ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

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ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.21

(7839:東証2部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.21】2010年9月期業績レポート
取材概要「四輪者販売を押し上げたエコカー補助金のような特別な援護策も無く、日米欧の二輪車販売が前期比マイナス成長を続けた事に加え、急激な円高の影・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年12月28日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年9月 10,078 898 978 638
2009年9月 10,300 1,047 1,335 837
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
株式情報(12/22現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
730円 13,772,336株 10,054百万円 9.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 2.7% 40.66円 18.0倍 466.68円 1.6倍
※株価は12/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
SHOEIの2010年9月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメットメーカー。オートバイ用を中心に、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界50カ国以上を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力により、右の3つの世界一を実現する事を経営方針に掲げている。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。
 
<事業内容>
二輪乗車用ヘルメット(以下、「プレミアムヘルメット」)の売上高が約90%を占めている。なかでも、高品質で高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県東磐井郡)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、より高い品質を維持すると共に技術の流出防止にも努めている。また、業界では唯一の「トヨタ生産方式」導入企業として、高い限界利益率と在庫回転率、及び優れた資産効率を誇る。
 
<SHOEIフラッグシップの最新モデル 「X-TWELVE」>
 
1月に国内販売を開始した新製品「X-TWELVE」は同社フラッグシップの最新モデル。空力、デザイン、快適性、そして安全性を追求したプレミアムレーシングフルフェイスのヘルメット。昨年9月に欧州で、11月には米国において、現地の規格に沿った製品が発売されており、いずれも好評。
 
 
2010年9月期決算
 
 
前期比2.2%の減収、同26.7%の経常減益
売上高は前期比2.2%減の100.7億円。国内外で「プレミアムヘルメット」の販売数量が増加したものの、急激な円高の影響を受けて主力の欧州での売上が落ち込んだ他、北米も小幅な増収にとどまった。利益面では、全社をあげての経費削減により販管費の削減が進んだものの、円高の影響に加え、生産調整(約1割減産)による工場稼働率の低下や製品在庫の減少(461百万円減少)等で売上総利益率が低下。売上の減少と売上総利益率の低下が相まって、営業利益は8.9億円と同14.2%減少した。為替差益の減少(2.8億円→0.9億円)等で経常利益が同26.7%減少したものの、税金の還付等による税負担の減少で当期純利益は6.3億円と同23.7%の減少にとどまった。
期中平均レートは、1ドル=89.55円(前期は93.84円)、1ユーロ=120.40円(同129.26円)。設備投資は新製品金型投資や大型風洞実験設等で3.7億円(前期は6.8億円)、減価償却費は7.0億円(同7.3億円)。同社は配当性向50%を目処に配当を実施しており、今期は1株当たり23円を予定している。
 
 
国内売上は前期比1.7%増の21.6億円。第3四半期まで(09年10月~10年6月)は、天候不順や景気低迷に加え、販売店の在庫圧縮もあり、前年同期比12.6%減と低迷したものの、消費生活用製品安全法基準改定に伴い投入した海外製品と同じモデルの寄与で第4四半期(7-9月)の売上高が急増(前年同期比67.4%増)し、第3四半期までの落ち込みを吸収した。海外売上は同3.2%減の80.3億円(海外売上高比率78.5%)。各地域で需要が回復し日本からの出荷ベースでは前期比増収(海外全体では3.4%増。欧州向け1.8%増、北米向け3.4%増、その他地域向け14.4%増)となったものの、急激な円高を受けて決算ベース(欧州は円建て販売だが、子会社の期末である6月末の為替レートで欧州子会社の決算が円換算される)では欧州が同6.8%減と落ち込んだ他、値上げ効果があった北米(ドル建て販売)も小幅な増収にとどまった。尚、欧州子会社の期末為替レートは1ユーロ=107.81円で、09/9期末(1ユーロ=135.48円)比27.67円の円高。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比2.8億円減の81.4億円。借方では、CFの改善により現預金が増加する一方、売上債権、たな卸資産(生産調整により在庫削減が進展)、及び減価償却で有形固定資産が減少。貸方では、円高に伴う為替換算調整勘の影響で純資産が大きく減少した他、仕入債務等も減少した。CFの面では、定期預金の払戻しの減少で投資CFが悪化したものの、運転資金の減少と税負担の減少による営業CFの大幅な増加で、前期は4.7億円にとどまったフリーCFが17.8億円に増加。配当負担の減少により財務CFのマイナス幅も縮小し、現金及び現金同等物の期末残高は32.0億円と前期末比10.3億円増加した。
 
 
 
 
2011年9月期業績予想
 
 
前期比1.9%の増収、同8.0%の経常減益予想
売上高は前期比1.9%増の102.7億円を予想。ここ2年間に投入した新製品効果が期待できるものの、日米欧市場が未だ本格的回復に至っていない事や円高の影響を織り込んだ。地域別では、欧州で2.2億円、国内で0.7億円の増収を見込む一方、夏場以降の対ドルでの円高の影響を受ける北米で1.3億円の減収を見込んでいる。利益面では、売上原価の低減や諸経費の削減により円高の影響を吸収し、営業利益が同4.7%増加する見込み。ただ、為替差益を見込んでいない(10/9期は0.9億円の差益を計上)事や特別損失として資産除去債務の影響額0.3億円を織り込んだ結果、当期純利益は5.6億円と同12.4%減少する見込み。為替の前提(期中平均レート)は、1ドル=82.00円(前期実績は1ドル=89.55円)、1ユーロ=112.00円(同1ユーロ=120.40円)。設備投資は新製品金型投資等で3.6億円(10/9期は3.7億円)を計画しており、減価償却費は5.1億円(同7.0億円)を織り込んだ。配当は1株当たり20円の期末配当を予定。
 
(2)今後の展開
①事業環境
ヘルメット需要と密接な関係のある二輪車販売を見てみると、二輪車の利用をレジャーやスポーツと捉えている米国が二輪車購入時のローンが受け難い事等で直近のピークである08年の50%程度の水準にあるが、二輪車の利用を移動手段として捉えている欧州では08年の75%程度の水準にまで回復してきている。また、消耗品であるタイヤ販売が北米で前年同月比7%増加している他、日本でも同5%増加しており、少なくともデータの取れた北米及び日本ではバイク離れが進んでいない事を示している(ヘルメットやアクセサリーは買い控える事が可能だが、タイヤ等の消耗品は二輪車を利用している限り需要が発生する)。
 
②同社のポジション
こうした中、同社は10/9期において在庫の圧縮を進めると共に相次ぐ新製品投入により需要喚起に努めた。在庫圧縮の進展によるキャッシュ・フロー(CF)の改善は既に説明した通りだが、新製品も国内外で高い評価を得ており、10/9期は新製品効果で国内販売が前期比プラスに転じた他、円高の影響で海外売上が減少したものの、ヘルメット輸出におけるシェアは上昇した。財務省貿易統計を基に同社が作成した資料によると、10/9期は輸出全体で同社のシェアが71.7%と前期比6.8ポイント上昇しており、地域別では、北米向けが同15.1ポイント上昇の81.8%、欧州向けが同3.5ポイント上昇の66.6%、その他地域向けが1.5ポイント上昇の76.7%となった。
 
 
加えて、海外では、マレーシア、韓国、メキシコ、及びロシアへ展開し新市場の開拓が進んだ他、既存市場の深耕を図るべくフィンランド及びハンガリーを代理店販売から直販に切り替えた。11/9期以降、徐々にこれらの成果が現れてくるものと思われる。
 
欧州子会社の販売エリア
 
③今後の展開
人材の強化と、3つのドライビングフォース(商品力、マーケティング力、顧客満足度の向上)により成長軌道への回帰を図る。
 
3つのドライビングフォースと基本方針
基本方針
1.自分の会社は自分で守る
2.Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)
3.健全な財務内容の堅持
4.投資の継続
(新製品開発、コストダウン、品質向上、より確かな安全)
5.世界中のプレミアムヘルメット市場でNo.1を目指す
6.新市場開拓と既存市場の深堀り
7.利益の公平、公正な分配

(同社資料より)
 
 
取材を終えて
四輪者販売を押し上げたエコカー補助金のような特別な援護策も無く、日米欧の二輪車販売が前期比マイナス成長を続けた事に加え、急激な円高の影響もあり10/9期は厳しい決算となった。11/9期も日米欧市場が病み上がりの状態である上、対ドルを中心に円高の影響も残る事から厳しい事業環境が続く見込みだが、前期で在庫調整が進んだ事に加え、新規市場の開拓と既存市場の深堀が進む中で新製品が徐々に市場に浸透してきている事から方向性は悪くない。結果としての売上・利益も然る事ながら、11/9期については、12/9期以降の成長軌道への回帰に向けた足場固めの期と考えたい。