ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.16

(2660:東証1部,大証2部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長兼社長
寺西 忠幸 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.16】2011年2月期第3四半期業績レポート
取材概要「品質と価格はトレードオフの関係にあるため、一般的に安い商品は「安かろう、悪かろう」となるのだが、特定の期間に通常価格(品質の目安と・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年1月25日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長兼社長
寺西 忠幸
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(1/7現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
414円 11,331,206株 4,691百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 4.8% 0.88円 876.81円 0.5倍
※株価は1/7終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2011年2月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。(株)ニッショードラッグ及び(株)ジェイドラッグの連結子会社2社とともに、和歌山県を除く関西地域、徳島県、石川県でドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2010年11月15日現在、グループで314店舗(FC3店舗を含む)を展開。製造卸売事業として、連結子会社(株)健美舎が健康食品や医薬品の企画・販売を手掛けている。
 
<沿革>
1958年3月、薬局店舗営業と薬品製造業を目的に設立され、その後、ドラッグストアのチェーン展開を開始した。1991年10月、大阪市にスーパードラッグストア第1号店をオープン以降、出店を強化、2007年2月期には200店舗を超えた。また、M&Aにも積極的に取り組み、2006年10月には四国地区での販売網の拡充の観点から(株)ジェイドラッグを、同年12月には同じ関西に地盤を置き営業基盤で補完性の高い(株)ニッショードラッグを、それぞれ買収。さらに、地域における医療提供施設としての機能強化と、小売事業における調剤部門の強化を図るため、2010年8月に(株)ソシオンヘルスケアマネージメントを子会社化するなど、グループ力の強化を進めている。
 
<プライベートブランド(PB)商品>
価格訴求力があり、収益性も高いPB商品の販売を強化している。
 

 
素材・製法・品質にこだわった生の大麦若葉エキス。大麦若葉エキスが脂肪の蓄積を抑えるほか、活性酸素の一種であるスーパーオキシドを瞬時に無毒化するSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)を含有。
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2011年2月期第3四半期決算
 
 
前年同期比5.4%の減収、同51.8%の経常減益
売上高は前年同期比5.4%減の742.9億円。調剤部門の売上が増加したほか、PB商品の販売強化により健康食品が堅調に推移したものの、花粉の飛散量減少による季節商材の不振や前期の新型インフルエンザ関連特需の反動が響いた上、従来型販促(チラシ特売)からの脱却に向けた取り組みの影響も受けた。
利益面では、ニッショードラッグ(キリン堂よりも売上総利益率が高い)の売上構成比及び売上総利益率の低下に加え、利益率の高い医薬品が苦戦したこともあり、売上総利益率が0.2ポイント低下。人件費や販促費を中心に販管費が減少したものの、売上総利益の減少をカバーできず営業利益は2.4億円と同71.4%減少した。賃貸費用の減少等で経常利益は同51.8%の減少にとどまったものの、店舗閉鎖損失引当金繰入額1.1億円や減損損失2.6億円など特別損失4.1億円を計上したため、1.3億円の四半期純損失となった(前年同期は、たな卸資産評価損9.1億円など特別損失12.7億円を計上した)。
第3四半期末のグループ店舗数は314店舗。キリン堂がスーパードラッグストア8店舗(大阪府4店舗、兵庫県2店舗、滋賀県1店舗、三重県1店舗)を新規出店する一方、スーパードラッグストア2店舗、小型店3店舗の計5店舗を閉店。既存店の活性化対策として、8店舗でリニューアルを実施した(キリン堂5店舗、ニッショードラッグ3店舗)。
 
 
セグメント別では、小売事業の売上高が同5.4%減の741.6億円。競争激化による販売価格の下落等で製造卸売事業の売上高も1.2億円と同14.5%減少した。
 
 
処方せん取扱店舗数の増加や処方せん単価の上昇で調剤売上高が増加したほか、PB商品の販売強化により健康食品の売上が増加。一方、花粉の飛散量の減少による季節商材の不振や前期の新型インフルエンザ関連特需の反動で医薬品が減少したほか、制度化粧品の伸び悩みで化粧品の売上も微減。チラシ特売からの脱却に向けた取り組みの中で育児用品や雑貨等も減少した。
 
 
前年同期比5.5%の減収、同75.8%の経常減益
売上高は前年同期比5.5%減の242.0億円。内訳は、グループ3社全てが減収となった小売事業が同5.4%減の241.7億円、製造卸売事業が同30.7%減の38百万円。小売事業では、処方せん取扱店舗数の増加や処方せん単価の上昇で調剤売上高が増加したものの、新型インフルエンザ特需の反動等で医薬品が同16.2%減少したほか、チラシ特売からの脱却に向けた取り組みの中で、育児用品も同25.7%減少。一方、チラシ特売が減少したにもかかわらずEDLP(後述)の浸透により、雑貨等が同0.2%の減少にとどまった(ニッショードラッグでは同2.2%の増加)。なお、ニッショードラッグは第2四半期以降、計画を上回る既存店の回復が続いている。利益面では、人件費や販促費(チラシ特売の減少による)を中心に販管費が減少したものの、売上の減少と利益率の高い医薬品が苦戦等による売上総利益の減少をカバーできず、営業利益が4百万円と同98.3%減少。店舗閉鎖損失引当金繰入額1.0億円(第4四半期の閉店に伴う損失)を特別損失に計上したため、75百万円の四半期純損失となった。
 
 
チラシ特売からの脱却を目指した取り組みの成果により、客単価は比較的堅調に推移したが、そのマイナスの影響がキリン堂の客数に現われている。具体的には、第3四半期(9~11月)の客単価は、キリン堂が前年同期比1.5%減(累計:同0.9%減)、ニッショードラッグが同2.1%減(同2.1%減)。一方、客数は、キリン堂が同7.0%減(累計:同6.4%減)、もともとチラシ特売を行っていなかったニッショードラッグは同2.2%減(同3.9%減)。
 
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は、前期末比13.4億円増の421.5億円。借方では、現預金のほか、店舗の増加等でたな卸資産が、M&A((株)ソシオンヘルスケアマネージメントの子会社化、後述)関連で無形固定資産が、それぞれ増加。貸方では、有利子負債等が増加した。CFの面では、運転資金や税負担の増加で営業CFが減少する一方、M&A関連の支出で投資CFのマイナス幅が拡大したため、前年同期は23.4億円だったフリーCFが1.7億円に減少した。長期借入金の積み増しもあり、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は、54.6億円と前期末比7.7億円増加した。
 
 
 
2011年2月期業績予想
 
 
第4四半期(12-2月)は前年同期比0.5%の減収ながら、同40.5%の経常増益予想
第4四半期は、前年同期が、風邪関連や花粉症関連が不振であったことから、ハードルは低いと想定しつつも、第3四半期(累計)までのトレンドを考慮し、売上高は前年同期比0.5%減の263.0億円を予想。売上総利益率も前期並みと見ている。一方、人件費や従来型販促からの脱却に伴う販促費の減少により、販管費が同1.7億円減少する見込みで(第3四半期の3ヶ月間では1.2億円の減少)、営業利益は5.2億円と同40.9%増加する見込み。

上記を前提に、通期の業績予想に変更は無く、会社側では前期比4.2%の減収、同24.7%の経常減益を見込んでいる。既存店売上高の前提は、キリン堂が前期比5.5%減、ニッショードラッグが同6.3%減。出退店は、キリン堂が8店舗の新規出店と7店舗の退店、ニッショードラッグが1店舗の退店を計画。のれん償却費4.1億円(前期と同額)を織り込んだ。配当は1株当たり10円の期末配当を予定している。
 
 
(2)11/2期の施策と進捗状況
①11/2期の施策
「顧客第一主義」をテーマに、「営業組織の活性化(店舗力の強化)」とライトカウンセリング販売体制の構築に向けた「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」を進めるとともに、販促手法を変更しチラシに依存した従来型販促からの脱却(販売手法の変更)に取り組んでいる。
具体的には、「営業組織活性化(現場力の強化)」では、営業部を4部体制へ細分化し現場中心のマネジメント体制を強化しており、「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」では、タスクフォース主導による売場改装と棚割りの変更によりセルフサービスを念頭に置いた売場づくりを推進中。また、「販促手法の変更」では、チラシ販促を削減し、EDLP(Everyday Low Price)へのシフトを図るとともに、PB商品の開発と販売を強化している。このほか、本格稼動は来期以降となるが、新物流センター(KRDC)と需要予測による自動発注システムの稼動により在庫削減も進む見込み。
 
②進捗状況
店舗レイアウトや売場構成の変更で買いやすい売り場を実現
買物しやすい売場の実現はもちろん、店舗作業量を削減してライトカウンセリングの時間を創出するべく、セルフサービスを念頭に置いた売場づくりを進めている。具体的には、陳列・棚割の見直し及び変更、通路幅の確保と店内カートの設置(来店客の店内回遊時間の増加につながる)、及びP0Pによる商品訴求等に取り組んでいる。上期に19店舗、第3四半期に20店舗で上記の「売場づくりの改革(店舗オペレーションの改革)」が完了。第4四半期も20店舗での実施を予定している。
 
 
ローコストの実現に向けた新物流センター(KRDC)の稼動
10年12月から新物流センター(KRDC)が順次稼動を始めている。KRDCは主要地域である関西地区(関東地区を除く約300店舗をカバー)のオペレーションの効率化を目的としており、配送機能と在庫機能に加え、従来の店舗作業の一部も担う。このため、「ムリ・ムダ・ムラ」な店舗産業をなくし、顧客満足度向上に向けたサービスに専念できる店内の環境作りが可能になる。本格稼動は11年1月から、業績への寄与は12/2期以降となる。

所在地及び敷地面積  大阪府高槻市下田部町、約11,651坪
建築面積       建坪:約4,397坪、延坪:約13,942坪
業務委託先      (株)Paltac
 
販促手法の変更
第2四半期にEDLPを開始しチラシ特売を廃止したが、手配りチラシ・日替わり抜きの紹介チラシ、及びダイレクトメール(DM)は継続した。第3四半期には、上記チラシ及びDMも廃止したが、来店の動機付けが弱くなりその影響が客数に現われた。このため、第4四半期は来店の動機付けを図るべく、2回のDMとクーポン企画を実施する考え。
 
③(株)ソシオンヘルスケアマネージメントの子会社化
在宅医療事業や医療モールの開発を強化するべく、10年8月に在宅医療のサーポートやマネジメント、医療機関開発支援・運営支援等を手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメント(東京都渋谷区)の株式を取得した。
(株)ソシオンヘルスケアマネージメントは、11年9月のオープンを予定している近鉄奈良線菖蒲駅前(奈良県橿原市)の医療モール、12年夏のオープンを予定している小田急線新百合ヶ丘駅前(神奈川県川崎市)の医療モールへの診療機関の誘致を手掛けており、キリン堂が上記医療モール内への調剤薬局の出店を予定している。また、中長期的には、キリン堂の在宅医療事業の強化につなげていく考え。
 
 
取材を終えて
品質と価格はトレードオフの関係にあるため、一般的に安い商品は「安かろう、悪かろう」となるのだが、特定の期間に通常価格(品質の目安となる)から値引きした価格で販売する特売は、高品質な商品を低価格で購入できる。このため上記のトレードオフが成立せず、消費者へ強い訴求力を有する(来店動機を喚起する)。しかし、値引きしているため、その商品が売れても利益が極めて少ないか、赤字であり、しかも、チラシの印刷費やDMの製作・発送費はもとより、棚割の変更やPOPの作成・添付等の手間などコストもかさむ。店舗側では、仮に特売商品では利益が出なくても、それを集客手段として活用し、他の商品を販売することで利益確保を目論むのだが、消費者の財布の紐が固い現状では、特売品以外の他の商品の販売拡大につながり難いようだ。同社の第3四半期決算では、チラシ特売を減らしたことで育児用品の売上が減少したが、これまで育児用品の特売チラシを打つと、中国向けの輸出業者が対象商品のみを大量に購入していくことも多かったと言う。
これに対して、EDLPでは、商品全般で安い価格設定をし(特売のように利益の出ない価格設定はしないが)、それらの価格の変更を極力しない。このため、チラシやDMのコストはもとより、棚割の変更やPOPの作成・添付等の手間も省くことができるが(このコストダウン効果が価格引下げの原資ともなる)、高品質・低価格を消費者に認知させるための何らかの手段が必要であり、また、認知のための時間も必要になる。
同社はチラシ特売からEDLPへの移行を進めているが、現在はその途上にあり、チラシ特売からの脱却により単価の低下を最小限に抑えることができているが、集客面での課題を克服するまでには至っていない。このため、第4四半期は、過渡期的な措置としてDMやクーポン企画といった集客施策を実施する考えだ。当面、試行錯誤、言い換えると、生みの苦しみが続きそうだが、方向性が間違っている訳ではない。EDLPの今後の進捗に期待したい。