ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.18

(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長兼社長
寺西 忠幸 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.18】2012年2月期第1四半期業績レポート
取材概要「注目される(株)マツモトキヨシホールディングス(以下、マツキヨ)とのPB商品の共同開発及び相互供給だが、東日本大震災の影響もあり、OEM先の・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年7月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長兼社長
寺西 忠幸
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(7/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
470円 11,331,205株 5,325百万円 1.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 4.3% 10.59円 44.4倍 878.53円 0.5倍
※株価は7/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2012年2月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。(株)ニッショードラッグ及び(株)ジェイドラッグの連結子会社2社ともに、和歌山県を除く関西地域、徳島県、石川県においてドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2011年5月15日現在、グループで313店舗(FC3店舗を含む)を展開。卸売事業として、連結子会社(株)健美舎が健康食品や医薬品の企画・販売を手掛けている。
 
<沿革>
1958年3月、薬局店舗営業と薬品製造業を目的に設立され、その後、ドラッグストアのチェーン展開を開始。91年以降は大型店の出店を強化し、07/2期には店舗数が200店舗を超えた。また、M&Aにも積極的に取り組み、2006年10月には四国地区での販売網の拡充の観点から(株)ジェイドラッグを、同年12月には同じ関西に地盤を置き営業基盤で補完性の高い(株)ニッショードラッグを、それぞれ買収。さらに、地域における医療提供施設としての機能強化と小売事業における調剤部門の強化を図るべく10年8月に(株)ソシオンヘルスケアマネージメントを子会社化した。
 
<12/2期の重点施策>
既存店の活性化により前期の「減収増益」から「増収増益」への転換を図る考えで、重点施策として、①顧客数の増加、②構造改革の推進、③PB商品の育成とアイテム数の拡大、及び④医療提供施設としての機能強化を図るため、調剤に関わる関連業務への進出強化、の4点を挙げている。
 
①顧客数の増加
11/2期はEDLP(Every Day Low Price)戦略の一環としてのチラシ販促の削減でコストを抑えることができたものの、客数が減少し既存店売上高が減少した。12/2期はEDLPを軸に、チラシ・レジクーポン・DM・モバイル等を適宜組み合わせた販促でコストをコントロールしつつ、客数を増やし既存店売上高のプラス成長を目指す。
②構造改革の推進
セルフサービスを前提とする売場作り(顧客主義の視点での売場変革)を徹底することで店舗の作業量と作業種類を減らし、顧客の囲い込みと高付加価値商品の販売につながるライトカウンセリング(接客・相談)の時間を創出する。
③PB商品の育成とアイテム数の拡大
(株)マツモトキヨシホールディングスとの連携によるPB商品の相互供給で、同社の強みである未病関連のヘルス&ビューティケア商品(ライトカウンセリングが必要)に加え、比較的単価が安くセルフでの販売増が期待できるPB商品を拡充。
④医療提供施設としての機能強化を図るため、調剤に関わる関連業務への進出強化
子会社(株)ソシオンヘルスケアマネージメントと連携し、医療モールへの出店や在宅支援を強化するとともに、ドラッグストアでの物販とのシナジーを追求していく。また、将来的には、調剤や生活必需品の物販を手掛ける同社の強みと医療機関向けコンサルを手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメントの強みを活かし、在宅医療を通して地域コミュニティの中核としの機能を担っていきたい考え。
 
 
2012年2月期第1四半期決算
 
 
前年同期比4.2%の増収、経常利益3.8億円(前年同期は32百万円)
売上高は前年同期比4.2%増の249.1億円。主力の小売事業では、春先の花粉症関連商品の販売増に加え、健康食品や調剤薬局の売上増もあり、キリン堂の既存店売上高が同2.7%増と当初の想定を1.1ポイント、同じく子会社のニッショードラッグが同5.1%増と当初の想定を1.0ポイント上回った。また、未だ寄与度は低いものの、医療コンサルティングを手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメント(10年8月に子会社化)の子会社化効果でその他の売上も増加した。
 
 
利益面では、花粉症関連を中心にした医薬品の販売増や調剤売上高の増加(いずれも利益率が高い)に加え、震災の影響による商品の供給制約から販促を抑制したこともあり、売上総利益率が0.8ポイント改善。業務受託手数料や物流費等の増加による販管費の増加を吸収して、前年同期は56百万円の損失だった営業損益が3.0億円の利益に転じた。1.9億円の四半期純損失となったのは、資産除去債務に関する会計基準の適用に伴う影響額5.9億円を特別損失に計上したため。
 
(2)出退店及び既存店の状況
出退店の状況
第1四半期末の店舗数は前期末比2店舗増の313店舗(キリン堂235店舗、ニッショードラッグ76店舗、ジェイドラッグ2店舗)。キリン堂が4店舗の新規出店(スーパードラッグストア3店舗、小型店1店舗)を行う一方、キリン堂が1店舗、ニッショードラッグが1店舗の退店を実施した。また、既存店の活性化対策として、ニッショードラッグが5店舗の改装を実施したほか、16店舗(キリン堂14店舗、ニッショードラッグ2店舗)でタスクフォース主導によるレイアウト変更等の簡易改装を行った。
 
 
花粉症関連が伸びた3月度は客数・客単価がともに前年同月の実績を上回った。続く4月度は震災の影響による商品の供給制約から販促活動を中止したが、震災特需もあり引き続き客数が増加。販促の中止により機会ロスが生じたものの、紙類や一般食品の好調が目立った。震災特需が一巡した5月度は売上高が前年同月の実績をわずかに下回ったものの、客数が前年同月を上回る状態が続いた。なお、第2四半期に入った6月度も客数が前年同月を上回って推移しており(同1.5%増)、既存店売上高が同2.3%増加した。
 
 
春先の花粉症関連商品の好調により医薬品売上が増加したほか、サプリメントやダイエット食品の販売増で健康食品の売上も増加した。また、処方箋の平均単価の上昇に加え、1店舗当たりの処方箋受付枚数も増加し、調剤売上高も増加(取扱店舗数は47店舗で、うち31店舗がドラッグストアとの併設店舗)。この他、震災後の日用雑貨品(紙類や一般食品)等の販売増で雑貨等の売上も増加した。一方、制度化粧品の苦戦で化粧品の売上は減少した。
 
 
販促費の減少(52百万円減)を中心に販売費は減少したものの、業務委託手数料(60百万円増)や物流費(53百万円増)の増加に加え、震災に伴う寄付金(21百万円)の計上もあり営業費が増加した。なお、業務委託手数料の増加の主な要因は店舗賃料の引き下げコンサル料によるもの、物流費の増加の主な要因は新物流センターの立ち上げに伴うものである。
 
(5)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第1四半期末の総資産は前期末比13.5億円増の422.5億円。借方では、店舗の増加でたな卸資産が増加したほか、新規出店や改装で有形固定資産も増加。貸方では、資産除去債務9.5億円の計上等で固定負債が増加した。CFの面では、最終損益はマイナスであったものの、その要因が非資金的費用の計上(資産除去債務に関する会計基準の適用に伴う影響額)によるものであったことや、構造改革に伴う売場作りや新物流センターの稼動でたな卸資産の効率化が進んだことで営業CFが前年同期の3.8億円のマイナスから9.4億円の黒字に改善。新規出店や改装、関係会社の出資金や子会社株式の取得に伴い投資CFはマイナスとなったが、会社方針の通り設備投資を営業CFの範囲内に収め、5.8億円のフリーCFを確保した。
 
 
2012年2月期業績予想
 
既存店が堅調に推移しており、上期及び通期の業績予想達成に向け不安は無い。上期の新規出店は5店舗を予定していたが、5月に上中店(徳島県)をオープンしたことで予定通り5店舗の出店を完了した。なお、第2四半期及び第4四半期はリベートが計上されるため、例年、第1四半期及び第3四半期よりも利益率が高くなる。
配当は、1株当たり上期末10円、期末10円の年20円を予定している。
 
 
既存店売上高の前提は、キリン堂:+2.0%、ニッショードラッグ+2.3%。グループで、新規出店5店舗、退店2店舗を計画。
 
 
既存店売上高の前提は、キリン堂:+2.1%、ニッショードラッグ+0.1%。グループで、新規出店11店舗、退店2店舗を計画。のれん償却費4.3億円(前期は4.1億円)及び特別損失11億円(同8.3億円)を織り込んだ。
 
 
取材を終えて
注目される(株)マツモトキヨシホールディングス(以下、マツキヨ)とのPB商品の共同開発及び相互供給だが、東日本大震災の影響もあり、OEM先の商品生産が十分に進まず本格的な展開はこれからだ。ただ、既に同社が提供しているヘルス&ビューティ分野でのPB商品は、関西圏のマツキヨの店舗でも売れ行きが良好。同社のPB商品は、ライトカウンセリングが必要で比較的単価の高い商品が多いが、マツキヨの店舗でも売れ行きが好調ということは、関西圏での同社の知名度の高さを背景に同社のPB商品が浸透しつつあることを示す一例であると考える。PB商品の拡販は同社の課題の一つであり、利益率の改善に寄与するものだ。同社とマツキヨは出店戦略が異なるため店舗ネットワークでも補完関係にあるだけに、今後のPB商品の販売拡大に期待が高まる。