ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.5

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.5】2011年3月期業績レポート
取材概要「事業拡大に取り組んでいる中国では金融引き締めに対する警戒感があるものの、引き続き高い経済成長が続いており、同社においては、香港、深圳・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年7月12日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 55,762 899 842 500
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(6/23現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
319円 8,548,416株 2,727百万円 8.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 4.1% 54.98円 5.8倍 696.30円 0.5倍
※株価は6/23終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
プラマテルズの2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂関連商品の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売しており、最終用途は電子・電機・OA機器、玩具、住宅建材、自動車等。連結子会社8社(国内2社、中国4社、香港1社、シンガポール1社)、持分法適用会社1社とグループを形成し、子会社が合成樹脂フィルターの製造・販売も手掛ける。総合商社双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有している。
 
<沿革>
同社は、1952年3月の設立以来、合成樹脂を取り扱うエキスパートとして着実に歩みを続け、2001年10月ジャスダック市場に上場した。
 
 
グループでの拡大戦略や積極的な海外展開も同社の特徴で、03年1月に香港に現地法人を、同年4月に上海に現地法人を、それぞれ設立。更に同年9月にはフィルタレン(株)を設立して(株)化研より合成樹脂フィルターの営業権を取得し、同年10月より製造・販売を開始した。その後、フィリピンやシンガポール(04年3月に法人化)に拠点を開設し、06年2月には東洋インキ製造(株)との合弁でベトナムにコンパウンド製造・販売会社を設立(出資比率20%)。更に09年には1月に深圳、同年8月に大連と子会社を相次いで設立し、アジア進出を進める日系企業への供給体制の充実を図っている。尚、コンパウンドとは、目的とする性能や機能を得るために、プラスチックのベース樹脂に強化材や添加剤を配合した合成樹脂。
 
<コアコンピタンス>
同社のコアコンピタンスとして、最もQCDに厳しい日本の優良企業との継続的取引の中で培われた合成樹脂専門商社としての、(1)合成樹脂原料に関する極めて高い専門性、(2)商社としてのネットワークを駆使した、メーカーを巻き込んでの卓越した提案力、及び(3)顧客とのコミュニケーションを高め、少量多品種即納体制の構築、の3点を挙げる事ができる。
 
 
<同社が扱う合成樹脂原料の特徴>
同社は、相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂の取扱が多い。エンジニアリング系樹脂とは、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等でOA・事務機器、光学機器(カメラ等)、精密部品(ギア等の機構部品)、及び電子部品(コントローラー等)等で使われる。また、スチレン系樹脂とは、ポリスチレンやABS樹脂等で、家庭電器製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫等)、OA・事務機器(パソコン及び周辺機器、FAX等)、及び玩具等で使われる。
 
 
<顧客市場の動向>
エンジニアリング樹脂市場は国内では概ね横ばいだが、アジアでは5%以上の伸びが予想されている。また、同社の顧客は、アジア、中国等の新興市場での販売を強化している他、新しい事業分野の開拓や省エネ・省資源の推進にも取り組んでおり、この一環として、「技術」、「コスト」、「消費地」を念頭に置いた最も合理的な世界最適生産体制の構築を進めている。
 
 
<中国での事業展開を強化>
中国の内需拡大の機会を捉えて更なる成長の糧とするべく、現在、香港、深圳、上海、天津、大連の5拠点を展開している。10年には、深圳業務サービスセンターを8号令販社へ変更し人民元取引等が可能な法人組織に改組した。また11年には、より機動的な運用を目的に中国アジア統轄を香港に設置した。
 
 
※ 合成樹脂について(同社Webサイトより)
合成樹脂と言うと難しく聞こえるが、簡単に言うと、プラスチックの事。「原油」を加熱すると、気体になる温度の違いから、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油、アスファルトが分離できるが、プラスチックはこの中の「ナフサ」からつくられる。「ナフサ」を加熱してできる「エチレン・プロピレン(気体)」、「ベンゼン(液体)」等がプラスチックの元(水素と炭素が結びついた分子)で、これを基に「ポリエチレンやポリプロピレン」等のプラスチック原料がつくられる。このプラスチック原料に、柔らかくしたり、壊れにくくしたり、着色するための添加剤を加えたものを「ペレット」と言い、これを成形機という機械に入れ、熱して金型に流し込み冷却させ固まったものがプラスチック製品となる。熱に弱い、強度が足りない等の短所も技術の進歩によって改善されており、他のプラスチック、ガラス繊維、鉱物等とブレンドとそれぞれの特性が向上するため用途も広がっている。例えば、今まで金属だったクルマのエンジンの部品(極めて軽くなる→燃費の向上)や、携帯電話のアンテナ、髪の毛の太さの50分の1の精密機械部品等でプラスチック加工の最先端技術が使われており、ナノテクノロジー(十億分の1メートルを制御する技術)により今まで考えられなかった分野への応用も期待されている。
 
 
2011年3月期決算
 
 
前期比18.3%の増収、同35.5%の経常増益
売上高は前期比18.3%増の557.6億円。主要得意先である、電子・電機、自動車、建築、医療業界等の業績回復を背景に合成樹脂の需要が増加。中国でのビジネス拡大もあり、国内外で売上が伸びた。利益面では、高付加価値商材が大きく売上を伸ばし、高付加価値商材比率が改善したものの、海外売上比率が上昇(19.3%→25.5%)した影響で売上総利益率が0.2ポイント低下。運賃等の変動費や人件費を中心に販管費も増加したが、増収効果で吸収して営業利益は8.9億円と同35.5%増加した。当期純利益の伸びが経常利益の伸びよりも低いのは、投資有価証券売却益の減少等で特別利益が減少したため。配当は1株当たり7円の期末配当を予定(上期末配当と合わせて年13円)。
尚、個別ベースの販売先別構成比は、OA・事務機器36%、家電・電子15%、建材9%、医療器7%、自動車6%、容器・化粧品6%、玩具・その他25%(概算値のため合計が100%にはならない)。
 
 
 
(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比5.1億円増の223.8億円。借方では、事業拡大でたな卸資産が増加したものの、売上債権の回収が進んだ事でCFが改善し現預金が増加。貸方では、有利子負債が減少する一方、純資産が増加した。
CFの面では、利益の増加と売上債権の回収が進んだ事等で前期は9.7億円のマイナスだった営業CFが8.6億円の黒字に転換。投資有価証券の売却が減少したため投資CFがマイナスとなった他、有利子負債の削減と配当の支払いで財務CFもマイナスとなったが、現金及び現金同等物の期末残高は22.9億円と前期末比4.3億円増加した。
 
 
 
2012年3月期決算
 
(1)東日本大震災の影響
同社においては、物的・人的の両面で地震や津波の直接的な影響は無かったが、販売先の一部が直接的な影響を受けた他、部品調達の停滞等で工場の稼動が停滞したケースもあった。一方、原材料の調達では、震災直後に仕入先が生産を一時停止したが、足下、回復しつつある。また、節電も含めた計画停電や原発問題の影響については、シフト体制の工夫等で工場稼動率を維持しているが、現在でも生産量では多少の影響を受けている。
今後については電力供給不足の影響が懸念される事から、不測の事態に備えて在庫の積み増しを進めると共に固定費削減に取り組む考え。
 
 
前期比3.2%の減収、同7.4%の経常減益予想
震災直後に停止した受発注が、足下では前年同月比10%減程度にまで回復しているが、「業績を悪化させている企業が増えてきている事が想定される」として、貸倒リスクの高まりに警戒感を強めている。このため、中国を中心に海外の好調が見込まれるものの、国内の苦戦をカバーできず、上期・下期共に小幅な減収・減益が見込まれる。配当は1株当たり7円の期末配当を予定(上期末配当と合わせて年13円)。
 
 
 
 
取材を終えて
事業拡大に取り組んでいる中国では金融引き締めに対する警戒感があるものの、引き続き高い経済成長が続いており、同社においては、香港、深圳、上海、天津、大連の子会社を中心に現地に進出した日系企業等の深耕が進んでいる。しかし、販売先動向を見る限り、売上ボリュームの大きい国内の事業環境は厳しく、前期比7.4.%の経常減益を見込む12/3期業績予想も止むを得ないところだろう。
ただ、その一方で、自動車メーカー各社が相次いで生産計画の前倒しを発表する等、サプライチェーンの回復は市場の予想以上に早く、また、内閣総理大臣が交代し、国を挙げての復旧・復興が加速してくれば、国内経済にも活気が戻ってくるのではないだろうか。このため、夏場の電力供給に不安はあるものの、方向感は悪くないと考える。同社においても、下期以降、業績の上振れ期待が高まってくるのではないだろうか。