ」や「ガーデンピット」等が好評で、新商品での売上増加が見込まれると言う。
 
②ホームユース
重点施策として、環境への取り組み、海外流通・工場政策、国際市場戦略の3点を挙げている。
 
環境への取り組み
クールシェード(日除け商品:エアコンの温度を高めに設定できる等の効果がある)やローボルトライト等の商品を軸にエコガーデンへの取り組みを強化する。
海外流通・工場政策
子会社の設立も含めて中国での生産体制を強化する他、09年7月に設立した豪州現地法人「タカショーオーストラレイジア」を通してオーストラリアやニュージーランドにおける販売の本格化、更にはベトナムへの展開を進める。
国際市場戦略
これまで国内展開にとどまっていたホームユース部門の展開を欧州に広げる。この一環として、本年10月(10日~15日)に日本で開催されるIGCA(国際ガーデンセンター協会)2010のメインスポンサーを務める。アジアで初の開催となる今回のIGCA2010を盛り上げる事で、日本のガーデニング市場の拡大はもちろん、世界のガーデニング市場におけるタカショーブランドの浸透を図りたい考え。
 
 
取材を終えて
上期の苦戦で業績予想を下方修正したものの、下期は前期比二桁の増収となり、営業損益が黒字転換する見込み。実際、梅雨明け前後から好天が続いている事に加え、ホームセンター各社の在庫調整完了や大手ハウスメーカーとの取引拡大、更には「タカショートータルガーデンフェア」以後の新商品の受注好調等、好材料が多く、下期の業績予想に違和感は無い。
また、ここにきて大手ハウスメーカーがエクステリアや庭への取り組みを強めている事を考えると、中期的な見通しも明るい。同社は、“ガーデンは家での暮らしにおける5番目の部屋である”と言う「5th ROOM(フィフスルーム)」の概念を提唱し、新商品のラインアップ充実と市場への啓発活動に注力してきた。「5th ROOM(フィフスルーム)」の概念とは、簡単に言うと、物置やカーポート、アルミ製品等で埋め尽くされた日本の庭を欧米のような健康的にゆったりと過ごせる庭、つまりリビングガーデンに変えようと言うもの。ガーデニングの先進国である欧州の主要国と比べると、GDP(国内総生産)比でガーデニングの市場規模が小さい日本だが、市場の拡大には、こうした意識改革が不可欠だった。意識改革は未だ緒に就いたばかりだが、それだけに今後の伸び代は大きい。ガーデニング業界はIT関連のように短期的に急拡大するような事は無いが、経済の成熟化と共に着実にマーケットが広がっていく。この8月に会社設立30周年を迎え、更なる飛躍を期す同社の今後の展開に注目したい。