ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.15

(2660:東証1部,大証2部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長兼社長
寺西 忠幸 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.15】2011年2月期上期業績レポート
取材概要「未だ実施店舗が少ないものの、「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」が成果をあげており、前項で示した通り、同改革を実施した店舗では・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年10月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長兼社長
寺西 忠幸
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(9/30現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
386円 11,331,205株 4,373百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 5.2% 0.88円 438.6倍 893.31円 0.4倍
※株価は9/30終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2011年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。(株)ニッショードラッグ及び(株)ジェイドラッグの連結子会社2社とともに、和歌山県を除く関西地域、徳島県、石川県でドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2010年8月15日現在、グループで311店舗(FC3店舗を含む)を展開。製造卸売事業として、連結子会社(株)健美舎が健康食品や医薬品の企画・販売も手掛けている。
 
<沿革>
1958年3月、薬局店舗営業と薬品製造業を目的に設立され、その後、ドラッグストアのチェーン展開を開始した。1991年10月、大阪市にスーパードラッグストア第1号店をオープン以降、出店を強化、2007年2月期には200店舗を超えた。また、M&Aにも積極的に取り組み、2006年10月には四国地区での販売網の拡充の観点から(株)ジェイドラッグを、同年12月には同じ関西に地盤を置き営業基盤で補完性の高い(株)ニッショードラッグを、それぞれ買収。「2015年 500店舗」体制を目指し、グループ力の強化を進めている。
 
<プライベートブランド(PB)商品>
価格訴求力があり、収益性も高いPB商品の販売を強化している。
 

 
素材・製法・品質にこだわった生の大麦若葉エキス。大麦若葉エキスが脂肪の蓄積を抑える他、活性酸素の一種であるスーパーオキシドを瞬時に無毒化するSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)を含有。
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2011年2月期上期決算
 
 
花粉症関連商品の販売不振や新型インフルエンザ関連特需の反動等で減収・減益
売上高は前年同期比5.3%減の50,087百万円。PB商品の好調で健康食品が増加したほか、調剤も順調に売上を伸ばしたが、花粉症関連商品の販売不振や新型インフルエンザ関連特需の反動等をカバーできなかった。利益面では、ニッショードラッグ(キリン堂よりも売上総利益率が高い)の売上構成比及び売上総利益率の低下に加え、キリン堂で利益率の高い医薬品が苦戦したこともあり、売上総利益率が0.3ポイント低下。販促費用等の削減により販管費が減少したものの、売上総利益の減少をカバーできず営業利益は241百万円と同58.5%減少した。賃貸費用の減少等で営業外損益が改善したものの、店舗設備等の減損損失(266 百万円)や店舗の解約に伴う損失引当金(40百万円)など特別損失307百万円を計上したため、62百万円の四半期純損失となった(前年同期はたな卸資産評価損919百など特別損失1,255百万円を計上した)。上期末の店舗数は、キリン堂228店舗、ニッショードラッグ78店舗、ジェイドラッグ2店舗、FC3店舗。出退店は、キリン堂が5店舗を新規出店する一方、5店舗の退店を行った。
 
 
上期のキリン堂の既存店は前年同期比6.8%の減収。客単価が同0.7%減とほぼ前年同期並みの水準で推移したものの、客数の減少(同6.1%減)が響いた。一方、ニッショードラッグは同6.7%の減収。客単価が同2.1%低下するとともに、客数が同4.7%減少した。
 
 
キリン堂は利益率の高い医薬品の苦戦等が響いた。なお、キリン堂は子会社ニッショードラッグとFC契約を締結し、同社への商品売上及び同社からFC手数料収入があるため、売上総利益率がニッショードラッグよりも低くなる。
 
 
積極的に新商品を投入したPB商品の好調等で健康食品が増加したほか、処方せん取扱店舗の増加(2店舗)や単価アップで調剤売上高も増加した。一方、花粉症関連商品の販売不振や新型インフルエンザ関連特需の反動等で医薬品が落ち込んだほか、消費低迷や制度化粧品の伸び悩みで化粧品の売上もわずかに減少。チラシ特売依存体質からの脱却を図るべくチラシを減らした影響で、特売の対象となることの多い育児用品や雑貨等も減少した。
なお、上期末の処方せん取扱店は46店舗で、このうち23店舗で月間の処方せん取扱枚数が1,000枚を超えた。
 
 
販管費は前年同期比3.9%減の12,554百万円(計画比635百万円減)で着地した。増減要因は、販促費の削減で販売費が減少したほか、新卒採用の抑制と業務の効率化によるパート・アルバイトの削減により人件費も減少。このほか、リース料の減少で施設費も減少したが、租税公課の増加で営業費が増加した。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比1,099百万円増の41,913百万円。借方では現預金が増加する一方、のれん償却で無形固定資産が減少。貸方では有利子負債が増加した。CFの面では、運転資金の増加により営業CFが減少する一方、設備投資の増加で投資CFのマイナス幅が拡大したものの、1,218百万円のフリーCFを確保。短期借入金の積み増しもあり、現金及び現金同等物の上期末残高は6,400百万円と前期末比1,706百万円増加した。
 
 
 
2011年2月期業績予想
 
 
上期決算を踏まえて通期業績予想を下方修正、前期比4.2%の減収、同24.7%の経常減益見込み
現場中心のマネジメント体制の確立による営業組織の活性化や店舗オペレーションの効率化による効果が徐々に顕在化してくる見込みだが、引き続き消費の低迷が予想されることに加え、上期の季節商材の苦戦や前期の新型インフルエンザ関連特需の反動もあり、売上高は100,600百万円と同4.2%減少する見込み。
利益面では、PB商品を中心とした健康食品等の販売強化により、売上総利益率の改善を図るとともに、販売費や人件費を中心に販管費の削減を進めるものの、減収の影響をカバーできず営業利益は770百万円と同37.5%減少する見込み。当期純利益が10百万円にとどまるのは、店舗設備の減損損失など特別損失657百万円を織り込んだため。既存店売上高の前提はキリン堂が前期比5.5%減、ニッショードラッグが同6.3%減。出退店はキリン堂が8店舗の新規出店(内、上期5店舗出店済み)と6店舗の退店(内、上期5店舗退店済み)を計画。販管費に織り込んだ、のれん償却費は前期と同額の416百万円。
配当は1株当たり10円の期末配当を予定している。
 
 
下期の既存店の前提は、キリン堂が前年同期比4.3%減(期初の前提:1.6%減)、ニッショードラッグが同6.0%減(同0.5%減)と、キリン堂、ニッショードラッグともに上期比で改善を見込む。出退店はキリン堂が3店舗の新規出店と1店舗の退店を計画。売上総利益率は、PB商品を中心とした健康食品等の販売強化により、前年同期と同水準の26.4%を確保する。保守的に予想していたため販管費も期初予想を下回る見込みだが、販管費率は売上の減少が響き0.2ポイント低下する。
 
(2)11/2期の施策と進捗状況
①11/2期の施策
「顧客第一主義」をテーマに、「営業組織活性化(現場力の強化)」とライトカウンセリング販売体制の構築に向けた「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」に取り組むとともに、販促手法を変更しチラシに依存した従来型販促からの脱却を図る。
具体的には、「営業組織活性化(現場力の強化)」では、期初に、営業部を4体制へ細分化し、現場中心のマネジメント体制を強化している。また、「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」では、タスクフォース主導による売場改装と棚割りの変更によりセルフサービスの売場づくりを徹底。本格稼動は来期となるが、新物流センター(KRDC)と需要予測による自動発注システムの稼動により、在庫削減も進む見込み。「販促手法を変更」では、チラシ販促を削減し、EDLP(Everyday Low Price)へのシフトを図るとともに、PB商品の開発と販売を強化する。
 
②進捗状況
「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」
買物しやすい売場を実現するとともに、店舗作業量を削減してライトカウンセリングの時間を創出するべく、徹底したセルフサービス売場づくりを進めている。具体的には、プロモーションを削減して通路幅を確保することでカートを利用しやすくし、来店客の店内回遊時間を増やす。また、棚割りの見直しやP0Pによる商品訴求も強化する。上期に19店舗で上記の改革が完了しており、下期は改革実施店舗が60店舗に拡大する。
 
 
「販促手法の変更」
第2四半期に入り店頭でEDLPを開始した。これに伴い店頭やWebを利用したEDLPの告知チラシに販売促進策の軸足を移し、チラシ販促を削減したため販促費が225百万円減少した。ただ、EDLP商品の売上構成比が高まると売上総利益率が低下するため、PB商品の販売を強化することで利益率を維持する考え。上期のPB比率はキリン堂が8.4%、ニッショードラッグが8.6%。
 
 
「地域コミュニティの中核」となるドラッグストアチェーンを確立し、需要の増加が予想される在宅介護や介護施設等への薬の配達及び訪問服薬指導に取り組むことで、地域医療への貢献を目指している。また、在宅医療事業や医療モールの開発を強化するべく、この8月に在宅医療のサーポートやマネジメント等を手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメント(東京都渋谷区)の株式を取得した。
 
事業内容
・在宅医療サーポート&マネージメント
 事業
・医療機関開業支援、運営支援事業
・在宅療養レジデンス開発事業
 
 
取材を終えて
未だ実施店舗が少ないものの、「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」が成果をあげており、前項で示した通り、同改革を実施した店舗では販売が堅調な上、収益性の改善も顕著である。加えて、この改革は店舗作業の削減(生産性の改善)にもつながるため、店舗で働く社員がライトカウンセリングに取り組む時間を増やすこともできる。同社が目指している「“地域コミュニティの中核”となるドラッグストアチェーンの確立」には、チラシの配布による集客ではなく固定客となる顧客作りが欠かせないが、ライトカウンセリングによる来店客との接点づくりはそのための原点となる。
上期は「売場づくりの改革」の実施店舗が19店舗にとどまったが、下期は60店舗に拡大する見込みであり、加えて、11月には需要予測による自動発注システムと連動する新物流センター(KRDC)も稼動する。このため、来期は収益性の改善が進むものと考える。