ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

スタンダード

ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.26

(4767:東証1部) テー・オー・ダブリュー 企業HP
川村 治 会長兼社長
川村 治 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.26】2011年6月期業績レポート
取材概要「2011年6月期については、6月に発表した業績下方修正水準で着地しており、サプライズはなかった。東日本大震災の影響を勘案すれば充分に健闘した・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年9月13日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社テー・オー・ダブリュー
会長兼社長
川村 治
所在地
東京都港区虎ノ門 4-3-13 神谷町セントラルプレイス
決算期
6月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年6月 10,570 378 377 131
2010年6月 12,575 671 670 357
2009年6月 14,210 1,401 1,392 876
2008年6月 14,397 1,362 1,343 729
2007年6月 13,070 1,051 1,041 551
2006年6月 12,341 781 784 423
2005年6月 10,705 771 782 465
2004年6月 9,638 781 765 466
2003年6月 9,441 1,103 1,073 537
2002年6月 8,600 940 920 462
2001年6月 7,555 756 730 371
2000年6月 5,995 556 537 238
株式情報(8/26現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
437円 11,397,175株 4,981百万円 4.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 5.95% 32.70円 13.36倍 439.98円 0.99倍
※株価は8/26終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
テー・オー・ダブリューの2011年6月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
イベント・プロモーション業界のトップカンパニー。イベントの企画・制作・運営・演出、セールスプロモーション(SP)に関するグッズ・印刷物の制作及び付帯業務を手掛ける。実際のイベント現場では照明、音響、映像、舞台制作、モデル・コンパニオンや警備員の派遣、整理、撤収、清掃等様々な業務があるが、これらの専門業者を外注先とし、イベント全体をコントロールすることで主催者が来場者に伝えたいことを具現化することが重要な任務となる。プロモーションの場合も、印刷、グラフィックデザイン、事務局運営、OOH(交通広告や屋外広告など家庭以外の場所で接触するメディア広告の総称)、ウェブ制作等の業務があるが、これらをトータル的にコントロールし納品することが任務となる。
日本では大半のイベント主催者が大手広告代理店を通じてイベントを発注する傾向が強い。そのため、実際にイベントの企画・制作・運営を行う会社は、イベント主催者から直接受注するのではなく、大手広告代理店を介して受注するケースが多い。同社グループも例外ではなく、電通グループ、博報堂グループ、アサツーディー・ケイグループに対する売上高が、全体の72.7%(2011年6月期実績)を占めている。
このような業界において、小規模事業者が特定領域において各々対応しているのが実状である。その中、同社グループは数少ない総合プロモーション会社として事業領域を拡大させている。業界としてもマス広告からきめ細やかなプロモーションの時代へとシフトしていることから、総合的な企画力、制作力、営業力を兼ね揃えた同社の比較優位性は今後も高まっていくと考えられる。
同社ではワンストップ体制の確立に加え、プロモーション提案力の強化にも注力している。具体的には、店頭領域においては(株)ジェイコムホールディングスと業務・資本提携、ノベルティ領域においては(株)トランザクションと業務提携を締結。ウェブ領域においては、イベントへの誘引・拡散に強みを持つ(株)カヤック、メディアを絡めた循環に強みを持つ(株)インフォバーン、ウエブプロデュースとクリエイティブ開発に強みをみせる(株)クルーソー、ウェブ制作体制とインフラを完備している(株)フォークとそれぞれ業務提携している。M&Aや業務提携については今後も積極的に検討していくとのことである。
 
 
2011年6月期決算
 
 
企業努力が垣間見られる着地に
2011年6月期は、前期比15.9%減収、同43.6%営業減益となった。東日本大震災後の影響を織り込む形で6月3日に修正された会社計画に概ね沿った着地である。なお、会社側によれば、東日本大震災による影響額は売上高ベースで約17億円(既受注案件の中止・延期14億円、期中受注機会喪失3~4億円)とのこと。
2010年(暦年)の国内総広告費は5兆8,427億円(前年比-1.3%、(株)電通調べ)。うち、プロモーションメディア広告費は2兆2,147億円(同-4.4%)に留まった。2011年に入ってからも、3月の東日本大震災の影響から広告や販売促進を自粛したクライアントも多く、厳しい状況が続いている。ゴールデンウィーク以降は多少持ち直し基調となっているようだが、暫くは弱含みの展開が続きそうである。
売上面では、前期の大型案件(横浜開港150周年記念テーマイベント、海のエジプト展、モーターショーなど)をカバーするだけの受注を獲得できなかったことが減収に繋がった。
収益面では、収益性の低い案件の管理を強化したことが功を奏し、直接原価率は前期比1.0ポイント改善したものの、間接原価が横ばいで推移したため、売上総利益率は同1.4ポイント悪化した。販管費率は同0.3ポイント悪化。役員報酬の削減等圧縮に努めたものの、減収を補うことは出来なかった。
 
 
1,000万円未満の案件は前下期以降安定的に500件以上の案件を受注しているが、それ以上の価格帯では今下期のスローダウンが顕著である。大震災の影響が大きいものの、ウェブ制作に対するニーズが高まっていること、プロモーション手法の変化などが影響を与えている可能性もある。
 
 
クライアントの広告費削減に伴い、競合案件の減少傾向が続いている。潜在需要掘り起こしに注力した提案案件は大震災の影響もあり、下期一気にスローダウンした。広告代理店やクライアントからの高い評価を背景に、指定案件は順調に拡大している。但し、会社側は指定案件に注力し過ぎたとの見解を持っており、今後は企画人員を増員することで競合案件も含めて案件獲得に注力していくとのこと。
平均単価は全般的に低下基調だが、ウェブ制作等が増えている影響が大きいとのこと。2011年6月期は企画本数拡大と案件獲得勝率引き上げを同時に図ってきたが、少しずつ成果が具現化してきた。下期は大震災以降のスローダウンもあり、企画本数が減少しているが、今後は半期1,500本水準を確保していくことが十分に可能だろう。勝率についても当面は30%までは到達可能な体制が整いつつあると会社側は考えている。
 
 
業種別、カテゴリー別では、大型案件{横浜開港150周年記念テーマイベント(Y150)、海のエジプト展、モーターショーなど}の反動減がより鮮明となっている。自動車セクターでは、モーターショーの反動減に加え、メーカーの試乗会イベントが小規模化したこと、市場回復の遅れなども足枷になっているようである。
プロモーションにも変化が出てきており、単なる人数集めのイベントではなく、高いリーチを求める声が高まっている。同社はこれまで培ってきたワンストップ体制とプロモーション提案力を強化していくことでこのニーズに応えていく算段である。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
2011年6月末の総資産は7,391百万円と、前期末比1,066百万円減少した。売上減により売上債権(借方)、仕入債務(貸方)共に減少した影響が大きい。
 
 
*1 税金等調整前当期純利益が310百万円減少したこと等により、前期比で520百万円減少しております。
*2 前期にはジェイコムホールディングス(株)他の株式の取得による支出140百万円が含まれております。当期には、銀行系社債の取得による支出200百万円が含まれております。
*3 前期及び当期には、それぞれ配当金の支払額367百万円が含まれております。
 
 
2012年6月期業績予想
 
 
本格回復は下期からとなろう
2012年6月期は、前期比8.5%増収、同78.3%営業増益を計画。同社が属するプロモーションメディア広告費(電通調べ)は2010年まで3年連続で減少するなど、厳しい環境が続いている。2011年に入ってからも東日本大震災の影響もあり、受注環境は弱含みで推移している。ゴールデンウィーク以降、多少は受注の戻りがみられるようだが、依然として楽観視できる状況にはない。足下の受注残高(8月5日現在)は4,882百万円と前年同日比1.9%減で推移しており、今後より一層の注力が望まれる。
収益面では、間接原価の抑制をベースに利益率改善を図る計画。なお、(株)ペッププランニングの株式売却益17百万円が期初段階で特別利益に織り込まれている。
 
 
今後の対策
 
日本の広告費は2007年の70,191億円をピークにその後は減少基調が続いている。とくに4マスメディア(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)の落ち込みが顕著になっており、全体に対する構成比は47.5%まで低下してきた。同社が密接に関係するプロモーション領域も厳しい環境が続いている。
外部環境が厳しい中、一層の営業強化を図るため、ワンストップ体制の確立、プロモーション提案力の強化(具体的にはウェブ対応力の強化、ノベルティ商品の開発、店頭での販売促進強化)に注力している。ウェブ強化については、営業・企画・制作・運用の流れの中で強みの異なる4社(カヤック、インフォバーン、クルーソー、フォーク)と業務提携することで組織力を高めている。ノベルティ強化についてはトランザクションと、店頭強化ではジェイコムホールディングスと業務提携を行なっており、今後はこれまで取り組んできたことの成果を確実に挙げていくべきタイミングを迎える。
 
 
取材を終えて
2011年6月期については、6月に発表した業績下方修正水準で着地しており、サプライズはなかった。東日本大震災の影響を勘案すれば充分に健闘したのではないだろうか。広告業界を取り巻く環境はここ数年厳しい状況が続いているものの、ワンストップ体制とプロモーション提案力の強化が功を奏していると言えよう。クライアントが求めるものも、マス広告からきめ細やかなプロモーションの時代へとシフトしており、総合的な企画力、制作力、営業力を兼ね揃えた同社の比較優位性は今後も高まっていくと我々は考えている。今上期は依然として大震災の影響が残るだろうが、下期以降を見据えて如何に同社の比較優位性をアピールしていけるかが重要となるだろう。企画本数が復調基調にあるうえ、企画勝率も高まってきていることから、今後に期待したい。