ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.6

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.6】2012年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「足下、震災後の仮需的な動きが一巡し、調整局面を迎えているようだ。また、半導体関連にも減速感があると言う。ただ、通常であれば、同社の業績は・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年8月23日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(8/9現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
387円 109,223,895株 42,270百万円 5.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.50円 1.9% 29.29円 13.2倍 480.88円 0.8倍
※株価は8/9終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末の実績。
 
キッツの2012年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、「水道メータ周り」、「ガスメータ周り」、「給湯器」等でよく目にするが、家庭だけでなく、あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル、ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、バルブの部材として使用される伸銅品の外販を行っている他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。東洋バルヴ(株)、(株)清水合金製作所など連結子会社30社と共にグループを形成しており、海外売上高比率は11/3月期現在で22.6%。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内2位のポジションにある。
 
<事業セグメントの概要>
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びその他に分かれ、11/3期の売上構成比は、それぞれ72%、19%、9%。
 
バルブ事業
キッツグループのコア事業であり、上下水道・給湯・ガス・空調等のライフラインや石油・化学・紙パ・半導体等の産業分野において、流体制御機器として重要な役割を担うバルブや継手を中心に、製造・販売している。
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を生産販売している。この黄銅棒は、バルブの部材を初め、水栓金具、ガス機器、家電などの部材として使用されている。
 
その他
総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)、ホテル・レストラン経営(ホテル事業)、及びガラス工芸品の販売を行っている。
 
 
 
2012年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比13.1%の増収、同36.1%の経常増益
売上高は前年同期比13.1%増の280.8億円。主力のバルブ事業の売上が国内外で伸びた他、伸銅品事業も黄銅棒市場の需要増と銅相場高騰に伴う製品価格の上昇で売上が増加した。利益面では、材料費の上昇や為替が円高で推移した事等で売上総利益率が22.2%と0.5ポイント低下する中、売上の増加に伴う変動費の増加や売価政策等で販管費も増加したものの、増収効果で吸収して同38.4%の営業増益。資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額(3.9億円)の計上が無くなり特別損失が減少(当期は震災による損失11百万円など28百万円の計上にとどまった)したため、四半期純利益は6.5億円と同118.9%増加した。

尚、為替レートは、1ドル=82.32円(前年同期実績87.32円)、1ユーロ=113.73円(同115.06円)。電気銅建値は793,333円/トン(同738,000円/トン)。
 
 
バルブ事業
売上高は前年同期比15.3%増の201.6億円、セグメント利益は同29.3%増の20.5億円。このうち、国内売上は前年同期比14%増の140.3億円。石油精製・石油化学市場で厳しい状況が続いたものの、東日本大震災後に仮需が発生した(7億円程度と推定されるが、6月には解消)建築設備及び上下水道向けが伸びた他、一般化学市場やガス市場も震災に伴う工場の復旧需要等で増加。この他、機械装置関連市場や半導体関連市場の売上も増加した。
海外売上は同18.3%増の61.2億円。中国や東南アジア向けの好調でアジア向けの売上が同12.1%増加した他、北米も前期後半からの受注増を反映し同47.8%増加。一方、市場の低迷が続いたヨーロッパ等が同3.7%減少した。
利益面では、市況の低迷や原材料高の影響を受けものの、増収(数量増)効果と原価低減努力により営業利益率が改善。製品別では、主力の青黄銅バルブやステンレスバルブが増益となり、半導体製造装置向けの利益は倍増(同101.5%増)。前期苦戦した鋳鋼バルブも中国での稼働率向上で増益となった。
 
伸銅品事業
売上高は前年同期比16.7%増の57.8億円、セグメント利益は同27.7%減の1.2億円。黄銅棒市場の需要増と銅相場高騰に伴う製品価格の上昇で売上が増加したものの、増産対応による労務費の増加や原価差益の減少で利益が減少した。
 
その他
売上高は前年同期比10.3%減の21.3億円、セグメント利益は同76.5%増の42百万円。フィットネス事業において、東日本大震災で水戸店、仙台店が被災し一時休店(6月に再開)した他、ホテル事業も団体客のキャンセルが発生し売上が減少したが、フィットネス事業で原価低減(節電及び販促費の削減等)が進み利益率が改善した。
 
 
(3)会社別動向
同社個別の業績は、国内外でバルブの売上が伸び売上高が134.8億円と前期比13.1%増加。原材料高等の影響を吸収して経常利益が11.6億円と同31.4%増加した。バルブ事業の主要子会社では、東日本大震災後に仮需が発生した事もあり、キッツや建築用バルブを手掛ける東洋バルヴ、上下水道関連の清水合金製作所の売上が増加。海外は、原材料高でステンレスバルブを手掛ける台湾北澤が減益となったものの、前期に苦戦したキッツ閥門(中国:石油精製・石油化学向けの鋳鋼バルブ)やPERRIN(ドイツ)の損益が大幅に改善。この他、半導体製造装置向けを手掛けるキッツエスシーティーは売上が伸び利益が倍増した。
一方、伸銅品事業を手掛けるキッツメタルワークスは需要増と銅相場高騰に伴う製品価格の上昇で売上が増加したものの、増産対応による労務費の増加や原価差益の減少で営業減益。この他では、原価低減でキッツウェルネスの利益が増加する一方、震災の影響でホテル紅やの損失が増加した。
 
 
第1四半期末の総資産は前期末比5.8億円減の995.5億円。受注・売上の増加で売上債権、たな卸資産、及び仕入債務が増加したものの、法人税等の支払いや有利子負債の削減を進めた事でバランスシート全体ではスリム化が進んだ。CFの面では、受注・売上の増加による運転資金の増加や税金費用の増加(5.2億円→11.7億円)で営業CFがマイナスとなる中、設備投資や有利子負債の返済に伴い投資CF及び財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物の第1四半期末残高は86.7億円と前期末比40.2億円減少した。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
上期及び通期の業績予想に変更は無く、通期で前期比5.6%の増収、同1.2%の経常増益予想
通期売上高は前期比5.6%増の1,120億円を予想。海外を中心にバルブ事業の売上が増加する他、黄銅棒の販売拡大や銅相場の市況を反映した製品価格上昇で伸銅品事業の売上も伸びる見込み。一方、利益面では、原価低減や数量増効果を見込むものの、原材料高やバルブの製品価格低下に加え、人員増等による販管費の増加を織り込んだ。金融収益の減少等で営業外損益が悪化するものの、特別損失の減少で当期純利益は32億円と同4.5%の増加する見込み。配当は1株当たり0.5円増配の年7.5円を予定。

前提は、為替レートが、1ドル=81.00円(前期実績87.32円)、1ユーロ=113.00円(同115.06円)。電気銅建値は820,000円/トン(同738,000円/トン)。

尚、上期業績は前年同期比9.1%の増収、同8.1%の経常増益を見込んでおり、進捗率は、売上高50.2%(前年同期の実績ベースの進捗率は48.4%)、経常利益50.0%(同39.7%)と順調。
 
 
 
 
 
今後の注目点
足下、震災後の仮需的な動きが一巡し、調整局面を迎えているようだ。また、半導体関連にも減速感があると言う。ただ、通常であれば、同社の業績は下期偏重で、売上・利益共に下期の方がボリュームが大きく、しかも今下期は国内プラント関係で実需的な震災復興需要が期待できそうだ。しかし、「80円を割り込んだ急激な円高で、下期の事業環境に若干不透明感が出てきた」として会社側は慎重な姿勢を崩していない。