ブリッジレポート
(2426)

ブリッジレポート:(2426)ピーアンドピー vol.7

(2426:JASDAQ) ピーアンドピー 企業HP
山室 雅之 社長
山室 雅之 社長

【ブリッジレポート vol.7】2011年3月期業績レポート
取材概要「12/3期については、キャンペーンの自粛やサプライチェーンの寸断による出荷制限、更には電力供給問題による店舗営業時間の制約等、懸念材料・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年6月14日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピーアンドピー
社長
山室 雅之
所在地
東京都新宿区新宿3-27-4
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 21,478 544 541 267
2010年3月 21,934 374 377 67
2009年3月 18,853 635 642 372
2008年3月 15,808 822 827 404
2007年3月 14,056 678 684 340
2006年3月 6,075 269 255 133
2005年3月 4,667 312 295 156
2004年3月 3,637 281 270 110
2003年3月 2,586 171 172 93
2002年3月 1,891 151 158 28
株式情報(5/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
18,000円 107,459株 1,934百万円 9.2% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
950.00円 5.3% 2,791.76円 6.4倍 27,934.86円 0.6倍
※株価は5/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピーアンドピーの2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
携帯電話、デジカメや薄型TV等のデジタル家電、或いは食品等、様々な商品の販売促進活動を受託するセールス・プロセス・アウトソーシング(SPO)を中心に、小売店向け棚卸サービス等も手掛けている。全国に広がるサービスネットワークと、接客マナー研修、販売技術研修、商品知識研修などスタッフのスキルアップを支援する充実した教育・研修システムを強みとする。グループは、同社の他、一般事務及びコールセンター事業に強みを持つ(株)ピーアンドピー・キャリア(以下、PPC)、棚卸サービスの(株)ピーアンドピー・インベックス(同、PPI)、携帯ショップへの人材派遣を手掛ける(株)ジャパンプロスタッフ(同、JPS)、及びPPIの100%子会社である迎倍客股有限公司(台北市)。
 
<沿革>
1987年1月、メーカーの商品販売促進活動の支援を目的に設立。2000年8月に一般労働者派遣事業の許可を、03年10月に事業分野拡大を目的に有料職業紹介事業の許可を、それぞれ取得。04年12月、JASDAQに株式を上場した。現在、全国27の主要都市に展開しており、北海道から沖縄まで国内一斉のセールスプロモーションがワンストップで実現できる。
 
<サービス内容>
SPO(セールス・プロセス・アウトソーシング)サービス
放送・通信キャリア、一般消費材メーカー及び各関連企業等をクライアントとし、販売支援、営業支援に係る各種サービスを提供しており、店頭調査をはじめとした各種調査業務や販促シーンにおける電子看板(デジタルサイネージ)・電子POPのコンサルティング及び管理運営等、幅広く販売及び営業活動を支援する。
 
ストアサービス
生鮮加工技術と現場管理能力を備えた生鮮技術者の派遣・請負、レジトレーナーの派遣・業務請負、マニュアル作成等も含めたレジ業務スタッフの派遣・請負サービス及び、店舗への集客を支援する。
 
人材サービス
コールセンター業務、事務・IT人材の派遣、及び人材紹介、採用代行等のサービスを提供。
 
棚卸サービス
子会社の(株)ピーアンドピー・インベックスと台湾迎倍客股有限公司のサービス分野。棚卸業務を代行し、業務の効率化と営業時間の有効活用を実現する。365日、24時間体制で多様なニーズに対応。
 
 
2011年3月期決算
 
 
前期比2.1%の減収、同43.5%の経常増益
売上高は前期比2.1%減の214.7億円。東日本大震災の影響で例年キャンペーン案件が増加する3月の売上減少が響き予想を下回ったものの、ほぼ前期並みの水準で着地した。利益面では、付加価値の高いSPO案件の売上拡大に加え、不採算事業の終了もあり、減収ながら売上総利益が同1.7%増加。一方、リバイバルプランに基づく継続的なコスト削減への取り組みで販管費は減少し、営業利益は5.4億円と同45.1%増加した。資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額など特別損失52百万円を計上したものの、事業構造改革(前期特別損失計上額84百万円)の完了等で特別損益も改善し、当期純利益は2.6億円と同4倍弱に拡大した。期末配当は、1株当たり創業25周年の記念配100円を含む1,000円を予定している(前期は900円)。

尚、販売・営業支援の代表企業として加盟の誘いを受け、この3月に日本経団連に加盟した。また、3月11日に発生した東日本大震災では、社員、スタッフ、及び営業所への被害は軽微だったが、3月開催予定の中国人訪日旅行客対応セミナーや訪日サービスが中止となった他、3月予定のイベントやキャンペーン案件の中止や延期、更にはクライアント店舗の休業及び営業時間の短縮等、営業面で大きな影響を受けた。
 
 
アウトソーシング事業の売上が増加したものの、人材派遣事業の落ち込みをカバーできなかった。アウトソーシング事業の売上は68.7億円と同1.8%増加。付加価値の高いSPOサービスの積極的な提案活動が成果を上げ多数の大型案件の受注に成功し東日本大震災の影響を吸収した。一方、人材派遣事業の売上は146.0億円と同3.8%減少。一般事務派遣の案件縮小に加え、アウトソーシングへの需要シフトの影響も受けたが、コールセンター案件の受注等で小幅な減収にとどまった。
 
 
SPOサービスは、クライアントの販促予算が縮小し受注競争が激化したものの、モバイル分野でPPRシステム(注)等を活用した高付加価値な請負案件が拡大し、売上高が116.8億円と前期比5.1%増加した。一方、ストアサービスは、GMS(General Merchandise Store:総合スーパー)やスーパー等が業績低迷でコスト削減を進めたため既存案件の規模が縮小し、売上高が19.9億円と同19.4%減少した。人材サービスは、一般事務派遣が低下したものの、(株)ピーアンドピー・キャリアの子会社化効果もあり、非コア業務のアウトソーシング化を進める企業からコールセンター業務を受注、売上高は59.9億円と同2.6%の減少にとどまった。子会社の(株)ピーアンドピー・インベックスが手掛ける棚卸サービスは、クライアントである小売・流通企業が業績低迷で外部への棚卸委託を削減したため、売上高が18.0億円と同17.3%減少した。

(注):PPRシステム(P&P Reporting System)とは、同社が独自に開発したシステムで、Web環境を用い、(同社がクライアントに対して)日本全国のどこからでも、リアルタイムに必要な情報を報告できるシステム。独自開発のため、汎用性があり、クライアントの要望に合わせたカスタマイズが可能。
 
 
東日本地区は、新規サービスの展開等では成果をあげたものの、小売・流通企業向けの苦戦が響いた上、東日本大震災による3月の落ち込みもあり売上高が142.5億円と前期比5.0%減少した。一方、西日本地区は、SPOサービスをけん引役に売上が72.2億円と同4.2%増加した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比0.4億円増の54.0億円。借方では、CFの改善で現預金が増加した他、子会社株式の買い増しで投資その他(関係会社株式)が増加。一方、貸方では、純資産が増加した。有利子負債に依存しない健全な財務体質が維持されており、自己資本比率は55.5%と前期末の52.4%から3.1ポイント上昇した。CFの面では、利益の増加と運転資金の減少で営業CFが1.3億円のマイナスから4.4億円の黒字に転換。子会社株式の取得で投資CFのマイナス幅が拡大したものの、1.6億円のフリーCFを確保した(前期は2.7億円のマイナス)。配当の支払いで財務CFはマイナスとなったが、現金及び現金同等物の期末残高は18.3億円と同5.2%増加した。
 
 
 
(4)11/3期の取り組み
11/3期は、①「高付加価値のSPOサービスの積極展開」、②「グループリバイバルプランの継続」、③「新サービスの開発」、及びブランディング強化の一環として④「新スローガン、オリジナルキャラクターの立ち上げ」に取り組んだ。
 
①高付加価値SPOサービスの積極展開
同社独自のPPRシステムを活用したSPOサービスを、請負化が進んでいるモバイル分野を中心に積極的に提案した結果、多数の大型案件の受注に成功。下期以降、順次、各案件がスタートした。
 
②グループリバイバルプランの継続
不動産賃料など各種契約料金の見直し、不採算拠点の閉鎖、グループ内での人員配置見直し等、グループリバイバルプランを継続した結果、約1億円の販管費削減に成功した。
 
③新規サービスの開発
「集客」を目的とした新サービスの開発及び既存サービスの強化に取り組み、この一環として前期より注力している“デジタルサイネージサービス”を拡充した他、携帯電話を利用して店舗への集客を支援する“モバイル販促サービス”や“訪日ツアー紹介サービス”等の海外支援サービスを開発し展開した。デジタルサイネージサービスでは、これまでに培ってきた販売促進のノウハウを活用してデジタルサイネージによる小売店・飲食店での集客や購入促進支援サービスを展開(機材提供だけでなく、コンテンツ制作から配信までをワンストップで提供)。また、モバイルを活用した販促サービスとして、店舗内にQRコードを表示したPOPを設置し、来店者を携帯サイトへ誘導する事で飲食店や量販店の収益化を支援する他、抽選プレゼント等の特典を付ける事で再来店を促進するサービスを開発した。一方、海外支援サービスでは、インバウンド(訪日外国人向け)とアウトバウンド(国内企業の海外展開支援)の両面から新サービスを開発した。
 
 
④新スローガン、キャラクターの立ち上げ
ブランディング強化の一環として、10年10月1日付けで、新スローガン「ともに変える、ともに変わる。For Your Vision」とオリジナルキャラクター「アンドピピ」を立ち上げた。
 
 
“販売支援・営業支援”のトップ企業としての同社の知名度向上を目的としたもので、新スローガンは、「経営理念を再認識し、SPOサービスを通じて、常にクライアントとスタッフと共に、常に新たな未来を求め、よりよい変化を遂げていく」事を約束するもの。また、オリジナルイメージキャラクター「アンドピピ」は、同社グループが様々な企業、スタッフ、社員と共に仕事をしている事を表現している。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比6.2%の増収、同8.9%の経常増益予想
売上高は前期比6.2%増の228億円を予想。自粛ムードによる販促キャンペーンの減少・縮小、生産量減少に伴う商品不足によるキャンペーンの縮小・中止、更には海外インバウンド事業の再開の遅れ等を織り込んだものの、モバイル分野を中心に前下期以降に受注した大型案件が寄与する。利益面では、引き続きコストの削減やグループ経営の効率化効果が見込まれる中で売上総利益率、販管費率共に前期並みと慎重な予想だが、営業利益は5.9億円と同8.4%増加する見込み。配当は記念配を落とし、1株当たり50円増配の期末950円を予定。
 
(2)市場別見通し
①2011年は“請負化”元年
同社では、労働者派遣法改正案の審議(継続審議中)と共に、“請負化”の流れが一気に加速すると考えている。
 
 
 
(3)重点施策
12/3期の重点施策として、①攻めの営業への変革、②今後の柱となる新事業の開発、及び③売上500億円を目指すための基盤強化の3点を挙げている。
 
①攻めの営業への変革
営業力・組織力の強化と思考の変革により、人材サービスだけでなく、売場の販促支援、フィールド業務、店頭マーケティング、店頭ツールの作成等へサービス領域を広げると共に、PPRを用いて「店頭の見える化」を図る事で販売促進にかかる全ての分野をワンストップで支援していく。
 
②今後の柱となる新事業の開発
東アジア地域でグループ事業を本格展開する。具体的には、東アジア圏への進出を考えるメーカーや流通業を支援していく考えで、サンプリングによるテストマーケティング、東アジア圏でのプロモーションの企画提案、棚卸サービス、更には中国市場向け商品発表会や中国媒体への広告出稿代行等のサービスを提供する。
テストマーケティングサービスについては、既に台湾最大の美容健康サイトと台湾全土2,633店舗の店頭を結んだサンプリングサービスの実施が決まっている。具体的には、台湾伊藤忠、台湾ファミリーマート、及びWebサイト運営のファッションガイドとの提携により、ファッションガイドが運営する台湾最大の美容健康サイト(会員数37万人)にてモニターを抽出してサンプルを配布し、Webレポートの回収により利用者の「生の声」を収集すると共に分析結果を顧客となる国内メーカーに提出する。台湾伊藤忠によるプロジェクト管理によって輸出申請から物流までをトータルにサポートし(商品の引渡しは台湾ファミリーマート)、アンケート結果によっては、台湾ファミリーマートでの取り扱いも含めて、現地での販売を開始する。
また、Webサイトとリアルの連動したサービス提供を目的とした“Web SPOサービス”や“Webメディアサービス”の立上げを計画しており、“Web SPOサービス”では第1弾となるサービスサイトを近日中に公開する予定。このサービスサイトを利用し、店頭や街頭等のリアルでの販促サービスとの連動を図る。
 
 
③売上500億円を目指すための基盤強化
SPOサービスに加え、更なる高付加価値サービスの創造を念頭に隣接領域を中心にM&Aや事業提携を推進する他、売上規模拡大に向け、特定の地域や顧客基盤に強みを持った企業とのM&Aや事業提携を推進する。
 
 
 
中期ビジョン
 
業界トップ企業として13年度(14/3期)に売上高500億円規模(11/3期214億円)、営業利益率6%(同2.5%)の達成を目指す中期ビジョンを発表した。
これまで同社グループは、メーカー等の営業の一員として、量販店など小売店への営業促進から店頭販売に至るまでのセールス・プロセス活動をトータルに支援するSPOサービスを事業の中核として取り組んできた。今後は、人材サービスだけでなく、商品コンセプトや販促手法の提案から、マーケティング調査、分析へサービス領域を広げると共に、SPOサービスの新たな展開としてWebサービスや海外展開にも取り組む事で付加価値の向上を図る。
 
 
 
取材を終えて
12/3期については、キャンペーンの自粛やサプライチェーンの寸断による出荷制限、更には電力供給問題による店舗営業時間の制約等、懸念材料が少なくないが、その一方で、派遣から(同社が強みを有し、付加価値も高い)アウトソーシングへの顧客ニーズのシフトや得意とするモバイル分野でのスマートフォンの市場拡大といった追い風もある。こうした中、同社はグループをあげてのリバイバルプランが進捗した事を受けて、今期以降、守りから攻めに転じる考えで、具体的には、新スローガン「ともに変える、ともに変わる。 For Your Vision」の下、人材サービスだけでなく、商品コンセプトや販促手法の提案から、マーケティング調査、分析まで、セールスプロモーション(販売促進)にかかるトータルサービスの提供に取り組むと共に、東アジアへの事業エリア拡大やWebSPOサービスへの取り組みを進める。トータルサービスの提供については、PPRシステムを用いたSPOサービスの提案で既に下地ができつつあり、また、東アジアへの事業エリア拡大についても、インバウンド型が進捗しており(3月にイベントは震災の影響で中止となったが)、アウトバンド型についても、6月に台湾において、伊藤忠系の企業との提携によるテストマーケティングが始まる予定であり、インバウンド型、アウトバンド型共に順調だ。さらに、WebSPOサービスにおいても近日中に開始予定の第1弾サービスサイトを皮切りに、同社が得意とするSPOサービスとWebとの融合を推し進める。
国会で継続審議となっている派遣法の改正についても、同社は派遣からアウトソーシングへの需要シフトにうまく対応できている事から法案が成立した場合でも影響は限定的であり、14/3期に売上高500億円規模を目指す中期ビジョンの達成に向け、10/3期に底打ちした業績のモーメンタムは良好だ。また、会社設立から25年が経過した節目に、販売・営業支援の代表企業として日本経団連に加盟もした。同社は、会社設立以来、販売営業支援サービスの社会的な認知度を高めるべく業容の拡大に取り組んできたが、今回の日本経団連への加盟は、この努力が一定の評価を受けた事を意味する。今後の更なる飛躍に期待したい。