ブリッジレポート
(2468) 株式会社フュートレック

スタンダード

ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.18

(2468:東証マザーズ) フュートレック 企業HP
藤木 英幸 社長
藤木 英幸 社長

【ブリッジレポート vol.18】2012年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「当初から上期は大幅な減益を予想しており、厳しい決算となった第1四半期も想定の範囲内。下期以降、徐々に収益貢献が始まるスマートフォン向け・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年8月23日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フュートレック
社長
藤木 英幸
所在地
大阪市淀川区西中島 6-1-1
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 2,085 482 485 284
2010年3月 1,996 530 540 315
2009年3月 1,777 404 415 221
2008年3月 1,598 264 277 159
2007年3月 1,253 249 256 162
2006年3月 1,443 173 165 99
2005年3月 1,059 69 79 33
2004年3月 907 9 6 -1
2003年3月 736 12 12 3
2002年3月 435 17 34 29
株式情報(8/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
101,800円 46,564株 4,740百万円 11.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,100.00円 2.1% 6,442.75円 15.8倍 55,787.46円 1.8倍
※株価は8/12終値。
 
フュートレックの2012年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
音声認識・UIソリューション事業分野と音源事業分野を柱に事業領域を拡大してきている。音声認識ソフトウェアの開発や音声認識サービスを提供する(株)ATR-Trek、CRMソリューションを手掛けるイズ(株)、及びi-phoneアプリ開発を含めたシステム開発の(株)スーパーワン等を連結子会社としてグループを形成している。
尚、イズ(株)及び(株)スーパーワンは2011年4月1日付で子会社化。
 
 
<音声認識・UIソリューション事業分野について>
音声認識・UIソリューション事業分野の収益は、製品が搭載された事による「イニシャルフィーとランニングロイヤルティ」、製品搭載に伴う「カスタマイズ収益」、及びコンテンツにかかるエンドユーザーからの月額使用料からなる。
 
製品ラインナップ
  • 分散型音声認識(DSR)
  • ローカル型音声認識(LSR)
  • ハイブリッド型音声認識
  • 音声合成(機器による発話)
  • 音声対話(機器との対話)
  • 電子ヘルプソリューション(使いかたナビ)
 
同社グループの「音声対話技術」には、ユーザーの声を認識する技術(音声認識)、ユーザーの質問内容を特定し、どのような返事を返すかを判断する技術(対話制御)、及び判断された返事を発話させる技術(音声合成)の3つの技術が盛り込まれている。「音声認識技術」は(株)国際電気通信基礎技術研究所(以下ATR)の高度な技術によって支えられ、ノイズ環境に強く屋外での利用に耐えうるもので、「対話制御技術」はユーザーの質問からキーワードを抽出・理解し、それに対応した対話シナリオから返答や動作を選択する。「音声合成技術」はHMM 音声合成を利用する事で小容量ながら自然な音声合成(発話)を実現している。NTTドコモ2010-2011年冬春モデルから「音声クイック起動」として搭載されており、画面上のマチキャラと会話する感覚で携帯電話の問いかけに声で答えていくと、希望する操作ができる画面にたどり着く(ボタン操作する事無く、基本的な機能を使う事が可能)。
 
同社グループの音声認識技術を利用した有料サービスとしては、NTTドコモが提供している音声入力メール(メールの件名や本文を携帯電話に向かって話すだけで入力できる)がある。また、子会社(株)ATR-Trekが運営するiアプリ「しゃべって翻訳」では、携帯電話に話しかけた言葉を翻訳できる。(現在は、日英版・日中版にて展開。日英版では、日本語⇔英語、日中版では日本語⇔中国語の相互翻訳が可能。)今後は強みである「ノイズ環境下での認識精度の高さ」と「カスタマイズ可能な柔軟性」を活かして法人向けサービス(業務ソリューション)を展開していく考え。
 
 
2012年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比13.8%の減収、同89.0%の経常減益
売上高は前年同期比13.8%減の4.9億円。携帯電話がフィーチャーフォン(従来型携帯電話)から高機能なスマートフォンへの移行期を迎えており、同社もスマートフォン対応を進めているが12/3期上期は一時的な端境期となる。このため、第1四半期は新たに連結対象となった子会社の寄与があったものの、カスタマイズ業務やランニングロイヤルティによる収入の減少で主力の音声認識・UIソリューション事業分野の売上が減少した他、フィーチャーフォンの販売減少で音源事業の売上も落ち込んだ。
営業利益は同89.4%減の9百万円。減収で売上総利益が減少する中、音声認識の更なる性能向上やスマートフォン向けアプリの開発、更にはソリューションビジネス展開の為の開発といった先行投資に加え、新規事業「E検定」の立ち上げもあり、販管費が増加した。
 
(2)セグメント別動向
 
同社の事業は、ライセンス・セグメント(音声認識・UIソリューション事業分野、音源事業分野、CRMソリューション事業分野)とライセンス以外のセグメント(基盤事業分野、カード事業分野)に分かれ、この第1四半期の売上高は、前者が前年同期比14.5%減の4.4億円、後者が同6.4%減の49百万円だった。サブセグメントの動向は次の通り。
 
音声認識・UIソリューション事業分野の売上高は同 33.7%減の2.2億円。イニシャルフィーによる収入が増加したものの、カスタマイズ業務やランニングロイヤルティによる収入の減少をカバーできなかった。
 
音源事業分野の売上高は同 38.6%減の1.1億円。イニシャルフィーによる収入が増加したものの、国内市場におけるフィーチャーフォンの販売減少で、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモとの音源IPライセンス契約に基づくロイヤルティ収入が減少した。
 
CRMソリューション事業分野の売上高は1.0億円。M&Aにより4月1日付けで連結子会社(株式の80%を取得)となったイズ(株)の持つCRM製品の売上が計上されている。同社は、同社のコア技術である音声認識・合成・翻訳技術とイズ(株)のWeb アプリケーション開発能力を融合させる事で、新たな業界へソリューションビジネスを展開していく考え。
 
基盤事業分野の売上高は同 12.9%減の21百万円。従来からのカスタマイズ業務による収入が減少したものの、新規プロジェクト「E検定~電気・電子系技術者育成プログラム~」(日本の得意分野である電気自動車やエコプロダクツの開発に不可欠なアナログ技術者の育成支援プログラム)による収入に加え、イズ(株)の子会社化に伴い連結子会社となった(株)スーパーワン(イズの子会社)の寄与で、わずかな微減にとどまった。
 
カード事業分野の売上高は同 0.6%減の27百万円。英語リスニング模擬試験用メモリーカードの書込みにかかる収入である。
 
※ イズ(株)及び(株)スーパーワンの子会社化について
イズ(株)は、約150社の顧客にSaaS型CRMソリューションを展開しており、イズ(株)の子会社(株)スーパーワンはi-Phoneアプリ開発を含めたシステム開発を手掛けている。今後、CRM ソリューションをフュートレック・グループの新たな事業ドメインと位置付け業容拡大を図る他、フュートレックのコア技術である音声認識・合成・翻訳技術とイズ(株)及び(株)スーパーワンのWeb アプリケーション開発能力を融合させ、成長分野であるスマートフォン向けアプリ開発を強化していく考え。また、イズ(株)が有するSaaS 型ビジネスモデルは、音声認識・合成・翻訳等のサービス(コンテンツ提供)とのシナジーが高い事から、既存事業の強化にもつながると考えられている。
 
(3)財政状態
 
第1四半期末の総資産は前期末比2.3億円減の29.7億円。借方では、イズの株式取得、配当金および法人税等の支払い等で現預金や短期余資運用の有価証券等が減少。一方、貸方では、純資産や未払法人税等が減少した。
 
 
2012年3月期業績予想
 
上期及び通期の業績予想に変更は無く、通期で前期比24.7%の増収、同2.9%の経常増益予想
当初から、上期は、研究開発投資や新事業「E検定」の立ち上げ等、下期以降の収穫に向けた種まきの時期との位置づけ。下期以降、アプリケーションやソリューション等、スマートフォン向けビジネスの収益化が見込まれる(スマートフォン向けアプリは、2011年夏モデルの一部のスマートフォンでの搭載が確定済み)。また、連結子会社イズ(株)及び(株)スーパーワンとの連携によるCRM ソリューション、業務・資本提携先である(株)エフ・シー・エスとのソリューションビジネス、更には(株)アクロディアとの次世代UIプラットフォームの開発等、新しいビジネスパートナーとのアライアンス戦略も進めていく。配当は1株当たり2,100円の期末配当を予定している。
 
 
 
今後の注目点
当初から上期は大幅な減益を予想しており、厳しい決算となった第1四半期も想定の範囲内。下期以降、徐々に収益貢献が始まるスマートフォン向け事業やソリューションビジネスの動向に注目したい。