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ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.18

(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.18】2011年5月期上期業績レポート
取材概要「派遣業法改正論議もあり、人材派遣から業務委託へ需要がシフトしているが、こうした需要を着実に取り込めているようだ。携帯電話販売の業務を・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年1月25日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコムホールディングス株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市中央区西心斎橋 2-1-3
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年5月 13,522 789 834 475
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(1/17現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
116,500円 45,720株 5,326百万円 12.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
4,000.00円 3.4% 11,264.22円 10.3倍 89,238.32円 1.3倍
※株価は1/17終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ジェイコムホールディングスの2011年5月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
純粋持株会社である同社、総合人材サービス事業と携帯電話キャリアショップの運営を手掛ける連結子会社ジェイコム(株)、持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)とその傘下で認可保育園等の運営を手掛ける(株)サクセスアカデミー、及び人材育成等を手掛ける関連会社(株)ガーディアンシップの4社でグループを形成。主力の総合人材サービス事業では、携帯電話業界に特化した差別化戦略が奏功し、業界動向や顧客ニーズを的確に捉えたサービスと情報の提供が顧客企業から高い評価を受けている。ただ、中期的には、既存事業を中心にしつつも、グループ全体での幅広いサービスの提供を目指している。
 
<沿革>
1993年9月、パッケージ旅行の企画会社(株)パワーズインターナショナルとして設立されたが、携帯電話市場の成長性に着目して96年4月に携帯電話ショップの運営を開始。同年11月にはジェイコム(株)に商号を変更すると共に定款を変更し携帯電話業界に完全にシフトした。98年10月にはショップ運営のノウハウを活かして携帯電話業界向け人材ビジネスに参入。人材ビジネスの順調な拡大を背景に、2005年12月の東証マザーズ上場、更には07年2月の東証1部への市場変更とステータスも向上した。09年12月には、更なる業容の拡大を目指して持株会社体制へ移行。商号をジェイコムホールディングス(株)に変更。10年6月には主要事業会社であるジェイコム(株)の「東京支社」を「東京本社」へ改称し、東京・大阪両本社制とした。
 
<事業内容>
事業は、携帯電話業界向けを中心に、情報通信、金融、アパレル・美容等を顧客とする総合人材サービス事業と携帯電話ショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、11/5期上期は前者の売上高が全体の97.1%を占めた。総合人材サービス事業は契約形態により、派遣契約、業務委託契約(同社から見れば業務の受託)、及び紹介予定・職業紹介契約に分かれ、セグメント内の売上構成比は、それぞれ75.3%、24.6%、0.1%。また、マルチメディアサービスでは、各通信キャリアと丸紅テレコム(株)との三者間契約により、関西地区でドコモショップ1店舗、ソフトバンクショップ1店舗を運営している。
 
<若年層のステップアップを支援>
総合人材サービス事業では、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮している。具体的には、派遣社員もしくはアルバイトとして採用した社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている。
 
 
2011年5月期上期決算
 
 
業務委託の受注好調で業績上振れ
売上高は前年同期比11.2%増の74.6億円。内訳は、総合人材サービスが同12.0%増の72.4億円、マルチメディアサービスが同9.3%減の2.1億円。総合人材サービスでは、通信キャリア各社の新商品の発売やスマートフォン市場の拡大を受けて主力の携帯電話業界で人材サービス需要が増加。業務委託契約が大きく伸びた他、派遣法改正論議の逆風の中で人材派遣契約も増加した。ただ、業務委託はサービス開始当初の利益率が低く、これが響いて売上総利益率が低下。人件費を中心に販管費も増加したものの、増収効果で吸収し、営業利益は同5.6%増加した。受取配当金の増加や持分法適用会社の寄与で営業外損益も改善したものの、特別損益の悪化(関係会社株式売却益が無くなる一方、有価証券評価損等を計上)で四半期純利益は2.4億円と前年同期並みにとどまった。尚、上期末の取引社数は前年同期比16社増の260社。
 
(2)総合人材サービス事業の動向
契約形態別では、雇用情勢の悪化から紹介予定・職業紹介の売上が減少したものの、携帯電話業界向けを中心に業務委託契約が前年同期比57.8%増加した他、派遣契約も同2.5%増と堅調に推移した。携帯電話業界向けに限ると、同13.5%の増加。業務委託の強化により主力の携帯キャリアや大手携帯電話販売代理店向けの売上が増加した他、携帯キャリアの販売活動活発化を受けて人材サービス需要が増加した大手以外の販売代理店との取引も大きく伸びた。この他の業界では、情報通信や金融が落ち込んだものの、求人サイト事業を足がかりに新規取引が増加したアパレル・美容業界向けの売上が0.3億円から1.2億円に拡大した。
地域別では、全国的に業務委託の受注が増加する中、営業を強化した首都圏や北関東を中心に東日本地区の売上が高い伸びを示した。
 
 
 
 
 
一時的な要因で原価率が1.2ポイント上昇したものの、生産性や採用効率の改善により販管費比率が低下し、営業利益率は0.3ポイントの低下にとどまった。もっとも、原価率の上昇は業務委託サービス開始当初の一時的な現象であり、想定の範囲内。また、人件費を中心に増加した販管費も、営業管理や業務効率の適正化に加え、求人効率の改善により採用教育費も微増にとどまり、対売上比が0.3ポイント低下した。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比1.5億円増の56.2億円。借方では余資運用の有価証券や投資有価証券が増加。貸方では売上の増加で未払金(スタッフに支払う給与)及び利益計上により純資産が増加した。CFの面では、未払金の増加による運転資金の減少で営業CFが増加する一方、新規余資運用の減少で投資CFのマイナス幅が縮小したためフリーCFが改善した(マイナス幅が縮小)。
 
 
 
2011年5月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比7.2%の増収、同7.9%の経常増益予想
上期に営業体制を強化した成果が、下期以降、顕在化する見込み。具体的には、繁忙期を迎えて(株)テー・オー・ダブリュー(証券コード4767、以下、TOW)との提携効果も含めてキャンペーン案件が増加する他、アパレル・美容といった新規業界向けサービスの拡大やグループ企業が手掛ける新規事業の寄与も見込まれる。利益面では、一時的な売上総利益率の低下が予想されるものの、増収効果と生産性の改善により営業利益率の改善が進む見込み。配当は1株当たり2,000円の期末配当を予定(上期末配当2,000円と合わせて年4,000円)。
 
 
 
携帯電話業界ではキャリアやメーカーによるスマートフォンへの取り組みが本格化している。将来的には2人に1人がスマートフォンを保有する時代が来るとの予想もある等、引き続き成長が見込めるスマートフォン市場だが、高機能な電子機器だけに販売員に要求される知識や説明能力のレベルも高い。このため、人材サービス各社は人材の確保と育成が急務となっており、今後、研修・教育の優劣で人材サービス会社の優勝劣敗が鮮明となり、淘汰・再編が進むと見られている。また、国会での派遣法改正の審議が停止している事もあり、企業による正社員採用の動きは低調で、一部の業種では新規出店に伴い派遣社員やアルバイトの求人が増加している。このため、人材サービス各社は業務委託の強化と並行して派遣需要への対応も進めている。
 
①業務委託の受注強化
北海道から鹿児島に至る各拠点で業務委託案件の取り込みが順調に進んでいる。携帯電話業界における人材派遣から業務委託へのシフトは、地方でのトライアルを経て大都市圏での導入に至るケースが多い。言い換えると、地方での実績がその後の大都市圏での受注につながるため、業務委託は今後の見通しも明るい。同社においては、東証1部上場企業としての信頼性や携帯電話業界での実績と顧客動向等の豊富な情報量に加え、目標達成意欲の強い販売能力のあるスタッフの供給等が評価されている模様。ただ、リスク分散の観点から、派遣案件(小規模案件が多いが)の取り込みにも注力していく考え。
 
②TOWとの資本・業務提携による事業拡大
同社は若年層を活用した販売・営業・販売促進等の営業支援サービスを得意とし、特に携帯電話業界向けで豊富な実績を有し、一方、TOWは国内イベント業界最大手として、イベントの企画・制作・運営などプロモーション領域で事業を展開。特に大手広告代理店向けで豊富な実績を有する。企業ニーズがマス媒体を活用した広告宣伝からキャンペーン等の現場でのプロモーションにシフトする中、両社は今回の提携により、現在4兆円とも言われるプロモーション市場の中で、“店頭領域におけるプロモーション”(店頭や街頭でのキャンペーン等の各種販売促進活動)にフォーカスして、企画・制作からキャンペーン業務の運営やスタッフの育成までをワンストップで提供していく考え。
 
③事業会社の売上拡大とグループ組織体制の整備
成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」と認可保育園等の運営を手掛ける持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)の事業拡大により新たな事業分野での収益拡大を図る。
 
・成果報酬型求人サイト「Jobマーケット」
より多くの雇用、求職者と求人企業とのより良いマッチングを念頭に開発されたサイトであり、これまでの人材サービスと違った角度から若年層の就業をサポートすると共に、採用活動を行う求人企業に対しても、これまでの経験を生かし付加価値の高いサービスを提供していく考え。大手アパレルからの派遣案件の獲得に成功した他、高級ブランドとの取引も始まっている。
 
・サクセスホールディングス(株)
サクセスホールディングス(株)の100%子会社である(株)サクセスアカデミーは、子供を持つ女性の就業を支援するべく、認可保育園・認証保育所、公設民営保育園、学童クラブ等44ヵ所の運営を手掛けている他、東京大学や大阪大学等の大学内保育施設や病院・企業内の保育施設139ヵ所の運営を受託している。働く母親の増加や核家族化が進む中で、現在、保育施設の絶対数が不足しており、待機児童数は増加傾向にある。ジェイコムグループにおいても保育士派遣を本格化する考えで、両グループが一体となって保育施設関連の事業の拡大に取り組んでいく。
 
④事業環境に迅速に対応できるコンプライアンス体制の維持
株主、取引先、スタッフ、地域社会、エンドユーザーと言った全てのステークホルダーに支持されるコンプライアンス体制を推進する。
 
 
取材を終えて
派遣業法改正論議もあり、人材派遣から業務委託へ需要がシフトしているが、こうした需要を着実に取り込めているようだ。携帯電話販売の業務を受託する場合、販売台数もコミットする必要があるため受注可能な人材サービス会社は限られる(受注するためにはコンペに応札する必要がある)。業務委託に移行した場合、1クライアント当たり、関西・東海圏で2社程度、首都圏で3~4社が受注するケースが多く、同社はこれまで入札したほぼ全ての案件で受注に成功している模様。既に説明したとおり、従前の派遣契約を引き継ぐためサービス開始当初は派遣契約よりも利益率が低い業務委託だが、従前の派遣契約の期間満了(3~6ヶ月)後は派遣契約以上の利益率に改善する。
11/5期通期業績の会社予想が保守的であるため、(株)インベストメントブリッジでは上振れを予想しているが、来12/5期も業務委託案件の利益率改善とサクセスホールディングス(株)の業績拡大により引き続き高い利益成長が続くと考える。