ブリッジレポート
(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.5】2011年3月期業績レポート
取材概要「11/3期は4期ぶりの増収となったが、利益は4期連続で減少した。この最大の要因は鋳鋼バルブの採算悪化で、リーマン・ショック後の受注急減時に稼働・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年5月31日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
事業内容
バルブ国内首位。特に建築設備や石油化学向け強い。海外開拓に積極姿勢。伸銅品も国内上位
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(5/25現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
417円 109,224,125株 45,546百万円 5.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.50円 1.8% 29.29円 14.2倍 480.88円 0.9倍
※株価は5/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キッツの2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、「水道メータ周り」、「ガスメータ周り」、「給湯器」等でよく目にするが、家庭だけでなく、あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル、ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、バルブの部材として使用される伸銅品の外販を行っている他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。東洋バルヴ(株)、(株)清水合金製作所など連結子会社30社と共にグループを形成しており、海外売上高比率は11/3月期現在で22.6%。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内2位のポジションにある。
 
<事業セグメントの概要>
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びその他に分かれ、11/3期の売上構成比は、それぞれ72%、19%、9%。
 
バルブ事業
キッツグループのコア事業であり、上下水道・給湯・ガス・空調等のライフラインや石油・化学・紙パ・半導体等の産業分野において、流体制御機器として重要な役割を担うバルブや継手を中心に、製造・販売している。
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を生産販売している。この黄銅棒は、バルブの部材を初め、水栓金具、ガス機器、家電などの部材として使用されている。
その他
総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)、ホテル・レストラン経営(ホテル事業)、及びガラス工芸品の販売を行っている。
 
 
 
2011年3月期決算
 
 
前期比9.8%の増収、同5.1%の経常減益
売上高は前期比9.8%増の1,060.5億円。黄銅棒の需要増と銅相場高騰に伴う製品価格の上昇で伸銅品事業の売上が伸びた他、バルブ事業の売上も国内外で増加した。ただ、原材料価格が上昇する一方でバルブ価格が低下した事に加え、円高の影響もあり売上総利益率が23.2%と2.0ポイント低下。独PERRIN(ペリン)社を連結した事等による販管費の増加を吸収できず、営業利益は同9.1%減少した。ただ、有利子負債の削減による金融費用の減少(6億円→4.6億円)等で営業外損益が改善。減損損失や退職特別加算金等の減少で特別損失も減少し、当期純利益は30.6億円と同0.5%の減少にとどまった。配当は1株当たり4円の期末配当を予定している(上期末配当と合わせて年7円)。
尚、特別損失として、資産除去債務に関する会計基準の適用に伴う影響額3.9億円やグループ内での生産統合及び海外子会社の収益性の低迷に伴う子会社の固定資産減損損失4.9億円など11.0億円を計上した(前期は減損損失11.7億円など特別損失17.6億円を計上)。

為替レートは、1ドル=87.32円(前期実績93.71円)、1ユーロ=115.06円(同130.51円)。電気銅建値は740,833円/トン(同620,000円/トン)。
 
 
バルブ事業
売上高は前期比7.8%増の760.9億円。このうち国内売上高は前期比5.4%増の540.5億円。石油精製・石油化学や上下水道向けが減少したものの、主力の建築設備、機械装置関連、及び半導体関連向けが伸びた(半導体関連向けは61億円と同84%の増収)。一方、海外売上高は同14.0%増の220.4億円。石油精製・石油化学向けの減少等で北米が58億円と同18%減少した他、欧州・その他も35億円と同3%の増加にとどまったが、建築設備向け等の汎用バルブの好調で、タイ、インドネシア、中国を中心にアジア向けが123億円と同76%増加した。
セグメント利益は同7.2%減の81.4億円。増収効果やコストダウン効果があったものの、原材料高や製品価格の低下、更には独PERRIN(ペリン)社を連結した事等による販管費を吸収できなかった。製品別では、主力の青黄銅バルブやステンレスバルブの利益が増加する一方、石油精製・石油化学向け(プラント向け)の鋳鋼バルブの採算が悪化した。
 
伸銅品事業
黄銅棒の需要増と銅相場高騰に伴う製品価格の上昇で売上高が202.3億円と前期比24.7%増加。増収効果に加え、費用削減も進んだものの、原価差益の減少が響き、セグメント利益は6.3億円と同5.6%減少した。
 
その他
3月11日に発生した東日本大震災の影響(フィットネス事業62百万円減収、ホテル事業60百万円減収)で売上高が97.2億円と同0.3%減少し、セグメント利益も3.1億円と同8.3%減少した。尚、フィットネス事業は東日本大震災で仙台及び水戸の2店舗が営業を停止したものの、前期に新規開設した店舗が通期で寄与した事で増収・増益。一方、予約のキャンセルが大量に発生したホテル事業が減収・減益となった他、諏訪ガラス工房が減収・営業損失となった。
 
(3)会社別動向
同社個別の業績は、売上高が前期比5.3%増の510.0億円、経常利益が同19.3%減の29.1億円。原材料高や製品価格の低下で利益が減少したものの、ほぼ予想に沿った着地。バルブ事業の主要子会社では、建築用バルブを手掛ける東洋バルヴが増収・増益となる一方、上下水道関連の清水合金製作所が減収・減益。半導体製造装置向けを手掛けるキッツエスシーティーは売上が同1.8倍に拡大し、営業損益が7億円弱改善し黒字転換した。海外子会社では石油精製・石油化学向けの鋳鋼バルブを手掛けるキッツ閥門が低採算案件の売上計上で大幅な減益(足下堅調)となった他、欧州市場の低迷と円高ユーロ安で独PERRIN社が営業損失。伸銅品事業を手掛けるキッツメタルワークスは売上が増加したものの、原価差益の減少で営業減益。
 
 
バルブ事業は国内がけん引役となり、1Q(4-6月)を底に四半期毎に売上が増加。特に4Q(1-3月)は震災の影響で建築設備向けが大きく伸びた(同社では仮需と見ている)。海外は、アジアを中心にほぼ安定した推移。上期に苦戦した北米も、3Q(10-12月)以降、回復に転じた。利益面では、上期は原材料高に加え、採算の低い海外プラント向け鋳鋼バルブの影響を受けたものの、下期は採算の良い国内向け青黄銅バルブの回復もあり、利益率が改善した。
伸銅品事業は4Qに入り、需要が増加すると共に商品価格が上昇。利益面では、銅相場の変動による影響も無く、四半期を通して黒字を確保した。 フィットネス事業やホテル事業の業績には季節変動(冬季の売上が相対的に落ち込む)があるため、例年、その他の売上・利益は上期偏重となるが、今期は東日本大震災の影響でこの傾向が顕著となった。
 
(5)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比26.0億円増の1,001.3億円。普通社債60億円の満期(11年10月)に備えて、60億円の普通社債を発行したため、現預金及び有利子負債が増加した。CFの面では、売上の増加に伴う運転資金の増加で営業CFが減少する一方、M&A関連の支出減少で投資CFのマイナス幅が縮小した。この結果、前期比では減少したものの、29.1億円のフリーCFを確保し、現金及び現金同等物の期末残高は127.0億円と前期末比30.4%増加した。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比5.6%の増収、同1.2%の経常増益予想
売上高は前期比5.6%増の1,120億円を予想。海外を中心にバルブ事業の売上が増加する他、黄銅棒の販売拡大や銅相場の市況を反映した製品価格上昇で伸銅品事業の売上も伸びる見込み。利益面では、原価低減や数量増効果を見込むものの、原材料高やバルブの製品価格低下の影響を織り込んだ結果(原材料高、製品価格共に影響額は前期に比べてほぼ半減するが)、売上総利益率が0.1ポイント低下。変動費の増加や人員増で販管費の増加も見込まれるが、増収効果で吸収し営業利益は66億円と同4.1%増加する見込み。金融収益の減少等で営業外損益が悪化するものの、特別損失の減少で当期純利益は32億円と同4.5%の増加が見込まれる。配当は1株当たり0.5円増配の年7.5円を予定。

前提は、為替レートが、1ドル=81.00円(前期実績87.32円)、1ユーロ=113.00円(同115.06円)。電気銅建値は820,000円/トン(同740,833円/トン)。
 
 
 
東日本大震災の影響でフィットネス事業やホテル事業の売上が減少するものの、既に説明した通りバルブ事業及び伸銅品事業の売上が増加する。利益面では、人員増による固定費の増加で伸銅品事業の利益が減少する他、売上の減少でフィットネス事業やホテル事業等のその他の利益も減少する見込み。一方、前期に数量減と売価政策により収益が悪化した石油精製・石油化学(プラント)向けの鋳鋼バルブの採算改善で主力のバルブ事業の利益が前期比9.0%増加する見込み。
 
バルブ事業
国内経済については、震災の影響で上期の経済活動が停滞するリスクがある一方で、下期の復興需要が見込まれるが、先行きの不透明感も強い事から、前期の下期並みの水準を想定している。一方、海外経済については、アジア経済での高い成長と米国経済の堅調な足取りを見込む。

販売面では、震災後に在庫積み増しを図る代理店からの受注が増加しているが、今期の予想には震災関連の特需を織り込んでいない。一方、海外は、アジアでの販売拡大が見込まれる中、北米が回復傾向にある他、欧州も足下で底打ち感が出てきた。
 
 
生産面では、数量の減少と売価政策で前記の収益悪化要因となった石油精製・石油化学向けの鋳鋼バルブの原価低減が進む他、三吉バルブの工場統廃合が進み建築設備向けバルブの生産性も改善する見込み。
 
 
技術・開発面では、環境対応商品の開発やマ-ケティングの強化による各種産業分野及び地域ニーズ対応商品の開発を進める。また、設計や開発業務効率の向上と開発納期短縮を目的にPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)システムの導入を進める。

尚、キッツタイやキッツ台湾等のグループ会社の決算月変更(10ヶ月決算となる)が、売上高で24億円、営業利益で1.5億円の減少要因となる。
 
伸銅品事業
黄銅棒市場の生産高を前期比3%増の20万トンと予想しており、銅の平均価格の前提は1トン82万円(前期は同74万円)。キッツメタルワークスの販売重量は同9%増の3,500トンを計画しており、銅市況の上昇による製品価格の上昇もあり、セグメント売上高は242億円と同19.6%増加する見込み。ただ、人員増による固定費の増加で営業利益は6億円と同5.1%減少する見込み。特殊材や細物など付加価値商品の拡販でシェアの引き上げを図る(20%→23%)。
 
その他
フィットネス事業は前期比3.7億円の減収、同1.3億円の営業減益を見込んでおり、このうち東日本大震災で被災した仙台店と水戸店の営業休止の影響が、売上高で3.7億円、営業利益で1.6億円(いずれも下押し要因となる)。ホテル事業は同2.9億円の減収、同0.9億円の営業減益を見込んでおり、団体客のキャンセルや旅行自粛といった震災の影響を、売上高で3億円、営業利益で1.2億円(いずれも下押し要因となる)織り込んだ。
 
 
取材を終えて
11/3期は4期ぶりの増収となったが、利益は4期連続で減少した。この最大の要因は鋳鋼バルブの採算悪化で、リーマン・ショック後の受注急減時に稼働率を維持するべく受注した低採算案件が売上計上された事による。販売価格が低下したのも、価格競争の激化以上に、この影響が大きかったようだ。しかし、12/3期はこの影響が一巡する上、近年製品価格の下落が続いていた青黄銅バルブも三吉バルブ(埼玉県川越市に工場を有する)の工場統廃合などが進み、建築設備向けバルブの生産性も改善する見込みだ。一方、受注・売上の面では、今期業績には織り込んでいないものの、下期以降、復興需要が期待できる。国内の建築設備向けの売上は売上全体の34%を占めるだけに(前期実績ベース)、今下期以降の業績に期待が高まる。中国での高級汎用バルブの販売動向やボリュームゾーンへの展開に加え、新たに拠点を開設するインド・東南アジアでの販売動向等、中期的な成長のけん引役となる海外事業の進捗と共に注目したい。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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